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軒先
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のきさき
ふりがな文庫
“
軒先
(
のきさき
)” の例文
君江は
軒先
(
のきさき
)
に
魚屋
(
さかなや
)
の看板を出した家の前まで来て、「ここで待っていらっしゃい。」と言いすて、魚屋の軒下から
路地
(
ろじ
)
へ
這入
(
はい
)
った。
つゆのあとさき
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
いや、その光がさしてゐるだけに、向うの
軒先
(
のきさき
)
に吊した
風鐸
(
ふうたく
)
の影も、
反
(
かへ
)
つて濃くなつた
宵闇
(
よひやみ
)
の中に隠されてゐる位である。
漱石山房の秋
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
表
(
おもて
)
は
左右
(
さいう
)
から
射
(
さ
)
す
店
(
みせ
)
の
灯
(
ひ
)
で
明
(
あき
)
らかであつた。
軒先
(
のきさき
)
を
通
(
とほ
)
る
人
(
ひと
)
は、
帽
(
ばう
)
も
衣裝
(
いしやう
)
もはつきり
物色
(
ぶつしよく
)
する
事
(
こと
)
が
出來
(
でき
)
た。けれども
廣
(
ひろ
)
い
寒
(
さむ
)
さを
照
(
て
)
らすには
餘
(
あま
)
りに
弱過
(
よわす
)
ぎた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
温泉宿
(
をんせんやど
)
の
欄干
(
らんかん
)
に
倚
(
よ
)
つて
外
(
そと
)
を
眺
(
なが
)
めて
居
(
ゐ
)
る
人
(
ひと
)
は
皆
(
み
)
な
泣
(
な
)
き
出
(
だ
)
しさうな
顏付
(
かほつき
)
をして
居
(
ゐ
)
る、
軒先
(
のきさき
)
で
小供
(
こども
)
を
負
(
しよつ
)
て
居
(
ゐ
)
る
娘
(
むすめ
)
は
病人
(
びやうにん
)
のやうで
背
(
せ
)
の
小供
(
こども
)
はめそ/\と
泣
(
な
)
いて
居
(
ゐ
)
る。
湯ヶ原より
(旧字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
人立
(
ひとだち
)
おびただしき
夫婦
(
めをと
)
あらそひの
軒先
(
のきさき
)
などを過ぐるとも、
唯
(
ただ
)
我れのみは
広野
(
ひろの
)
の原の冬枯れを行くやうに、心に止まる物もなく、気にかかる景色にも覚えぬは
にごりえ
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
▼ もっと見る
もとは花もたくさん作っていたという庭は、大吉たちの
記憶
(
きおく
)
のかぎり、大根やかぼちゃ畑で、せまい
軒先
(
のきさき
)
にまでかぼちゃは植えられて、屋根にはわせていた。
二十四の瞳
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
そのむかし池大雅が
真葛原
(
まくずがはら
)
の
住居
(
すまゐ
)
には、別に玄関といつて
室
(
へや
)
も無かつたので、
軒先
(
のきさき
)
に
暖簾
(
のれん
)
を
吊
(
つる
)
して、例の大雅一流の達者な字で「玄関」と書いてあつたさうだ。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
しかし、支店みっちゃんの方はうまいにはうまいが、旧式立食形なる
軒先
(
のきさき
)
の小店で
狭小
(
きょうしょう
)
であり、
粗末
(
そまつ
)
であり紳士向きではない。ただ
口福
(
こうふく
)
の
欣
(
よろこ
)
びを感ずるのみである。
握り寿司の名人
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
やがて
軒先
(
のきさき
)
の夕空を見上げながら、思い出したように白い歯を出して、ニッタリと笑われました。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
お
軒先
(
のきさき
)
をめぐって火の
蛇
(
へび
)
がのたうち廻ると見るひまに、
囂
(
ごう
)
と音をたてて
蔀
(
しとみ
)
が五六間ばかりも一ときに吹き上げられ、御殿の中からは
猛火
(
みょうか
)
の大柱が横ざまに吐き出されます。
雪の宿り
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
鶫
(
つぐみ
)
といふ
鳥
(
とり
)
や
鶸
(
ひわ
)
といふ
鳥
(
とり
)
は、
何
(
なん
)
百
羽
(
ぱ
)
飛
(
と
)
んで
參
(
まゐ
)
りましても、みんな
網
(
あみ
)
や
黐
(
もち
)
に
掛
(
