いわ)” の例文
こんなさいに、領下の名主や神職たちが、土豪の門へ、いわごとをのべに来る例はあっても、かかる前例は、かつて聞いたことがない。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
子供の出生をいわう手紙は友達から幾つとなく届いていたが、その一通である吉川英治氏の手紙によって、私は金環蝕の意味をはじめて知った。
親馬鹿入堂記 (新字新仮名) / 尾崎士郎(著)
ルイだのとばれる名前の人たちの数はおびただしいもので、したがってそういういわには、花たばやら花びんを買って
それは下界げかいはにぎやかなものでございます。毎日毎日まいにちまいにち、たくさんな婚礼こんれいがあって、いわいのかねひびいています。
消えた美しい不思議なにじ (新字新仮名) / 小川未明(著)
その凶報きょうほうはおだやかなりし老人の胸を攪乱かくらんしたばかりでなく、宵祭よいまつりをいわうべき平和な家庭をもかきにごした。
告げ人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
白いめしくのは神の日かほとけの日、節供せっく・祭礼・いわい事のような、折目立おりめだった日に限るのが普通であった。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
だんだんやまふかはいっていって、あるむらの中にはいりますと、なにかおいわごとがあるとみえて、方々ほうぼうでぺんたらこっこ、ぺんたらこっこ、もちをつくおとがしていました。
しっぺい太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
かくて、吾等われら大暴風雨だいぼうふううのちに、晴朗うらゝか天氣てんきるやうに、非常ひじやうよろこびをもつ大佐たいさいへいた。それから、吾等われら命拾いのちひろひのおいわひやら、明日あす凖備じゆんびやらで大騷おほさわぎ。
また彼は家の人たちのいわい日を一わすれることがなかった。だれかのいわい日になると、きっとやってきて、心をこめてえらんだかわいい贈物おくりものをポケットからとりだした。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
そうするうちにも、今日きょう鎮座祭ちんざさいのことは、はやくもこちらの世界せかい各方面かくほうめんつうじたらしく、わたくし両親りょうしん祖父母そふぼ良人おっとをはじめ、そのほかおおくの人達ひとたちからのおいわいの言葉ことば
彼の死んだ知らせを聞いたのはちょうど翌年よくとしの旧正月だった。なんでものちに聞いた話によれば病院の医者や看護婦たちは旧正月をいわうために夜更よふけまで歌留多かるた会をつづけていた。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
しかしです、新生活しんせいかつあかつきかがやいて、正義せいぎかちせいするようになれば、我々われわれまちでもおおいまつりをしてよろこいわいましょう。が、わたしはそれまではたれません、その時分じぶんにはもうんでしまいます。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
そのいわい赤飯こわめしだ。その上に船賃ふなちんを取らんのだ。乗合のりあいもそれは目出度めでたいと言うので、いくらか包んでる者もあり、即吟そくぎんで無理に一句浮べる者もありさ。まあおもい思いにいわッてやったとおもいたまえ。
取舵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
実枝が茶目っ気を出して、それに盃を添えてだすと、初めはためらっていた重吉もいわい酒ということに気を軽くしたらしく、床の上に起きなおって嬉しそうにそれを受けた。三年ぶりであった。
(新字新仮名) / 壺井栄(著)
たとえば無骨ぶこつ一偏の人と思った者にして、案外にも美音を発して追分おいわけうたう、これも一つの表裏ではあるまいか。またひげもやもやの鹿爪しかつめらしきおやじが娘の結婚の席上で舞を舞いていわうことがある。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
「じゃあ感心に謝肉祭しゃにくさいのおいわいをするのだな、まあけっこうよ。おれははらっているのだ。晩飯ばんめしはなんのごちそうだ」
山車だしうえのおじいさんは、両側りょうがわみせをのぞくように、そして、その繁昌はんじょういわうように、にこにこして見下みおろしました。やがて、山車だしは一けん骨董店こっとうてんまえとおりました。
さかずきの輪廻 (新字新仮名) / 小川未明(著)
あのづるへんわが故國ここくでは今頃いまごろさだめて、都大路みやこおほぢ繁華はんくわなるところより、深山みやまをくそま伏屋ふせやいたるまで、家々いへ/\戸々こゝまる國旗こくきひるがへして、御國みくにさかえいわつてことであらう。
今年ことしものがれたといって、おもちをついておいわいをいたしますが、ったいえこそ、それはみじめなもので、もうその日からうちじゅうむすめなかかかえて、ひるよるとおして
しっぺい太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
里人たちに恩賞おんしょうをやって追いかえしたのち、民部みんぶはそばからいわいのことばをのべた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わたくしをおいわいなすってください。』
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
アッケンのお父さんは、においあらせいとうの季節きせつがすむと、七月、八月のいわの用意にせっせとかかっていた。
吾等われらとう印度洋インドやうこの孤島はなれじまへだゝつてつても、么麽どうしてこのいわはずにられやう、去年きよねんも、一昨年おとゞしも、當日たうじつ終日しうじつげふやすんで、こゝろばかりの祝意しゆくゐひやうしたが、今年ことし今日けふといふ今日けふ
やがて、あきれがすむと、むらいわまつりが、やしろ境内けいだいで、もよおされました。彼女かのじょはこの、七にんおとこたちからけた七めんかがみを、ひもでとおして、くびにかけておどるのでした。
うずめられた鏡 (新字新仮名) / 小川未明(著)
武術ぶじゅつ酒気しゅきのあるのは禁物きんもつということ、未熟者みじゅくものにとってはことにだいじな試合しあい、もし不覚ふかくがあってはものわらいのたねともあいなるから、まず、おこころざしだけをうけて、おいわいはあとでちょうだいいたす
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ふん、それでなぜおいわいをするのだろう。」
しっぺい太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「おじゃまをしてすみませんでした。けれどわたくし、おいわいを申し上げたいと思いました」
むらひとたちは、牛女うしおんな子供こども出世しゅっせをしたのをよろこび、いわいました。
牛女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
失礼しつれいだが、おいわいに、一こんまいろう」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今夜わたしのやしきには貧窮ひんきゅうであった時代の友だちが集まって、いっしょに洗礼式せんれいしきいわおうとしている、わたしの書きつづった少年時代の思い出は一さつの本にできあがっていた。