)” の例文
旧字:
そして、その木を持って帰ってきて、それに火をけてみると、狸と狐の姿が現われた。張華はその二疋をつかまえててしまった。
狐と狸 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
その日は春と言っても、少し薄寒かったので、コーヒーを入れた後の瓦斯ガスストーブを、そのままけっ放しにして居たことは事実だ。
死の予告 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
あかりけて本を読むのが目に悪けりゃあ、話をしていたって好いわけです。誰かがまとまった話をして、みんなで聴いても好いでしょう。
たしかに兄は起きているのにといぶかりながら、勝代は手索てさぐりでマッチを捜して、ランプをけてみると、兄は例の処に寝ていなかった。
入江のほとり (新字新仮名) / 正宗白鳥(著)
そんな事を云い合っているうちに一人がマッチをって葉巻に火をけたようなの。間もなくい匂いがプンプンして来たから……。
支那米の袋 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
今灯をけたばかり、油煙も揚らず、かんてらの火も新しい、店の茣蓙ござの端に、汚れた風呂敷を敷いて坐り込んで、物れた軽口で
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
不幸にも、この心配が暮の二十日過はつかすぎになって、突然事実になりかけたので、宗助は予期の恐怖に火がいたように、いたく狼狽ろうばいした。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
信一郎の心が、不快な動揺に悩まされてゐるのをよそに、秋山氏は、今火をけた金口の煙草をくゆらしながら、落着いた調子で云つた。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
「ここを左の方へ二町ばかり行くと左側に赤い軒燈のいた家がある。M医院というのだ。そこへ行って叩き起したらいいだろう」
赤い部屋 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「これが解せないのですよ。」緩く迂回うかいしながら伸びている階段の中途の壁に、け放しになっている壁燈かべあかりを見て、ルキーンが云った。
聖アレキセイ寺院の惨劇 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
これからたくかへつて支度したくをしてうち長家ながやの者も追々おひ/\くやみにる、差配人さはいにん葬式さうしき施主せしゆ出来できたのでおほきに喜び提灯ちやうちんけてやつてまゐ
黄金餅 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
それから、家へ帰って、ラジオをけようと思って、スイッチをひねったところが、ぼッと鳴って、そのまま何の音も聞えないんです。
微笑 (新字新仮名) / 横光利一(著)
が、君の窓はすっかり開け放しになっているんで、庭から廻って、のぞいて見ると、あかりは満々とけッ放して、君の姿も見えないんだ。
吊籠と月光と (新字新仮名) / 牧野信一(著)
電気をけて深呼吸してみたり、煙草たばこってみたりするが、怖ろしくささえのないような不安で、到々とうとう女房を揺すぶり起すのだった。
冬枯れ (新字新仮名) / 徳永直(著)
天井に、二つの電灯が一つずつくように仕掛けしてあって、釦鈕スイッチを捻ると、白い光りが自動的に消えて緑いろのが生き出すのだった。
踊る地平線:10 長靴の春 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
電燈のいた食堂で、大塚さんは例の食卓に対って、おせんと一緒に食った時のことを思出した。燈火あかりに映った彼女の頬を思い出した。
刺繍 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
湯村はたもとから巻煙草を出してマッチを擦つた。何本も無駄にした揚句、やつといたのをろくにも吸はずに、忙しく河へ投込んだ。
茗荷畠 (新字旧仮名) / 真山青果(著)
そう考え付いた青年は、腕組みして、強い息を吐きながら、折りしもきかけた町のネオンサインの旋廻を眺めながら言いました。
仏教人生読本 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
尾部には強力なる照明灯がいていて、昼間のように明るい。見ていると、艇側ていそくから、ぽいぽいと函のようなものが放り出される。
宇宙尖兵 (新字新仮名) / 海野十三(著)
火の気のなかるべきところに意外にも燈火あかりいています。それは真中の卓子テーブルの上へ裸蝋燭はだかろうそくを一本立てて置いてあるのであります。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
それがまた、この九年間、少しも時刻をたがえずに、くれ六ツにいてあけ六ツに消えるので、里人たちには時刻を知る便宜にもなっていた。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かうして朝起きるとから、夜分寝床に入るまでその同じ葉巻シガアを啣へ続けてゐる。尤も一度だつて、その葉巻シガアに火をけた事はない。
卓子テーブルそばわづかすこしばかりあかるいだけで、ほか電灯でんとうひとけず、真黒闇まつくらやみのまゝで何処どこ何方どちらに行つていかさツぱりわからぬ。
検疫と荷物検査 (新字旧仮名) / 杉村楚人冠(著)
さいわい怪我けがもなかったので早速さっそく投出なげだされた下駄げたを履いて、師匠のうちの前に来ると、雨戸が少しばかりいていて、店ではまだあかりいている。
死神 (新字新仮名) / 岡崎雪声(著)
「まあこのお部屋の暗いことは。灯火あかりけないのでござりますね。……お祈りの時刻が参りました。灯火をお点けなさりませ」
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
