真実しんじつ)” の例文
旧字:眞實
「そんなうそは、いったってさしつかえない。小説しょうせつでも、文章ぶんしょうでも、みんな、うそのことを真実しんじつらしくいてあるのじゃないか……。」
その日から正直になった話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
勝氏は真実しんじつの攘夷論者に非ざるべしといえども、当時とうじいきおいむを得ずして攘夷論をよそおいたるものならん。その事情じじょうもって知るべし。
しかしりに貴方あなたところ真実しんじつとして、わたくし警察けいさつからまわされたもので、なに貴方あなたことばおさえようとしているものと仮定かていしましょう。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「わたしはユッセルへ、おまえの話の真偽しんぎたしかめさせにやる」とかれは言った。「幸いそれが真実しんじつなら、あしたは放免してやる」
博士はくしは物わかりのいい人だったし、頭の慟きのするどい人だったので、姿すがたの見えないほうたいのばけものの言葉ことば真実しんじつのあることを見ぬき
此言葉をいた時、三四郎は真実しんじつに熊本を出た様な心持ちがした。同時に熊本に居た時の自分は非常に卑怯であつたと悟つた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
あの超電撃的地球儀的広汎こうはん大作戦が、真実しんじつに日本軍の手によって行われたその恐るべき大現実に、爆風的圧倒をおぼえない者は一人もなかった。
林太郎が私に真実しんじつを語らなかったら、私にはいつまでも常夜燈じょうやとうの下のかくされた花の思いは楽しいものであったかどうか、それはわからない。
花をうめる (新字新仮名) / 新美南吉(著)
真実しんじつ事実じじつ実際じっさい、まったく、断然だんぜん俄然がぜん……ナニ、そんなに力に入れなくてもよろしい、このお蓮様、ほんとに伊賀の暴れン坊にまいっているんだ。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
ときは、警察けいさつ飛込とびこんでもみたさうですけれど、大久保おほくぼさんのおつしやることが、やはり真実しんじつらしくきこえたものでせうか、そのときもどされてしまひました。
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
そうでなかったら、音楽おんがくというのはなんだ? 神様に対する不信ふしんだ、神様をけがすことだ、正直しょうじき真実しんじつなことをかたるために、われわれに美しい歌を下さった神様をね。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
岩田屋いはたや旦那だんなれられてはまつて、まつさんと喧嘩けんくわアしてかへつてた時になんとおひだえ、あゝ口惜くやしい、真実しんじつ兄弟きやうだいにまで置去おきざりにされるのもおれが悪いばかりだ
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
たび疲労つかれらつしやらうか、なんなら、今夜こんやわし小家こややすんで、明日あすばんにも、とふたが、それにはおよばぬ……しや、それ真実しんじつなら、片時へんしはや苦艱くかんすくふてしんぜたい。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
こうして学者は国へかえると、この世の中にある真実しんじつなこと、いこと、美しいことについて本を書きました。さてその後、日が立って、月がたって、いくねんかすぎました。
たしかにけどってきた僧形の貴人きじんにそういないとはにらんでおりますが、なんせい、野武士のぶし浪人ろうにんどもばかりの天ヶ丘、真実しんじつの勝頼公の面態めんていを見知るものがないのでござった
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
刑事けいじは、真実しんじつ残念ざんねんそうに、ためいきをしているのであつた。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
真実しんじつあいと戦闘とに力一ぱい生きる
南洋館 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
鳥が鳴いてる……冬もはじめて真実しんじつ
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
といふゆめ逆夢さかゆめ馬車ばしやにでもかれはせぬかと大笑おほわらひすればうつくしきまゆひそめてになることおつしやるよ今日けふ日曜にちえう最早もう何処どこへもおあそばすなといま教育けういくうけた似合にあはしからぬことば真実しんじつ大事だいじおもへばなり此方こなたへだてなければ彼方あちら遠慮ゑんりよもなくくれたけのよのうきとこと二人ふたりなかには
