トップ
>
険
>
けわ
ふりがな文庫
“
険
(
けわ
)” の例文
旧字:
險
これに
反
(
はん
)
して
北
(
きた
)
からの
風
(
かぜ
)
は、
荒々
(
あらあら
)
しい
海
(
うみ
)
の
波
(
なみ
)
の
上
(
うえ
)
を、
高
(
たか
)
い
険
(
けわ
)
しい
山
(
やま
)
のいただきを、
谷
(
たに
)
に
積
(
つ
)
もった
雪
(
ゆき
)
の
面
(
おもて
)
を
触
(
ふ
)
れてくるからでありました。
大きなかしの木
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
袂
(
たもと
)
を振り切って行こうとする時に、金蔵の
面
(
かお
)
が
凄
(
すご
)
いほど
険
(
けわ
)
しくなっていたのに、お豊はぞっとして声を立てようとしたくらいでしたが
大菩薩峠:04 三輪の神杉の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
茂った林がついこの頃
伐
(
き
)
りたおされた個所においてさえ、
険
(
けわ
)
しい丘の脇腹に狭い棚のような路が水ぎわに近づいたり遠ざかったりして
森の生活――ウォールデン――:02 森の生活――ウォールデン――
(新字新仮名)
/
ヘンリー・デイビッド・ソロー
(著)
「なに臨終だァ?
莫迦
(
ばか
)
をいいなさい生きているものを
掴
(
つかま
)
えて、臨終とは何ごとかッ」大竹女史は、男のような
険
(
けわ
)
しい顔付をして叫んだ。
西湖の屍人
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
この
険
(
けわ
)
しい時勢の中に、絵をかいたり、茶をたてたり、こういう人もいるものかなあ。……おれには縁のない世界の人間だ、親代々の財産を
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
そのうち日本も
亜米利加
(
アメリカ
)
との間が
険
(
けわ
)
しくなって、もういくらヤキモキしても欧州へは、行くことも帰ることもできなくなってしまって……。
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
して
険
(
けわ
)
しい道をのぼって来たようだが、その道は、これからの踏み出しよう一つで、君をもつと高いところに導いてくれる道にもなるし、君を
次郎物語:03 第三部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
近藤は大きな鼻眼鏡の
後
(
うしろ
)
から、
険
(
けわ
)
しい視線を大井へ飛ばせたが、大井は
一向
(
いっこう
)
平気な顔で、
鉈豆
(
なたまめ
)
の
煙管
(
きせる
)
をすぱすぱやりながら
路上
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
芳子が出て行った後、時雄は急に
険
(
けわ
)
しい難かしい顔に成った。「自分に……自分に、この恋の世話が出来るだろうか」と
独
(
ひと
)
りで胸に反問した。
蒲団
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
「……!」ずっと立ったままの美佐子が、私を
険
(
けわ
)
しく見据えた。私は眼を
逸
(
そ
)
らせ、「子」の字をパクリと口の中へ入れた。
如何なる星の下に
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
矢部は彼が部屋にはいって来るのを見ると、よけい顔色を
険
(
けわ
)
しくした。そしてとうとうたまりかねたようにその
眇眼
(
すがめ
)
で父をにらむようにしながら
親子
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
その光で見ると、白麻の
衣
(
きぬ
)
に
黒絽
(
くろろ
)
の
腰法衣
(
こしごろも
)
。年の頃四十一二の
比丘尼
(
びくに
)
一人。肉ゆたかに
艶々
(
つやつや
)
しい顔の色。それが眼の光を
険
(
けわ
)
しくしているのであった。
備前天一坊
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
岩屋
(
いわや
)
から
少
(
すこ
)
し
参
(
まい
)
りますと、モーそこはすぐ
爪先上
(
つまさきあが
)
りになって、
右
(
みぎ
)
も
左
(
ひだり
)
も、
杉
(
すぎ
)
や
松
(
まつ
)
や、その
他
(
た
)
の
常盤木
(
ときわぎ
)
のしんしんと
茂
(
しげ
)
った、
相当
(
そうとう
)
険
(
けわ
)
しい
山
(
やま
)
でございます。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
「うん、その
十六世紀前紀本
(
インキュナプラ
)
なんだがねえ。実は、それに似た空論が一つあるのだよ」と検事は沈痛な態度を失わず、
詰
(
なじ
)
るような
険
(
けわ
)
しさで法水を見て
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
はね上がった眉に切れ長の眼に、高くて細い長い鼻に、残忍らしい薄手の口などずいぶんと
険
(
けわ
)
しい人相であった。
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
あの老人が山へはいると仙人のように身軽になって、岩の上なんぞはピョンピョンと飛んでしまい、
険
(
けわ
)
しい個所ではスーッと消てしまったように見えなくなる。
旧聞日本橋:08 木魚の顔
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
六五
早池峯
(