かゝ
)
つてしまひますが、
私共
(
わたしども
)
にかぎつて
軒先
(
のきさき
)
を
貸
(
か
)
して
下
(
くだ
)
すつたり
巣
(
す
)
をかけさせたりして
下
(
くだ
)
さいます。
ふるさと
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
「お前ら二人とも、この外の
軒先
(
のきさき
)
に、お美野さんが吊る下ってるのを見たてえのだな。それが、ふたりが二階へ上って来る間に、部屋の真ん中に引き上げられていた——。」
釘抜藤吉捕物覚書:13 宙に浮く屍骸
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
何十ぴきとなく守っているばかりか、あっちこっちにブンブンと
雄飛
(
ゆうひ
)
しているから、とてもはだかになる勇気は出ない。物おきの
軒先
(
のきさき
)
なぞにぶらさがっているのとはけたが違う。
苦心の学友
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
柿
(
かき
)
の木から飛びおりた
竹童
(
ちくどう
)
は、はじめてそこに人あるのを知って、
軒先
(
のきさき
)
に近より、家の中をのぞいてみると、
奥
(
おく
)
には
雑多
(
ざった
)
な
蚕道具
(
かいこどうぐ
)
がちらかっており、
土間
(
どま
)
のすみの
土
(
ど
)
べっついのまえには
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
急激に自分たちの世界を
打
(
ぶ
)
ち
壊
(
こわ
)
されて了って、よその国のよその
軒先
(
のきさき
)
に、雨宿りしているようなこの六七年の生活が、それほども平七の心から、肉体から、弾力を奪いとって了ったのである。
山県有朋の靴
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
これをまた
苫葺
(
とまぶ
)
きとも呼ぶのは、舟の
苫
(
とま
)
などもこの葺き方だったからで、
田舎
(
いなか
)
ではまた
逆
(
さか
)
さ
藁
(
わら
)
ともいって、ふつうの
住居
(
すまい
)
にはきらってこうは葺かず、ちょうどその反対に根本のほうを
軒先
(
のきさき
)
に向けて
母の手毬歌
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
僕の目を覚ました時にはもう
軒先
(
のきさき
)
の
葭簾
(
よしず
)
の
日除
(
ひよ
)
けは薄日の光を
透
(
す
)
かしていた。僕は洗面器を持って庭へ下り、裏の
井戸
(
いど
)
ばたへ顔を洗いに行った。
海のほとり
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
唯
(
ただ
)
勝手口につづく
軒先
(
のきさき
)
の
葡萄棚
(
ぶどうだな
)
に、今がその花の咲く頃と見えて、
虻
(
あぶ
)
の
群
(
む
)
れあつまって
唸
(
うな
)
る声が独り夏の日の永いことを知らせているばかりである。
つゆのあとさき
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
不圖
(
ふと
)
氣
(
き
)
が
付
(
つ
)
いて
見
(
み
)
ると
角
(
かど
)
に
大
(
おほ
)
きな
雜誌屋
(
ざつしや
)
があつて、
其
(
その
)
軒先
(
のきさき
)
には
新刊
(
しんかん
)
の
書物
(
しよもつ
)
が
大
(
おほ
)
きな
字
(
じ
)
で
廣告
(
くわうこく
)
してある。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
坐敷
(
ざしき
)
に
坐
(
すわ
)
つたまゝ
爲
(
す
)
る
事
(
こと
)
もなく
茫然
(
ぼんやり
)
と
外
(
そと
)
を
眺
(
なが
)
めて
居
(
ゐ
)
たが、ちらと
僕
(
ぼく
)
の
眼
(
め
)
を
遮
(
さへぎ
)
つて
直
(
す
)
ぐ
又
(
また
)
隣家
(
もより
)
の
軒先
(
のきさき
)
で
隱
(
かく
)
れてしまつた
者
(
もの
)
がある。それがお
絹
(
きぬ
)
らしい。
僕
(
ぼく
)
は
直
(
す
)
ぐ
外
(
そと
)
に
出
(
で
)
た。
湯ヶ原より
(旧字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
お
軒先
(
のきさき
)
をめぐつて火の
蛇
(
へび
)
がのたうち廻ると見るひまに、
囂
(
ごう
)
と音をたてて
蔀
(
しとみ
)
が五六間ばかりも一ときに吹き上げられ、御殿の中からは
猛火
(
みょうか
)
の大柱が横ざまに吐き出されます。
雪の宿り
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
こんどは
地声
(
じごえ
)
で、人なき村のある
軒先
