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ふりがな文庫
“
蔵
(
くら
)” の例文
旧字:
藏
蔵
(
くら
)
にも室にも山をなしているのであるから、一日に五冊を読むとしても、仮りに五十年と見積れば十万冊は読んでいる勘定になります。
大菩薩峠:04 三輪の神杉の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
二人共、昨夜は、
納戸頭奥田孫太夫
(
なんどがしらおくだまごだゆう
)
たちと共に、
什器
(
じゅうき
)
諸道具を、鉄砲洲のお
蔵
(
くら
)
から徹夜で運んで、一睡もして居ないのであった。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
はじめて
岬
(
みさき
)
へ
赴任
(
ふにん
)
したときでも、もう明日にも人手に渡りそうな
噂
(
うわさ
)
だったその家は、
蔵
(
くら
)
の
白壁
(
しらかべ
)
が北側だけごっそりはげていた。
二十四の瞳
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
お
蔵
(
くら
)
になってしまったが、「ハボマイ返還促進同盟」の二の舞を舞う道化役者に、なるかならぬか、するかしないか、彼の意志の彼方にあろう。
望郷:――北海道初行脚――
(新字新仮名)
/
服部之総
(著)
浅草橋からお
蔵
(
くら
)
まえ、
駒形並木
(
こまがたなみき
)
、かみなり門の往来東西に五丁ほどのあいだ、三側四側につらなって境内はもとより
立錐
(
りっすい
)
の余地もない盛りよう。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
▼ もっと見る
それらには
蔵
(
くら
)
の二階の長持の中にある
草双紙
(
くさぞうし
)
の
画解
(
えとき
)
が、子供の想像に都合の好いような説明をいくらでも与えてくれた。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
家
(
いえ
)
蔵
(
くら
)
まで売りはらってしまって、それをすっかり大判小判にかえ、何百という千両箱につめて、どこか遠い山の中へ、うめかくしてしまったのです。
大金塊
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
しかし
其様
(
そんな
)
事には目もくれずお
蔵
(
くら
)
の役人衆らしいお
侍
(
さむらい
)
は
仔細
(
しさい
)
らしい
顔付
(
かおつき
)
に若党を供につれ道の
真中
(
まんなか
)
を威張って通ると
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
さては
此
(
この
)
母親の言ふに言はれぬ、
世帯
(
せたい
)
の
魂胆
(
こんたん
)
もと知らぬ人の
一旦
(
いつたん
)
は
惑
(
まど
)
へど現在の
内輪
(
うちわ
)
は娘が
方
(
かた
)
よりも
立優
(
たちまさ
)
りて、
蔵
(
くら
)
をも建つべき銀行貯金の有るやに
候
(
そろ
)
。
もゝはがき
(新字旧仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
蔵
(
くら
)
のまへのサボテンのかげにかくれては
私
(
わたし
)
とおなしに
眼
(
め
)
のわきに
黒子
(
ほくろ
)
のある、なつかしいその
人
(
ひと
)
のことを、人しれず
思
(
おも
)
ひやるならはせとなつたのです。
桜さく島:見知らぬ世界
(新字旧仮名)
/
竹久夢二
(著)
「三つ岩のひじ
蔵
(
くら
)
は
玉
(
ぎょく
)
にして一万、南谷の
石蓋
(
いしぶた
)
に小判で八千、穴底の砂金は量ってみなければわかるまいがお
祖父
(
じい
)
の代から二百万という云い伝えがある」
艶妖記:忍術千一夜 第一話
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
その家は、周囲が六、七町もある広い邸で、邸の中には大きなお
蔵
(
くら
)
が十五、六もずらりと建ち並んでおりました。
三人兄弟
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
天明
(
てんめい
)
五年正月の
門松
(
かどまつ
)
ももう取られて、武家では具足びらき、町家では
蔵
(
くら
)
びらきという十一日もきのうと過ぎた。
箕輪心中
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
