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五月雨
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さみだれ
ふりがな文庫
“
五月雨
(
さみだれ
)” の例文
やがて
五月雨
(
さみだれ
)
のころにでもなろうものなら絶え間なく降る雨はしとしと苔に沁みて一日や二日からりと晴れても
乾
(
かわ
)
くことではなく
山の手の子
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
夏山 夏野
夏木立
(
なつこだち
)
青嵐
五月雨
(
さみだれ
)
雲の峰 秋風
野分
(
のわき
)
霧 稲妻
天
(
あま
)
の
河
(
がわ
)
星月夜 刈田
凩
(
こがらし
)
冬枯
(
ふゆがれ
)
冬木立 枯野 雪
時雨
(
しぐれ
)
鯨
(
くじら
)
俳諧大要
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
まだ
五月雨
(
さみだれ
)
ぞらの定まりきれないせいか、今朝も
琵琶湖
(
びわこ
)
は
模糊
(
もこ
)
として、降りみ降らずみの霧と
小波
(
さざなみ
)
に、視界のものはただ真っ白だった。
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
やがて
子刻
(
ここのつ
)
、上野の鐘が
五月雨
(
さみだれ
)
の空に籠って聞えて来ると、見馴れた場所柄とも思えぬ、不思議な不気味さが犇々と長次の身に迫ります。
新奇談クラブ:06 第六夜 人形の獄門
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
此の年の
五月雨
(
さみだれ
)
は例年より遙かに長かったらしい。霧を伴い、亦屡々豪雨の降ったことは当時の戦記の到る所に散見して見える。
小田原陣
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
▼ もっと見る
五月雨
(
さみだれ
)
のつれづれに、「どれ書見でも致そうか。」と気取った処で、
袱紗
(
ふくさ
)
で茶を運ぶ、ぼっとりものの腰元がなかったらしい。
雪柳
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
かの壮士は
図
(
はか
)
らずもその術にひっかかったものです。降りみ降らずみ
五月雨
(
さみだれ
)
の空が、十日も二十日も続く時は、大抵の人が
癇癪
(
かんしゃく
)
を起します。
大菩薩峠:03 壬生と島原の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
嬉
(
うれ
)
しそうに人のそわつくを見るに付け聞くに付け、またしても
昨日
(
きのう
)
の我が
憶出
(
おもいいだ
)
されて、
五月雨
(
さみだれ
)
頃の空と湿める、嘆息もする、面白くも無い。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
青石横町にいると、
五月雨
(
さみだれ
)
の雨上りの日など
抄
(
すく
)
い網をもって、三枚橋の下へ
小蝦
(
こえび
)
や金魚をすくいに来たから、石段をおりれば道は知っていた。
旧聞日本橋:06 古屋島七兵衛
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
試みに「春雨」「
五月雨
(
さみだれ
)
」「しぐれ」の適切な訳語を外国語に求めるとしたら相応な困惑を経験するであろうと思われる。
日本人の自然観
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
それはけぶるような
五月雨
(
さみだれ
)
の午後で、新村邸の梅林には、雨にぬれたこまかい葉蔭に、うれた梅の実が点々と眺められた。
艶書
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
雨戸の外は
五月雨
(
さみだれ
)
である。庭の植込に降る雨の、鈍い柔な音の
間々
(
あいだあいだ
)
に、
亜鉛
(
あえん
)
の
樋
(
とい
)
を走る水のちゃらちゃらという声がする。
ヰタ・セクスアリス
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
残花道人
嘗
(
か
)
つて桂川を渡る、期は夜なり、風は少しく雨を
交
(
まじ
)
ゆ、「
昨日
(
きのふ
)
も
今日
(
けふ
)
も
五月雨
(
さみだれ
)
に、ふりくらしたる頃なれど」
「桂川」(吊歌)を評して情死に及ぶ
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
ちょうど
五月雨
(
さみだれ
)
が
降
(
ふ
)
ったり
止
(
や
)
んだりいつもうっとうしい
空
(
そら
)
のころで、
夜
(
よる
)
になるとまっくらで、
月
(
つき
)
も
星
(
ほし
)
も
見
(
み
)
えません。
鵺
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
長く寒く続いた
五月雨
(
さみだれ
)
のなごりで、水蒸気が空気中に気味わるく飽和されて、さらぬだに急に
堪
(
た
)
え
難
(
がた
)
く暑くなった気候をますます堪え難いものにした。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
百円札の束をぐるぐると新聞紙にくるんだり、思い出してもゾッとするような
五月雨
(
さみだれ
)
が、ショボショボ降ったり——イヤ、そんなことはどうでもいい。
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
綿ぬきという四月にも
綿衣
(
わたいれ
)
