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馳
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はし
ふりがな文庫
“
馳
(
はし
)” の例文
車は
馳
(
はし
)
り景は細かく移るごとに、変った岸べの蛍が先刻見た光とはべつなあたらしい光を点じ、そしてその幾つかは舞い上っていた。
津の国人
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
折
(
をり
)
から
雨
(
あめ
)
のあとの
面
(
おもて
)
打沈
(
うちしづ
)
める
蒼々漫々
(
さう/\まん/\
)
たる
湖
(
みづうみ
)
は、
水底
(
みなそこ
)
に
月
(
つき
)
の
影
(
かげ
)
を
吸
(
す
)
はうとして、
薄
(
うす
)
く
輝
(
かゞや
)
き
渡
(
わた
)
つて、
沖
(
おき
)
の
大蛇灘
(
おろちなだ
)
を
夕日影
(
ゆふひかげ
)
が
馳
(
はし
)
つた。
十和田湖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
「今は各自の命を呉れよ」と云うが早いか栗毛に鞭くれて
馳
(
はし
)
り出した。従士達も吾劣らじと後を追うて、上野街道忽ち馬塵がうず巻いた。
桶狭間合戦
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
したがって家中で「
馳
(
はし
)
り廻るほどの人」は、皆たわけがそろってしまう。そのたわけを家中の人が分別者利発人とほめる。
埋もれた日本:――キリシタン渡来文化前後における日本の思想的情況――
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
あんまり馬を
馳
(
はし
)
らせしゅぎたもんだから、半分は、馬が途中で
斃
(
たお
)
れてしゅまったんだそうだ。——今、やって来ましゅよ。
武装せる市街
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
▼ もっと見る
馬車、自動車は鈴を鳴らし、広い車道を
馳
(
はし
)
って行く。三層五層の大厦の窓は、
悉
(
ことごと
)
く扉を開け放され忙しそうに働く店員達の小綺麗な姿が見えている。
沙漠の古都
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
この辺を電車が
馳
(
はし
)
っているときは、車内の電燈までが、電圧が急に下りでもしたかのように、スーッと薄暗くなる。
省線電車の射撃手
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「
愧死
(
きし
)
しても足りません。大酔していたため、ついその……後閣へ
馳
(
はし
)
って、城外へお扶けするいとまもなく」
三国志:04 草莽の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
権八は仲間にとりまかれて傷の始末をしてゐる間に私はどん/\
馳
(
はし
)
り出した。一足早く帰つて権八の両親にそのことを云つて
詫
(
わ
)
びるより他はないと思つたのだ。
ある職工の手記
(新字旧仮名)
/
宮地嘉六
(著)
ちょっとした肉体上の努力にも、長く歩いたり早く
馳
(
はし
)
ったりしても、疲れてしまった。すぐに息切れがした。胸が痛んだ。ときどき老友シュルツのことを考えた。
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
この道位、自動車で
馳
(
はし
)
って気持のよい所は少いだろう。何しろ三千
尺
(
じゃく
)
の峠を越して、由布院の盆地が二千二百尺の高さなのである。六里の高原を、一時間半自動車が走りつづける。
由布院行
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
街
(
まち
)
の中を消防自動車が物凄い唸り声を上げて
馳
(
はし
)
って行きます。私はその喧しい唸り声の中に『今に——座が焼けているんだ』そんな言葉をハッキリ聴きとることが出来るのでございます。
幻聴
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
かの字港に着くと、船頭がもう
用意
(
したく
)
をして待っていた。寂しい小さな港の小さな
波止場
(
はとば
)
の内から船を出すとすぐ帆を張った、風の具合がいいので船は少し