言うまでもなく長者のところには、金や宝が
蔵
(
くら
)
いっぱいありましたけれど、世界中に誰も見た者がないというほど、珍らしい
珠
(
たま
)
は一つもありませんでした。
雷神の珠
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
古墳
(
こふん
)
のある
丘
(
おか
)
や、
畑
(
はたけ
)
には、
金
(
きん
)
の
蔵
(
くら
)
が
浮
(
う
)
かぶとか、
金
(
きん
)
の
鶏
(
にわとり
)
が
浮
(
う
)
かぶとかいううわさが、きまってあるものです。
銀河の下の町
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
むかし
美作
(
みまさか
)
の国に、
蔵合
(
ぞうごう
)
という名の大長者があって、広い屋敷には立派な
蔵
(
くら
)
が九つも立ち並び、蔵の中の金銀、夜な夜な
呻
(
うめ
)
き出して四隣の国々にも隠れなく
新釈諸国噺
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
夫の帰らぬそのうちと
櫛笄
(
くしこうがい
)
も手ばしこく小箱に
纏
(
まと
)
めて、さてそれを無残や
余所
(
よそ
)
の
蔵
(
くら
)
に
籠
(
こも
)
らせ、幾らかの金
懐中
(
ふところ
)
に浅黄の頭巾
小提灯
(
こぢょうちん
)
、
闇夜
(
やみよ
)
も恐れず鋭次が家に。
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
ゆえに万物の中にて、心をもって妖怪の
巨魁
(
きょかい
)
と申してよかろう。もし万物ことごとく真怪というならば、心は真怪の目、あるいは真怪の
蔵
(
くら
)
といいて差し支えない。
迷信解
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
刈上祝
(
かりあげいはひ
)
の餠搗の相どりをしたあとで、大きな
福手餠
(
ふくてもち
)
を子供に貰つてやつたら、彼等は目を丸くして喜び勇んだこともあつた。小作米が
蔵
(
くら
)
に運ばれて、
扉前
(
とまえ
)
で桝を入れる。
夜烏
(新字旧仮名)
/
平出修
(著)
天皇はそれではじめて
王
(
みこ
)
を
御前
(
ごぜん
)
へお通しになりました。それから
阿知直
(
あちのあたえ
)
に対しても、ごほうびに
蔵
(
くら
)
の
司
(
つかさ
)
という役におつけになり、たいそうな
田地
(
でんぢ
)
をもおくだしになりました。
古事記物語
(新字新仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
蔵
(
くら
)
の中も別段細かなものがたくさん置かれてあるのでなく、香の
唐櫃
(
からびつ
)
、お置き
棚
(
だな
)
などだけを体裁よくあちこちの
隅
(
すみ
)
へ置いて、感じよく居間に作って宮はおいでになるのである。
源氏物語:40 夕霧二
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
何しろダイヤモンドを持ち出したことが
露見
(
ばれ
)
ると、たちまち王様がお
蔵
(
くら
)
になるという際どい仕事なんだから、その旨も充分言いふくめて、加納商会と石田と柘植に集って貰い
魔都
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
「伝馬じゃちょっと困りますね。
蔵
(
くら
)
にはいりませんからね。それに船の伝馬じゃなおさら、何とも仕方がありませんね。どうぞ、それはまあ、何かまた別な品ででもございましたら」
海に生くる人々
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
廂
(
ひさし
)
の
深
(
ふか
)
さがおいかぶさって、
雨
(
あめ
)
に
煙
(
けむ
)
った
家
(
いえ
)
の
中
(
なか
)
は、
蔵
(
くら
)
のように
手許
(
てもと
)
が
暗
(
くら
)
く、まだ
漸
(
ようや
)
く
石町
(
こくちょう
)
の八つの
鐘
(
かね
)
を
聞
(
き
)
いたばかりだというのに、あたりは
行燈
(
あんどん
)
がほしいくらい、
鼠色
(
ねずみいろ
)
にぼけていた。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
神田から出た
北風
(
ならい
)
の火事には、
類焼
(
やけ
)
るものとして、
蔵
(
くら
)
の
戸前
