)” の例文
旧字:
戦争後ある露西亜ロシアの士官がこの陳列所一覧のためわざわざ旅順まで来た事がある。その時彼はこの靴を一目て非常に驚いたそうだ。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
また大きな細長い魚や大烏賊を誤りたか、過去世に盛えた大爬虫プレシオサウルスの残党が今も遠洋に潜み居るだろうと論じ居る。
この先鋒部隊や先発の小荷駄隊は摂津口せっつぐちにぽつぽつ現われても、秀吉自身が到着するのはなお数日を要するものとていたのである。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ばけ物はもちろん至って古い世相の一つではあるが、それをようとする態度だけがこの頃やっとのことで新しくなり始めたのである。
おばけの声 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
今の妻の家の前を、彼女が窓からていることを意識しながら、口笛を吹き鳴らし、綱渡りの格好で軌条の上を渡り歩いたころを。
汽笛 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
しかしてわれ今再びこの河畔かはんに立ってその泉流のむせぶをき、その危厳のそびゆるを仰ぎ、その蒼天そうてんの地にれて静かなるをるなり。
小春 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
きん黝朱うるみの羽根の色をしたとびの子が、ちょうどこのむかいのかど棒杭ぼうぐいとまっていたのをた七、八年前のことをおもい出したのである。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
細心をきわめた手口をてもわかるように、彼はじつに組織的な時としてははるかに普通人を凌駕りょうがする明徹な頭脳の所有者だった。
浴槽の花嫁 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
そのるところの区々であるだけ、それだけ捉まえどころが少ないものと見えましたが、さすがに則重と書いたものが六枚ありました。
斎藤竹堂が論じた如く、秀郷の事跡をれば朝敵を対治したので立派であるが、其の心術を考へればにくむべきところのあるものである。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
日本菓子はあんと砂糖の味ばかりで形だけを変えたのが多うございますから西洋人はる菓子だ、口で食べる菓子でないと申します。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
吾人、仰いでして察するときは、自然に一種高遠玄妙の感想を喚起す。これすなわち、理想の大怪物の光景に感接したるときなり。
妖怪学講義:02 緒言 (新字新仮名) / 井上円了(著)
何かその中の話を問うて見るのに、ただに文学としてていないばかりではない、たのしんで読んでいるという事さえないようである。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
と、私は、その三野村が女をる眼にかけては自分とまさしく一致していたことを思うにつけても、なるほどとうなずけるのであった。
霜凍る宵 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
逸作の働いた紹介の方法も効果があったには違いないが、巴里の最新画派の作品を原画でるということは、人々には稀有けうの機会だった。
母子叙情 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
自分はナシヨナル博物館で伊太利イタリイ西班牙スペインの昔の諸大家の絵を、テエト博物館で英国近代の名家の絵を観た事に幸ひを感じた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
外套から、やがて両手を、片手でその手首を、さもいたわりそうに取って、据えると、扇子持つ手の甲をじっと重たげにて、俯向うつむいて言った。
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
まあ致方いたしかたがございませぬ、せいぜいをつけて、わたくし実地じっちたまま、かんじたままをそっくり申上もうしあげることにいたしましょう。
我また夜の異象の中にてありけるに人の子のごとき者、雲に乗り来たり、日の老いたる者のもとに到りたればすなわちその前に導きけるに
何の変哲へんてつもない、たところ普通の、如何にも老舗しにせの寮らしい、小梅や寺島村にはざらにある構えの一つに過ぎなかった。
予等よらは芸術の士なるが故に、如実によじつに万象をざるべからず。少くとも万人の眼光を借らず、予等の眼光を以て見ざる可らず。
続野人生計事 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
ところがその刑罰の有様が如何にも真にせまって、る者をして悚然しょうぜんたらしめたので、その後ち禁を犯す者が跡を絶つに至ったということである。
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
唯うっとりと、塔のもとから近々と仰ぐ、二上山の山肌に、うつの目からは見えぬ姿をおもようとして居るのであろう。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
右に金堂の大を、左に塔の高きを仰ぎ、更にその間から中央に講堂の広きを望むことが出来、得も云われぬ風情ふぜいがある。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
しそれをとがめればかえっしかり飛ばすと云うから、誰も怖がって咎める者はない。町の者は金をはらって行くに、士族は忍姿しのびすがたで却て威張いばっただ這入はいっる。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
