しひ)” の例文
と云ふ決心が出来れば、或は二つの情願が、死の刹那に融合してしまふ様にもならうか、之とて今の亨一にしひることが出来なかつた。
計画 (新字旧仮名) / 平出修(著)
ラルフ・コンノルのスカイ・パイロツトのやうなものまで積み上げて、この窒素の多い空気の中から、しひても酸性の呼吸をつかうとした。
亡びゆく森 (新字旧仮名) / 小島烏水(著)
さてうべなひし上にて、そのし難きに心づきても、しひて当時の心虚なりしを掩ひ隠し、耐忍してこれを実行すること屡々なり。
舞姫 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
景色けしきおほきいが變化へんくわとぼしいからはじめてのひとならかく自分じぶんすで幾度いくたび此海このうみこの棧道さんだうれてるからしひながめたくもない。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
止められ劔道けんだう御指南ごしなん下され候樣にとしひて申けるゆゑ半四郎もよんどころなく然らば四十九日の立迄は滯留たいりうせんとて此所に止まり養父の門弟に稽古けいこ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
大喜おほよろこびで、其禮そのれいに、若干そこばく銀貨ぎんくわあたへやうとしたが、如何どうしてもらぬ。しひらしめたら、今度こんど重箱ぢうばこ味噌漬みそづけれてつてれた。
あの長尻ながちりだから、さあ又還らない、さうして何か所思おもはくでも有つたんでせうよ、何だか知らないけれど、その晩に限つて無闇むやみとお酒をしひるんでさ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
人伝ひとづてにては何分にも靴を隔ててかゆきを掻くのうらみに堪へぬからです、今日こんにちいたつては、しひて貴嬢の御承諾を得たいと云ふのが私の希望では御座いませぬ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
返來へんじをさへうちとけてひしことはなく、しひへばしさうな景色けしきるおたみきのどくさかぎりなく、何歳いつまでも嬰兒ねねさまでいたしかたが御座ござりませぬ
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ほりにつきたる時は漁師れふしもこれをとらず、たま/\るものあれどもしひてはせぬ事也。女魚めなさへとらざれば男魚をなは其所をさらず。さけの河にさかのぼるは子をうまんとて也。
若ししひて女性を男子らしくし、女性にあるまじき大勇猛を起さしめ、然も一点己れの本心を着けず、売色といふことのみの大技倆を以て、一種の女豪傑を写さんとするは
今日こんにちこの日本に起つた事としては書きこなしにくい、もししひて書けば、多くの場合不自然の感を読者に起させて、その結果折角せつかくのテエマまでも犬死をさせる事になってしまふ。
澄江堂雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
読書、習字、算術等、一切すべての科学何かある、たゞ紅粉粧飾こうふんさうしよくの余暇に於て学ばむのみ。琴や、歌や、われはた虫と、鳥と、水の音と、風の声とにこれを聞く、しひて卿等を労せざるなり。
醜婦を呵す (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
見せよと人のしひていはば
草わかば (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
と云ふ決心が出來れば、或は二つの情願が、死の刹那せつな融合ゆうがふしてしまふ樣にもならうが、之とて今の亨一にしひることが出來なかつた。
計画 (旧字旧仮名) / 平出修(著)
聞如何我たねなればとて然る曲者くせもの採用さいようし後にがいをばのこさんこと武將ぶしやうの所爲に有ざれば天下の爲に彼をしてしひ僞者にせもの言詰いひつめ宜敷よろしくけいに行ふ可し是を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
と再び振り向く梅子を、力まかせに松島は引きゑつ、憤怒の色、眉宇びうに閃めきしがたちまちにしてしひおもてやはらげ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
「待て、こら!」とかつする声に、行く人の始て事有りとさとれるも多く、はや車夫の不情をとがむることばも聞ゆるに、たまりかねたる夫人はしひ其処そこに下車して返りきたりぬ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
「今の世の假名遣と云ふものは正理あるものにあらず、久しく用ゐなれぬれば、しひて破らんも好からぬ業なるべし、其のおきてにたがひたりとてあながちに病むべからず」
仮名遣意見 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
百樹もゝきいはく越遊ゑついうして小千谷をぢやに在りし時、所の人逃入にごろ村の事をかたりて、かの古墳を見玉へ案内すべしといひしかど、菅神のいみ玉ふ所へ文墨ぶんぼくの者しひてゆくべきにもあらねば
諸君しよくんがお聽下きゝくださるならまうします、しひてはまうしません。あま面白おもしろいはなしではないのですから。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
んなことかんがしたときには、仕方しかたいので——しかし、三千ねんぜん石器時代せききじだい住民じうみんは、今日こんにちまでも生存せいそんして我等われらかたる——とつたやうこと思浮おもひうかべて、しひなみだまぎらすのである。
櫻町さくらまち殿との面影おもかげいまくまでむねうかべん、良人をつと所爲しよゐのをさなきもしひかくさじ、百八ひやくはち煩惱ぼんなうおのづからえばこそ、殊更ことさらなにかはさん、かばほのほえばもえよとて
軒もる月 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
目から鼻へぬける程の悧口ものでも、やつぱり浅薄なものだと俺は思つたが、しひてそれに批評を加へることもしなかつた。
畜生道 (新字旧仮名) / 平出修(著)
其方儀重五郎切害人せつがいにんは石川安五郎とのみ心得しひうつたへに及び候條心得違ひなり之に依て嚴敷きびしくしかり置く
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
おのれもまた伯が当時の免官の理由を知れるが故に、しひて其成心を動かさんとはせず、伯が心中にて曲庇者きよくひものなりなんど思はれんは、朋友に利なく、おのれに損あればなり。
舞姫 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
百樹もゝきいはく越遊ゑついうして小千谷をぢやに在りし時、所の人逃入にごろ村の事をかたりて、かの古墳を見玉へ案内すべしといひしかど、菅神のいみ玉ふ所へ文墨ぶんぼくの者しひてゆくべきにもあらねば
梅子はしひて平然と装へり、れど制すべからざるは其顔なり、よ、其のすさまじ蒼白さうはくを、芳子は稍々やゝ予算狂へるが如く、いぶかしげに姉のかほ見つめて、居たりしが、芳子々々と
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
さてはまことまじはりを絶たんとすならんを、しばらしひて追はじと、一月あまりも打絶えたりしに、彼方あなたよりくこそ来つれ、吾がこのくるしみを語るべきは唯彼在るのみなるを、ともきたれるも
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
しひてもめずらばおかへりかきお返事へんじまちまをしますとおくいだ玄關先げんくわんさき左樣さやうならばを
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
貴方がそれほどに仰有おつしやるなら、私もしひて反對はしません。私はただ貴方の病氣を心配するんです。毎晩の樣に不眠症にかかつて、ねつけばすぐ盜汗ねあせがすると云ふぢやありませんか。
計画 (旧字旧仮名) / 平出修(著)
其頃此寺にちかき三郎丸村の農家のうか死亡しばうのものありしに、時しも冬の雪ふりつゞき雪吹ふゞきもやまざりければ、三四日ははれをまちて葬式さうしきをのばしけるにはれざりければ、しひていとなみをなし
いかなるものにてなんにするぞとへば、山にあるいらといふ草也、これを糸にしてあみきぬを作るといへり。あみきぬといふ名のめづらしければしひてたづねければ、老女らうぢよはわらひてこたへず。