ぐるま)” の例文
かみさんや娘は、油煙ゆえん立つランプのはたでぼろつぎ。兵隊に出て居る自家うちの兼公の噂も出よう。東京帰りに兄が見て来た都の嫁入よめいりぐるまの話もあろう。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
ある時にはそのさびしい坂道の上下から、立派な馬車やかかぐるまが続々坂の中段を目ざして集まるのにあう事があった。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
「それなら、わたしの美しい花よめには、もうこれからは、けっしてつむぎぐるまに手をふれさせないことにする。」
A 大隈侯おほくまこうまへ正月しやうぐわつ受取うけとつた年始ねんし葉書はがき無慮むりよ十八まん五千九十九まいで、毎日々々まいにち/\郵便局いうびんきよくからだいぐるまはこびこんだとふが、隨分ずゐぶんきみエライもんぢやないか。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
そいつは、ちょっと立ちどまって、右左を見まわしていましたが、小林君の自動車が、あきぐるまであることをたしかめると、いきなり、こちらへ走って来ました。
虎の牙 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
そうじにんは、ごみためのはこなかのごみをあけてしまうと、ぐるまいて、あちらへかえってゆきました。
風の寒い世の中へ (新字新仮名) / 小川未明(著)
車上しやじやうひと肩掛かたかけふかひきあげて人目ひとめゆるは頭巾づきんいろ肩掛かたかけ派手模樣はでもやうのみ、くるま如法によほふぐるまなり母衣ほろゆきふせぐにらねば、洋傘かうもりから前面ぜんめんおほひてくこと幾町いくちやう
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
しかし子供ごころに、オッペケペッポの川上はさほどえらい人だと思っていなかった。それよりも芳町の奴の方がはるかに——芸妓でもかかぐるまのある——傑い女だと思っていた。
マダム貞奴 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
大きな野犬やけん運ぱん用のはこぐるまをつくり、それを馬にひかせて、飼主のわからない犬を見つけると、片はしからつかまえてつんでいき、きまった撲殺場ぼくさつじょうへもってって殺しました。
やどなし犬 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
鞍山站あんざんてんまで酒を運んだちゃんぐるまぬしを縛り上げて、道で拾った針金をふところじ込んで、軍用電信を切った嫌疑者にして、正直な憲兵をだまして引き渡してしまうなんと云う為組しくみ
鼠坂 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「あら、着物きものなんかいらなくつてよ。——さうね、あたしの今一番しいのは上とうの乳母ぐるまよ。ほらキルビイさんのおたくにあるやうな。あたしれい子をあんなのにせてやりたいわ。」
(旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
野のかどに背を後ろに日和ひなたぼっこをして、ブンブン糸繰いとくぐるまをくっている猫背の婆さんもあった。名代なだいの角の饂飩屋うどんやには二三人客が腰をかけて、そばの大釜からは湯気が白く立っていた。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
主のかかぐるまじゃあるめえし、ふむ、よけいなおせっかいよ、なあ爺さん、向こうから謂わねえたって、この寒いのに股引きはこっちで穿きてえや、そこがめいめいの内証で穿けねえから
夜行巡査 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
明させ給へかつくすりのみたく何卒湯一ツ賜れと云ども番頭は盜賊たうぞくならんとうたがひて戸を締切しめきり一向に答もせざればそう詮方せんかたなく此表にだいぐるまのありしを幸ひ其蔭そのかげ風呂敷ふろしきを敷て其上に頭陀袋づだぶくろよりくすり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
それなのに、英世少年の母が夜業に使ったという貧しいつむぐるまだの、焼けコゲのある炉べりの板の間だの、コオロギの啼きそうな荒壁は、教師と少年少女たちのまえに、何かを、無言に語っている。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ととが曳く柴積しばつぐるま子が乗りてその頬かぶり寒がり行きぬ
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
其後白と黒との間に如何どんな黙契が出来たのか、白はあまり黒の来遊らいゆうを拒まなくなった。白をもらって来てくれた大工が、牛乳ぎゅうにゅうぐるまの空箱を白の寝床に買うて来てくれた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
ぐるまうえ馬子まごって、うたなどうたい、はまほうかえる、ガラ、ガラという、わだちおとが、だんだんかすかになると、ぼんやりって、いているかれみみもとへ、かぜ
風はささやく (新字新仮名) / 小川未明(著)
わたしがまだ稽古本けいこぼんのはいったつばくろぐちを抱えて、大門通おおもんどおり住吉町すみよしちょうまで歩いてかよっていたころ、芳町にはかかぐるまのある芸妓があるといってみんなが驚いているのを聞いた。
マダム貞奴 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
B 大隈侯おほくまこうのエライのに異存いぞんはないが、郵便局いうびんきよくからだいぐるますこしをかしいなア。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
なにも、やぶがさぐるまほねらせてはこばせずとことよ。平時いつもならかくぢや、おまけ案山子かゝしどもがこゑいて、おむかひ、と世界せかいなら、第一だいゝち前様めえさまざうかついでほふはあるめえ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
始終とほしごたごたしてらち御座ござりませぬといふ、めうことのとおもひしが掃除さうぢのすみて日暮ひぐれれがたに引移ひきうつきたりしは、合乘あひのりのほろかけぐるま姿すがたをつゝみて、ひらきたるもん眞直まつすぐりて玄關げんくわんにおろしければ
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「しかし、乳母ぐるまなんておやす用さ。」
(旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
「貧乏ぐるま
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なつ晩方ばんがたのこと、いなかまちを、うまにからぐるまをひかせて、ほおかむりをした馬子まごたちが、それへって、たばこをすったり、うたをうたったりしながら、いくだいとなくつづきました。
風七題 (新字新仮名) / 小川未明(著)
三千四百五十六まん七千八百九十九まいしくは二千三百四十五まん六千七百八十九まい選擧權要求書せんきよけんえうきうしよが、毎日々々まいにち/\だいぐるま衆議院しうぎゐんはこびこまれるとしたら、如何いか無神經むしんけいでもたまるまいぢやないか。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
屹度きつとくるま今少いますこしの御辛防ごしんばうかるゝこほりつくやうなりうれしやとちかづいてればさてもやぶぐるまモシとこゑはかけしが後退あとじさりするおくりの女中ぢよちゆうソツとおたか袖引そでひきてもうすこまゐりませうあまりといへばとあと小聲こごゑなりをりしもふりしきるゆきにおたか洋傘かうもり
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)