今余を以てこれをるに、本邦政治の改良すべきもの、法律の前進すべきもの、一にして足らず、ほとんど皆なこれを更始すべきが如し(大喝采)。
祝東京専門学校之開校 (新字新仮名) / 小野梓(著)
神秘な問題はこれを外部からるのみで、それを推究することなく、それを攪拌かくはんすることなく、それをもっておのれの精神をわずらわすことなく
私の方では別段にどうせねばならんという必要はないからお前の方でこの辺に善いラマがあるだろうからそこへ行ってて貰って決定するがよい。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
この観燈と漢時代に一の神を祭るに火をつらねて祭ったと云う遺風から、そのは家ごとにともしびを掲げたので、それをようとする人が雑沓ざっとうした。
牡丹灯籠 牡丹灯記 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
われは当初日本の風景及び社会に対してもつとめてピエール・ロッチの如き放浪詩人の心を以てこれをる事を得たりしが、気候、風土、衣服、食品
矢立のちび筆 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
その関するところるべし。近ごろ聞く、清国、生徒を他邦に学ばしむるに、別に自国言語、文章の先生を附すという。その心を用うる、思うべし。
平仮名の説 (新字新仮名) / 清水卯三郎(著)
されば暖国だんこくの人のごとく初雪を吟詠ぎんえい遊興いうきようのたのしみはゆめにもしらず、今年ことしも又此雪中ゆきのなかる事かと雪をかなしむ辺郷へんきやう寒国かんこくうまれたる不幸といふべし。
人の顔を見る時には、まぶしそうに細い眇目すがめをして見るのであるが、じっと注意してると、すでに眼の黒玉はどっちかに片よっているのであった。
(新字新仮名) / 島木健作(著)
大伴家持おおとものやかもち霍公鳥ほととぎすの歌であるが、「夏山の木末のしじ」は作者のたところであろうが、前出の、「山の際の遠きこぬれ」の方がうまいようにもおもう。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
ある時一明人、四郎の風貌をて此子は市井に埋まる者でない。必ず天下の大事を為すであろう、と語ったと云う。
島原の乱 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
はじめてその事実のあやまりを摘発てきはつして世に発表したのは私であって、記事の題は、「実物上から潮来出島いたこでじま俚謡りよう
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
経世家はしからず、時勢を、人情を察し、如何なる場合においても、調子はずれの事を為さず。その運動予算の外に出でず。その予算成敗せいばいの外に出でず。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
理性なくして一片の感情にはしる青春の人々は、くれぐれもしょうて、いましむる所あれかし、と願うもまたはしたなしや。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
その噂を聴いた下村観山氏が、ある時伝手つてを求めて前田侯のやしきせて貰ひに出掛けた。無論の参考にする為で。
もし事情がゆるすならば、もっと静かにひとりでこのめずらしい国をてゆきたいし、どこか山登りでもしてその自然にも親しみたいとも言われました。
二人は新宿へ出て、何の目的もないので、暫く歩いて、武蔵野館でキュウリイ夫人と云ふ映画をにはいつた。何年ぶりかで、西洋映画を見る気がした。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
本当のものを目の前に出されたような気がる人にも感じられて「これはどうも」といって感服されました。
探求者というより、陶酔者と言ったほうがいいかもしれない。彼らの勤めるのは、ただ、自然をて、しみじみとその美しい調和の中に透過することである。
悟浄出世 (新字新仮名) / 中島敦(著)
そも/\われは寄辺よるべない浮浪学生ふらうがくしやう御主おんあるじ御名みなによりて、もり大路おほぢに、日々にちにちかてある難渋なんじふ学徒がくとである。おのれいまかたじけなくもたふと光景けしき幼児をさなご言葉ことばいた。
(松本〔文三郎〕博士著『宗教と哲学』。)これに由ってこれれば、明治十二年の廃藩置県は、微弱となっていた沖縄人を改造するの好時期であったのである。
人をして獣類の所業をなさしめ、これをて楽しむ者もまた人類の所業にかなわず。いったん禁止せばその徒の狼狽ろうばいもあらん。ぜんをもって廃業せしめば可なり。
国楽を振興すべきの説 (新字新仮名) / 神田孝平(著)
十一時から三菱銀行上海支店の竹内良男の説明にて、フランス租界八仙橋の黄金大戯場に支那芝居をる。
五百五十句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
これに依ってこれをれば、支棒つっかいぼうの落ちたる音と、呉一郎の覚醒との間に必然的の因果関係を認むるは、正確なる推理の進行上すこぶる危険なる所業にして、むし
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
極光は今まで世界の人が天地間壮絶の観物みものと思っていたがこの夜の光に比べては、殆どるにも足らぬ。
暗黒星 (新字新仮名) / シモン・ニューコム(著)
文句の面白おもしろさもあって、踊るひと、るひと共に、大笑い、天地も、ために笑った、と言いたいのですが、これは白光浄土じょうどとも呼びたいくらい、荘厳そうごんな月夜でした。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)