闇桜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
しばらくすると、それが、みんな人間にんげんになってえるのでした。寂然じゃくぜんとして、ものこそいわないが、永遠えいえん真実しんじつ正義せいぎとをもとめている。
少女と老兵士 (新字新仮名) / 小川未明(著)
わたしも坑夫こうふが二十四日もあなの中にじこめられた話は聞いたが、でもそれは「話」であるが、このほうは真実しんじつであった。
末世澆季まつせぎょうきの今日では、私もこの嘘を真実しんじつと思い、あなた方もこの嘘を真実と思って、誰も怪しむものもなく、疑うものもなく、公々然はばかるところなく
文芸の哲学的基礎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
真実しんじつにそう思いなさるならば、わたしの力でそうしてあげられないこともない。」若者のおもてには歓喜かんきの色がかがやきはじめた。老人はしゃべりつづけた。
おしどり (新字新仮名) / 新美南吉(著)
真実しんじつ外国干渉のうれいあるを恐れてかかる処置しょちに及びたりとすれば、ひとみずから架空かくう想像そうぞうたくましうしてこれがために無益むえき挙動きょどうを演じたるものというの外なけれども
と声を惜しまず泣伏しますから、丈助は腹の中でしめたと思いましたが、表面うわべ真実しんじつそうに
真実しんじつ幸福こうふくじつ一人ひとりでなければべからざるものであると、つくづくおもうた。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「いや、洪水の方がひどい。ノアの洪水だよ、バイブルは真実しんじつを語っている」
諜報中継局 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「意外なこともあるものじゃ。真実しんじつ勝頼公かつよりこうが世におわすとすれば、武田たけだのご武運もつきませぬところ、若君のよろこびはいうもおろか、われわれにとっても、かようなうれしいことはないが……」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし、真実しんじつのない批評ひひょうとか、よりどころのないうわさなどというものの、無価値むかちのことが、じきわかるときがきました。
ひすいの玉 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それは真実しんじつではあったが、その真実はずっとうそのほうに近かった。わたしの一座はたったカピ一人だけだった。
たといこれを拒絶きょぜつするも真実しんじつ国と国との開戦かいせんいたらざるは請合うけあいなりとてしきりに拒絶論きょぜつろんとなえたれども、幕府の当局者は彼の権幕けんまく恐怖きょうふしてただち償金しょうきんはらわたしたり。
「わたしもそのお方にお願いしておしどりにしていただきます。」と恋人こいびとは、あたたかい手を若者の手の上にかさねていった。「それは真実しんじつの心か。」と若者は念をおした。
おしどり (新字新仮名) / 新美南吉(著)
「おお!」ふるえついて——「それは、真実しんじつでございますか」
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これが真実しんじつ幸福こうふくです。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
子供こどもは、ははに、真実しんじつにうたってくれとうったえるのでした。おどろき、をとりなおした母親ははおや
雲と子守歌 (新字新仮名) / 小川未明(著)
わたしはかれの前に真実しんじつをかくす理由はなかったが、しかしかれの大きなぎょろぎょろした目や、くぼんだほおや、血ののないくちびるがどんなにおそろしく見えるかということを
「いったい、それはなんであろうか。」と、かれは、かんがえました。そして、ついに、さとりました。生命せいめいというものは、はかないが、真実しんじつは、なんらかのかたち永久えいきゅうのこるということでした。
少女と老兵士 (新字新仮名) / 小川未明(著)
まだなかのほこりにけがされぬ若者わかもの感覚かんかくは、何人ひとびとこころにもないうそをいったり、あるいは、かざらず真実しんじつかたるか、また謙遜けんそんであって、信用しんようするにりるか、どうかということを、わけ
心の芽 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そういった、小西こにし顔色かおいろにも、言葉ことばにも、真実しんじつがあらわれていました。
眼鏡 (新字新仮名) / 小川未明(著)