“蓋:ふた” の例文
“蓋:ふた”を含む作品の著者(上位)作品数
野村胡堂61
泉鏡花54
海野十三26
中里介山19
吉川英治19
“蓋:ふた”を含む作品のジャンル比率
文学 > 日本文学 > 小説 物語11.2%
文学 > 日本文学 > 小説 物語(児童)3.7%
文学 > 日本文学 > 詩歌1.6%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
窓に寄せて、大きな柳行李やなぎごうりふたが取ってあって、その中に達雄の筆で表題を書いたものが幾冊か取散してある。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
勘次かんじいくつかの小山こやまかたちづくつたはひわら粟幹あはがらでしつかとふたをした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
コーヒー沸かしのふたが鳴っている。三郎は、おどろいて、そのかたわらへいった。すこし沸きかたが早かったようである。
大宇宙遠征隊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
パイ軍曹はピート一等兵の肩車にのって戦車のふたを中から、しきりにとんとんと叩いて、外部と連絡をとっていたが、やがて、
地底戦車の怪人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
栄螺さざえが、そろそろとふたをもちあげるように、いまこの豆潜水艇は、昇降口の蓋を、そろそろともちあげはじめました。
豆潜水艇の行方 (新字新仮名) / 海野十三(著)
次に左ポケットからは銀のふたのついた大きな箱のようなものが出てきましたが、二人には持ち上げることができませんでした。
で、手に持っていた包み物の、包みをグルグルと解きほぐし、現われた蒔絵まきえの箱のふたを、月に向かってパッと取った。
生死卍巴 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
オヽくのかくなら少しお待ち、サ此飯櫃このおはちふたなか悉皆すつかりいておしまひ。
黄金餅 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
娘のお浪はお弓より三つ年下の十八で、房松の妹に似ず、少しお轉婆で、あわて者で可愛らしくはあるが實もふたもない娘です。
地獄の釜のふたがあくという盂蘭盆の十六日は朝から晴れて、八ツ(午後二時)ごろの日ざかりはけるように暑かった。
半七捕物帳:21 蝶合戦 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ボデイの方は、ブリキを切断して、円く胴をつくり、ふたをくっツけて締めつけ、それが空気がれないか、どうかを調べる。
工場細胞 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
とのさまがえるはそこでにやりと笑って、いそいですっかり店をしめて、お酒の石油缶にはきちんとふたをしてしまいました。
カイロ団長 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「宗ちゃん、……朝の御飯はね、煮豆が買ってふたものに、……紅生薑べにしょうがと……紙のおおいがしてありますよ。」
売色鴨南蛮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
お玉はこんな事を考えて火をいじっているうちに、鉄瓶のふたおどり出したので、湯気をらすように蓋を切った。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
私はただ屏風びょうぶいわおに、一介の栄螺さざえのごとく、孤影煢然けいぜんとして独りふたを堅くしていた。
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
穴倉へもい込んだ、洞穴どうけつにも入った、少しでもふたおおいのある下へは、皆き入ろうと努めた。
暗黒星 (新字新仮名) / シモン・ニューコム(著)
第一の原因は、コックリの装置すなわち三本の竹と飯櫃めしびつふたの、すでに動揺、回転しやすき組み立てを有するをいう。
妖怪玄談 (新字新仮名) / 井上円了(著)
女は下から黒塗のふたのついた湯飲茶碗を持って来て、テーブルの上に置いた。わたくしはくわえていた巻煙草を灰皿に入れ、
寺じまの記 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
と土瓶のふたなぞを取って、胡乱うろんそうに中をのぞいたりしているのが、何とも滑稽こっけいで仕方がなかった。
葛根湯 (新字新仮名) / 橘外男(著)
別に味淋一杯酢一杯醤油一杯の三色をよく煮詰めて火からおろした時今の鮪を入れてふたをしておくと蒸れるようになります。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
早桶はやをけは吟味したものですが、ふたをあけて覗くと、まことにそれはきもを潰さずには居られない凄まじさです。
両手にかこまれて、顔でふたをされた、敷布の上の暗黒のなかに、そう言えばたくさんの牛や馬の姿が想像されるのだった。
城のある町にて (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
風に逆らってなげた折のふたが白く舞いもどったように見えた時、三四郎はとんだことをしたのかと気がついて、ふと女の顔を見た。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それは彼が巴里から持って帰った荷造りの箱板を材料にした旅の記念で、ふただけを別の檜木ひのきの板で造らせたものであった。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