左舷
(
さげん
)
に
傾
(
かし
)
ぎながら心持ちよく
馳
(
はし
)
った。
鹿狩り
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
いらいらした二人の心持は、どこまでもはぐれて
馳
(
はし
)
らずにはいなかった。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
たつた一人で過す多くの夜を、その窓に
倚
(
もた
)
れて、彼は
幾度
(
いくたび
)
か/\自分の仕事、自分の将来についていろ/\に思ひを
馳
(
はし
)
らせた。そんな時、いつも彼の心の
中
(
うち
)
には抑へきれない
憧憬
(
しようけい
)
が波うつてゐた。
新らしき祖先
(新字旧仮名)
/
相馬泰三
(著)
ふっと、このまま
馳
(
はし
)
って電車道まで歩いたらおかしいだろうなと思う。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
彼はそれでも自分の目を疑うように、二三歩改札口へ
馳
(
はし
)
り寄った。
緑衣の女
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
落せしかば誠に
勿化
(
もつけ
)
の幸ひなりと悦びながら足を早めて
馳
(
はし
)
る程に
頓
(
やが
)
て鈴ヶ森へぞ
指懸
(
さしかゝ
)
りける斯る所に
並木
(
なみき
)
の蔭より
中形
(
ちうがた
)
縮緬
(
ちりめん
)
の小袖の
裾
(
すそ
)
高
(
たか
)
く
端折
(
はしをり
)
黒繻子
(
くろじゆす
)
の
帶
(
おび
)
を
脊
(
せ
)
にて
堅
(
かた
)
く
結
(
むす
)
び
緋縮緬
(
ひぢりめん
)
の
襷
(
たすき
)
を
懸
(
かけ
)
貞宗
(
さだむね
)
の
短刀
(
たんたう
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
姪はかう言つて、じつとその早く
馳
(
はし
)
つて行くランチを見詰めた。
ある日
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
銀
(
しろがね
)
の玉をあまたに
筥
(
はこ
)
に
収
(
い
)
れ
荷緒
(
にのお
)
かためて馬
馳
(
はし
)
らする
曙覧の歌
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
松花江
(
スンガリー
)
解氷
(
かいひよう
)
未
(
まだ
)
し橇にして
船腹
(
ふなばら
)
赤き
際
(
きは
)
まで
馳
(
はし
)
る
夢殿
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
最北端の港 青森へと
馳
(
はし
)
る
本土の港を指して
(新字新仮名)
/
今野大力
(著)
枕木の上を
馳
(
はし
)
った
章魚人夫
(新字新仮名)
/
広海大治
(著)
猿はかなり広い檻のなかに、追ったり
馳
(
はし
)
ったり、喧嘩したりした。その悧巧な、快活に
巫山戯
(
ふざけ
)
るさまは総ての人に面白がられた。
或る少女の死まで
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
巌
(
いわ
)
にも山にも砕けないで、皆北海の荒波の上へ
馳
(
はし
)
るのです。——もうこの渦がこんなに
捲
(
ま
)
くようになりましては堪えられません。
雪霊記事
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
僕はまた元のような緊張と昂奮を感じ乍ら、訪問を
諾
(
だく
)
すると共に、自ら第一番に此の室を
馳
(
はし
)
り出ました。
壊れたバリコン
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
間もなく現れた日本勢と闘ったが忽ちにして敗れ、申砬は南漢江に投じて溺死して果てた。この戦場は弾琴台と云って、稲田多く、馬を
馳
(
はし
)
らせるのに不便な処であった。
碧蹄館の戦
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
馬上の武士はもう何事も手のつくされないことを知ると、ただ一騎で野をよぎり、山麓の方に向きを据えると、
馳
(
はし
)
りに馳った。
野に臥す者
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
