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めさき
ふりがな文庫
“
目前
(
めさき
)” の例文
空の晴れた日には、
男体山
(
なんたいさん
)
などの姿が窓からはっきり眺められた。社の森、日光の町まで続いた杉並木なども、
目前
(
めさき
)
に黝んで見えた。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
とさすがに手を控えて、例の衣兜へ突込んだが、お蔦の
目前
(
めさき
)
を、(子を
捉
(
と
)
ろ、子捉ろ。)の体で、靴足袋で、どたばた、どたばた。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
多「番頭さんも
目前
(
めさき
)
べいの勘定で心の勘定がねいから、何が
幾許
(
いくら
)
入
(
い
)
るか知りやアしねい、店を預かる番頭さんだから
確
(
しっ
)
かりしなんしよ」
塩原多助一代記
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
……戸野の小父さまも同じお心で、父上と行動を一つにされ、父上ともども毎日の奔走! ……それを血気の兄上たちは、
目前
(
めさき
)
のわずかな利に迷い……
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
浩の
目前
(
めさき
)
には、高瀬の一部屋の様子がフト現われた。平和な部屋、花、額、たくさんの笑顔、軽い足音。皆が嬉しそうに喋り、微笑みいつくしみ合っている……。
日は輝けり
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
▼ もっと見る
しかも犯人の最期の有様を考えると、あの冷静に冴えた眼付が私の
目前
(
めさき
)
にちらつき、あの落ちつき払った声が聞えます。誰かが私に向ってこんなことを云いました。
自責
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
折から
紙門
(
ふすま
)
を開きけるを
弗
(
ふ
)
と貫一の
睼
(
みむか
)
ふる
目前
(
めさき
)
に、二人の紳士は
徐々
(
しづしづ
)
と
入来
(
いりきた
)
りぬ。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
「そう
目前
(
めさき
)
が利かないから、お茶を
挽
(
ひ
)
くのよ。当節は女学生でも、今頃は内には居ない。ちっと日比谷へでも出かけるが
可
(
い
)
い。」
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
お銀の手で、青が出来かかった時、じらしていた友人が、
牡丹
(
ぼたん
)
を一枚すんなりしたその
掌
(
てのひら
)
に載せて、
剽軽
(
ひょうきん
)
な
手容
(
てつき
)
でちらりとお銀の
目前
(
めさき
)
へ突きつけて見せた。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
平生は
芋野老
(
ところ
)
などを掘りまして、乏しく
生活
(
くら
)
しておりますにも似ず、
目前
(
めさき
)
の利害などには迷わされず、義を先にし節を
尚
(
たっと
)
び、浮薄のところとてはございません。
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
その声は急に
噪
(
さわがし
)
く、
相争
(
あひあらそ
)
ふ
気勢
(
けはひ
)
さへして、はたはたと
紙門
(
ふすま
)
を
犇
(
ひしめ
)
かすは、
愈
(
いよい
)
よ
怪
(
あや
)
しと
夜着
(
よぎ
)
排却
(
はねの
)
けて起ち行かんとする時、ばつさり紙門の倒るると
斉
(
ひとし
)
く、二人の女の姿は貫一が
目前
(
めさき
)
に
転
(
まろ
)
び
出
(
い
)
でぬ。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
何だって、人を試みるようなことをして困らせるんだい、見えない
目前
(
めさき
)
へ蛍なんか突出して、綺麗だ、動く、見ろ、とは何だ。
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
次第に好奇心の薄らいで来た笹村は、
憑
(
つ
)
いていたものが落ちたように、どうかすると女から
醒
(
さ
)
めることが時々あった。そんな時の笹村の心は、幻影が
目前
(
めさき
)
に消えたようで寂しかった。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
真蒼
(
まっさお
)
な
水底
(
みなそこ
)
へ、黒く
透
(
す
)
いて、底は知れず、
目前
(
めさき
)
へ
押被
(
おっかぶ
)
さった
大巌
(
おおいわ
)
の
肚
(
はら
)
へ、ぴたりと船が
吸寄
(
すいよ
)
せられた。岸は
可恐
(
おそろし
)
く水は深い。
薬草取
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
その声が、
直
(
す
)
ぐ
耳近
(
みみぢか
)
に聞こえたが、つい
目前
(
めさき
)
の
樹
(
き
)
の枝や、
茄子畑
(
なすばたけ
)
の垣根にした
藤豆
(
ふじまめ
)
の
葉蔭
(
はかげ
)
ではなく、
歩行
(
ある
)
く
足許
(
あしもと
)
の低い
処
(
ところ
)
。
海の使者
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
……
大
(
おおき
)
な
雨笠
(
あまがさ
)
を、ずぼりとした
合羽
(
