終日しゅうじつ)” の例文
なつになるとそれらが、あかみどり、さまざまのはないてうつくしかったのです。ちょうや、はちは、終日しゅうじつはなうえびまわっていました。
青いランプ (新字新仮名) / 小川未明(著)
ことに、その前々日は終日しゅうじつ家にいて床についていたし、その前日は、炬燵こたつの中で終日、日米関係の本を読んでいた始末であった。
三重宙返りの記 (新字新仮名) / 海野十三(著)
死んだくろあにが矢張黒と云った。遊びに来ると、しろが烈しくねたんだ。主人等が黒に愛想をすると、白は思わせぶりに終日しゅうじつ影を見せぬことがあった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
桜井の家は蓮正寺れんしょうじの近所で、おまいりの鰐口わにぐちの音が終日しゅうじつ聞こえる。清三は熊谷に行くと、きっとこの二人を訪問した。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
寒暖計の水銀はれい点下三十度にくだる日が少なくなかった。少年らは終日しゅうじつ室内から一歩も出ることはできない。かれらは喜んで富士男の指揮しきにしたがった。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
そこでもかれ宿やどからずに、終日しゅうじつ相変あいかわらず長椅子ながいすうえころがり、相変あいかわらずとも挙動きょどう愛想あいそうかしている。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
船長は午後の約三十分、後甲板へ出てくる以外は、終日しゅうじつ自分の部屋にとじこもっていた。
谷川の水に終日しゅうじつ首までつかっていたり、重い荷を背負って山道を上がり下りしたり、むずかしい書物を何千回も写し直したり、一月の間も無言でいたり、いろんな辛いことがありました。
手品師 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
ゆえに雨天うてんの日は終日しゅうじつ開かなく、また夜中もむろんじている。閉じるとその形がふでの形をしていてねじれたたんでいる。色は藍紫色らんししょくで外は往々褐紫色かっししょくていしているが、まれに白花のものがある。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
机の前におりながら、終日しゅうじつ木枯こがらしさらされたかのごとくに見える。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その日のヘルマンは終日しゅうじつ、不思議に興奮していた。
終日しゅうじつかたって一かたらず。
仏教人生読本 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
そして、一のように、おもいものをったり、終日しゅうじつはたらきつづけるというようなことは、いまでは困難こんなんかんじられたのであります。
博士自身も、この研究所にみずから一分科を担任して、終日しゅうじつ試験管やレトルトのそばをはなれない。その研究題目は「化学による生物の人造法」というのである。
国際殺人団の崩壊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
雨は終日しゅうじつやまなかった。こわ田舎いなかの豚肉も二人をあわく酔わせるには十分であった。二人は高等師範のことやら、旧友のことやら、戦争のことやらをあかず語った。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
田圃の小川では、葭切よしきりが口やかましく終日しゅうじつさわいで居る。杜鵑ほととぎすいて行く夜もある。ふくろうが鳴く日もある。水鶏くいながコト/\たゝくよいもある。螢が出る。せみが鳴く。蛙が鳴く。蚊が出る。ブヨが出る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
ただ地理学教授法を訳して露命をつないでいるようでは馬車馬がまぐさを食って終日しゅうじつけあるくと変りはなさそうだ。おれにはおれがある。このおれを出さないでぶらぶらと死んでしまうのはもったいない。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そのはずで、いくら、木々きぎのつぼみはふくらんできましても、この垣根かきね内側うちがわには、あたたかな太陽たいよう終日しゅうじつらすことがなかったからであります。
小さな草と太陽 (新字新仮名) / 小川未明(著)
みせは、想像そうぞうしたほどおおきくなかったが、各種かくしゅ蓄音機ちくおんきや、新型しんがた電蓄でんちくがならべてあり、レコードは、終日しゅうじつ回転かいてんしていました。
しいたげられた天才 (新字新仮名) / 小川未明(著)
こうして二人ふたりのものは、終日しゅうじつこのまちなかをむなしくあるきまわって、つかれて空腹をかんじて、日暮ひぐがたになると、どこへともなくかえってゆくのでした。
黒い旗物語 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そして、終日しゅうじつ、そこでふえき、うたをうたって、れるころになると、どこへか、二人ふたりかえってゆきました。
港に着いた黒んぼ (新字新仮名) / 小川未明(著)
太陽たいよう終日しゅうじつはなうえあかるくらして、みつばちは、あさかられるまで、はななかをうなりつづけていました。
牛女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
みちうえには、おもせて停車場ていしゃじょうにゆくくるまがつづいていました。また、停車場ていしゃじょうからほかへはこんでゆくくるまなどで、終日しゅうじつるがようにられたのであります。
くわの怒った話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
かわのふちに、あざみがつつましやかにいていました。終日しゅうじつだれとはなしをするものもなくいていたのです。
なまずとあざみの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
またらしにもこまらずに、終日しゅうじつのよくたるところにて、ひなたぼっこをしていました。
ものぐさじじいの来世 (新字新仮名) / 小川未明(著)
太陽たいようが、だんだん方向ほうこうえて、レールのうえがかげり、うえつめたくなって、したえだには終日しゅうじつたらないことがあるようになってから、かれは、たかえだにからんだ
雪くる前の高原の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
子供こどもたちのするままになって、終日しゅうじつそとへほうりされているようなこともありました。
あるまりの一生 (新字新仮名) / 小川未明(著)
おとこあたまかみ半分はんぶんしろくなりました。とりとしをとってしまいました。おとこは、とりくことや、象眼ぞうがんをすることが上手じょうずでありました。終日しゅうじつ、二かい一間ひとま仕事しごとをしていました。
あほう鳥の鳴く日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
なみおとは、無心むしんに、終日しゅうじつきし岩角いわかどにぶつかって、くだけて、しぶきをあげていました。
海のかなた (新字新仮名) / 小川未明(著)
このさわぎに、あほうどり行方ゆくえが、わからなくなりました。おとこはどんなにか、そのことをかなしんだでしょう。かれは、あとって、終日しゅうじつ、あほうどりかえってくるのをっていました。
あほう鳥の鳴く日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
終日しゅうじつかぜおとと、あめおとと、まれにとりこえしかしなかった平原へいげんが、たちまちのあいだに、くさこそぎにされて、寸々すんずんにちぎられ、そらばされるような大事件だいじけんがりました。
戦友 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ふゆあいだじゅう、二ひきのねこは、このあたりの屋根やねをすみかとし、終日しゅうじつ日当ひあたりをさがして、あるいていました。そのうち、はるとなるころには、ねこは、もうだいぶおおきくなっていました。
どこかに生きながら (新字新仮名) / 小川未明(著)
とうげつとやまおくにもやまかさなりかえっていました。それらの山々やまやまは、まだふゆねむりからめずにいます。このへん終日しゅうじつひとかげないところでした。ただ、ともぶ、うぐいすのこえがしました。
らんの花 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ちょうは、じっとして、終日しゅうじつ、そのはなうえまっていました。もとの野原のはらかえろうとおもっても、いまは方角ほうがくすらわからないばかりか、とおくて、きずついたには、それすらできないことでありました。
ちょうと怒濤 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのは、終日しゅうじつがんたちは、湖上こじょうかなしみさけんでいました。
がん (新字新仮名) / 小川未明(著)
かれは、終日しゅうじつ昨夜ゆうべゆめおもしてかんがんでいました。
塩を載せた船 (新字新仮名) / 小川未明(著)