町の高みには皇族や華族の邸に並んで、立派な門構えの家が、夜になると古風な瓦斯ガス燈のく静かな道をはさんで立ち並んでいた。
ある崖上の感情 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
「わしは、たった今、火薬庫に、導火線を投入れ、その先に火をけて来たのさ。導火線は、あと三分。いや二分で、燃え尽きるだろう」
怪奇人造島 (新字新仮名) / 寺島柾史(著)
沈黙が不気味のままに続きだすと、喜平は書卓の上へがたりと鞭を投げ出して荒々しく煙草たばこに火をけながら、目を三角にして怒鳴った。
恐怖城 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
是れが神の国への路でせうか、ケレ共何処どこの教会に此の暗黒界の燈火がいて居りますか、基督キリストが出で来り給ふならば
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
「あ、失敗しまった!」と、市郎は思わず舌打したうちした。が、現在の位置にあって再び蝋燭をけると云うことは、殆ど不可能であった。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
電灯がかないので、日没と同時に収容所の中はたちまち真っ暗になってしまう。それに夜が更けるにつれて気温がぐっと下ってくるのだ。
只今ただいま、電燈をけますからどうかそこからおはいり下さい。入口は少しせもうございますが、中は大へん楽でございます。」
さるのこしかけ (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
けれど、むすめえると、け、えるとけして、おきから、とおりく燈火ともしびえるようにと、熱心ねっしんにろうそくのとぼしていたのであります。
ろうそくと貝がら (新字新仮名) / 小川未明(著)
お俊はいつも対岸に四つの灯が見えるとき、又、二つの灯がいているときと、また今夜のように三つに見えることとあるのを、気に留めた。
童話 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
見る間に不動明王の前に燈明あかしき、たちまち祈祷きとうの声が起る。おおしく見えたがさすがは婦人おんな,母は今さら途方にくれた。
武蔵野 (新字新仮名) / 山田美妙(著)
と、口小言を言い言い、母も渋々起きて、雪洞ぼんぼりけて起上たちあがったから、私も其後そのあといて、玄関——と云ってもツイ次の間だが、玄関へ出た。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
私が夜中に着く時刻を電報で知らせたので、皇族か公爵が変名で旅行をしているとでも思ったのだろう、ホテルはありったけの明りをける。
あすこで、電気を起して水門の調節をしたり、うちへ電気もくように、なってるんですけれど、戦争中からやってませんの。
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
日はとっぷり暮れたが月はまだ登らない、時田は燈火けないで片足を敷居の上に延ばし、柱にりかかりながら、茫然ぼんやり外面そとをながめている。
郊外 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
此処へも電気けんと、どんならんなア。阿母おかアはんは倹約人しまつややよつて、点けえでもえゝ、と言やはるけど、暗うて仕様がおまへんなをツさん。
鱧の皮 (新字旧仮名) / 上司小剣(著)
門燈には明りがき、すべて晩方になつた。例のやうに仕度がひとしきりあつた後、三人が電燈の下で晩餐ばんさんを取り囲んだ。
姉弟と新聞配達 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
足軽長屋のわが住居へ帰ってみると、もう仄暗ほのぐらいのに燈がいていない、はいってみると汀は留守だった、隣へ声をかけると女房が顔をだして
足軽奉公 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
かれよるになってもあかりをもけず、よもすがらねむらず、いまにも自分じぶん捕縛ほばくされ、ごくつながれはせぬかとただそればかりをおもなやんでいるのであった。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
いま火をけようとしたとたん、口笛のような鋭い弾道の音をひいて飛んで来た砲弾が、二人のつい鼻っさきの土堤の横っ腹で轟然ごうぜんと炸裂した。
そこらが薄暗くなっているのに気がつくと、笹村はマッチをってランプをけて見たが、余熱ほとぼりのまだめない部屋は、息苦しいほど暑かった。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
線香花火のようにそれらの文句がいたり消えたりした。伸子は、彼が事実をかくしていた一日の間の心持などを考え、しんとした気持になった。
伸子 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
で、静子は下女に手伝はして、兄を寝せ、座敷を片付けてから、一人離室はなれに入つた。夜気が湿しつとりと籠つて、人なきへやに洋燈が明るくいてゐる。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
日が暮れて燈火がいてから間もなく、順吉の手術があった。おすぎは順吉が手術室に運ばれた留守の間に、寝台のまわりを片づけて掃除をした。
夕張の宿 (新字新仮名) / 小山清(著)
彼は硬くなって彼女の後姿を見守った、そして車のところへ戻って、提灯ちょうちんに火をけ、さびしい車輪の音をひびかせながら彼女のあとを家に帰った。
青草 (新字新仮名) / 十一谷義三郎(著)
此処ここの電気灯も十燭光位がいて居るのです。私は三度程ぐるぐるとおとこを廻つてからはづかしいものですから背中向きにあなたの枕許まくらもとへ坐るのです。
遺書 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)