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賤
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いや
ふりがな文庫
“
賤
(
いや
)” の例文
「口をおあきつてばさ!」彼女は男がさし出した手の平をぴしやりと
撲
(
う
)
つて云つた。男は
賤
(
いや
)
しく笑ひ乍らあんぐりと黒い口を開いた。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死
(新字旧仮名)
/
長与善郎
(著)
今
仰
(
おっ
)
しゃった事がほんとうなら
飛立
(
とびた
)
つ程嬉しいが、只今も申す通り、
私
(
わし
)
は今じゃア
零落
(
おちぶ
)
れて
裏家住
(
うらやずま
)
いして、人力を
挽
(
ひ
)
く
賤
(
いや
)
しい身の上
西洋人情話 英国孝子ジョージスミス之伝
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
愛を要するがゆえに自尊をも要する青春の頃において、服装の
賤
(
いや
)
しいゆえにあざけられ、貧しいゆえに冷笑されるのを、彼は感じた。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
「訊くな。訊くな。訊かぬ方がいゝ。聞くと
却
(
かえ
)
って気を悪くするから。あんな
賤
(
いや
)
しい人間の云うことは、一切耳に入れぬことじゃ。」
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
武士たるもの
二〇
漫
(
みだり
)
にあつかふべからず。かならず
貯
(
たくは
)
へ
蔵
(
をさ
)
むべきなり。
你
(
なんぢ
)
賤
(
いや
)
しき身の
分限
(
ぶげん
)
に過ぎたる
財
(
たから
)
を得たるは
二一
嗚呼
(
をこ
)
の
事
(
わざ
)
なり。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
▼ もっと見る
そんな
賤
(
いや
)
しい素性の者なら、たとえ英吉がその為に、
憧
(
こが
)
れ
死
(
じに
)
をしようとも、己たち両親が承知をせん。家名に係わる、と云ったろう。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
まつたくそれは
賤
(
いや
)
しいものではあつた——しかし同時にそれは
庇護
(
ひご
)
されたものだつた。そして私は安全な隱れ場所を欲してゐたのだ。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
私は
阿父様
(
おとうさま
)
を養ふ為に、
賤
(
いや
)
しい商売を致して居ります。しかし私の商売は、私一人を汚す外には、誰にも迷惑はかけて居りません。
南京の基督
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
私の時より気まぐれを起すは人のするのでは無くて皆心がらの浅ましい訳がござんす、私はこんな
賤
(
いや
)
しい身の上、貴君は立派なお方様
にごりえ
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
その
賤
(
いや
)
しい女一人のために、あれほどの地位を棒に振って、半生涯を
埋
(
うず
)
めてしまうような
羽目
(
はめ
)
に陥っておしまいになったのが情けない。
大菩薩峠:19 小名路の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
女4 それに、今度の御相手は、なんでも、
竹籠
(
たけかご
)
作りのお爺さんとかの娘で、それもまだ十七、八のとんだ
賤
(
いや
)
しい
田舎娘
(
いなかむすめ
)
なんですって!
なよたけ
(新字新仮名)
/
加藤道夫
(著)
ゆえに酒色云々の談をなして、あるいはこれを論破し、あるいはこれを是非するの間は、到底諸論の
賤
(
いや
)
しきものと言わざるを得ず。
学問のすすめ
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
クリストフの
靴
(
くつ
)
の大きいこと、服の醜いこと、
埃
(
ほこり
)
をよく払ってない帽子、
田舎訛
(
いなかなま
)
りの発音、
可笑
(
おか
)
しなお辞儀の仕方、高声の
賤
(
いや
)
しさ
ジャン・クリストフ:04 第二巻 朝
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
そしてもし濃紅姫がお目見得に出ないために、他の
賤
(
いや
)
しい女がお妃になるような事になると、かえって王様に対して恐れ多い事になる。
白髪小僧
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
何探偵?——もってのほかの事である。およそ世の中に何が
賤
(
いや
)
しい
家業
(
かぎょう
)
だと云って探偵と高利貸ほど下等な職はないと思っている。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
さらば疾翔大力は、いかなればとて、われわれ同様
賤
(
いや
)
しい鳥の身分より、その様なる結構のお身となられたか。結構のことぢゃ。
二十六夜
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
ふだん自分の
銭
(
ぜに
)
でお酒を呑めない実相を露悪しているようで、
賤
(
いや
)
しくないか、よせよせという内心の声も聞えて、私は途方に暮れていた。
善蔵を思う
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
形態的にははちの子やまた蚕ともそれほどひどくちがって特別に先験的に憎むべく
賤
(
いや
)
しむべき素質を具備しているわけではないのである。
自由画稿
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
潜
(
くゞ
)
りしとか申程に
賤
(
いや
)
しく見えし
由
(
よし
)
然
(
さ
)
すれば
貴公樣
(
あなたさま
)
などは御
體
(
なり
)
は見惡ふ
入
(
いら
)
せられても
泥中
(
でいちう
)
の
蓮華
(
はちす
)
とやらで御人品は
自然
(
おのづ
)
から
瓦
(
かはら
)
と玉程に違ふを
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
町の女のように
賤
(
いや
)
しくなくて、そういう生活にある者といえば、さしずめ、このふたりは、御所の
裡
(
うち
)
に仕えている女官にちがいあるまい。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ところが十秒もたたないうちに阿Qも満足して勝ち
