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かたわら
ふりがな文庫
“
傍
(
かたわら
)” の例文
太吉は全く火の燃え付いたのを見て、又
傍
(
かたわら
)
の竹を取り上げて小刀で
孔
(
あな
)
を明け
初
(
はじ
)
めた。白い
細
(
こまか
)
な粉がばらばらと破れた膝の上に落ちる。
越後の冬
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
見ると、自分は寝台に寝ていてフォン・リンデン伯爵夫人がにっこりして
傍
(
かたわら
)
に立っているから、びっくりして起きあがろうとすると
戦雲を駆る女怪
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
しかしその頃には
差当
(
さしあた
)
り生活には困らない理由があったので、
玉突
(
たまつき
)
や
釣
(
つり
)
などに退屈な日を送る
傍
(
かたわら
)
、小説をもかいて見た事があったが
ひかげの花
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
うつくしき人の胸は、もとのごとく
傍
(
かたわら
)
にあおむきいて、わが鼻は、いたずらにおのが
膚
(
はだ
)
にぬくまりたる、柔き蒲団に
埋
(
うも
)
れて、おかし。
竜潭譚
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
傍
(
かたわら
)
の人が、余りつとめられると身体に障るからといって心配しても、「何を云う。家業ではないか」と云って頑として稽古を続けた。
梅津只円翁伝
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
▼ もっと見る
しかし考えて御覧なさいまし。お思い当りあそばす事がありは致しませんか。(画家
首
(
こうべ
)
を垂る。令嬢は
徐
(
しずか
)
に画家の
傍
(
かたわら
)
より離れ去る。)
家常茶飯 附・現代思想
(新字新仮名)
/
ライネル・マリア・リルケ
(著)
地下室の中でも、彼は、遠方から
地響
(
じひびき
)
の伝わってくる爆撃も夢うつつに、
傍
(
かたわら
)
から
羨
(
うらや
)
ましがられるほど、ぐうぐうと
鼾
(
いびき
)
をかいて睡った。
英本土上陸戦の前夜
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
と
傍
(
かたわら
)
にある刀の小柄を抜く手も見せず打った手裏剣は、
彼
(
か
)
の女の乳の上へプツリと立ちましたから、女はひーと身を震わして倒れる。
松の操美人の生埋:02 侠骨今に馨く賊胆猶お腥し
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
その
傍
(
かたわら
)
に馬立てたる白髪の
翁
(
おきな
)
は
角扣紐
(
つのボタン
)
どめにせし緑の
猟人服
(
かりゅうどふく
)
に、うすき
褐
(
かち
)
いろの帽を
戴
(
いただ
)
けるのみなれど、何となく
由
(
よし
)
ありげに見ゆ。
文づかひ
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
ふと、丹七が眼をさまして見ると、
傍
(
かたわら
)
に寝て居る筈のあさ子の姿が見えないので、はっと思って
蒲団
(
ふとん
)
の中に手をやるとまだ暖かい。
血の盃
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
声に応じて車が止ると、初江は口にふくんでいた生唾を
傍
(
かたわら
)
の砂の上にはいてほつとしたようだつたが、まだ苦しそうに下をむいている。
殺人鬼
(新字新仮名)
/
浜尾四郎
(著)
大人が
傍
(
かたわら
)
にいるうちは黙っているが、それでも
独言
(
ひとりごと
)
や心の中の言葉が数を増して、感情のようやく
濃
(
こま
)
やかになって行くのがよくわかる。
こども風土記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
アラブ人がもっとも馬に親切なるについて珍譚多し。例せば駒生まるる時
傍
(
かたわら
)
に立った人手で受け取り、地上に落さざらしむという。
十二支考:05 馬に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
「そら謡曲の
船弁慶
(
ふなべんけい
)
にもあるだろう。——かように
候
(
そうろう
)
ものは、
西塔
(
さいとう
)
の
傍
(
かたわら
)
に
住居
(
すまい
)
する武蔵坊弁慶にて候——弁慶は西塔におったのだ」
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
和尚
(
おしょう
)
に対面して話の末、禅の大意を聞いたら、
火箸
(
ひばし
)
をとって火鉢の灰を叩いて、パッと灰を立たせ、和尚は
傍
(
かたわら
)
の僧と相顧みて
微笑
(
ほほえ
)
んだが
我が宗教観
(新字新仮名)
/
淡島寒月
(著)
傍
(
かたわら
)
の
卓子
(
テーブル
)
にウイスキーの
壜
(
びん
)
が
上
(
のっ
)
ていてこっぷの飲み干したるもあり、
注
(
つ
)
いだままのもあり、人々は
可
(
い
)
い加減に酒が
廻
(
ま
)
わっていたのである。
牛肉と馬鈴薯
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
これにはさすがな間喜兵衛も、よくよく
可笑
(
おか
)
しかったものと見えて、
傍
(
かたわら
)
の
衝立
(
ついたて
)
の方を向きながら、苦しそうな顔をして笑をこらえていた。