もとより、溝板どぶいたふたがあるから、ものの形は見えぬけれども、やさし連弾つれびきはまさしくその中。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
箱は能楽の仮面めんを入れるようなもので、底から薄黒い平打ちのひもをくぐらせて、ふたの上で十文字に固く結んであった。
半七捕物帳:04 湯屋の二階 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
事務室の硯箱すずりばこふたには塵埃ちりが白く、椅子はテーブルの上に載せて片づけられたままになっている。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
くしをしまいて、紙に手をふきふき、鏡台の前に立ちし千鶴子は、小さき箱のふたを開きて、たなそこに載せつつ、
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
しろ蒸氣ゆげかまふたからいきほひよくれてやがてかれてからおつぎはおこされる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
だが、ふたをあけると、どやどやとお客が押しよせてきて、たちまちしわだらけの札が、団長の帽子の中に一ぱいになってしまった。
爆薬の花籠 (新字新仮名) / 海野十三(著)
チビ公がふたをあけると巌はすぐ手をつっこんだ、それから焼き豆腐をつかみあげて皮ばかりぺろぺろと食べて中身を大地にすてた。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
いうまでもなく、この男は、生と死との間をさかいするふたに手をかけて、これを取り除こうとあせり出したものと見える。
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
百蔵は、行燈を引きずって来て、この玉手箱の傍近いところへ持寄せ、勿体もったいらしく、息をはずませてふたを払って見ると、
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ところが或る日のこと、ふとその禅僧が心づきますと硯箱すずりばこふた上絵うわえの短冊が入れてありまして、それには、
雪の宿り (新字新仮名) / 神西清(著)
朝早くまだ誰も入浴に来ないうちを見計らって、風呂のふたを開けてもらい、湯気の盛んに立つ綺麗な湯につかるのである。
そのふたに食事をするたびに、見て心得になるやうな文句を書いて欲しいと、学者の大郷おほがう信斎に頼んでよこした。
ところが或る日のこと、ふとその禅僧が心づきますと硯箱すずりばこふた上絵うわえの短冊が入れてありまして、それには、
雪の宿り (新字旧仮名) / 神西清(著)
私は厚かましく彼女の教室をのぞき、彼女の垂髪おさげに触れたり、机のふたをはぐつてお清書の点を検べたりした。
途上 (新字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
で三百の歸つた後で、彼は早速小包の横を切るのももどかしい思ひで、包裝をぎ、そしてそろ/\と紙箱のふたを開けたのだ。
子をつれて (旧字旧仮名) / 葛西善蔵(著)
路次から路次をかけ廻りながら捕手は、ゴミためのふたから空家の床下までのぞいていったが、とうとう姿が見あたらなかった。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
男は一向いっこう酒がきかなかった。しかたなしに男は床の間の香爐のふたをあけようとすると、女はすぐ袖をとらえた。
香爐を盗む (新字新仮名) / 室生犀星(著)
以前は主人がはかまをはき、風呂のふたをとって自ら湯殿へ案内し、また目が見えぬから食物の名を一々告げてすすめたという。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
下の段に積んであつた小道具の中から、紐のかゝつた手箱を出して、ふたを拂つて見ると、中から出て來たのは、男の手紙が十二本。
黒い土蔵見たいな感じの壁が、半ばはげ落ちて、そのすぐ前を、ふたのない泥溝どぶが、変な臭気を発散して流れている。
百面相役者 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
そこで、鍵を廻して、ふたをひらいてみると、中には、いくえにも厚ぼったくボロ布で包んだものがギッシリつまっていた。
黒蜥蜴 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
旅僧も私と同じくその鮨を求めたのであるが、ふたを開けると、ばらばらと海苔のりかかった、五目飯ちらしの下等なので。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
僕は大急ぎで両手でふたをしたけれども、婆やはかまわずに少しばかり石を拾って婆やのすわっている所に持っていってしまった。
碁石を呑んだ八っちゃん (新字新仮名) / 有島武郎(著)
(奥田)(あわてて鍋のふたを取り、しづの方を見て苦笑し)妹がまたきょうも、どこかへ飛び出して、帰らないものだから、どうも。
春の枯葉 (新字新仮名) / 太宰治(著)
お銀はそこへ取り散らされたいろいろの土産もののなかから、梅干の一折を見つけて、嬉しそうにふたを開けて見ていた。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
狸はやかましいやかましいふたをしてやらう。と云ひながら狼の持って来たもみを三升風呂敷のまゝみました。
洞熊学校を卒業した三人 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
