女神めがみ)” の例文
納戸色なんどいろ、模様は薄きで、裸体の女神めがみの像と、像の周囲に一面に染め抜いた唐草からくさである。石壁いしかべの横には、大きな寝台ねだいよこたわる。
倫敦塔 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
かれらはまた、日輪に或ひはうしろ或ひはまへより秋波しうはをおくる星の名を、わがかく歌の始めにうたふかの女神めがみより取れり 一〇—一二
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
女神めがみらは、って、素足すあしで、ながい、緑色みどりいろ裳裾すそをひきずって、みだれていました。また、男神おがみは、声高こえたからかに
海の踊り (新字新仮名) / 小川未明(著)
そしてしまいに、左の目をお洗いになると、それといっしょに、それはそれは美しい、とうと女神めがみがお生まれになりました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
その刹那から、己の目の前には、現実の世界が消えてしまって、燦爛さんらんたる色彩と、妖艶ようえんなる女神めがみと、甘美かんびなる空気との世界ばかりが見えて居た。
小僧の夢 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
そのきさきを描き女神めがみを描き、あるくれないの島にれなして波間なみまに浮ぶナンフ或は妖艶の人魚の姫。或はまた四季の眺めを形取かたどる肉付のよきポモンの女神。
浮世絵の鑑賞 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
おまえはみずからを売り、妻を売り、子供を売らねばならない。だが、長く苦しむことはない! かおり高い広い葉かげに、死の女神めがみがすわっている。
弟神おとうとがみはくやしがって、おかあさんの女神めがみところっていいつけました。すると女神めがみはおおこりになって、兄神あにがみ
春山秋山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
肉色の薔薇ばらの花、慈悲の女神めがみのやうに肉色の薔薇ばらの花、若々わかわかしてゐて味の無いおまへの肌の悲みに、この口をさはらせておくれ、僞善ぎぜんの花よ、無言むごんの花よ。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
室の正面には椅子いす三脚とネパール製の白布の長方形の厚い敷物があり、欧州風の黒檀こくたん茶棚ちゃだなの上にはネパール製の女神めがみの獅子に乗って居る白色の置物あり
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
イザナギの命はお隱れになつた女神めがみにもう一度會いたいと思われて、あとを追つて黄泉よみの國に行かれました。
この二十夜のうち五編はすでに一八三六年に文学誌『イリス(にじ女神めがみ)』第二号上に発表されている。
絵のない絵本:02 解説 (新字新仮名) / 矢崎源九郎(著)
生ける女神めがみ——貧乏の?——は、石像の如く無言で突立つた。やがて電光の如き變化が此室内に起つた。
雲は天才である (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
その親譲りの恐怖心をててしまえ。わしは何もそう気味の悪い者ではない。わしは骸骨がいこつでは無い。男神おがみジオニソスや女神めがみウェヌスの仲間で、霊魂の大御神おおみかみがわしじゃ。
かれらはみな、咲耶子を山の女神めがみのようにしたい、咲耶子はまたみなを、妹のように愛していた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……この女神めがみの信仰は、いつ頃か、北国に大分流布して、……越前の方はどうか知りませんが、加賀越中には、処々法華宗の寺に祭ってあります。いずれも端麗な女体です。
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
彼女の持ち役である南海なんかい女神めがみはその途中で演技が済み、あとは終幕が開くので彼女をのぞく一座は総出そうでの形となって、ひとりジュリアは楽屋に帰ることができるのであった。
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ハワイとう火山かざんキラウエアからは女神めがみペレーのなみだ毛髮もうはつ採集さいしゆうせられ、鳥海山ちようかいさんいし矢尻やじり噴出ふんしゆつしたといはれてゐる。神話しんわにある八股やまた大蛇おろちごときもまた噴火ふんか關係かんけいあるものかもれぬ。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
答『そのとおり……。かみまつられている以上いじょういずれもみな立派りっぱ修行しゅぎょうめる女神めがみばかりで、土地とち守護しゅごもなされば、また人間にんげん願事ねがいごとも、それがただしいことであれば、よろこんでかなえてくださる……。』
目一つの神につかまった話だの、人をいのこにする女神めがみの話だの、声の美しい人魚にんぎょの話だの、——あなたはその男の名を知っていますか? その男は私にった時から、この国の土人に変りました。
神神の微笑 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「ハヽヽヽ、君の様に悲観ばかりするものぢや無いサ、天下の富を集めて剛造はいの腹をこやすと思へばこそしやくさはるが、之を梅子と云ふ女神めがみ御前おんまへに献げるともや、何も怒るに足らんぢや無いか」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
「羽衣をぬいだ天女のむれだ。女神めがみの一団が天空を漂っているのだ」
