おわ)” の例文
いやいや、はじめがあればおわりのあるものだ。まれたものはかならぬにまったものだ。これは人間にんげんさだまったみちでしかたがない。
夢殿 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
然しトルストイは理想を賞翫しょうがんして生涯をおわる理想家で無い、トルストイは一切の執着しゅうちゃく煩悩ぼんのうを軽々にすべける木石人で無い
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
そなたもその仲間なかまにまじって、領土をあらそう武門ぶもんおわりたいか。わたしは、そなたを見こんで、ねがいがある。よく考えてたもれ、大事なときだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それからまわりがまっさおになって、ぐるぐるまわり、とうとう達二は、ふかい草の中にたおれてしまいました。牛の白いぶちおわりにちらっと見えました。
種山ヶ原 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
昨夜、外科医として有名なドラトル博士は夫人や令嬢と一緒に芝居を見に行ったが、そのおわり頃に二人の従者を連れた一人の紳士が来て博士にいった。
ええ、生甲斐いきがい生活せいかつだ、如何いかにも残念ざんねんなことだ、この苦痛くつう生活せいかつがオペラにあるような、アポテオズでおわるのではなく、これがああおわるのだ。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
といいながら、それを開けて、蒲鉾の撮食つまみぐいだの、鯛の骨しゃぶりを初めて、やがて、すっかり、食いおわったので
狸問答 (新字新仮名) / 鈴木鼓村(著)
しかもその苦しさ切無せつなさといったら、昨夜ゆうべにも増して一層いっそうはなはだしい、その間も前夜より長くおさえ付けられて苦しんだがそれもやがて何事もなくおわったのだ
女の膝 (新字新仮名) / 小山内薫(著)
彼は中々の横着者おうちゃくもので、最初はじめ兎角とかくに自分の素性来歴を包もうと企てたが、要するにれは彼の不利益におわった。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
その問答もんどう大体だいたいんなところでおわりましたが、うした一人ひとりのやさしい指導者しどうしゃつかったことは、わたくしにとりて、どれだけ心強こころづよさであったかれませぬ。
但し今の世間に女学と言えば、専ら古き和文を学び三十一文字みそひともじの歌を詠じて能事のうじおわるとする者なきに非ず。
新女大学 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
噛り着いていた小児こどもは、それなり、薄青い襟を分けて、真白な胸の中へ、頬も口も揉込もみこむと、恍惚うっとりとなって、もう一度、ひょいと母親の腹の内へ安置されおわんぬで
霰ふる (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
故にこれを文学としまた思想として研究する時は、一の謎としておわるのみである。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
始発駅しはつえきで、さけのつみこみをおわって、戸をしめるすきにはいりこんだものだろうが、なにしろひとりで汽車へりこんだくまもめずらしいというので、駅員えきいんたちがだいじにっていたが
くまと車掌 (新字新仮名) / 木内高音(著)
岩穴に入りておわる、衆初めて其伏流ふくりうなるをり之をとす、山霊はだして尚一行をあざむくの意乎、将又たはむれに利根水源の深奥はかるべからざるをよさふの意乎、此日の午後尾瀬がはらいたるの途中
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
主人は、口をことに結びて、みつけ居たりしが、今、江戸川にて自ら釣りしといひし鮒を、魚屋より取りしと披露されては、堪へきれず、其の説のおわるを待たず、怒気を含みて声荒々しく
元日の釣 (新字旧仮名) / 石井研堂(著)
母御前はゝごぜ意地いぢわるにさからふやうのこときみとしてきに相違さういなけれどもこれだい一にこゝろがけたまへ、ふことはおほし、おもふことはおほし、れはおわるまできみのもとへふみ便たよりをたゝざるべければ
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
大方おおかた己のために不思議の世界を現じた楽人は、詰らぬ乞食か何かで、かどに立って楽器を鳴らしていたのが、今は曲をおわったので帽子でも脱いで、その中へ銅貨を入れて貰おうとしているのだろう。
尤もそれで能事のうじおわれりと思っているようなら賢夫人である。
髪の毛 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
その中を、どう逃げおわせることが出来るものか。
悪魔の紋章 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
おわりに氏の近来きんらい逸話いつわを伝えます。
蜻蛉とんぼうは亡くなりおわんぬ鶏頭花けいとうか
五百句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
何をするんだと云ったら、なんだ、のう学校おわったって自分だけいいことをするなと云うのだ。ぼくもむっとした。
或る農学生の日誌 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
(——この日、逆将明智光秀の首級を検し、亡君信長公のとむらい合戦、ここにおいて、首尾よく遂げ果しおわんぬ)
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いもおわらず、プイと姿すがたをおしになり、そしてそれとかわりにわたくし指導役しどうやくのおじいさんが、いつのにやられいながつえをついて入口いりぐちってられました。
人間にんげんのいのちは一だいだけでおわるものではない。まえとこののちと、三だいもつづいている。だからまえわるいことをすれば、このでそのむくいがくる。
夢殿 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
といって、紙の内から、例の塩鰹しおかつおを出して私はムシャムシャ初めて、とうとう皆食いおわって
狸問答 (新字新仮名) / 鈴木鼓村(著)
かれは五六にん患者かんじゃ診察しんさつおわると、ふいと診察所しんさつじょからってしまう。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
沙車さしゃの春のおわりには、野原いちめんやなぎの花が光ってびます。遠くのこおりの山からは、白い何ともえずひとみいたくするような光が、日光の中をってまいります。
雁の童子 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
しかしそれからもなく、あの北條ほうじょうとの戦闘いくさおこったので、わたくしのぞみはとうとうげられずにおわりました。
義貞、やぶれおわんぬ——
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それは少年少女おわりごろから、アドレッセンス中葉ちゅうようたいする一つの文学としての形式けいしきをとっている。
腕時計も六時、柱時計の音も六時なのにそのはりは五時四十五分です。今度こんどはおくれたのです。さっき仕事しごとおわって帰ったときは十分すすんでいました。さあ、今だ。
耕耘部の時計 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
それに実際じっさいそこを海岸と呼ぶことは、無法むほうなことではなかったのです。なぜならそこはだいと呼ばれる地質時代ちしつじだいおわごろ、たしかにたびたび海のなぎさだったからでした。
イギリス海岸 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「やあこれで解散かいさんだ。諸君しょくんめでたしめでたし。ワッハッハ。」とやって会はおわりました。
紫紺染について (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
草からはしずくがきらきらち、すべてのくきも花も、今年のおわりの陽の光をっています。
種山ヶ原 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
丁度一学期がっき試験しけんんでその採点さいてんおわりあとは三十一日に成績せいせき発表はっぴょうして通信簿つうしんぼわたすだけ、わたくしのほうからえばまあそうです、農場のうじょう仕事しごとだってその日の午前でむぎ運搬うんぱんも終り
イギリス海岸 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
私は老人ろうじんが、もう食事もおわりそうなのを見てたずねました。
雁の童子 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)