まじは)” の例文
何處か分らぬ奧の方で、ざら/\ツと御籤みくじ竹筒つゝを振動すらしい響がする。人々の呟く祈祷の聲が繪額の陰に鳴く鳩の聲にまじはる。
歓楽 (旧字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
くさかるかまをさへ買求かひもとむるほどなりければ、火のためまづしくなりしに家をやきたる隣家りんかむかひて一言いちごんうらみをいはず、まじはしたしむこと常にかはらざりけり。
こゝには神も人にまじはつて人間の姿人間の情をよそほつた。されば流れ出づる感情は往く處に往き、とゞまる處に止りて毫も狐疑こぎ踟蹰ちゝうの態を學ばなかつた。
新しき声 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
おこさせて新田につたとは名告なのらすれど諸事しよじ別家べつけかくじゆんじて子々孫々しゝそん/\末迄すゑまで同心どうしん協力けふりよくことしよあひ隔離かくりすべからずといふ遺旨ゐしかたく奉戴ほうたいして代々よゝまじはりを
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
それから何年か(或は何箇月か)同棲生活の後、その女人とまじはることに対する嫌悪の情を与へてゐる。それから、……
利巧な連中は文界の継児まゝこである保雄とまじはる事が将来の進路に不利だと見て取つてそれと無くとほざかる者も少く無かつたが
執達吏 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
いな、近在よりきたれる農夫多し。町にても下等社會にはまじはりて踊るものあれど、中以上はこれを敢てするものなし』
秋の岐蘇路 (旧字旧仮名) / 田山花袋(著)
此の日比、左門はよき友もとめたりとて、日夜ひるよるまじはりて物がたりすに、赤穴あかな四〇諸子百家しよしひやくかの事四一おろおろかたり出でて、問ひわきまふる心おろかならず。
富山がまじはるところは、その地位において、その名声に於て、その家柄に於て、あるひはその資産に於て、いづれの一つか取るべき者ならざれば決して取らざりき。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
それで私たちの間は、いつもすら/\と工合よく行つた。お互ひのまじはりから、多くは啓發されなかつたとしても、それから得るよろこびは大きいものだつた。
己が役にして居る所に兩國米澤町の花の師匠にて相弟子の六之助と云ふは同所どうしよ廣小路ひろこうぢの虎屋の息子むすこなるが何事も如才じよさいなく平生へいぜい吉之助とはまじはあつかりしが或時あるとき吉之助を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
そのなかに氏の原稿を貰つて一儲けしようと目論もくろみを立ててゐる出版業者も幾人いくたりまじはつてゐた。
〔評〕長兵京師にやぶる。木戸公は岡部氏につてわざはいまぬかるゝことを得たり。のち丹波におもむき、姓名せいめいへ、博徒ばくとまじり、酒客しゆかくまじはり、以て時勢をうかゞへり。南洲は浪華なにはの某樓にぐうす。
横井は福間某ふくまぼうと云ふ蘭法医らんぱふいに治療を託した。当時元田永孚もとだながざねなどとまじはつて、塾を開いて程朱ていしゆの学を教へてゐた横井が、肉身の兄の病を治療してもらふ段になると、ヨオロツパの医術にたよつた。
津下四郎左衛門 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
牧之ぼくし老人は越後ゑちご聞人ぶんじんなり。かつて貞介朴実ていかいぼくじつもつてきこえ、しば/\県監けんかん褒賞はうしやうはいして氏の国称こくしようゆるさる。生計せいけい余暇よか風雅ふうがを以四方にまじはる。余が亡兄ぼうけい醒斎せいさい京伝の別号をう鴻書こうしよともなりしゆゑ、またこれぐ。
四十年を越ゆるまじはり思ひ居れば如意嶽おろし吹きてかなしき
斎藤茂吉の死を悲しむ (旧字旧仮名) / 吉井勇(著)
まじはりて調しらべふか
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
くさかるかまをさへ買求かひもとむるほどなりければ、火のためまづしくなりしに家をやきたる隣家りんかむかひて一言いちごんうらみをいはず、まじはしたしむこと常にかはらざりけり。
