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瞳
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ひとみ
ふりがな文庫
“
瞳
(
ひとみ
)” の例文
童話の創作熱に魂の燃えた時に、はじめて、私の眼は、無窮に、澄んで青い空の色を
瞳
(
ひとみ
)
に映して、
恍惚
(
こうこつ
)
たることを得るのであります。
『小さな草と太陽』序
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
ピカルディーの
田舎者
(
いなかもの
)
の目が有し得るすべての輝きが、フォーシュルヴァンの
瞳
(
ひとみ
)
をよぎった。ある考えが彼に浮かんできたのである。
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
男爵はいちばん高い櫓にのぼり、遠くに伯爵とその従者たちが見えないものかと思って
瞳
(
ひとみ
)
をこらした。一度は彼らを見たと思った。
幽霊花婿:ある旅人の話
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
瞳
(
ひとみ
)
というものの後側も見えるものであったら、この二人の人の瞳は実際は一つの瞳であってどちらも外すことができないものであろう。
姫たちばな
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
雪童子の
瞳
(
ひとみ
)
はちよつとをかしく燃えました。しばらくたちどまつて考へてゐましたがいきなり
烈
(
はげ
)
しく鞭をふつてそつちへ走つたのです。
水仙月の四日
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
▼ もっと見る
お梶が、死んで以来、藤十郎の茂右衛門の芸は、愈々
冴
(
さ
)
えて行った。彼の
瞳
(
ひとみ
)
は、人妻を奪う罪深い男の苦悩を、ありありと刻んでいた。
藤十郎の恋
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
欣弥は頷きたりし
頭
(
かしら
)
をそのまま
低
(
た
)
れて、見るべき物もあらぬ橋の上に
瞳
(
ひとみ
)
を凝らしつつ、その胸中は二途の分別を追うに忙しかりき。
義血侠血
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
幸子はついぞ
見馴
(
みな
)
れない、今朝出て行った時とは全く違う銘仙の
単衣
(
ひとえ
)
を着て、大きな
瞳
(
ひとみ
)
を一直線に此方に据えて立っている妙子を見た。
細雪:02 中巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
ラスコーリニコフは布のように真青な顔をして、その黒い燃えるような
瞳
(
ひとみ
)
を副署長の視線から放さず、ちぎれちぎれな声で鋭く答えた。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
遠光はもう返事もしないで、相手の
瞳
(
ひとみ
)
を一心に睨んでいると、玉藻はなんと感じたか俄に扇でそのおもてを隠しながら高く笑った。
玉藻の前
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
俺はいまようやく
瞳
(
ひとみ
)
を据えて桜の花が見られるようになったのだ。昨日、一昨日、俺を不安がらせた神秘から自由になったのだ。
桜の樹の下には
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
その黒猫は大きな
瞳
(
ひとみ
)
をして、じっと夫人をみつめていた。置物のように動かないで、永遠に静かな姿勢をしてうずくまっていた。
ウォーソン夫人の黒猫
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
黒いダブダブの洋服を着て、
痩
(
や
)
せて、顔におそろしく
皺
(
しわ
)
があった。目は澄んでいた。茶色の
瞳
(
ひとみ
)
だった。顔にも老年のシミが目立っていた。
悪霊物語
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
瞳
(
ひとみ
)
のない
銀杏
(
ぎんなん
)
形の眼と部厚い
唇
(
