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勢
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いきおい
ふりがな文庫
“
勢
(
いきおい
)” の例文
「お京さん、いきなり内の
祖母
(
ばあ
)
さんの背中を一つトンと
敲
(
たた
)
いたと思うと、
鉄鍋
(
てつなべ
)
の
蓋
(
ふた
)
を取って
覗
(
のぞ
)
いたっけ、
勢
(
いきおい
)
のよくない湯気が上る。」
縷紅新草
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
あの
勢
(
いきおい
)
で下ったなら恐らく十分ならずして劒沢に達するであろう。後で聞くと雪渓を上下したのは今度の旅行が初めてであるという。
黒部川奥の山旅
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
幾頭の
獅子
(
しし
)
の
挽
(
ひ
)
ける車の上に、
勢
(
いきおい
)
よく突立ちたる、
女神
(
にょしん
)
バワリアの像は、先王ルウドヰヒ第一世がこの
凱旋門
(
がいせんもん
)
に
据
(
す
)
ゑさせしなりといふ。
うたかたの記
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
俄然
(
がぜん
)
鉱山の敷地が陥落をはじめて、建物も人も恐ろしい
勢
(
いきおい
)
を
以
(
もっ
)
て
瞬
(
またた
)
く間に総崩れに
陥
(
お
)
ち込んでしまった、ということが書いてある。
謀叛論(草稿)
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
勝氏は
真実
(
しんじつ
)
の攘夷論者に非ざるべしといえども、
当時
(
とうじ
)
の
勢
(
いきおい
)
、
止
(
や
)
むを得ずして攘夷論を
装
(
よそお
)
いたるものならん。その
事情
(
じじょう
)
以
(
もっ
)
て知るべし。
瘠我慢の説:04 瘠我慢の説に対する評論について
(新字新仮名)
/
石河幹明
(著)
▼ もっと見る
その時分の
勢
(
いきおい
)
からいうと、日本的なもの、伝統的なもの、と説くことが因循
姑息
(
こそく
)
なものとして、
嘲笑
(
ちょうしょう
)
軽蔑
(
けいべつ
)
されやすい立場にあった。
俳句への道
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
黒紋付の羽織に山高帽を
被
(
かぶ
)
った立派な紳士が
綱曳
(
つなひき
)
で飛んで行く。車へ乗るものは
勢
(
いきおい
)
がいい。あるくものは突き飛ばされても仕方がない。
野分
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
之に
勢
(
いきおい
)
づいた山田は感激に満ちて
滔々
(
とうとう
)
と述べた、如何に無道徳で、如何に残酷で、如何に悲惨であるかを、実例を引き引き
巨細
(
こさい
)
に訴えた。
監獄部屋
(新字新仮名)
/
羽志主水
(著)
帝
之
(
これ
)
を
然
(
さ
)
なりとは
聞召
(
きこしめ
)
したりけれど、
勢
(
いきおい
)
既に定まりて、削奪の議を取る者のみ
充満
(
みちみ
)
ちたりければ、
高巍
(
こうぎ
)
の説も用いられて
已
(
や
)
みぬ。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
その同年(千八百四十六年)米国は南
墨西哥
(
メキシコ
)
を攻め、その明年西部カリホルニヤにおいて、金鉱を発見す。
西漸
(
せいぜん
)
の
勢
(
いきおい
)
日一日よりも急なり。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
周囲
(
まわり
)
にあるものを蹴ちらすような
勢
(
いきおい
)
で入って来て、
瓶子
(
とくり
)
の傍へ往くなりいきなり瓶子を
執
(
と
)
って、それを口からぐいぐいと飲んだ。
春心
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
で、そっちを見ないようにして、上の土人が網を受取っている
暇
(
ひま
)
を
狙
(
ねら
)
って、鋏をあげ、えらい
勢
(
いきおい
)
でそいつを目がけて飛びついて行きました。
椰子蟹
(新字新仮名)
/
宮原晃一郎
(著)
大蛇
(
おろち
)
は人形を見ると、それを生きた人間と思ったのでしょう、いきなり大きな
鎌首
(
かまくび
)
をもたげて、
恐
(
おそ
)
ろしい
勢
(
いきおい
)
で
寄
(
よ
)
ってきました。
人形使い
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
その隙である、例の
給仕
(
ボーイ
)
は影のように身を
退
(
ず
)
らすとまるで
弦
(
つる
)
を放れた矢のような
勢
(
いきおい
)
で地下室の方へ逃げだした。と見た博士が
亡霊ホテル
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
コツコツという
沢山
(
たくさん
)
の
跫音
(
あしおと
)
が、それから、あらい息使いが、広間の天井に響き渡る程も、
勢
(
いきおい
)
よく踊り出したものであります。
覆面の舞踏者
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
草木の葉が、素晴らしい
勢
(
いきおい
)
で、一度に新芽を吹くと同時に、己の体にも何だか生き生きとした気力が
漲
(
みなぎ
)
り溢れて来るようだ。
小僧の夢
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
向うは二男の
