)” の例文
ぎっしり詰った三等車に眠られぬまま、スチームに曇るガラス窓から、見えぬうかがったり、乗合と一、二の言をかわしなどする。
雪の武石峠 (新字新仮名) / 別所梅之助(著)
縁に近く、ちょうど蓮の葉でかこいをされたぐあいの一坪ばかりの水のには、背に色彩りあざやかな紋のある水鳥が游いでいた。
痀女抄録 (新字新仮名) / 矢田津世子(著)
ある、かわずはいけかんで、太陽たいようひかり脊中せなかしていました。そのとき、太陽たいようは、やさしく、かわずにかっていいました。
太陽とかわず (新字新仮名) / 小川未明(著)
あるいは十月に返り花が咲くようにまだ冬の初めのに、日当りのいい処などに、若草が生えておるが、これはやがて来る寒さや
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
日暮方の川のには、中之島あたりから漕ぎ下つて來た貸端艇ボートが、不規律にゆきかひ、うすら青い空には、蝙蝠がしきりに飛んでゐた。
大阪の宿 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
天つ日はひかりかがやき海のは行きかふ船のこなたかなたに(須磨浦所見——船なしといへど未だ船影なきまでには至らず)
閉戸閑詠 (新字旧仮名) / 河上肇(著)
ふと、池の障子しょうじをひらいてみると、いつかあかつきの光が、ほのぼのと水にういて、あなたこなたの庭木の花さえ、しらじらと明けはなれている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
山内桟橋の大クレーンの傍でハーケンクロイツの旗を翻したドイツの汽船が荷役中で、ぞっとするような汚い海のを鴎が低く飛びちがっていた。
ノア (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
私は昏々こんこんねむりながら、とりとめもない夢をみていた。夜の燈が雨にれた田のれているのを見ると頻りに妻の臨終を憶い出すのであった。
廃墟から (新字新仮名) / 原民喜(著)
夕暮近くなった田のに響いて、方々から田植の仕舞唄が聞えて来る。どこも無事に田植をおわったらしいという、一安堵したような気持も窺われる。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
枝折戸の手触りが朽木のようにもろくて、建物の古いことを問わず語りに示していた。植込みを通して見える庭一体に青苔が池ののように敷き詰っていた。
刀禰とねの流れは銀色を帯び、渡って来た、秋鳥も瀬のに浮ぶようになった。筑波山の夕紫はあかあかとした落日に謫落たくらくの紅を増して来た。稲の花の匂いがする。
富士 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
それから河岸かしへ出て、闇夜でも月夜の晩でも、あすこのベンチに腰かけて、じいつと河のをみつめる。
死児変相 (新字旧仮名) / 神西清(著)
静かなやみにゆらりゆらりと揺れて、夕靄の立ち籠むる湖面の彼方、家々の窓にともる赤い灯影ほかげ、アンジアン娯楽場カジノの不夜城はキラキラと美しくに映っている。
水晶の栓 (新字新仮名) / モーリス・ルブラン(著)
その声はふるえている。兄は静かに書をふせて、かの小さき窓のかたへ歩みよりてを見ようとする。窓が高くてが足りぬ。床几しょうぎを持って来てその上につまだつ。
倫敦塔 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「霧たちこめし水のに、二ツの光りてらすなり、友におくれし螢火か、はた亡き魂かあはれ/\」
細かく小さな真珠の粒が軽く銀盤の上に転がすかのやうに、サラ/\と池のに音がありました。
青白き公園 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
蹲踞しゃがんでをみていると、飛んでゆく鳥の影が、まるでかますかなんかが泳いでいるように見える。水色をした小さいかにが、石崖いしがけの間を、はさみをふりながら登って来ている。
田舎がえり (新字新仮名) / 林芙美子(著)
………空はどんよりと曇って居るけれど、月は深い雲の奥にまれて居るけれど、それでも何処どこからか光がれて来るのであろう、は白々と明るくなって居るのである。
母を恋うる記 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
心身ともに生気に充ちていたのであったから、毎日〻〻の朝を、まだ薄靄うすもやが村の田のくろこずえめているほどのはやさに起出おきでて、そして九時か九時半かという頃までには
蘆声 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
バチンバチンと庭のを打つ騒ぎに、並居なみいる渡世人や百姓の面々は、すはこそ出たぞ、地震地震と取るものも取りあえず、燭台を蹴倒し、雨戸を蹴放けはなして家の外へ飛び出せば
名娼満月 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
郊外は収穫とりいれの為にせはしい時節であつた。農夫の群はいづれも小屋を出て、午後の労働に従事して居た。の稲は最早もう悉皆すつかり刈り乾して、すでに麦さへ蒔付まきつけたところもあつた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
ひらいたが、びはしない、で、ばさりと諸翼もろつばさはうつとひとしく、俯向うつむけにくびばして、あのながくちばしが、みづとゞくやいなや、小船こぶねがすら/\とうごきはじめて、おともなくいでる。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そのときは夜であったし、梅雨空のことでまっ暗だから、田植の済んだ田のさえ弁別できなかったが、かなり遠いところに、赤い小さな火が七つか八つ、横に並んでいるのが見えた。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