くちびる
)
、その口辺に浮んだ魅惑的な微笑、人間というよりはむしろ神々しい野獣ともいえるような御姿であった。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
「
綾小路
(
あやこうじ
)
さんがいらっしゃいました」と、雪は
籠
(
かご
)
の中の小鳥が人を見るように、くりくりした目の
瞳
(
ひとみ
)
を秀麿の顔に向けて云った。
かのように
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
素戔嗚はあの美貌の若者へ、燃えるような
瞳
(
ひとみ
)
を移した。が、彼はやはり藁の中に、気を失ったのか、
仮死
(
そらじに
)
か、眼を閉じたまま倒れていた。
素戔嗚尊
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
瞼
(
まぶた
)
を
閉
(
と
)
ぢて、
瞳
(
ひとみ
)
に
落
(
お
)
ちる光線を謝絶して、静かに
鼻
(
はな
)
の
穴
(
あな
)
丈で
呼吸
(
こきう
)
してゐるうちに、
枕元
(
まくらもと
)
の
花
(
はな
)
が、次第に
夢
(
ゆめ
)
の
方
(
ほう
)
へ、
躁
(
さわ
)
ぐ意識を
吹
(
ふ
)
いて行く。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
倐忽
(
たちまち
)
に
瞳
(
ひとみ
)
を
凝
(
こら
)
せる貫一は、愛子の
面
(
おもて
)
を熟視して
止
(
や
)
まざりしが、やがてその
眼
(
まなこ
)
の中に浮びて、輝くと見れば
霑
(
うるほ
)
ひて出づるものあり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
瞳
(
ひとみ
)
をこらして見ていれば、さっさつたる
怪影
(
かいえい
)
は、
関
(
せき
)
の
山
(
やま
)
から
竹生島
(
ちくぶしま
)
のあたりへかけて、ゆうゆうと
翼
(
つばさ
)
をのばして
舞
(
ま
)
うのであった。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
黒い夜空ににおいそめた明星のように、チラリチラリと、眼をあげるたびに、星のような
瞳
(
ひとみ
)
が輝き、
懐
(
なつか
)
しいまたたきを見せる。
一世お鯉
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
瞳
(
ひとみ
)
を
凝
(
こ
)
らしてよく見ると、それが女の
冠
(
かぶ
)
るかつぎであることが
判
(
わか
)
り、それを冠ったまま、
娘
(
むすめ
)
が一人
倒
(
たお
)
れているのが判りました。
鯉魚
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
死体になった丈吉は、
衣紋
(
えもん
)
の崩れもなく、
瞳
(
ひとみ
)
へ真っ直ぐに立った畳針を見ると、争いがあったとは思いも寄らなかったのです。
銭形平次捕物控:030 くるい咲き
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
眼
(
まなこ
)
の光
濁
(
にご
)
り
瞳
(
ひとみ
)
動くこと遅くいずこともなくみつむるまなざし鈍し。
纒
(
まと
)
いしは
袷
(
あわせ
)
一枚、裾は短かく
襤褸
(
ぼろ
)
下がり濡れしままわずかに
脛
(
すね
)
を隠せり。
源おじ
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
そして平安な息を続けてゐるけれども、意識はすでに清明ではなかつた。時々眼を半眼に開き、
瞳
(
ひとみ
)
はもはや大きくなつてゐた。
島木赤彦臨終記
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
眼だけが、偏執的に光りながら、伏せている兵隊の背にあちこち動いた。燃えるような
瞳
(
ひとみ
)
のいろであった。不意に振り返り、私の方を見た。
桜島
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
流眄、すなわち流し目とは、
瞳
(
ひとみ
)
の運動によって、
媚
(
こび
)
を異性にむかって流し
遣
(
や
)
ることである。その様態化としては、横目、
上目
(