勢
(
いきおい
)
なれば喧嘩は
負
(
まけ
)
となったのみならず、弓の折にて
打擲
(
ちょうちゃく
)
され、額に残る此の
疵
(
きず
)
も其の時打たれた疵でございます
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
後ではもうよそうとも思いましたれどいわゆる
騎虎
(
きこ
)
の
勢
(
いきおい
)
で
俄
(
にわか
)
に改めるわけにもゆかず、そのままに推し通しましたが今となって考えて見ると
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
あれあれ
薄
(
うす
)
い
鼠色
(
ねずみいろ
)
の
男
(
おとこ
)
の
竜神
(
りゅうじん
)
さんが、
大
(
おお
)
きな
口
(
くち
)
を
開
(
あ
)
けて、二
本
(
ほん
)
の
角
(
つの
)
を
振
(
ふ
)
り
立
(
た
)
てて、
雲
(
くも
)
の
中
(
なか
)
をひどい
勢
(
いきおい
)
で
駆
(
か
)
けて
行
(
ゆ
)
かれる……。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
三十分置きに拍子木を叩いて廻る合間にピュウ/\と吹き
荒
(
すさ
)
んでいる嵐にも負けないような
勢
(
いきおい
)
で議論を闘わすのであった。
琥珀のパイプ
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
インク
壜
(
びん
)
をぶら下げて歩くのは、若い娘達の一つの見得で、東京の山の手から、田舎の進歩的な娘の間に、恐ろしい
勢
(
いきおい
)
で流行していたものです。
奇談クラブ〔戦後版〕:17 白髪の恋
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「あの、今日、牛乳が
僕
(
ぼく
)
※とこへ来なかったので、
貰
(
もら
)
いにあがったんです。」ジョバンニが一生けん命
勢
(
いきおい
)
よく云いました。
銀河鉄道の夜
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
雨は、ひとしきり降ると、やがて見る見る
勢
(
いきおい
)
を失っていった。そしてあたりはだんだん明るさが
恢復
(
かいふく
)
していった。風もどこかへ行ってしまった。
蠅
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
以前の阿Qの
勢
(
いきおい
)
を見ると小Dなど問題にもならないが、近頃彼は飢餓のため痩せ衰えているので五分々々の取組となった。
阿Q正伝
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
検非違使というのは、丁度警察署長と裁判所長とを兼ねたような、大層
勢
(
いきおい
)
の強いえらい役で、盗賊や悪者を捕えて裁判するのが仕事でありました。
三人兄弟
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
似而非
(
えせ
)
賢者
何程
(
なにほど
)
のことやあらんと、
蓬頭突鬢
(
ほうとうとつびん
)
・
垂冠
(
すいかん
)
・
短後
(
たんこう
)
の衣という
服装
(
いでたち
)
で、左手に
雄雞
(
おんどり
)
、右手に
牡豚
(
おすぶた
)
を引提げ、
勢
(
いきおい
)
猛
(
もう
)
に、孔丘が家を指して
出掛
(
でか
)
ける。
弟子
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
この様子を見ると王は益々
勢
(
いきおい
)
込んで青眼の前に
一歩
(
ひとあし
)
進み寄りながら、一層厳格な顔をして
睨
(
にら
)
み付けて申しました——
白髪小僧
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
海がその蔵する無限のエネルギーに押し立てられて、
沖天
(
ちゅうてん
)
の
勢
(
いきおい
)
を以て陸に向って押しよせる時は、あたかも陸を
一呑
(
ひとの
)
みにするかと思わるるほどである。
ヨブ記講演
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
かくのごとく
勢
(
いきおい
)
強き恐ろしき歌はまたと
有之間敷
(
これあるまじく
)
、八大竜王を
叱咤
(
しった
)
するところ竜王も
懾伏
(
しょうふく
)
致すべき勢
相
(
あい
)
現れ
申
(
もうし
)
候。
歌よみに与ふる書
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
母子の如く往き
交
(
か
)
ふひろ子との縁の
繋
(
つな
)
がり始まりを今もなほ若蔦の
勢
(
いきおい
)
よき芽立ちに楽しく
顧
(
かえりみ
)
る為めであらうか。
蔦の門
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
私は再び手玉にとられながらも、ただ滅茶々々に相手を撲り、
勢
(
いきおい
)
が外れて自分の顔にも幾つかの傷をつくってしまった。私は何回となくたたきつけられた。
指導物語:或る国鉄機関士の述懐
(新字新仮名)
/
上田広
(著)
勢
(
いきおい
)
を得た
山名
(
やまな
)
方は九月
朔日
(
ついたち
)
ついに
土御門万里
(
つちみかどまで
)
の小路の三宝院に火をかけて、ここの陣所を奪いとり、
愈々
(
いよいよ
)
戦火は
内裏
(
だいり
)
にも室町殿にも及ぼう勢となりました。
雪の宿り
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
勿論白が
弥
(
いや
)
白くなれば、
鼠色
(
ねずみいろ
)
も