かっぱ
)
着た肩の、両方かくれるばかり深く
被
(
かぶ
)
つて、
後向
(
うしろむ
)
きにしよんぼりと
濡
(
ぬ
)
れたやうに
目前
(
めさき
)
を行く。……とき/″\
雨ばけ
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
聞
(
き
)
きますると、
私
(
われら
)
に、
件
(
くだん
)
の
影
(
かげ
)
を
捉
(
と
)
る
魔
(
ま
)
ものの
話
(
はなし
)
を
聞
(
き
)
いてからは、
瞬
(
またゝ
)
く
間
(
ま
)
さへ、
瞳
(
ひとみ
)
に
着
(
つ
)
いて、
我
(
われ
)
と
我
(
わ
)
が
影
(
かげ
)
が
目前
(
めさき
)
を
離
(
はな
)
れぬ。
三人の盲の話
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
とにかく、中味が心中で、口絵の光氏とたそがれが
目前
(
めさき
)
にある、ここへ亭主に出られては、しょげるより、
悲
(
かなし
)
むより、
周章
(
あわ
)
て
狼狽
(
うろた
)
えずにいられまい。
薄紅梅
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
それに、
藁屋
(
わらや
)
や垣根の多くが取払われたせいか、峠の
裾
(
すそ
)
が、ずらりと引いて、風にひだ打つ道の
高低
(
たかひく
)
、
畝々
(
うねうね
)
と畝った処が、心覚えより早や
目前
(
めさき
)
に近い。
星女郎
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
その時、角燈をぱっと見せると、その手で片手の手袋を取って、
目前
(
めさき
)
へ、ずい、と
掌
(
てのひら
)
。
目潰
(
めつぶし
)
もくわせる
構
(
かまえ
)
。で、葛木という男は、ハッと一足さがった。
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
娘は、別に
異
(
かわ
)
ったこともありませんが、
容色
(
きりょう
)
は三人の
中
(
うち
)
で一番
佳
(
よ
)
かった——そう思うと、今でも
目前
(
めさき
)
に見えますが。
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
鯎
(
うぐい
)
と
蓴菜
(
じゅんさい
)
の酢味噌。
胡桃
(
くるみ
)
と、
飴煮
(
あめに
)
の
鮴
(
ごり
)
の鉢、鮴とせん
牛蒡
(
ごぼう
)
の椀なんど、膳を前にした光景が
目前
(
めさき
)
にある。……
古狢
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
吻
(
ほっ
)
と吹く酒の香を、横
状
(
ざま
)
に
反
(
そ
)
らしたのは、
目前
(
めさき
)
に
歴々
(
ありあり
)
とするお京の
向合
(
むきあ
)
った面影に、心遣いをしたのである。
薄紅梅
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
大方人の無い、こんな場所へ来ると、聞いた話が実際の姿になって、
目前
(
めさき
)
へ
幻影
(
まぼろし
)
に出るものかも知れぬ。
星女郎
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
寝台
(
ねだい
)
と椅子との狭い間、
目前
(
めさき
)
にその燃ゆるような帯が輝いているので、
辷
(
すべ
)
り下りようとする、それもならず。
蒼空
(
あおぞら
)
の星を仰ぐがごとく、お妙の顔を見上げながら
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「お泊りだ、お一人さん——旅籠は
鐚
(
びた
)
でお
定
(
きま
)
り、そりゃ。」と指二本、
出女
(
でおんな
)
の
目前
(
めさき
)
へぬいと出す。
浮舟
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
目前
(
めさき
)
へ
路
(
みち
)
がついたように、座敷をよぎる
留南奇
(
とめぎ
)
の
薫
(
かおり
)
、ほの
床
(
ゆか
)
しく身に染むと、
彼方
(
かなた
)
も思う男の
人香
(
ひとか
)
に寄る
蝶
(
ちょう
)
、処を
違
(
たが
)
えず二枚の襖を、左の外、立花が立った前に近づき
伊勢之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
とそれならぬ、
姉様
(
あねさん
)
が、山賊の手に
松葉燻
(
まつばいぶ
)
しの、乱るる、
揺
(
ゆら
)
めく、
黒髪
(
くろかみ
)
までが
目前
(
めさき
)
にちらつく。
国貞えがく
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
あのその
羅
(
うすもの
)
を透くと聞きましただけでも美しさが思い
遣
(
や
)
られる。寝てから膚を見たは
慄然
(
ぞっ
)
とする……もう
目前
(
めさき
)
へちらつく、
独
(
ひとり
)
の時なら
鐸
(
すず
)
を振って
怨敵退散
(
おんてきたいさん
)
と念ずる処じゃ。
星女郎
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
翌晩
(
あくるばん
)
、朝顔を踊った、お前さんを見たんだよ。
目前
(
めさき
)
を去らない
娘
(
むすめ
)
さんにそっくりじゃないか。
縁結び
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ハッと顔を上げると、坊主は既に敷居を越えて、