うわめ
)
、
伏目
(
ふしめ
)
がある。
「いき」の構造
(新字新仮名)
/
九鬼周造
(著)
濱島
(
はまじま
)
は
船
(
ふね
)
の
舷梯
(
げんてい
)
まで
到
(
いた
)
つた
時
(
とき
)
、
今
(
いま
)
一
度
(
ど
)
此方
(
こなた
)
を
振返
(
ふりかへ
)
つて、
夫人
(
ふじん
)
とその
愛兒
(
あいじ
)
との
顏
(
かほ
)
を
打眺
(
うちなが
)
めたが、
何
(
なに
)
か
心
(
こゝろ
)
にかゝる
事
(
こと
)
のあるが
如
(
ごと
)
く
私
(
わたくし
)
に
瞳
(
ひとみ
)
を
轉
(
てん
)
じて
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
そんな問答が聞えるのか聞えないのか、おせんは泣き叫ぶ子を揺すりながら、
瞳
(
ひとみ
)
のぬけたような眼でじっとどこかをみつめるばかりだった。
柳橋物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
君ら二人の目は
悒鬱
(
ゆううつ
)
な熱に輝きながら、互いに
瞳
(
ひとみ
)
を合わすのをはばかるように、やや燃えかすれたストーブの火をながめ入る。
生まれいずる悩み
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
庸三は
窶
(
やつ
)
れたその顔を見た瞬間、一切の光景が目に
彷彿
(
ほうふつ
)
して来た。葉子のいつも黒い
瞳
(
ひとみ
)
は光沢を失って
鳶色
(
とびいろ
)
に乾き、
唇
(
くちびる
)
にも生彩がなかった。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
私の家来のフラテはこの水をさも
甘
(
うま
)
そうにしたたかに飲んでいた。私は
一瞥
(
いちべつ
)
のうちにこれらのものを自分の
瞳
(
ひとみ
)
へ刻みつけた。
西班牙犬の家:(夢見心地になることの好きな人々の為めの短篇)
(新字新仮名)
/
佐藤春夫
(著)
薄曇りの空には微熱にうるむ
瞳
(
ひとみ
)
がぼんやりと感じられた。と、コンクリートの
塀
(
へい
)
に添う並木の姿が彼の眼にカチリと触れた。
死のなかの風景
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
彼女の
瞳
(
ひとみ
)
の底に刻みつけられた
凜々
(
りり
)
しく逞しい小姓の姿の中に、昨日までの藤作のおもかげは、もはや探るべくもなかった。
本所松坂町
(新字新仮名)
/
尾崎士郎
(著)
彼女は、そう言う私の顔をすこし近眼じみた可愛い
瞳
(
ひとみ
)
でチョット見上げていたが、何故か多少、
悄気
(
しょげ
)
たように
俛首
(
うなだ
)
れて軽いタメ息を一つした。
少女地獄
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
彼女は
膝
(
ひざ
)
の上に
両肘
(
りょうひじ
)
を
凭
(
もた
)
せて、
頤
(
あご
)
を支えながらじいっと、湖へ
瞳
(
ひとみ
)
を投じています。彼女に膝を並べて、私も言葉もなく、湖を
眺
(
なが
)
めていました。
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
というのは、そのだぼはぜ嬢が、
愈々
(
いよいよ
)
、
瞳
(
ひとみ
)
に
媚
(
こび
)
をたたえて、「けっして、助平とは思わないでね」とウインクをするのです。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
毎朝の抜毛と、海と同じ様な碧色の黒みがかった様な色をした白眼の中にポッカリと
瞳
(
ひとみ
)
のただよって居る私の眼は、見るのが辛い様な気がする。
秋毛
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
その眼は——かつて彼がとらえ得なかった未知の眼は——彼の上にすえられていた。
瞳
(
ひとみ
)
の大きな、燃えたったきびしい視線の、青黒い眼だった。
ジャン・クリストフ:11 第九巻 燃ゆる荊
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
私達の
瞳
(
ひとみ
)