(
のきさき
)
に立ち——こういったのは
竹童
(
ちくどう
)
である。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
人
(
ひと
)
の
聲
(
こゑ
)
は、
人
(
ひと
)
の
聲
(
こゑ
)
、
我
(
わ
)
が
考
(
かんが
)
へは
考
(
かんが
)
へと
別々
(
べつ/\
)
に
成
(
な
)
りて、
更
(
さら
)
に
何事
(
なにごと
)
にも
氣
(
き
)
のまぎれる
物
(
もの
)
なく、
人立
(
ひとだち
)
おびたゞしき
夫婦
(
めをと
)
あらそひの
軒先
(
のきさき
)
などを
過
(
す
)
ぐるとも、
唯
(
たゞ
)
我
(
わ
)
れのみは
廣野
(
ひろの
)
の
原
(
はら
)
の
冬枯
(
ふゆが
)
れを
行
(
ゆ
)
くやうに
にごりえ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
廣庭
(
ひろには
)
に
向
(
むい
)
た
釜
(
かま
)
の
口
(
くち
)
から
青
(
あを
)
い
煙
(
けむ
)
が
細々
(
ほそ/″\
)
と
立騰
(
たちのぼ
)
つて
軒先
(
のきさき
)
を
掠
(
かす
)
め、ボツ/\
雨
(
あめ
)
が
其中
(
そのなか
)
を
透
(
すか
)
して
落
(
お
)
ちて
居
(
ゐ
)
る。
湯ヶ原ゆき
(旧字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
大正十二年八月、僕は
一游亭
(
いちいうてい
)
と鎌倉へ
行
(
ゆ
)
き、
平野屋
(
ひらのや
)
別荘の客となつた。僕等の座敷の
軒先
(
のきさき
)
はずつと
藤棚
(
ふぢだな
)
になつてゐる。その又藤棚の葉の
間
(
あひだ
)
にはちらほら紫の花が見えた。
大正十二年九月一日の大震に際して
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
植込
(
うえこみ
)
の中を
一
(
ひと
)
うねりして奥へ
上
(
のぼ
)
ると左側に
家
(
うち
)
があった。明け放った
障子
(
しょうじ
)
の内はがらんとして人の影も見えなかった。ただ
軒先
(
のきさき
)
に据えた大きな鉢の中に飼ってある金魚が動いていた。
こころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
またはその用事で使いに来たりして
能
(
よ
)
く知っている
軒先
(
のきさき
)
の
燈
(
あかり
)
を指し示した。
すみだ川
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
と、先に
軒先
(
のきさき
)
を離れた。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
いや、話していないどころか、あたかも蟹は穴の中に、臼は台所の
土間
(
どま
)
の隅に、蜂は
軒先
(
のきさき
)
の蜂の巣に、卵は
籾殻
(
もみがら
)
の箱の中に、太平無事な生涯でも送ったかのように
装
(
よそお
)
っている。
猿蟹合戦
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
又
(
また
)
はその用事で使ひに来たりして
能
(
よ
)
く知つてゐる
軒先
(
のきさき
)
の
燈
(
あかり
)
を指し示した。
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
俊寛様は悠々と、
芭蕉扇
(
ばしょうせん
)
を御使いなさりながら、
島住居
(
しまずまい
)
の御話をなさり始めました。
軒先
(
のきさき
)
に垂れた
簾
(
すだれ
)
の上には、ともし火の光を尋ねて来たのでしょう、かすかに虫の
這
(
は
)
う音が聞えています。
俊寛
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「
此方
(
こつち
)
よ。」と
道子
(
みちこ
)
はすぐ
右手
(
みぎて
)
の
横道
(
よこみち
)
に
曲
(
まが
)
り、
表
(
おもて
)
の
戸
(
と
)
を
閉
(
し
)
めてゐる
素人家
(
しもたや
)
の
間
(
あひだ
)
にはさまつて、
軒先
(
のきさき
)
に
旅館
(
りよくわん
)
の
灯
(
あかり
)
を
出
(
だ
)
した二
階建
(
かいだて
)
の
家
(
うち
)
の
格子戸
(
かうしど
)
を
明
(
あ
)
け、
一歩
(
ひとあし
)
先
(
さき
)
へ
這入
(
はい
)
つて「
今晩
(
こんばん
)
は。」と
中
(
なか
)
へ
知
(
し
)
らせた。
吾妻橋
(新字旧仮名)
/
永井荷風
、
永井壮吉
(著)
軒
常用漢字
中学
部首:⾞
10画
先
常用漢字
小1
部首:⼉
6画
“軒”で始まる語句
軒
軒端
軒下
軒燈
軒昂
軒並
軒輊
軒行燈
軒前
軒家