家来けらい)” の例文
旧字:家來
そのかわり、家来けらいたちは子ジカのしたと目を切りとって、それをむすこを殺した証拠しょうこしなとして、伯爵はくしゃくのところへもってかえりました。
そこで信田しのだもりへ大ぜい家来けらいれて狐狩きつねがりにたのでした。けれども運悪うんわるく、一にちもりの中をまわっても一ぴき獲物えものもありません。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
部屋の中には、国王や女王や侍女じじょ達や二三の家来けらいが、ぐるりと寝台を取り囲んでいました。王子はびっくりして起き上がりました。
夢の卵 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
家来けらいにも、そればかりは、わかりませんでしたから、かたわらの人々ひとびときますと、やはり、だれもっているものがありません。
珍しい酒もり (新字新仮名) / 小川未明(著)
才八という「家来けらい」と母とが、法事らしいことも出来ないと泣いているのを、風邪でねている若い龍子はしみじみと聴いていた。
婦人と文学 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
「あ、ここが、三方ヶ原でございますか。——なるほど、広いもんだなあ。そして、おじさんたちは、やっぱり徳川とくがわさまのご家来けらいですか」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
けれども自分では大層たいそう上手じやうずなつもりで、自慢じまんをして家来けらいに見せますると、国王こくわうのいふ事だから、家来けらいが決してそむきませんで
詩好の王様と棒縛の旅人 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
最後にその蜂がぶんぶんと飛び出して、殿さまや家来けらいしたので、もうこらえてくれとあやまった、などという笑いの結末にもなっている。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
享保きょうほうの昔からあったとは、どうもおどろいたもので——この石川左近将監の家来けらい竹田某は、日本におけるウインクの元祖だ。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
桃太郎は桃のはたを片手に、日の丸の扇を打ち振り打ち振り、犬猿雉いぬさるきじの三匹に号令した。犬猿雉の三匹は仲の家来けらいではなかったかも知れない。
桃太郎 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そのふもとにやや大なる船まりいる。正面に丹左衛門尉基康たんざえもんのじょうもとやすその左右に数名の家来けらいやりをたてて侍立じりつす。その前に俊寛、康頼、成経ひざまずく。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
家来けらいランプをともして持ちきたり、置いて帰りく。)ええ、またこの燈火あかしが照すと、己の部屋のがらくた道具が見える。
ところで、すこしびっくりしたことには、ふとふりかえってみると、家来けらいに、ひとりもついてくるものがないのです。
眠る森のお姫さま (新字新仮名) / シャルル・ペロー(著)
わたくしはそこで忠実ちゅうじつ家来けらい腰元こしもと相手あいて余生よせいおくり、そしてそこでさびしくこの気息いきったのでございます。
「これが王さまのお城です。ここへはいって家来けらいにしておもらいなさい。」と言いました。ウイリイは、すぐに、王さまのうまやのかしらのところへいって
黄金鳥 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
負惜まけをしみをつたものゝ、家来けらいどもとかほ見合みあはせて、したいたも道理だうりあぶみ真中まんなかのシツペイのためにくぼんでた——とふのが講釈かうしやくぶんである。
怪力 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「正三位です。内藤正三位、花岡の家来けらい……家来、家来……って……いうんです」と正三君はしゃくりあげた。
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
小僧こぞう。さあ、来。これから、れの家来けらいだ。来う。この刀はいい刀だな。じつきをよぐかげである。」
種山ヶ原 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
いやしくも、家来けらい眷属けんぞくというものは、旦那だんなの身に、すこしでもためになることと聴きゃあ、百里をとおしとしねえのが作法——それを、どこまでも、突っ張るなんて——
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
「はい、はい、ありがとうございます。」と答え、それから勿体もったいぶって考えこみました。ずらりとならんでいる家来けらいたちは、せきばらい一つせず、六兵衛の振舞ふるまいを見ています。
とんまの六兵衛 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
「おやいけねえ。いくらしゅ家来けらいでも、あっしにばかり、つみをなするなひどうげしょう」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
この外にまだ三右衛門の妹で、小倉新田こくらしんでんの城主小笠原備後守貞謙おがさわらびんごのかみさだよし家来けらい原田某の妻になって、麻布あざぶくぼの小笠原邸にいるのがあるが、それは間に合わないで、酒井邸には来なかった。
護持院原の敵討 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
ぼっちゃん、何かご用でございますか。私は、その指輪の家来けらいでございます。ですから、その指輪をはめていらっしゃる方のおっしゃる通りに、しなければならないのでございます。」
君公くんこう賜物たまもののほうをはるかに重しとすべき議論も一通り立つから、僕とてもあながち絶対的に君公くんこう拝領物はいりょうぶつ家来けらいいのちより軽いと一般にいう訳ではないけれども、君公だとか従僕だとか
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
「森蘭丸? 森蘭丸というのは、織田信長の家来けらいでしょう。そして、明智光秀が本能寺に夜討ようちをかけたとき、槍をもって奮戦し、そして、信長と一緒に討死うちじにした小姓こしょうかなんかのことでしょう」