はそこでかち合った。私はどぎまぎした。が、こうなってはもう、私は私の心持ちを思いきって言わねばならぬ。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
中村さんは「この色でしょうね、幼児の
瞳
(
ひとみ
)
をのぞいたような感じというのは」とそのうちの一つを指して教えてくれた。
南画を描く話
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
しかし、その声は彼女の唇をもれなかったので、彼女の両の
瞳
(
ひとみ
)
の周囲には矢張り淡黄な光りが一ぱいにたゞよって、その静寂は一つも動かなかった。
青白き夢
(新字旧仮名)
/
素木しづ
(著)
ふとさう
呟
(
つぶや
)
きながら、私は
瞳
(
ひとみ
)
を返して遠くなつた修道院の方を振り返つた。が、その時ポプラの林を背景にした建物の姿はもう岬の
蔭
(
かげ
)
に
隱
(
かく
)
れてゐた。
処女作の思い出
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
それは
太陽
(
たいやう
)
の
強烈
(
きやうれつ
)
な
光線
(
くわうせん
)
が
私
(
わたし
)
の
瞳
(
ひとみ
)
を
射
(
い
)
つたからではなかつた。
反對
(
はんたい
)
に、
光
(
ひかり
)
は
柔
(
やはら
)
かに
私
(
わたし
)
の
胸
(
むね
)
に
滲
(
し
)
み
入
(
い
)
つたのである……。
日の光を浴びて
(旧字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
クロオジヤスの
后
(
きさき
)
メッサライナ。メッサライナは、アグリパイナの
瞳
(
ひとみ
)
をひとめ見て、これは、あぶない、と思った。烈々の、野望の焔を見てとった。
古典風
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
アーサー君は、
瞳
(
ひとみ
)
の青い、金髪のふさふさした可愛い少年だ。兎のように、耳を立てて、父の言葉に聞き入っている。
昭和遊撃隊
(新字新仮名)
/
平田晋策
(著)
怜悧
(
りこう
)
そうな少年の
瞳
(
ひとみ
)
に見入りながら岸本がそう答えると、少年はまだ見たことのない東洋の果を想像するかのように
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
やがてかすかに病人の
唇
(
くちびる
)
が動いたと思うと、
乾
(
かわ
)
いた目を見開いて、何か求むるもののように
瞳
(
ひとみ
)
を動かすのであった。
深川女房
(新字新仮名)
/
小栗風葉
(著)
雜木林
(
ざふきばやし
)
の
其處
(
そこ
)
ら
此處
(
こゝ
)
らに
散在
(
さんざい
)
して
居
(
ゐ
)
る
開墾地
(
かいこんち
)
の
麥
(
むぎ
)
もすつと
首
(
くび
)
を
出
(
だ
)
して、
蠶豆
(
そらまめ
)
の
花
(
はな
)
も
可憐
(
かれん
)
な
黒
(
くろ
)
い
瞳
(
ひとみ
)
を
聚
(
あつ
)
めて
羞
(
はづ
)
かし
相
(
さう
)
に
葉
(
は
)
の
間
(
あいだ
)
からこつそりと四
方
(
はう
)
を
覗
(
のぞ
)
く。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
或
(
あ
)
る日矢張松原に出て、空を眺めてゐますと、日のある方から何やら白いものが落ちて来るやうですから「ハテ何だらうか」と、
瞳
(
ひとみ
)
をこらして見てゐると
子良の昇天
(新字旧仮名)
/
宮原晃一郎
(著)
私が最大級の
讃辞
(
さんじ
)
を博士に
捧
(
ささ
)
げていると、ロッセ氏は、そうかそうかと、ペルシャ
猫
(
ねこ
)
のように
澄
(
す
)
んだ
瞳
(
ひとみ
)
をくるくるうごかして、しきりに
感服
(
かんぷく
)
の
面持
(
おももち
)
だった。
のろのろ砲弾の驚異:――金博士シリーズ・1――
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
“瞳”の意味
《名詞》
《光学》 「ひとみ」の語義3を参照。
(出典:Wiktionary)
瞳
常用漢字
中学
部首:⽬
17画
“瞳”を含む語句
黒瞳
瞳孔
重瞳
瞳子
黒瞳勝
御瞳
碧瞳
瞳光
金瞳
瞳裏
瞳黒
金瞳青眉
金瞳黒毛
金瞳黒羽
重瞳子
開瞳
豊頬黒瞳
青瞳
紅毛碧瞳
碧瞳紫髯
...