)” の例文
旌旗せいき色なく、人馬声なく、蜀山の羊腸ようちょうたる道を哀々あいあいと行くものは、五丈原頭のうらみを霊車にして、むなしく成都へ帰る蜀軍の列だった。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
作者不明だが、「伊勢にに従へる作」という左注がある。代匠記に、「持統天皇朱鳥六年ノ御供ナリ」と云ったが、或はそうかも知れない。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
夫人がこのときの風采ふうさいは、罪あるものを救うべく、めるものをいやすべく、雲にしてかえる神々しい姿であった。廊下を出ると、風が冷い。
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
美和子が、毎晩のように、お店に現われると、結局美和子が、バー・白鳥スワンする王女になってしまうような気がした。
貞操問答 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
げ、辞を低うして仕官を求める諸国諸大名をことごとく袖にして、こうして、酒をくらってどこにでも寝てしまう巷の侠豪、蒲生泰軒です。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
衞國ゑいこくはふひそかきみくるまするものつみ(一〇七)げついたる、すでにして彌子びしははむ。ひとき、いてよるこれぐ。彌子びしいつはつてきみくるましてづ。
この医卜いぼくに隠れたる英雄(?)は、まず自分が何故に、わざわざこの金鯱城下にげたかという理由を説明して、それは郷国の先輩、弥次郎兵衛
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
東洋人の、幾多古人の芸術家が「身をけて白雲にし、」とか、「幻に住さん」などということをねがっている。必ずしも自然をもとめるのではあるまい。
河明り (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
ふたたび家を東京にうつすに及び、先生ただちにまげられ、いわるるよう、鄙意ひい、君が何事か不慮ふりょさいあらん時には、一臂いっぴの力を出し扶助ふじょせんと思いりしが
兎は後脚が長くてすこぶるはやく走りその毛色が住所の土や草の色と至って紛らわしき上に至ってずるく、細心して観察した人の説にその狡智狐にすという。
これを以てかの長風に巨濤きょとうしのぎて、千万里を電走し五大州に隣交するを視ては、にただに跛躄はへきの行走と、行走の騎乗とのたとうべきがごとくならんや。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
鉄鉢てっぱつを両手で捧げた者、猛虎を足に踏まえた者、香炉に向かって坐っている者、合掌し結跏けっか趺坐ふざしている者、そうして雲竜にしている者……千態万状の羅漢の像が
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
この傾向がどこまでも続いたら、おしまいには昔話の仙人のように雲にして山から山を飛び歩けそうな気がする。仙人の話は存外こんな想像からも生まれ得たのである。
軽井沢 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
その金髪は後ろになびいて、星をちりばめた暗澹あんたんたる馬車にせる天使の頭髪のようで、また後光の炎を発する怒った獅子ししたてがみのようであった。そしてアンジョーラは声を張り上げた。
此の恵み深い青年の左大臣は、一門の年長者たるの故を以て一介いっかい老骨ろうこつに結構な財宝をあまたゝび贈ってくれた上に、今度は自身その邸宅にげると云う光栄を授けてくれるのである。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
流転の途は厭はせられたりしも人我にんがの空をばうけがひは為玉はざりしや、何とて幺微いさゝかの御事に忌はしくも自ら躓かせたまひて、のりの便りの牛車を棄て、罪の齎らす火輪にもさんとは思したまふ
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
雲の峰一道二道と山のわきより立ち昇りて、神女白銀の御衣みけしいて長し、我にいま少し仙骨を有するの自信あらば、して天際に達する易行道いぎやうだうとなしたりしならむ、下はすなは荒邈くわうばくとして、裾野も
霧の不二、月の不二 (新字旧仮名) / 小島烏水(著)
わざわざをまげるのが、長い間のならわしになっていた。
佳慵駕 しといえどめいずるにものう
向嶋 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
遺骸と共にに乘りて手綱を双の手に繰れば
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
律師りしめいじて
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
「実は、今日は、此方の誕生日なのじゃが、どうでしょう、竹裏館ちくりかん別業べつぎょうのほうへ、諸卿お揃いでげてくれませんか」