(
とまえ
)
をうってしまうと店をすっかり空にし、裸ろうそくを立てならべておいたのだという、妙な、とんでもない
巨大
(
おおき
)
な
男店
(
おとこだな
)
だった。
旧聞日本橋:05 大丸呉服店
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
六畳の蔵座敷が母が針仕事などをするところで、そこに私の机も置いてあった。のぶちゃんが稽古をすませて
蔵
(
くら
)
から出てきたときに、
偶々
(
たまたま
)
そこに私が居合わせば、きっと机のそばにきた。
桜林
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
舟は西河岸の方に
倚
(
よ
)
って
上
(
のぼ
)
って行くので、
廐橋手前
(
うまやばしでまえ
)
までは、お
蔵
(
くら
)
の水門の外を通る
度
(
たび
)
に、さして来る潮に
淀
(
よど
)
む水の
面
(
おもて
)
に、
藁
(
わら
)
やら、
鉋屑
(
かんなくず
)
やら、
傘
(
かさ
)
の骨やら、お丸のこわれたのやらが浮いていて
百物語
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
「もう少し、お
蔵
(
くら
)
に火が
点
(
つ
)
きそう、もう少し、お蔵に火が点きそう……」
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
彼は疲れてしまった。彼は手を放したまま
呆然
(
ぼうぜん
)
たる
蔵
(
くら
)
のように、虚無の中へ坐り込んだ。そうして、今は、二人は二人を引き裂く死の断面を見ようとしてただ互に暗い顔を
覗
(
のぞ
)
き
合
(
あわ
)
せているだけである。
花園の思想
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
何国
(
どこ
)
に有るといふ異論も出て、到頭『八犬伝』はお
蔵
(
くら
)
と成つた。
硯友社と文士劇
(新字旧仮名)
/
江見水蔭
(著)
蔵
(
くら
)
売
(
う
)
って
日当
(
ひあた
)
りのよき
牡丹
(
ぼたん
)
かな
般若心経講義
(新字新仮名)
/
高神覚昇
(著)
「ふ、ふ。……又さん、口幅ったいようだが、この奈良井屋の
蔵
(
くら
)
には、金なんざ、千両箱であの通り重ねてある。眼の楽しみに眺めてゆくがいい」
宮本武蔵:07 二天の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
父は正月になると、きっとこの
屏風
(
びょうぶ
)
を薄暗い
蔵
(
くら
)
の中から出して、玄関の仕切りに立てて、その前へ
紫檀
(
したん
)
の
角
(
かく
)
な名刺入を置いて、年賀を受けたものである。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
山林
家
(
いえ
)
蔵
(
くら
)
椽
(
えん
)
の下の
糠味噌瓶
(
ぬかみそがめ
)
まで譲り受けて村
中
(
じゅう
)
寄り合いの席に
肩
(
かた
)
ぎしつかせての
正坐
(
しょうざ
)
、片腹痛き世や。
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
「生れたのは宇田川町、うちは小さな酒問屋だった、
蔵
(
くら
)
というのは古い酒蔵が二棟で、一つは半分
壊
(
こわ
)
れかけていたっけ、
子年
(
ねどし
)
の火事できれいに焼けちまったそうだがね」
あすなろう
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
番頭が
蔵
(
くら
)
から七兵衛おやじからの預り物、つまり、房州洲崎の暴動の際に、手早く、かき集めて、ここまで持って来てくれた白雲の財産——といっても、写生画稿が主であって
大菩薩峠:34 白雲の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
ある
蔵
(
くら
)
屋敷の客に引かされて天満の老松辺に住んでいたが、酒乱の癖が身に禍いして、兄の吉兵衛に手傷を負わせた為に、大坂じゅう
引廻
(
ひきまわ
)
しの上に獄門の処刑を受けたのであった。
心中浪華の春雨
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
二
代
(
だい
)
めが、
屋敷
(
やしき
)
を
構
(
かま
)
え、
蔵
(
くら
)
を
造
(
つく
)
ったのは、
先祖
(
せんぞ
)
の
跡
(
あと
)
を
後世
(
こうせい
)
に