をかさねてふるえている始末であったが、六月になってもとかく冷え勝ちで、
五月雨
(
さみだれ
)
の降り残りが此の月にまでこぼれ出して
半七捕物帳:20 向島の寮
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
五月雨
(
さみだれ
)
のころは源氏もつれづれを覚えたし、ちょうど公務も
閑暇
(
ひま
)
であったので、思い立ってその人の所へ行った。
源氏物語:14 澪標
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
隣へ通う
路次
(
ろじ
)
を境に植え付けたる四五本の
檜
(
ひのき
)
に雲を呼んで、今やんだ
五月雨
(
さみだれ
)
がまたふり出す。丸顔の人はいつか
布団
(
ふとん
)
を捨てて
椽
(
えん
)
より両足をぶら下げている。
一夜
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
そうなるともうすぐに
五月雨
(
さみだれ
)
の季節である。栗の花や椎の花が黄金色に輝いて人目をひくのはそのころである。
京の四季
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
春の
茶摘
(
ちゃつみ
)
歌、
五月雨
(
さみだれ
)
頃の田植歌、夏の日盛りの田草取の歌から、秋の哀れも身に
泌
(
し
)
む
砧
(
きぬた
)
の音、さては
機織
(
はたおり
)
歌の如き、
苟
(
いやしく
)
も農事に関する俗歌俗謡の如きものは
夫婦共稼ぎと女子の学問
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
芒
(
すすき
)
の芽が延びて来た。春が
倐忽
(
しゅっこつ
)
と逝ったのである。
五月雨
(
さみだれ
)
、
木下闇
(
このしたやみ
)
、蚊の
呻
(
うな
)
り、こうして夏が来たのである。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
何でも
五月雨
(
さみだれ
)
の
寂
(
さび
)
しい夜でしたがネ、余り
徒然
(
つれづれ
)
の
儘
(
まゝ
)
、誰やらの詩集を見てる時
不図
(
ふと
)
、アヽ
私
(
わたし
)
ヤ恋してるんぢや無いか知らんと、始めて自分で
覚
(
さと
)
りましたの、——
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
維新
(
いしん
)
の
變
(
へん
)
に
彼
(
か
)
れは
靜岡
(
しづをか
)
のお
供
(
とも
)
、これは
東臺
(
とうだい
)
の
五月雨
(
さみだれ
)
にながす
血汐
(
ちしほ
)
の
赤
(
あか
)
き
心
(
こヽろ
)
を
首尾
(
しゆび
)
よく
顯
(
あら
)
はして
露
(
つゆ
)
とや
消
(
き
)
えし、
水
(
みづ
)
さかづきして
別
(
わか
)
れし
限
(
ぎ
)
りの
妻
(
つま
)
へ
形見
(
かたみ
)
が
此美人
(
このびじん
)
なり
経つくゑ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
朝から晩までべちゃくちゃ
囀
(
さえず
)
る
葭原雀
(
よしわらすずめ
)
の隠れ
家
(
が
)
にもなる。
五月雨
(
さみだれ
)
の夜にコト/\
叩
(
たた
)
く
水鶏
(
くいな
)
の宿にもなる。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
安は埋めた古井戸の上をば奇麗に地ならしをしたが、
五月雨
(
さみだれ
)
、夕立、二百十
日
(
か
)
と、
大雨
(
たいう
)
の降る時々地面が一尺二尺も
凹
(
くぼ
)
むので、其の
後
(
ご
)
は縄を引いて人の
近
(
ちかづ
)
かぬよう。
狐
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
水車場とこの屋との間を
家鶏
(
にわとり
)
の一群れゆききし、もし
五月雨
(
さみだれ
)
降りつづくころなど、荷物
曳
(
ひ
)
ける
駄馬
(
だば
)
、水車場の軒先に立てば黒き水は
蹄
(
ひづめ
)
のわきを白き
藁
(
わら
)
浮かべて流れ
わかれ
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
行
(
ゆく
)
尿
(
しし
)
の流れは臭くして、しかも尋常の水にあらず、
淀
(
よど
)
みに浮ぶ
泡沫
(
うたかた
)
は、かつ消えかつ結びて、
暫時
(
しばし
)
も
停
(
とど
)
まる事なし、かの「
五月雨
(
さみだれ
)
に年中の雨降り尽くし」と
吟
(
よ
)
んだ通り
十二支考:03 田原藤太竜宮入りの話
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
五月雨
(
さみだれ
)
揚句の
洪水
(
おおみず
)
が濁りに濁って、どんどと流れて、堤を切って
溢
(
あふ
)
れて出たとも申しましょうか。
藁草履
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
ある
五月雨
(
さみだれ
)
のふり続いた午後、Nさんは
雪平
(
ゆきひら
)
に
粥
(
かゆ
)
を煮ながら、いかにも
無造作
(
むぞうさ
)
にその話をした。
春の夜
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
私は古人の「
五月雨
(
さみだれ
)
の降り残してや光堂」の句を、日を
距
(
へだ
)
ててではありましたが、思い出しました。そして
椎茜
(
しいあかね
)
という言葉を造って下の五におきかえ嬉しい気がしました。
橡の花
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
そのあげく
五月雨
(