蟹に乗ってら、曲馬の人魚だ、といううちに、その
喜見城
(
きけんじょう
)
を離れて行く筈の電車が、もう一度、真下の雨に
漾
(
ただよ
)
って、出て来た魚市の方へ
馳
(
はし
)
るのです。
菊あわせ
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
采配を口に
銜
(
くわ
)
え、両手で鞍の輪を押えて居たが、堪らず下に落ちた。徳川の兵
馳
(
はし
)
り寄って首を奪い、柵内に逃げもどろうとするのを志村追かけ突伏せてとり返す事を得た。
長篠合戦
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
どの電車もどの電車も、前後不覚に寝そべった乗客がゴロゴロしていて、まるで病院電車が
馳
(
はし
)
っているような有様だった。そんな折柄、この射撃事件が発生した。その第一の事件というのが。
省線電車の射撃手
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
二人は同じことを叫びあうと、かねてしめし合わせてあったことのように、気狂いのようになって土手のうえを川下をめがけて
馳
(
はし
)
り出した。
姫たちばな
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
唯今
(
ただいま
)
の
鯖江
(
さばえ
)
、
鯖波
(
さばなみ
)
、
今庄
(
いまじょう
)
の駅が、例の音に聞えた、中の河内、木の芽峠、湯の尾峠を、前後左右に、高く深く貫くのでありまして、汽車は雲の上を
馳
(
はし
)
ります。
雪霊記事
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
生絹は逃げかくれて
馳
(
はし
)
るうしろ姿を見つめた。その心はどこかに冷たさのある、しかも人と人の苦しみのうえに乗っているような気持だった。
荻吹く歌
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
跫音
(
あしおと
)
が、ばたばたばた、そんなにも居たかと思う。表通の出入口へ、どっと潮のように
馳
(
はし
)
り
退
(
の
)
いて、居まわりがひっそりする、と、秋空が晴れて、部屋まで青い。
薄紅梅
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
津の人と、和泉の人は
迥
(
はる
)
かに基経のいる
処
(
ところ
)
から遠ざかって行き、やっと橘の姿も見えるほどだった。
殆
(
ほとんど
)
、顔を打合わせるように
馳
(
はし
)
りに馳った。
姫たちばな
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
一里ゆき、二里ゆき、三里ゆき、思いのほか、田畑も見えず、ほとんど森林地帯を
馳
(
はし
)
る。……
灯明之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ある蒼白い冬の晩であったが、はしなく人人が
馳
(
はし
)
るので何心なく近づくと、有名な女でみんなは「電気娘」と呼んでいたのが歩いてゆくのであった。
幻影の都市
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
腕
(
うで
)
へ
來
(
く
)
る、
乳
(
ちゝ
)
へ
來
(
く
)
る。
拂
(
はら
)
へば
馳
(
はし
)
つて、
又
(
また
)
スツと
寄
(
よ
)
る。あゝ、
女
(
をんな
)
の
雪
(
ゆき
)
の
二
(
に
)
の
腕
(
うで
)
だと、
松葉
(
まつば
)
が
命
(
いのち
)
の
黥
(
いれずみ
)
をしよう、
指
(
ゆび
)
には
青
(
あを
)
い
玉
(
たま
)
と
成
(
な
)
らう。
私
(
わたし
)
は
酒
(
さけ
)
を
思
(
おも
)
つて、たゞ
杉
(
すぎ
)
の
葉
(
は
)
の
刺青
(
ほりもの
)
した。
飯坂ゆき
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
太秦
(
うづまさ
)
村の端れからだいぶ自動車を
馳
(
はし
)
らせてゐるうちに、竹の枝垣をめぐらした深い藪が見え、その藪の前に、白いひと筋の古風な田舍道路が走つてゐた。
京洛日記
(旧字旧仮名)
/
室生犀星
(著)
「せち辛い世の中ですで、鑑査の報酬を要求します。はっはっはっ。その料金としてじゃね、怪我人を病院へ
馳
(
はし
)
らす、自動車を使用しまするぞ。——用意!……自動車屋。」