或日の大石内蔵助
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
彼は、そう思って躍り上る胸を押えながら、
四阿
(
あずまや
)
を離れ、すぐ
傍
(
かたわら
)
の大樹の陰に身をひそめて、その女性の近づくのを待っていた。
第二の接吻
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
平太郎が寝床の中で眼を覚してみると、生首がうようよと
傍
(
かたわら
)
に集まっていて、彼の顔を見て笑ったり蚊帳の中をころころと転がり歩いた。
魔王物語
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
各寝室の
鉄格子
(
てつごうし
)
の窓には灯火が上下し、新館の上層には一本の
炬火
(
たいまつ
)
が走り動き、
傍
(
かたわら
)
の
屯所
(
とんしょ
)
にいる消防夫らは呼び集められていた。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
小山が
傍
(
かたわら
)
より「魚でも牛肉でも産地で味が違うから妙だ。牛肉も西では神戸、東北では米沢というが日本の牛は概して味が
好
(
い
)
いそうだね」
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
僕はたびたび見たが、
雛
(
ひな
)
を
養
(
やしな
)
っている
雌鶏
(
めんどり
)
の
傍
(
かたわら
)
に、
犬猫
(
いぬねこ
)
がゆくと、その時の
見幕
(
けんまく
)
、全身の筋肉に
籠
(
こ
)
める力はほとんど
羽衣
(
はごろも
)
を
徹
(
てっ
)
して現れる。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
ヨセフは牛の頸に繋ぐ
軛
(
くびき
)
をこしらえていた。すると、
傍
(
かたわら
)
の寝床の中で眠っていた息子のイエスが目をさまして、泣声をたてた。
聖家族
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
さてその地の教会堂へ入るや数日滞在し真面目に厳粛に儀式を執行する
傍
(
かたわら
)
、赤色の大十字架の下に置いてある賽銭箱を指さし
ローマ法王と外交
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
智恵なきの
極
(
きわ
)
みは恥を知らざるに至り、
己
(
おの
)
が無智をもって貧窮に陥り飢寒に迫るときは、己が身を罪せずしてみだりに
傍
(
かたわら
)
の富める人を怨み
学問のすすめ
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
雑司
(
ぞうし
)
が
谷
(
や
)
の
御墓
(
おはか
)
の
傍
(
かたわら
)
には、
和歌
(
うた
)
の
友垣
(
ともがき
)
が植えた、
八重
(
やえ
)
山茶花
(
さざんか
)
の珍らしいほど
大輪
(
たいりん
)
の
美事
(
みごと
)
な白い花が秋から冬にかけて咲きます。
大塚楠緒子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
試みに四国八十八ヶ所
廻
(
めぐ
)
りの部を見るに岩屋山海岸寺といふ札所の図あり、その図
断崖
(
だんがい
)
の上に
伽藍
(
がらん
)
聳
(
そび
)
えその
傍
(
かたわら
)
は海にして船舶を多く
画
(
えが
)
けり。
墨汁一滴
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
そして入口の棚にのっていた
燧石
(
ひうちいし
)
をカチカチやって
傍
(
かたわら
)
の
雪洞
(
ぼんぼり
)
に火を移し、戸口に立った露月を顧み、
嘲
(
あざけ
)
るごとく言うのでした。
艶容万年若衆
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
見かけることが
珍
(
めずら
)
しくなかった彼女の
傍
(
かたわら
)
にはいつも佐助が
侍
(
はべ
)
り
外
(
ほか
)
に鳥籠の世話をする女中が一人
附
(
つ
)
いていた女師匠が命ずると女中が籠の戸を
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
北斗星の
傍
(
かたわら
)
、あるいは熱沙漠々たる赤道直下において、およそ舟車の及ぶところ、太陽の照らすところ、空気の通ずるところ
将来の日本:04 将来の日本
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
竜之助は西から来て、この札の辻の前へ立った——この札の辻の
傍
(
かたわら
)
には大きな井戸があって、
四方
(
あたり
)
には宿屋が軒を並べている。
大菩薩峠:03 壬生と島原の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
そう云って、いつも
炬燵
(
こたつ
)
を前に、書物をのせた見台を左の
傍
(
かたわら
)
に、そして、背中へは真綿を入れているとみえ、
猫背
(
ねこぜ
)
になって見えるのである。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
どこの海浜にでも、そこが少し有名な場所なら必ずつきものの、船頭の古手が別荘番の
傍
(
かたわら
)
部屋貸をする、その一つであった。
明るい海浜
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
と安子夫人が眺め入ったのは
鵺退治
(