赤シャツの農夫は、窓ぶちにのぼって、時計のふたをひらき、針をがたがた動かして見てから、盤に書いてある小さな字を読みました。
耕耘部の時計 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
お安い御用と言わぬばかりに、弥兵衛老人が鎧櫃のふたを取って見せると、井戸の底をでも深くのぞき込むように、お雪は傍へ寄って、
大菩薩峠:30 畜生谷の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
それからあの黄色きいろふたのしてあるはち見事みごと出來できたのをかけることもるでせう。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
「玉勝間」は逢うの枕詞で、タマは美称、カツマはカタマ(籠・筐)で、籠にはふたがあって蓋と籠とが合うので、逢うの枕詞とした。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
もっとも、このふたにはやはりいまはなしした突起とつき四隅よすみいてゐるのが普通ふつうであります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
何かの用事で構内を横ぎる時など、思はず耳にふたをせずにはゐられなかつたと、Hさんはさすがにまゆをひそめて話すのでした。
死児変相 (新字旧仮名) / 神西清(著)
まず第一の原因は、コックリの装置すなわち三本の竹と飯櫃めしびつふたの、すでに動揺、回転しやすき組み立てを有するをいう。
妖怪学 (新字新仮名) / 井上円了(著)
それでも新富座は三月興行のふたをあけて、一番目二番目から大切おおぎりの浄瑠璃まですべて新作をならべて見せた。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
また古来の伝説に龍樹菩薩が龍宮りゅうぐうに降って大般若だいはんにゃの妙典を得て来たという穴はやはり岩でふたがしてある。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
既に包装され、レッテルを貼られた紙の数連が送られて載る、パタパタパタ、トントンと四方に板を当てる、ふたをする。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
平次と島吉は幾松の行李かうりを引出しました。ふたを拂つて見ると、中はお店者たなものの着換へが一と通り詰まつてゐるだけ。
「その時はまだお勝手口に置いたまゝで、念の爲にふたをあけて見ると、手もつけずに、びてゐたんださうで――」
「親分、こいつは底もふたもありそうですぜ、行ってみましょう。金杉の竹松親分には悪いが、放っておいちゃ可哀想だ」
「しかし、たとえば、留置場か、棺桶のふたのような気がする。いや、待てよ。留置場や棺桶は、自分で這入はいるものではないが」
記憶 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
地位や権勢を利用して他人の所有物を強奪ごうだつするのでは、ふたもない野暮やぼな話で、自慢にも何もなりはしない。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
四辻よつつじく時分に、祖母としより破傘やぶれがさをすぼめると、あおく光って、ふたを払ったように月が出る。
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
式部はすぐに起ちあがって、神前に一旦供えたかの白木の箱を取りおろしてしずかにそのふたをあけると、かれの顔色がにわかに変った。
半七捕物帳:26 女行者 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「その通り、どんなものでもふたがしてあれば判らない。そのお手際てぎわじゃあ、ここにいる人間もどんなものだか判りますまいね」
半七捕物帳:26 女行者 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
三つの煙りがふたの上にかたまって茶色のたまが出来ると思うと、雨を帯びた風がさっと来て吹き散らす。
一夜 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「なに、蠅が入ってくる。ブルブルブル。蠅は鬼門きもんや。なんでもええ、あの空気孔に下からふたをはめてくれ」
蠅男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
小鉢のふたがよく合わぬので、そこから細菌が忍び入り、このようにかびが生える結果になったのに違いないと考えた。
パンドラの匣 (新字新仮名) / 太宰治(著)
彼れは手ごろの書物を探し出して、行李へふたをしようとしたはずみに、彼の躯は奇妙な恰好に捩れて、歪められた鉄管のようになった。
あめんちあ (新字新仮名) / 富ノ沢麟太郎(著)
免職と聞くより早くガラリと変る人の心のさもしさは、道理もっともらしい愚痴のふた隠蔽かくそうとしても看透みすかされる。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
ホモイはあまりむねがどきどきするので、あのかいの火を見ようとはこを出してふたひらきました。
貝の火 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
あの時までは、棺も外面だけでしたが、この時誰がしたか、その覆いが取払われて、そうして、ふたがコジあけてある。
大菩薩峠:31 勿来の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
老婆は、蒔絵まきえのある硯箱すずりばこふたをとって、水をさし、駒井の前へ置くと、駒井は墨をすりながら、