はやちね
)
は
御影石
(
みかげいし
)
の山なり。この山の小国に
向
(
む
)
きたる
側
(
かわ
)
に
安倍ヶ城
(
あべがじょう
)
という岩あり。
険
(
けわ
)
しき
崖
(
がけ
)
の中ほどにありて、人などはとても行きうべきところにあらず。
遠野物語
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
命は、そこから、いよいよ
険
(
けわ
)
しい深い山を
踏
(
ふ
)
み分けて、
大和
(
やまと
)
の
宇陀
(
うだ
)
というところへおでましになりました。
古事記物語
(新字新仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
灯
(
ひ
)
に写る
床柱
(
とこばしら
)
にもたれたる
直
(
なお
)
き
背
(
せ
)
の、この時少しく前にかがんで、両手に
抱
(
いだ
)
く
膝頭
(
ひざがしら
)
に
険
(
けわ
)
しき山が出来る。
一夜
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
私は単に腹痛を
堪
(
た
)
えるために
険
(
けわ
)
しい表情をしていたのに過ぎないのだが、それが彼女にそうした不安を抱かせたのであろう。つらい商売と云わなければなるまい。
朴歯の下駄
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
暫
(
しばら
)
く経った。彼は頭を強く振るとのろのろと歩き出した。顔色は依然として悪かったが唇を堅く結び眼付が
険
(
けわ
)
しくなったのが、かえって
生気
(
せいき
)
が出たように見えた。
日の果て
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
空蝉は薄命な自分はこの
良人
(
おっと
)
にまで死別して、またも
険
(
けわ
)
しい世の中に
漂泊
(
さす
)
らえるのであろうかと
歎
(
なげ
)
いている様子を、常陸介は病床に見ると死ぬことが苦しく思われた。
源氏物語:16 関屋
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
口を明いて獅子を見ているような奴は、いちがいに馬鹿だと
罵
(
ののし
)
られる世の中となった。眉が
険
(
けわ
)
しく、眼が鋭い今の元園町人は、獅子舞を見るべく余りに
怜悧
(
りこう
)
になった。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
いまから考へると多分の
嫉妬
(
しっと
)
もあつたやうに思ふ。さういふ
険
(
けわ
)
しい
石火
(
いしび
)
を
截
(
き
)
り合つて、そこの
裂目
(
さけめ
)
から
汲
(
く
)
まれる案外甘い情感の滴り——その
嗜慾
(
しよく
)
に雪子は魅惑を感じた。
過去世
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
一つの選択が許される場合、一つの
途
(
みち
)
が永遠の
泥濘
(
でいねい
)
であり、他の途が
険
(
けわ
)
しくはあってもあるいは救われるかもしれぬのだとすれば、誰しもあとの途を選ぶにきまっている。
悟浄出世
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
険
(
けわ
)
しく高き石級をのぼり来て、
臉
(
ほお
)
にさしたる
紅
(
くれない
)
の色まだ
褪
(
あ
)
せぬに、まばゆきほどなるゆふ日の光に照されて、苦しき胸を
鎮
(
しず
)
めむためにや、この顛の真中なる切石に腰うち掛け
文づかひ
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
親爺の
罵
(
のの
)
しり声も耳に入らぬ体で、熱心に、石膏像の芯の布みたいなものを検べていたが、やがて、こちらを向いて立上った時には、彼はハッする程
険
(
けわ
)
しい表情になっていた。
吸血鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
わたしはかれの
優
(
やさ
)
しい悲しそうな目のうちに、
険
(
けわ
)
しい目つきの表れたのを見ておどろいた。
家なき子:01 (上)
(新字新仮名)
/
エクトール・アンリ・マロ
(著)
山賊は承知承知と女を軽々と背負って歩きましたが、
険
(
けわ
)
しい登り坂へきて、ここは危いから降りて歩いて貰おうと言っても、女はしがみついて厭々、厭ヨ、と言って降りません。
桜の森の満開の下
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
定明の眼は皮肉な
険
(
けわ
)
しい
一瞥
(
いちべつ
)
のかがやきを見せ、言葉はほとばしるように
衝
(
つ
)
いて出た。
野に臥す者
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
彼女は眉をひそめながら「私はきっと
険
(
けわ
)
しい顔つきでもしているのだろう」と考えた。
菜穂子
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
あたりの山々の、いかにも大和の山らしく朗らかで優しい姿に比べると、この黒く茂った
険
(
けわ
)
しい山ばかりは、何かしら特別の生気を帯びて、なにか秘密を蔵しているように見えた。
古寺巡礼
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
闇太郎は、雪之丞を
険
(
けわ
)
しすぎる眼で、
睨
(
にら
)
むようにしたが、これもがらりと気を代えて
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