ぬえたいじ
)
の人形だった。弓を持った頼政が
傍
(
かたわら
)
に控え、
猪早太
(
いのはやた
)
が矢を負った怪物を押えつけて短刀を振り翳している。
好人物
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
そこは丘の斜面に溝を掘った台地で、溝を流れる水があっちこっちに赤い泥水を
溜
(
た
)
め、その
傍
(
かたわら
)
に赤い色の土が積んであった。
雲南守備兵
(新字新仮名)
/
木村荘十
(著)
傍
(
かたわら
)
に一冊の年表でもあれば頼りになるのであるが、それもない。やっとのことで、大正十年が一千三百年の
遠諱
(
おんき
)
に当るということに気がついた。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
彼女が云い知れぬ孤独感に心をしめつけられるような気のしていたのは、
一家団欒
(
いっかだんらん
)
のもなか、母や夫たちの
傍
(
かたわら
)
であった。
菜穂子
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
そは皆各所の山に分れて、
己
(
おの
)
が持場を守りたれば、常には洞の
辺
(
ほとり
)
にあらずただ
僕
(
やつがれ
)
とかの黒衣のみ、
旦暮
(
あけくれ
)
大王の
傍
(
かたわら
)
に侍りて、
他
(
かれ
)
が機嫌を
取
(
とる
)
ものから。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
真斎は相当著名な中世史家で、この館の執事を勤める
傍
(
かたわら
)
に、数種の著述を発表しているので知られているが、もはや七十に
垂
(
なんな
)
んとする老人だった。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
日出雄少年
(
ひでをせうねん
)
も
二名
(
にめい
)
の
水兵
(
すいへい
)
も
默
(
もく
)
して
一言
(
いちげん
)
なく、
稻妻
(
いなづま
)
は
終夜
(
よもすがら
)
吠
(
ほ
)
え
通
(
とう
)
しに
吠
(
ほ
)
えたので
餘程
(
よほど
)
疲
(
つか
)
れたと
見
(
み
)
え、
私
(
わたくし
)
の
傍
(
かたわら
)
に
横
(
よこたは
)
つて
居
(
を
)
る。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
女の
傍
(
かたわら
)
に腰をかけて、『オイ、貴様は一体何者だ?……おおかた警視庁の犬だろう?うるさく嗅ぎ廻わりやあがる』
水晶の栓
(新字新仮名)
/
モーリス・ルブラン
(著)
画作の
傍
(
かたわら
)
附近を跋渉し、
其折
(
そのおり
)
案内者として同伴した音沢村の佐々木助七から、黒部に関する多くの知識を得て、
益々
(
ますます
)
下廊下探査の素志を堅くしたらしい。
黒部川を遡る
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
中央に地蔵尊を彫り、
傍
(
かたわら
)
に一人の僧が敬礼をしており、下の方に、
花瓶
(
かびん
)
に
蓮
(
れん
)
を
挿
(
さ
)
してある模様が彫りつけてある。
幕末維新懐古談:12 名高かった店などの印象
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
そして体の調子のよい折を見ては、夜、妻と三番目の娘が、
嫁入
(
よめい
)
りの
仕度
(
したく
)
に着物を縫っている
傍
(
かたわら
)
で胡弓を奏でた。
最後の胡弓弾き
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
それにまたこの二匹の睨み合が、果してどうなるかと思うと、こわいもの見たさに魂を奪われ、
幸
(
さいわい
)
に
傍
(
かたわら
)
の立木の陰に身を寄せて、顫えながら見ていました。
熊
(新字新仮名)
/
久米正雄
(著)
彼は部下に命じて行列の進行を
停
(
と
)
め、自分は叢の
傍
(
かたわら
)
に立って、見えざる声と対談した。都の
噂
(
うわさ
)
、旧友の消息、袁傪が現在の地位、それに対する李徴の祝辞。
山月記
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
そして、その
傍
(
かたわら
)
には、いつも私の夢に出て来る、美しい私の恋人が、におやかにほほえみながら、私の話に聞入って居ります。そればかりではありません。
人間椅子
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
実に北海道の夏は、日中は最も炎熱甚しく、依て此厚着にて労働するが為めには実に
労
(
つか
)
るる事多し。且つ畑の
傍
(
かたわら
)
にて
朽木
(
くちき
)
を集めて焼て小虫を散ずるとせり。
関牧塲創業記事
(新字新仮名)
/
関寛
(著)
彼はこの機械を、私どもの耳の
傍
(
かたわら
)
へ持って来ました。すると、水車のように絶えず音がしているのです。これは不思議な動物か、小さな神様らしく思えます。
ガリバー旅行記
(新字新仮名)
/
ジョナサン・スウィフト
(著)
恰
(
あだか
)
も
向岸
(
むこうぎし
)
の火事を見る様に
傍
(
かたわら
)
で見ていて
如何
(
どう
)
する事も出来ず、
唯
(
ただ
)
はらはらと気を
揉
(
も
)
んでいたばかりであった。
二面の箏
(新字新仮名)
/
鈴木鼓村
(著)
傍
常用漢字
中学
部首:⼈
12画
“傍”を含む語句
近傍
路傍
傍若無人
傍人
傍観
其傍
片傍
傍目
傍輩
傍聞
傍題
傍眼
両傍
傍岡
直傍
傍見
御傍
傍聴
傍視
傍々
...