純黒
(
まっくろ
)
に
勢
(
いきおい
)
なる様なもので、故先生があまりに
物的
(
ぶってき
)
自我
(
じが
)
を捨てようとせられた為
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
両様並び行われて
相
(
あい
)
戻
(
もと
)
らず、たがいに依頼して事をなすといえども、その地位はおのずから両立の
勢
(
いきおい
)
をなせるものなれば、政治の
囲範
(
いはん
)
に文学を
繋
(
つな
)
ぐべからず。
学校の説:(一名、慶応義塾学校の説)
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
竹杖は忽ち竜のように、
勢
(
いきおい
)
よく大空へ舞い上って、晴れ渡った春の夕空を峨眉山の方角へ飛んで行きました。
杜子春
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
だから自然で
勢
(
いきおい
)
があって、確かさや強さが一段と加わってくる。飛騨のものは大体朝鮮ものにいたく近いが、作る気持ちや作り方が
互
(
たがい
)
に非常に似ているのだと思う。
陸中雑記
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
惟うに、新主義の学を講ずる、
唯
(
ひと
)
りその通般の事を知るに止るべからず、必らずやその蘊奥を極め、
又
(
ま
)
た事に触れ、
勢
(
いきおい
)
に応じてこれが細故を講究すべきの事多うし。
祝東京専門学校之開校
(新字新仮名)
/
小野梓
(著)
出た時の
勢
(
いきおい
)
に引替えて、すごすご帰宅したは八時ごろの事で有ッたろう。まず眼を配ッてお勢を探す。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
一同はこれに
勢
(
いきおい
)
を得て、歌ったも歌ったり、「春
爛漫
(
らんまん
)
」から「都の西北」「春は春は」のボート歌
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
勢
(
いきおい
)
よく燃える薪の音が、戸外の激しい風の叫びをわずかに押えて、生命の営みを辛うじて表象しているというような夜が、毎晩つづいた。
電燈
(
でんとう
)
はもちろんうす暗かった。
イグアノドンの唄:――大人のための童話――
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
第二号
乾船渠
(
ドライ・ドック
)
の
扉門
(
ともん
)
の注水孔は、バルブを開いて、恐しい
勢
(
いきおい
)
で海水を
船渠
(
ドック
)
の中へ吸い込み始める。
カンカン虫殺人事件
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
従来の尋常一様な生活記録の小説を駆逐してくるに至ることは必然の
勢
(
いきおい
)
といってよかろう。
日本の近代的探偵小説:――特に江戸川乱歩氏に就て――
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
石油がしみたのか、むしろがかわいていたのか、
今度
(
こんど
)
は、
勢
(
いきおい
)
よく一時にパッともえついた。
くまと車掌
(新字新仮名)
/
木内高音
(著)
全く物すさまじい
勢
(
いきおい
)
のもので、三、四丁も吹いて行く間に、ぶっつかる所の大きな
家
(
うち
)
でも、小さなのでも、どんな家でも殆ど
覆
(
くつがえ
)
したり、破壊したり、破損したりしたものであった。
現代語訳 方丈記
(新字新仮名)
/
鴨長明
(著)
橋が無ければ徒歩じゃ徒歩じゃと、一同ジャブジャブ水を漕いで渡るに、深さは腰にも及ばぬ程であるが、水流は石をも
転
(
まろ
)
ばす
勢
(
いきおい
)
なので、下手をすれば足
掬
(
すく
)
われて転びそうになる。
本州横断 癇癪徒歩旅行
(新字新仮名)
/
押川春浪
(著)
先日はからずも、ある人から、君が
愈
(
いよい
)
よ明日結婚するという手紙を貰い、それがため、下積みにされた記憶が、非常な
勢
(
いきおい
)
で
浮
(
うか
)
み上り、遂に今回の贈り物を計画するに至ったのである。
恋愛曲線
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
そこは恐ろしいほど切り立った崖で、下を
見下
(
みおろ
)
すと約百
米突
(
メートル
)
ばかりの深い絶壁で、その下には大きな
巌
(
いわ
)
に波が恐ろしい
勢
(
いきおい
)
で打ちつけている。たぶんそこへ投げ捨てたものと思われる。
奇巌城:アルセーヌ・ルパン
(新字新仮名)
/
モーリス・ルブラン
(著)
鷲尾はいろいろと酒の
勢
(
いきおい
)
も加わって、社会情勢や、近頃の出来事について語った。
冬枯れ
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
爺さんはそう言いながら、
側
(
そば
)
に置いてある箱から長い綱の大きな玉になったのを取り出しました。それから、その玉をほどくと、綱の一つの
端
(
はじ
)
を持って、それを
勢
(
いきおい
)
よく空へ投げ上げました。
梨の実
(新字新仮名)
/
小山内薫
(著)
大奥様はまるで電気にでもかけられたように足がすくみ、身動きも出来なくなり、弟様の
勢
(
いきおい
)
にすっかり威圧されておしまいになりました、昔の人のいう魔がさしたとでも申すのでしょうか。
蛇性の執念
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
勢
常用漢字
小5
部首:⼒
13画
“勢”を含む語句
気勢
威勢
大勢
多勢
勢力
姿勢
形勢
水勢
時勢粧
御勢
氣勢
無勢
勢揃
豪勢
上泉伊勢守
助勢
巨勢金岡
伊勢詣
小巨勢
人勢
...