夏彦の首級くびだ! ……あの晩は天竜の河のを燐の光が迷っていた。星さえ見えぬ大空を嵐ばかりが吹いていた。湧き立つ浪はたてがみを乱した白馬のように崩れかかり船を左右にもてあそんだ。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
右馬うまかみは三日つづけて生絹すずしを説き、やっと生絹はもとの望みをもつ女になった。さらに三日のあいだは春あさい田のをながめながら歩き、三夜はふすまもるかぜさえいとうほど別れを惜しんだ。
荻吹く歌 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
池はぎょくもて張りたらんやうに白く湿める水のに、静に魚のぬる聞こえて、瀲灔ちらちらと石燈籠の火の解くるも清々すがすがし。塀を隔てて江戸川べりの花の林樾こずえ一刷ひとはけに淡く、向河岸行く辻占売の声ほのかなり
巣鴨菊 (新字旧仮名) / 正岡容(著)
いはにいやさむざむと日はかげりたづき知らずも生ける蟻匐ふ
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
鴨居りてあかるき山かげの沼のさなかに水皺みじわ寄る見ゆ
みなかみ紀行 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
つち照斑てりふ蒲公英たなの花、芽ぐむのつつましき
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
田のを過ぎる、昔の巨人の姿——
山羊の歌 (新字旧仮名) / 中原中也(著)
その盃を破るだろうよ、石のに。
ルバイヤート (新字新仮名) / オマル・ハイヤーム(著)
みどりの田のをなでてゆく微風
白い魔の手 (新字新仮名) / 長沢佑(著)
に落ちなば花とひらき
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
戸のには羽子はねく音す。
悲しき玩具 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
芥子けしかみみづ
どんたく:絵入り小唄集 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
きけば隔日ぐらいに降るとの事、すこし気が沈む。天竜川の川べをゆけば、畑に桑の枝は束ねられ、田の薄氷うすごおれるに子どもはスケートをしている。
雪の武石峠 (新字新仮名) / 別所梅之助(著)
いけの縁の方は、簾であった。藤夜叉はいわれるまま、通いの妻戸をしめて、恐々とすこし前へすすんだ。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
揺れなびく田のの向うに、やがて客人大権現まろうどだいごんげんの木立ちが、不吉の城のように、黒く見えてきた。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
今は夕靄ゆふもやの群が千曲川ちくまがはの対岸をめて、高社山かうしやざん一帯の山脈も暗く沈んだ。西の空は急に深い焦茶こげちや色に変つたかと思ふと、やがて落ちて行く秋の日が最後の反射をに投げた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
そのときは夜であったし、梅雨空のことでまっ暗だから、田植の済んだ田のさえ弁別できなかったが、かなり遠いところに、赤い小さな火が七つか八つ、横に並んでいるのが見えた。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
たまたまいい月夜つきよで、つきひかりいけ黄色きいろいろどりますと、かわずはびっくりして、不意ふいがって、もうはや、おさまがおのぼりになったのかとおもい、大騒おおさわぎをして、くちやかましく
太陽とかわず (新字新仮名) / 小川未明(著)
……ト此の奇異なる珍客を迎ふるか、不可思議のものにきそふか、しずかなる池のに、眠れるうおの如く縦横じゅうおうよこたはつた、樹の枝々の影は、尾鰭おひれを跳ねて、幾千ともなく、一時いちどきに皆揺動ゆれうごいた。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
いつしかに太い筋綱にり合わさって、いやいやが身ひとの身なんどは夢幻の池のにうかぶつかのまの泡沫うたかたにしか過ぎぬ、この怖ろしい乱壊転変らんえてんぺんすがたこそ何かしら新しいものの息吹いぶ
雪の宿り (新字新仮名) / 神西清(著)
池のをとざす青々とした杉苔すぎごけのあいだで、ときどき大きなこいがはねあがる。
あなたも私も (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
いはにいやさむざむと日はかげりたづき知らずも生ける蟻匐ふ
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
には桜さかるをわがへい室咲むろざきの薔薇ばらははやもしぼめり
(新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
庭のは木の根岩ぐまくまなくも苔にうづもる苔寺の土
閉戸閑詠 (新字旧仮名) / 河上肇(著)
野の原に、みづにただよひわたる
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
石のに素焼の壺を投げつけた。
ルバイヤート (新字新仮名) / オマル・ハイヤーム(著)