十二三年前にふみの上のまじはりせし同氏は今新嘉坡シンガポウルより五六十里奥の山にて護謨ゴムの栽培に従事されるよしにさふらふ
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
経久ひてとどめ給ふとも、ひさしきまじはりを思はば、ひそかに商鞅叔座がまことをつくすべきに、只一三八栄利えいりにのみ走りて一三九士家しかふうなきは、すなはち尼子の家風かふうなるべし。
よく氣のつくたちの少女で、一方では、彼女は機轉がきいて、風變りで、また一方では、彼女は私の氣を樂にさせるところがあつたので、私は彼女とのまじはりはたのしかつた。
る所は陰風常にめぐりて白日を見ず、行けども行けども無明むみよう長夜ちようや今に到るまで一千四百六十日、へども可懐なつかしき友のおもてを知らず、まじはれどもかつなさけみつより甘きを知らず
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
暫時しばしがほどもまじはりし社会は夢に天上に遊べると同じく、今さらに思ひやるも程とほし。
軒もる月 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
關宿せきやどへ縁談の媒人なかうど迄も仕つり候程のことにて兄弟の如くまじはり候中に付何とてかれを殺害など仕つるべきや此儀何分御賢察けんさつ下され御慈悲じひの程をひとへに願ひ上奉つると申立れども伊奈殿はかうべ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「ありがたくおし頂きてのむに、忽ち其身雪霜の消ゆる如くみぢみぢとなつて、芥子人形けしにんぎやうの如くになれり。」こは人倫のまじはりを不可能ならしむるに似たれども、仙女の説明する所によれば
案頭の書 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
私は智的の快樂主義者なので、この珍らしい、面白いまじはりをする喜びを長びかせようと思つた。
青々せいせいたる春の柳、家園みそのゆることなかれ。まじはりは軽薄けいはくの人と結ぶことなかれ。楊柳やうりうしげりやすくとも、秋の初風はつかぜの吹くにへめや。軽薄の人は交りやすくして亦すみやかなり。
嬢は日本の文人とまじはることを望んで居る。日本の文人が嬢をして失望せしめないならば彼女は永久桜咲く国にとゞまりたいと云ふ希望をさへつて居るのである。(十二月十日)
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
其方儀不正の無之これなく而已のみならずが家の衰頽すゐたい再興さいこうせんことを年來心掛たくはへたる金子ををしむ事なく叔母早へ分與わけあたへたるはじんなり義なり憑司ひやうじしやう次郎とまじはりをたちを退ひたるは智なり又梅を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
富山はこの殿と親友たらんことを切望して、ひたすらそのこころんとつとめけるより、子爵も好みてまじはるべき人とも思はざれど、勢ひうとんがたくして、今は会員中善くれるもののさいたるなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
暫時しばしがほどもまじはりし社會しやくわいゆめ天上てんじやうあそべるとおなじく、いまさらにおもひやるもほどとほし、櫻町家さくらまちけ一年いちねん幾度いくど出替でがはり、小間使こまづかひといへばひとらしけれど御寵愛ごちようあいには犬猫いぬねこ御膝おひざをけがすものぞかし。
軒もる月 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
しかしながらにはそらごともまじへざればそのさまあしきもあるべけれど、あまりにたがひたれば玉山の玉にきずあらんもをしければ、かねて書通しよつうまじはりにまかせて牧之がつたなき筆にて雪の真景しんけい種々かず/\うつ
牧之ぼくし老人は越後ゑちご聞人ぶんじんなり。かつて貞介朴実ていかいぼくじつもつてきこえ、しば/\県監けんかん褒賞はうしやうはいして氏の国称こくしようゆるさる。生計せいけい余暇よか風雅ふうがを以四方にまじはる。余が亡兄ぼうけい醒斎せいさい(京伝の別号)をう鴻書こうしよともなりしゆゑ、またこれぐ。