残
(
のこ
)
す
考
(
かんが
)
えだったのです。ところが、三
代
(
だい
)
めになると、そんな
考
(
かんが
)
えはなく、ただ、
遊
(
あそ
)
んで
暮
(
く
)
らすことばかり
考
(
かんが
)
えていました。
武ちゃんと昔話
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
胸糞のわるいこんな札びらは
一層
(
いっそ
)
の
事
(
こと
)
水に流して、さっぱりしてしまった方がと、お
蔵
(
くら
)
の渡しの近くまで歩いて来て、じっと流れる水を見ていますと、息せき切って小走りに
行過
(
ゆきすぎ
)
る人影。
あぢさゐ
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
と言って源氏は、隣の二条院のほうの
蔵
(
くら
)
をあけさせ、絹や
綾
(
あや
)
を多く
紅
(
くれない
)
の女王に贈った。荒れた所もないが、男主人の平生住んでいない家は、どことなく寂しい空気のたまっている気がした。
源氏物語:23 初音
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
僕の
叔父貴
(
おじき
)
なんだが、津田、それから清い
蔵
(
くら
)
と書いて
清蔵
(
せいぞう
)
、知らない筈はないんだがね、やっぱりこのへんは田舎だな、身内の僕の口から言うのもへんだが、いまの日本の外交界では、まあ
惜別
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
お正月が来たからって、お餅一つ
搗
(
つ
)
けるじゃなし、持ってきた物さえ片っぱしからお
蔵
(
くら
)
へ運んで、ヘン、たまるのは質札ばかりだ——ごらんなさいッ! もうその質ぐさもないじゃありませんか
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
此品
(
これ
)
をとられてしまつてはすぐ食ふことが出来ない、自分と、三人の子供の命の
蔵
(
くら
)
は、今自分が座つて居る莚の下にある、生きたいと云ふ一念で、
良人
(
をつと
)
は恐しい土蔵破りをまでした、その一念で
夜烏
(新字旧仮名)
/
平出修
(著)
祖母のお化粧部屋は
蔵
(
くら
)
の二階だった。
旧聞日本橋:03 蕎麦屋の利久
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
蔵
(
くら
)
の二階の
金網
(
かなあみ
)
に
どんたく:絵入り小唄集
(新字旧仮名)
/
竹久夢二
(著)
それもそのはずで、あの日本左衛門の手下が荒して以来、
蔵
(
くら
)
の戸前は厳重に釘づけとなっているし、四方の
塗籠窓
(
ぬりごめまど
)
にも太い鉄の柱が打ちつけてある。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
主人はさっそく引き受けて、ぱちぱちと手を鳴らして、召使を呼んだが、
蔵
(
くら
)
の中にしまってあるのを取り出して来るように命じた。そうして宗助の方を向いて
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
前
(
さき
)
に宝の
蔵
(
くら
)
と名づけて学齢館の
需
(
もと
)
めに応じ出版せしめしに、おもひのほかに面白しとて少年諸子の、なほその
他
(
ほか
)
にも話ありや、あらば聞かせよといひ越し
玉
(
たま
)
ふもあるまま
印度の古話
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
大手門を出て
堀端
(
ほりばた
)
を右へゆき、
蔵
(
くら
)
町から横井
小路
(
こうじ
)
へぬけると馬場、その
柵
(
さく
)
に沿った片側並木の道を左にまわり、明神の森につき当って、門前を右に二丁ほどゆくと大きな池のふちへ出る。
霜柱
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
お
蔵
(
くら
)
に火がついて焼死にますから早く来て助けて下さいようと、哀鳴号泣することの代りに、こんな歌が飛び出したものであると、それを感じたから不快になり、もう、今日はこれまで
大菩薩峠:41 椰子林の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
蔵
常用漢字
小6
部首:⾋
15画
“蔵”を含む語句
土蔵
秘蔵
西蔵
蔵匿
武蔵
虚空蔵
家蔵
蔵人
大蔵
御蔵
石地蔵
腹蔵
蔵人所
酒蔵
蔵人頭
店蔵
土蔵造
仲蔵
貯蔵
西蔵犬
...