あの、黒い山がむくむく
重
(
かさ
)
なり、その
向
(
むこ
)
うには
定
(
さだ
)
めない雲が
翔
(
か
)
け、
渓
(
たに
)
の水は風より
軽
(
かる
)
く
幾本
(
いくほん
)
の木は
険
(
けわ
)
しい
崖
(
がけ
)
からからだを
曲
(
ま
)
げて空に
向
(
むか
)
う、あの景色が石の滑らかな
面
(
めん
)
に描いてあるのか。
チュウリップの幻術
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
その廻り路にも非常な
険
(
けわ
)
しい坂があってある時にはほとんど山の頂上まで登らなくちゃあならん場合もあるです。けれども山の間にそういう具合にぐるっと一廻り出来る道が付いて居る。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
喉笛にはまだ匕首を突立てたまま、顔の
険
(
けわ
)
しさに似ず、血はあまり出ておりませんが、たぶん一と突きで死んだためでしょう。平次はそっと布をかけて、ひとわたり部屋の中を見廻しました。
銭形平次捕物控:116 女の足跡
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
すこし
裾
(
すそ
)
の見えた八つが岳が次第に
険
(
けわ
)
しい山骨を
顕
(
あら
)
わして来て、
終
(
しまい
)
に紅色の光を帯びた
巓
(
いただき
)
まで見られる頃は、影が山から山へ
映
(
さ
)
しておりました。甲州に
跨
(
またが
)
る山脈の色は
幾度
(
いくたび
)
変ったか知れません。
千曲川のスケッチ
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
室と室との間に
最
(
いと
)
険
(
けわ
)
しき階段あり之を登れば廊下にして廊下の両側に
列
(
つら
)
なれる密室は
悉
(
こと/″\
)
く是れ
囚舎
(
ひとや
)
なるべく其戸に一々逞ましき錠を卸せり、廊下の入口に立てる一人、是が世に云う牢番ならんか
血の文字
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
座敷へ
上
(
あが
)
って、
膝
(
ひざ
)
を
折
(
お
)
ると
同時
(
どうじ
)
に、
春信
(
はるのぶ
)
の
眼
(
め
)
は
険
(
けわ
)
しく
松江
(
しょうこう
)
を
見詰
(
みつ
)
めた。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
就中
(
なかんずく
)
丸く大きく見開かれ、前方を
睨
(
にら
)
んでいる
瞳
(
ひとみ
)
は、兜の
眉庇
(
まゆびさし
)
とすれ/\になっているために一層
険
(
けわ
)
しく
烱々
(
けい/\
)
と輝やき、鼻の上方、両眼の迫る間に、もう一つ小さな鼻があるかのように肉が隆起して
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
藤波は、おいおい不安をまぜた
険
(
けわ
)
しい顔つきになって
顎十郎捕物帳:06 三人目
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
なよたけ (
険
(
けわ
)
しい顔)こがねまる!
なよたけ
(新字新仮名)
/
加藤道夫
(著)
線の
険
(
けわ
)
しい、鋭角的な顔だ。
口笛を吹く武士
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
監督の顔色が
険
(
けわ
)
しくなり
明日はメーデー
(新字新仮名)
/
槙村浩
(著)
けれど、まだ二
羽
(
わ
)
、三
羽
(
わ
)
、
意地悪
(
いじわる
)
いからすが
残
(
のこ
)
っていて、どこへも
去
(
さ
)
らずに、
塔
(
とう
)
の
屋根
(
やね
)
に
止
(
と
)
まって、
険
(
けわ
)
しい
目
(
め
)
で
巣
(
す
)
をねらっていました。
僕はこれからだ
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
御主君道三様と、義龍様との御不和、近頃、わけてもお
険
(
けわ
)
しい事情にあるゆえ、いつ何時、いかなる事変が起ろうも測り難い。
新書太閤記:01 第一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
険
(
けわ
)
しい見方をするようになったのは、たしかに黒幕があるのだ、と駒井の殿様も言った、それをお嬢さんが、またよく註釈して言って聞かせた
大菩薩峠:31 勿来の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
牧野は
険
(
けわ
)
しい眼をしながら、やけに葉巻をすぱすぱやった。お蓮は寂しい顔をしたなり、しばらくは何とも答えなかった。
奇怪な再会
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
青谷技師は調室の真中に引きだされ、署長以下の
険
(
けわ
)
しい視線と
罵言
(
ばげん
)
とに責められていた。彼は極力犯行を否定した。
人間灰
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
彼は、先生の眼から、これまでかつて見たことのない、
険
(
けわ
)
しい、つめたい光がほとばしっているのを見たのである。
次郎物語:04 第四部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
険
常用漢字
小5
部首:⾩
11画
“険”を含む語句
危険
冒険
険相
陰険
険難
冒険譚
険崖
冒険者
険呑
険悪
険阻
険岨
邪険
天険
険峻
険隘
危険々々
険突
王水険
険悪化
...