さみだれ
)
の降る或る夕方のこと、手に手に
棒千切
(
ぼうちぎり
)
を持った十四五人が「金貸し後家」の
家
(
うち
)
のまわりを取り囲むと、強がりの青年が三人代表となって中に
這入
(
はい
)
って
いなか、の、じけん
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
「奥州名取の
郡
(
こおり
)
に入りて中将実方の塚はいづくにやと尋ね
侍
(
はべ
)
れば、道より一里半ばかり左の方笠島といふ処にありと教ふ。降り続きたる
五月雨
(
さみだれ
)
いとわりなく打過ぐるに。」
俳句はかく解しかく味う
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
たとへ
七二
泉下
(
せんか
)
の人となりて、
七三
ありつる世にはあらずとも、其のあとをももとめて
七四
壠
(
つか
)
をも
築
(
つ
)
くべけれと、人々に志を告げて、
五月雨
(
さみだれ
)
のはれ
間
(
ま
)
に
七五
手をわかちて
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
五月雨
(
さみだれ
)
の降る晩に、車の庄の長者は、八百人の家来をつれて、長鍬長者が屋敷へ押し寄せて来たのぢや。長鍬の長者の方でも、四方の門を閉め切つて、七日七夜も戦つたのぢや。
黄金の甕
(新字旧仮名)
/
野口雨情
(著)
けれど、
五月雨
(
さみだれ
)
の
頃
(
ころ
)
とて、
淡青
(
ほのあを
)
い
空気
(
くうき
)
にへだてられたその
横顔
(
よこがほ
)
はほのかに
思
(
おも
)
ひうかぶ。
桜さく島:見知らぬ世界
(新字旧仮名)
/
竹久夢二
(著)
五月雨
(
さみだれ
)
で増水しているところへ無理をして渡河強行いたしますならば、人も馬も多く失われるは必定、淀、
一口
(
いもあらい
)
へまわるか、または河内路へまわって、そこから対岸に渡るべきか
現代語訳 平家物語:04 第四巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
五月雨
(
さみだれ
)
雲の間に見え隠れする白馬連峯を物色するうち、やがて見覚えの代馬が所在を示した。さすがにまぎらわしい周りの露岩は多いけれど、まず完全といってよいほどの姿である。
ある偃松の独白
(新字新仮名)
/
中村清太郎
(著)
ある
温暖
(
あたゝか
)
い
五月雨
(
さみだれ
)
のじと/\降る日の暮方、彼が社から歸つて傘をすぼめて共同門を潜ると、最近向うから折れて出て仲直りした煎餅屋の
内儀
(
かみ
)
さんが窓際で千登世と立話をしてゐたが
崖の下
(旧字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
五月雨
(
さみだれ
)
にこゝろ乱るゝふる里をよそに涼しきつきや見るらむ、など口にまかせ候。政之。御令妹このほど御歌は上達、
感入
(
かんじいり
)
候也。書余
譲後信
(
こうしんにゆずる
)
。努力
加餐
(
かさん
)
。不宣。七月十一日。応渠再拝。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
東京府下南葛飾郡葛西村字大島の共同井戸より、フトこのごろの
五月雨
(
さみだれ
)
続く夜ごとのさびしさにつれて、青白き一団の陰火立ちのぼり、四、五尺の高さにてパッとかき消さるるを見たり。
おばけの正体
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
あの銀色をした温味のある白毛の
衾
(
しとね
)
から、すやすやと聞えやうかと耳を澄ます、
五月雨
(
さみだれ
)
には、森の青地を白く
綾取
(
あやど
)
つて、雨が
鞦韆
(
ブランコ
)
のやうに揺れる、
椽側
(
えんがは
)
に寝そべりながら、
団扇
(
うちは
)
で蚊をはたき
亡びゆく森
(新字旧仮名)
/
小島烏水
(著)
その日は
欝陶
(
うっとう
)
しい
五月雨
(
さみだれ
)
のじめじめと降りしぶいている日であった。
狂乱
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
五月雨
(
さみだれ
)
の止まぬに
雑草
(
くさ
)
は苅れずして小さきは小さき花を咲かせぬ
遺愛集:02 遺愛集
(新字新仮名)
/
島秋人
(著)
前に夏の部で評釈した句「
五月雨
(
さみだれ
)
や
御豆
(
みず
)
の
小家
(
こいえ
)
の
寝醒
(
ねざ
)
めがち」
郷愁の詩人 与謝蕪村
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
と、その後又幾月か過ぎて、或る
五月雨
(
さみだれ
)
の降る晩であった。
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
香盤
(
かうばん
)
に白檀そへて
五月雨
(
さみだれ
)
の晴間を告げぬさもらひびとは
舞姫
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
五月雨
(
さみだれ
)
のしとしとと降る頃を、何か分らぬ時を過した。
連環記
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
水層
(
みかさ
)
まし巌浪たかし
五月雨
(
さみだれ
)
のふる川柳根を洗ふまで
礼厳法師歌集
(新字旧仮名)
/
与謝野礼厳
(著)
一茶に「
五月雨
(
さみだれ
)
の竹にはさまる
在所
(
ざいしょ
)
かな」
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
五
常用漢字
小1
部首:⼆
4画
月
常用漢字
小1
部首:⽉
4画
雨
常用漢字
小1
部首:⾬
8画
“五月雨”で始まる語句
五月雨山
五月雨時分
五月雨丸
五月雨傘
五月雨時
五月雨月
五月雨雲
五月雨頃
五月雨髮