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ところもの其人そのひとほねみなすでちたり、ひと其言そのげんのみ君子くんしは、其時そのときればすなは(二)し、其時そのときざればすなは(三)蓬累ほうるゐしてる。
やがて、水道橋のたもとに着く——酒井はその雲にして、悠々として、早瀬は霧に包まれて、ふらふらして。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
平民主義は生産機関の境遇に生出し、その勢力はほとんどしてこれに上らんとす。しからばすなわち今日において政治上において平民主義の流行するあにまたうべならずや。
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
腸窒扶斯ちょうチフスかかりたるとき、先生、とくまげられ、枕辺まくらべにて厚く家人に看護かんご心得こころえさとされ、その上、予がみずからきたる精米せいまいあり、これは極古米ごくこまいにして味軽く滋養じようも多ければ
ずっと伝通院まで乗込むはずであったのを、吉原遊廓の懇望こんもうもだし難く、大山大聖が、しばらくそこへげることになりました。吉原では、大樽の鏡を抜いてこの一行をもてなします。
大菩薩峠:20 禹門三級の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ことに今夜、げたぞと言わんばかりに、こうしてやって来たのが、今いった政府の文書課長。自分は浪人言わば失業者の大将みたいなものだから、はじめッから少々つむじまがっている。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
また仁明にんみょう天皇の御代に僧真済しんさいが唐に渡る航海中に船が難破し、やっといかだして漂流二十三日、同乗者三十余人ことごとく餓死し真済と弟子の真然しんねんとたった二人だけ助かったという記事がある。
颱風雑俎 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
ここおいて清の独り緋をるを見て之を疑う。ちょうおわる。せい奮躍してを犯さんとす。帝左右に命じて之を収めしむ。剣を得たり。せい志のぐべからざるを知り、植立しょくりつして大にののしる。衆その歯をけっす。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
やまうへ
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
そんなつもりで実は、小館にいささか酒宴の支度を設けました。もしげていただければ、一家のよろこびこれにすぎたるものはありませんが
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのおれば嬋娟せんけんたる美姫を擁して巍々ぎぎたる楼閣に住し、出ずれば肥馬にまたがり、軽車にし、隷従雲のごときは全国人民をして風にくしけずり、雨に浴し、父子兄弟妻子をしてあいともに離散し
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
このあたりに類はないから、人々は総六が自讃する、怪しき鳥の挙動ふるまいにはさもなくて、湯河原の雲をじ、吉浜の朝霽あさばれや、真鶴の霜毛にして、名だたる函嶺の裏関越え、小田原の神に使した
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
きみいはく、「われあいするかな、其口そのくちわすれてわれおもふ」と。彌子びしいろおとろへてあいゆるび、つみきみるや、きみいはく、「かついつはつてくるまし、またかつわれくらはすにその(一〇八)餘桃よたうもつてせり」
「いえ、いえ。たびたびげ給うては、恐縮の至りです。そのうち気が向けば、兄のほうからお伺いするでしょう」
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あたかも雲にして行くように見えたのである。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
すでに両度まで、げたまい、このうえまた、君よりお訪ねあるなどは、あまりに礼の過ぎたるもの。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あたかくもしてくやうにえたのである。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
加古川を朝出た帝のが、その夕べ、着いたところは日女道ひめじ(姫路市)の姫山の丘かと見られる。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その迅きこと、霧にし、雲をはらい、飛鳥にことならず、といわれていた通りである。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
汝ら、生をうけて、何ぞこの狭隘きょうあい山谷さんこくに、雲と児戯するや。雲すでに起つ、雲にせよ。行くこと西方三千里、廬山ろざんに臥し峨眉峰がびほうを指さし、足を長江にすすぎ、気を大世界に吸う。生命真に伸ぶべし。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まだ帝のがお立ちになっていない証拠だ。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)