ピストルの使い方:――(前題――楊弓)
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
だが右馬の頭は物もいわずに恥ずかしさのためか、蘆の荷をとり乱したまま
馳
(
はし
)
り出した。生絹はもうちょっとのことで車から出てあとを
趁
(
お
)
うところであった。
荻吹く歌
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
沼津に向って、浦々の春遅き景色を
馳
(
はし
)
らせる、……土地の人は(みっと)と云う
三津
(
みと
)
の浦を、いま浪打際とほとんどすれすれに通る
処
(
ところ
)
であった。しかし、これは廻り
路
(
みち
)
である。
半島一奇抄
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
夕明りがまだ漂うている中空に、くらい
蝙蝠
(
こうもり
)
が
暗
(
やみ
)
を縫いながら低く地べたをすれすれに
馳
(
はし
)
ったりしていた。
香爐を盗む
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
それが
次第
(
しだい
)
に
激
(
はげ
)
しく
成
(
な
)
つて、
六
(
む
)
ツ
四
(
よ
)
ツ
數
(
かぞ
)
へて
七
(
なゝ
)
ツ
八
(
や
)
ツ、
身體
(
からだ
)
の
前後
(
ぜんご
)
に
列
(
れつ
)
を
作
(
つく
)
つて、
卷
(
ま
)
いては
飛
(
と
)
び、
卷
(
ま
)
いては
飛
(
と
)
びます。
巖
(
いは
)
にも
山
(
やま
)
にも
碎
(
くだ
)
けないで、
皆
(
みな
)
北海
(
ほくかい
)
の
荒波
(
あらなみ
)
の
上
(
うへ
)
へ
馳
(
はし
)
るのです。
雪霊記事
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
すては塞にいま一頭の馬の用意のあることを知ると、密林の間道をひたすらに
馳
(
はし
)
った。
舌を噛み切った女:またはすて姫
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
途中では、
遥
(
はるか
)
に海ぞいを小さく
行
(
ゆ
)
く、自動車が鼠の
馳
(
はし
)
るように見えて、
岬
(
みさき
)
にかくれた。
半島一奇抄
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
十六七
年
(
ねん
)
を
過
(
す
)
ぎました。——
唯今
(
たゞいま
)
の
鯖江
(
さばえ
)
、
鯖波
(
さばなみ
)
、
今庄
(
いましやう
)
の
驛
(
えき
)
が、
例
(
れい
)
の
音
(
おと
)
に
聞
(
きこ
)
えた、
中
(
なか
)
の
河内
(
かはち
)
、
木
(
き
)
の
芽峠
(
めたうげ
)
、
湯
(
ゆ
)
の
尾峠
(
をたうげ
)
を、
前後左右
(
ぜんごさいう
)
に、
高
(
たか
)
く
深
(
ふか
)
く
貫
(
つらぬ
)
くのでありまして、
汽車
(
きしや
)
は
雲
(
くも
)
の
上
(
うへ
)
を
馳
(
はし
)
ります。
雪霊記事
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
基経は同じ土手の上を
馳
(
はし
)
ってあとを
逐
(
お
)
って行った。
姫たちばな
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
鰻屋
(
うなぎや
)
の神田川——今にもその頃にも、まるで
知己
(
ちかづき
)
はありませんが、あすこの前を向うへ抜けて、大通りを
突切
(
つっき
)
ろうとすると、あの黒い雲が、聖堂の森の方へと
馳
(
はし
)
ると思うと、頭の上にかぶさって
木の子説法
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
“馳(はぜ(板金))”の解説
はぜ(en: seam)は1.6ミリ厚程度までの薄板鉄板などの板金加工において、板を接続する場合に用いる折り曲げの部分のことである。漢字の表記では「馳」「鈎」とされるが難読であるため仮名書きされることが多い。
(出典:Wikipedia)
馳
漢検準1級
部首:⾺
13画
“馳”を含む語句
御馳走
馳走
馳出
馳付
追馳
馳寄
後馳
馳落
馳上
馳騁
馳廻
馳使
馳込
馳走振
天馳使
馳掛
御馳走樣
馳登
馳戻
馳附
...