目前
(
めさき
)
の土間に、両膝を折っていた。
伯爵の釵
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ハツと顔を上げると、坊主は既に敷居を越えて、
目前
(
めさき
)
の
土間
(
どま
)
に、
両膝
(
りょうひざ
)
を折つて居た。
伯爵の釵
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
手繰りながら、
斜
(
ななめ
)
に、寝転んだ上へ引き/\、
頭
(
こうべ
)
をめぐらして、
此方
(
こなた
)
へ
寝返
(
ねがえり
)
を打つと、糸は左の手首から胸へかゝつて、宙に
中
(
なか
)
だるみ
為
(
し
)
て、
目前
(
めさき
)
へ来たが、
最
(
も
)
う眠いから
何
(
なん
)
の色とも知らず。
蠅を憎む記
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
勿論、女中などに似ようはないと、夢か、
現
(
うつつ
)
か、
朦朧
(
もうろう
)
と認めた顔の
容
(
かたち
)
が、どうやらこう、
目前
(
めさき
)
に、やっぱりその
俯向
(
うつむ
)
き加減に、ちらつく。従って、今声を出した、奥さんは誰だか知れるか。
沼夫人
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
この姿は、
葎
(
むぐら
)
を分けて忍び寄ったはじめから、
目前
(
めさき
)
に
朦朧
(
もうろう
)
と映ったのであったが、立って丈長き葉に添うようでもあり、寝て根を
潜
(
くぐ
)
るようでもあるし、浮き上って
葉尖
(
はさき
)
を渡るようでもあった。
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
あでやかな顔は
目前
(
めさき
)
に
歴々
(
ありあり
)
と見えて、ニッと笑う
涼
(
すずし
)
い目の、うるんだ
露
(
つゆ
)
も手に取るばかり、手を取ろうする、と何にもない。
掌
(
たなそこ
)
に
障
(
さわ
)
ったのは寒い
旭
(
あさひ
)
の光線で、夜はほのぼのと明けたのであった。
木精(三尺角拾遺)
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と一言掛けて、
発奮
(
はず
)
むばかりに身を
飜
(
ひるがえ
)
すと、そこへ、ズンと来た電車が一
輛
(
だい
)
。
目前
(
めさき
)
へカラカラと
打
(
ぶ
)
つかりそうなのに、あとじさりに
圧
(
お
)
され、圧され、
煽
(
あお
)
られ気味に
蹌踉々々
(
よろよろ
)
となった途端である。
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
あでやかな
顏
(
かほ
)
は
目前
(
めさき
)
に
歴々
(
あり/\
)
と
見
(
み
)
えて、ニツと
笑
(
わら
)
ふ
涼
(
すゞし
)
い
目
(
め
)
の、うるんだ
露
(
つゆ
)
も
手
(
て
)
に
取
(
と
)
るばかり、
手
(
て
)
を
取
(
と
)
らうする、と
何
(
なん
)
にもない。
掌
(
たなそこ
)
に
障
(
さは
)
つたのは
寒
(
さむ
)
い
旭
(
あさひ
)
の
光線
(
くわうせん
)
で、
夜
(
よ
)
はほの/″\と
明
(
あ
)
けたのであつた。
三尺角拾遺:(木精)
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
其
(
そ
)
のまゝ、六
疊
(
でふ
)
の
眞中
(
まんなか
)
の
卓子臺
(
ちやぶだい
)
の
前
(
まへ
)
に、
摚
(
どう
)
と
坐
(
すわ
)
ると、
早
(
は
)
や
目前
(
めさき
)
にちらつく、
濃
(
こ
)
き
薄
(
うす
)
き、
染色
(
そめいろ
)
の
葉
(
は
)
に
醉
(
よ
)
へるが
如
(
ごと
)
く、
額
(
ひたひ
)
を
壓
(
おさ
)
へて、ぐつたりと
成
(
な
)
つて、二
度目
(
どめ
)
に
火鉢
(
ひばち
)
を
持
(
も
)
つて
來
(
き
)
たのを、
誰
(
たれ
)
とも
知
(
し
)
らず
魔法罎
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
と出家は
法衣
(
ころも
)
でずいと立って、
廂
(
ひさし
)
から指を出して、
御堂
(
みどう
)
の山を左の
方
(
かた
)
へぐいと指した。立ち方の
唐突
(
だしぬけ
)
なのと、急なのと、
目前
(
めさき
)
を
塞
(
ふさ
)
いだ
墨染
(
すみぞめ
)
に、
一天
(
いってん
)
する
墨
(
すみ
)
を流すかと、
袖
(
そで
)
は障子を包んだのである。
春昼
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
袖の香も
目前
(
めさき
)
に
漾
(
ただよ
)
う、さしむかいに、余り間近なので、その裏恥かしげに、手も足も
緊
(
し
)
め悩まされたような風情が、さながら、我がためにのみ、そうするのであるように見て取られて、私はしばらく
革鞄の怪
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
“目前”の意味
《名詞》
目 前(もくぜん、めさき)
(めさき)参照。
(もくぜん)位置的に近接する前。目の方向。前方。
(もくぜん)時間的に近接する前。近い時期。すぐ近く。
(出典:Wiktionary)
目
常用漢字
小1
部首:⽬
5画
前
常用漢字
小2
部首:⼑
9画
“目”で始まる語句
目
目的
目出度
目標
目貫
目覚
目論見
目下
目論
目付