影男 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
女神めがみはもういない。しかし神々こうごうしい跡は残っている。9950
せめてただ女神めがみかむりしろ百合の花のひとつとひかりそへむまで
恋衣 (新字旧仮名) / 山川登美子増田雅子与謝野晶子(著)
「正義の女神めがみなんです」と、画家は最後に言った。
審判 (新字新仮名) / フランツ・カフカ(著)
とのたまへば女神めがみわづかにうなづきたまひけるに
花枕 (旧字旧仮名) / 正岡子規(著)
男神をがみ女神めがみたはむれて
若菜集 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
されど夜晝つむ女神めがみは、クロートが人各〻のために掛けかつ押固おしかたむる一たばを未だ彼のためにり終らざるがゆゑに 二五—二七
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
すぐに、女神めがみは、んで、英吉えいきちっている、やぶれかけたふねのほばしらのいただきにきてとまりました。そして、きよらかなひとみで、したをみつめました。
海の踊り (新字新仮名) / 小川未明(著)
わたしはあのとおり、ちゃんと女神めがみをもらいました。だから約束のとおり、あなたの着物をください。それからごちそうもどっさりしてください」
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
それでも兄神あにがみはやはり約束やくそくたそうとしませんでした。すると女神めがみ出石川いずしがわの中のしまえていた青竹あおだけってて、目のあらいかごをこしらえました。
春山秋山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
今迄は女神めがみの如くたっとく、人形の如く美しく見えた彼の女が、たちまち一変して、あの黒ん坊よりも一層恐ろしい、気味の悪い魔女まじょに見え出したゞけであった。
小僧の夢 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
この時向うに掛っているタペストリに織り出してある女神めがみの裸体像が風もないのに二三度ふわりふわりと動く。
倫敦塔 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
わたしは美の女神めがみミューズの胸に、そっとキスをしました。すると、その胸が高まるような気がしました。
最後には女神めがみイザナミの命が御自身で追つておいでになつたので、大きな巖石をその黄泉比良坂よもつひらさかふさいでその石を中に置いて兩方でむかい合つて離別りべつの言葉をかわした時に
そのきさきを描き女神めがみを描き、あるくれないの島に群れなして波間なみまに浮ぶナンフ或は妖艶ようえんの人魚の姫。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
小高いおかの上にたって、その愛笛あいてきを頭上にたかくささげ、部下のうごきからひとみをはなたずにいた彼女のすがたは、地上におりた金星の化身けしんといおうか、富士の女神めがみとたとえようか
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私の聞き知った、川裳明神は女神めがみですから。……ところで
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
怒の女神めがみでございます。譃だとおおもいなさるでしょう。
茴香うゐきやう、愛の女神めがみ青雲あをぐもの髮。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
あゝ女神めがみペガーゼアよ(汝才に榮光を與へてその生命いのちを長うす、才が汝の助けによりて諸邑諸國に及ぼす所またかくの如し)
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
女神めがみこえは、えない、不思議ふしぎいずみのように、若者わかものたましいに、ささやくと、かれは、なみだぐましい感激かんげきにむせびました。
海の踊り (新字新仮名) / 小川未明(著)
そこでやっと女神めがみがのろいをといておやりになりますと、兄神あにがみはまたもとのとおりの丈夫じょうぶからだにかえりました。
春山秋山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
この二十夜のうち五編はすでに一八三六年に文学誌『イリス(にじ女神めがみ)』第二号上に発表されている。
よし、それではおまえがりっぱにあの女神めがみをもらって見せたら、そのお祝いに、わしの着物をやろう。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
そうした目的であって見れば、優しい詩の女神めがみ達に
森の女神めがみのシュリンクス
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
いもうと女神めがみは、だまってひばりのいうことをいていました。そのうちに、自分じぶんも一下界げかいへいって、そのさま一目ひとめてきたいものだとおもわれたのであります。
消えた美しい不思議なにじ (新字新仮名) / 小川未明(著)
しろばとは、まるをみはりながら、わか女神めがみかおていましたが
消えた美しい不思議なにじ (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのかわり、もっとやさしい女神めがみが、ももいろながいたもとをうちふり、うちふり、どもたちといっしょにおにごっこをしているような、なごやかな夕雲ゆうぐも姿すがたを、このごろ毎日まいにちのごとく、まちうえそら
さか立ち小僧さん (新字新仮名) / 小川未明(著)