未来の地下戦車長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そこで、えりぬきのご家来けらいを大ぜい連れて、ずるいうそつきどものところへ行きました。ご家来の中には、前にお使いに行ったことのある、ふたりの年とった、正直者のお役人もまじっていました。
老いたる家来けらい島太夫は眼をしばたたきながら云うのであった。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
清兵衛は、毛利輝元もうりてるもと重臣じゅうしん宍戸備前守ししどびぜんのかみ家来けらいである。
三両清兵衛と名馬朝月 (新字新仮名) / 安藤盛(著)
つな家来けらいもんのすきまからのぞいてみますと、白髪しらがのおばあさんが、つえをついて、かさをもって、もんそとっていました。家来けらい
羅生門 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
北風きたかぜは、かつて、ゆき家来けらいにして、野原のはらけていた時分じぶん、一ぽんぼううえに、うぐいすがとまっていて、北風きたかぜて、さも感歎かんたんしながら
風と木 からすときつね (新字新仮名) / 小川未明(著)
卜斎ぼくさい前身ぜんしんを知らずに、かれをただの鏃鍛冶やじりかじとばかり思っていた、大久保長安おおくぼながやす家来けらいたちは、少々あッけにとられている顔つき。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
王子は、それを、家来けらいたちにめいじて、かたにかついではこばせました。ところが、まもなく、家来のひとりが、一本の木につまずきました。
その時ふと思いついて、長者ははたとひざを叩きました。また家来けらい達に言いつけて、大きな日の丸のおうぎをこしらえさせました。
雷神の珠 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
飛騨守ひだのかみ家来けらい、あわてて帰っていく玄関への廊下で、入れちがいにはいってきた堀口但馬ほりぐちたじまの臣と、れちがい
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「どうぞおともにつけて下さいまし。何よりの仕合せでございます。」と言って、すぐに家来けらいになりました。
ぶくぶく長々火の目小僧 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
「きみ、校長はこわいぜ。担任たんにんもナカナカきびしい。けれども秋山って先生がいる。やっぱりうち家来けらいだ」
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
当時まだ「家来けらい」というものを日常身辺にもって暮していた上流の若い婦人たちが自分たちが坐っている前へおすしを運んで来るような身分の軽い少女に対して
婦人と文学 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
「登城を許せば、その方が、一門衆の不興ふきょうをうける事も、修理は、よう存じているが、思うて見い。修理は一門衆はもとより、家来けらいにも見離された乱心者じゃ。」
忠義 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
かたはらひかへた備中びつちう家来けらい、サソクに南蛮鉄なんばんてつあぶみつて、なかさへぎつてした途端とたんに、ピシリとつた。
怪力 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それからわし此処こゝ家来けれえになっただね、して見るとお前様めえさま、私のためには大事でえじなお人で、私は家来けらいでござえますから、永らく居る内にはおたげえに心安立こゝろやすだてが出て来るだ
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
うまはもちろんれい若月わかつきで、従者じゅうしゃ一人ひとり腰元こしもとほかに、二三にん家来けらいいてったのでございます。
たびたび狩場かりばから、いろいろと、けっこうなえものを持ってきてくれた猫なので、王様はおそばの家来けらいに、はやく行って、カラバ侯爵こうしゃくをお助け申せ、といいつけました。
小国より登る山口にも八幡太郎はちまんたろう家来けらい討死うちじにしたるを埋めたりという塚三つばかりあり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
次の日六兵衛は、生まれてから一度も手を通したことのない礼服れいふくをきせられ、お城に参上さんじょうしました。百じょうじきもある大広間には、たくさんの家来けらいがきら星のようにずらりと居流いながれています。
とんまの六兵衛 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
他のすべての家来けらいが皆そむき去っても、有王だけはきっと最後まで守護していてくれるだろう。(間)しかし、もしも、もしも。(間)わしの苦しみは決定けつじょうすることのできない苦しみだ。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
なんて、力いっぱいからだまで曲げて叫んだりするもんですから、これではとてもいかんというので、プハラの町長さんも仕方なく、家来けらいを六人連れて警察に行って、署長さんに会いました。
毒もみのすきな署長さん (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
と、家来けらいにお言いつけになりました。
もりの中で大将たいしょうぶんのくまがへいこうして金太郎きんたろう家来けらいになったのをて、そのあとからうさぎだの、さるだの、鹿しかだのがぞろぞろついて
金太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
おうさまは、おんないているのをて、家来けらいつかわして、そのいている理由いわれをたずねられました。いもうとは、一始終しじゅうのことを物語ものがたりました。
木と鳥になった姉妹 (新字新仮名) / 小川未明(著)
家康いえやす家来けらい大久保長安おおくぼながやす、あれはいま甲府こうふの民を苦しめている悪い代官だいかん、その手勢てぜいとたたかうことは、父や兄妹きょうだいあだに向かうもおなじことです
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)