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
誰か見るとこのていは、ふたを壁にした本箱なり、押入なり、秘密のかぎを盗もう、とするらしく思われよう。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
張抜はりぬきらしい真黒まっくろ大釜おおがまを、ふたなしに担いだ、牛頭ごず馬頭めずの青鬼、赤鬼。
怨霊借用 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「君に逢ったら、いつか言って置こうと思ったが、ここには大きなどぶに石を並べてふたをした処があるがなあ。」
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
物のふたは取りのけられ、ぼろはまき散らされ、びんはこわされ、母親は泣いた様子であり、子供らはたぶんなぐられたのであろう。
右角に色彩をかわら屋根でふたをしている果物屋があって左側には小さい公設市場のあるのが芝居の書割のように見えて嘘のようだ。
豆腐買い (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
領主 (柩のふたをはずし、死せる公子の姿を現わす、屍は白き花を以て飾られたり)この屍に罪を謝し、く月桂冠を取りはずせ!
レモンの花の咲く丘へ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
そして、適宜てきぎ醤油しょうゆをかけ、玉露ぎょくろ煎茶せんちゃを充分にかけ、ちょっとふたをする。
鱧・穴子・鰻の茶漬け (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
*うなぎ酒はふた茶碗にうなぎの焼いたのを入れて熱い酒をかけて、茶碗の蓋をしたままむ。この場合は関西風の焼き方にかぎる。
料理メモ (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
横巾一尺五寸近くの楕円のひつでありますが、そのふたの上に大まかに色漆いろうるしで牡丹の模様を描きます。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
「あの間違のあつた日は、ふたをあけて、直ぐだつたと言ふから、お松が珠を取ることは前から、解つて居たわけだね」
「それも、埃だらけになつてゐる、古い空樽の中に突つ込んで、棧俵法師さんだらぼふしふたをしてあつたさうで」
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
「親分、こいつは底もふたもありさうですぜ、行つて見ませう。金杉の竹松親分には惡いが、放つて置いちや可哀想だ」
見ると、こひは、状筥じょうばこを持っていた。今、玄関に使いが見えておりますというのである。状筥を膝へ取って、ふたを払うと、
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
他人ひとの喰べる物とは思われず、藤吉郎はあわててふたの上の杓子しゃくしをつかみ、大鍋の底をかきまわした。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
安公がでこぼこの棺のなかをならしながら、ぐいぐいしつけると、「おい来たよう。」とふたがやがてぴたりとおろされた。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「いけねえよ、それに手をかけちゃあ、大事な品ものだ。あッしが自分でふたを払いますが、御隠居、人ばらいをお願い申してえんで――」
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
お母さんがなみだをふきながらはこを出して来ました。お父さんははこふたひらいて見ました。
貝の火 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
と、帆村は手近の一つの樽の方へ近づいて、彼が、さっき落したと同じふたを手で取払って内部をのぞきこんだ。
流線間諜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そうして、ふたのとられた行器ほかいの中には、新鮮な杉菜すぎなに抱かれた鹿や猪の肉の香物こうのものが高々と盛られてあった。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
窓は開いているし、ひらきの外は音信おとずれは絶えたり、外に開けるものは、卓子テエブル抽斗ひきだしか、水差のふた……
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ふた付きの茶碗二個。皿一枚。ワッパ一箇。はし一ぜん。――それだけ入っている食器箱。フキン一枚。土瓶どびん。湯呑茶碗一個。
独房 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
その文庫というのは、頃合ころあい手匣てばこで、深さも相応にあり、ふた中高なかだかになっていて柔かい円みがついている。
平吉は長櫃ながもちふたけた。中には松に鶴の模様のある懸蒲団かけぶとんが三枚入っていた。裏は萌黄もえぎであった。
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「中々、うちだね。思ったより好い」と賞めた。代助は黙って巻莨入まきたばこいれふたを開けた。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
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