慢
(
ほこ
)
って立去る。阿Qは悟った。乃公は
自
(
みずか
)
ら軽んじ自ら
賤
(
いや
)
しむことの出来る第一の人間だ。
阿Q正伝
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
少なくとも今一つの人に
賤
(
いや
)
しまるる職分のごときは、是に比べるとずっと小さな偶然だったと、認め得る時が来ようかと思う。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
つい十年ほど前の、旧幕時代には、芝居者は河原乞食と
賤
(
いや
)
しめられ、
編笠
(
あみがさ
)
をかぶらなければ、市中を歩かせなかったという。
朱絃舎浜子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
少女は今までの衣裳を解き捨てて、
賤
(
いや
)
しい
奴僕
(
ぬぼく
)
の服を着け、犬の導くままに山を登り、谷に下って
石室
(
いしむろ
)
のなかにとどまった。
中国怪奇小説集:03 捜神記(六朝)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
是においてかエサウはヤコブと
種
(
たね
)
を異にし、またクイリーノは人がこれをマルテに歸するにいたれるほど父の
賤
(
いや
)
しき者なりき 一三〇—一三二
神曲:03 天堂
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
素
(
もと
)
より
賤
(
いや
)
しき身にて
候得者
(
さふらへば
)
たとひ御手討に
被成
(
なされ
)
候とも何かは苦しかるべきに、一命をお助け
被下
(
くだされ
)
し上は、かばかりの傷は物の数にても候はず
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
それもね、最初お代先生の両親が不同意で、貴夫人には貴夫人の学問が
要
(
い
)
るというが今の
貴顕紳士
(
きけんしんし
)
の貴夫人には
素姓
(
すじょう
)
の
賤
(
いや
)
しい
醜業婦
(
しゅうぎょうふ
)
が沢山いる。
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
庭作りとして、高貴の家へ出入していたお島の父親は、彼が一生の
瑕
(
きず
)
としてお島たちの母親である彼が二度目の妻を、
賤
(
いや
)
しいところから迎えた。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
その当時の余には
賤
(
いや
)
しむべき一種の客気があって専門学校などは眼中にないのだというような見識をその答案の端にぶらさげたかったのである。
子規居士と余
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
ロミオ
此
(
この
)
賤
(
いや
)
しい
手
(
て
)
で
尊
(
たふと
)
い
御堂
(
みだう
)
を
汚
(
けが
)
したを
罪
(
つみ
)
とあらば、
面
(
かほ
)
を
赧
(
あか
)
うした
二人
(
ふたり
)
の
巡禮
(
じゅんれい
)
、
此
(
この
)
唇
(
くちびる
)
めの
接觸
(
キッス
)
を
以
(
もっ
)
て、
粗
(
あら
)
い
手
(
て
)
の
穢
(
よご
)
した
痕
(
あと
)
を
滑
(
なめら
)
かに
淨
(
きよ
)
めませう。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
わが
日頃
(
ひごろ
)
の
誓
(
ちかひ
)
に
反
(
そむ
)
くものなれば
仰
(
おほ
)
せなれども
御免下
(
ごめんくだ
)
されたし、
好
(
この
)
みてするものはなき
賤
(
いや
)
しき
業
(
わざ
)
の、わが身も
共々
(
とも/″\
)
に
牛馬
(
ぎうば
)
に
比
(
ひ
)
せらるゝを
耻
(
はぢ
)
ともせず
もゝはがき
(新字旧仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
脱走してからの生活は、
賤
(
いや
)
しく、汚れた、みじめなものだったらしい。だが、その汚濁や卑賤の中から、彼は自分にふさわしい生きかたを選んだ。
樅ノ木は残った:04 第四部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
これに対して日本の
音曲
(
おんぎょく
)
や演劇やは、どこか本質上に於て
賤
(
いや
)
しく、平民的にくだけており、卑俗で親しみ
易
(
やす
)
い感がする。
詩の原理
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
君
(
きみ
)
因
(
よ
)
つて
呉起
(
ごき
)
を
召
(
め
)
して
(一〇二)
與
(
とも
)
に
歸
(
かへ
)
り、
即
(
すなは
)
ち
(一〇三)
公主
(
こうしゆ
)
をして
怒
(
いか
)
つて
君
(
きみ
)
を
輕
(
かろ
)
んぜしめよ。
呉起
(
ごき
)
、
公主
(
こうしゆ
)
の・
君
(
きみ
)
を
賤
(
いや
)
しむを
見
(
み
)
ば、
則
(
すなは
)
ち
必
(
かなら
)
ず
辭
(
じ
)
せん
国訳史記列伝:05 孫子呉起列伝第五
(旧字旧仮名)
/
司馬遷
(著)
「お父さんの考えていらっしゃるほど、文学というものは
賤
(
いや
)
しいものではありません。どうぞ心配しないで下さい!」
日は輝けり
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
役者の
仕着
(
しき
)
せを着た
賤
(
いや
)
しい顔の男が、
渋紙
(
しぶかみ
)
を張った
小笊
(
こざる
)
をもって、次の幕の料金を集めに来たので、長吉は時間を心配しながらもそのまま居残った。
すみだ川
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
近江の國の
賤
(
いや
)
しい老婆が參つて申しますには、「王子の御骨を埋めました所は、わたくしがよく知つております。またそのお齒でも知られましよう」
古事記:03 現代語訳 古事記
(旧字新仮名)
/
太安万侶
、
稗田阿礼
(著)
賤
(
いや
)
しい階級の人でさえも源氏の再び得た輝かしい地位を喜んでいる時にも、ただよそのこととして聞いていねばならぬ自分でなければならなかったか
源氏物語:15 蓬生
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
ひつかゝりの
一
(
ひと
)
つは、現に彼の
眼前
(
めのまへ
)
に裸体になつてモデル臺に立つているお房だ。お房は、幾らかの
賃銭
(
ちんせん
)
で肉體の
全
(
すべ
)
てを
示
(
み
)
せてゐるやうな
賤
(
いや
)
しい
女
(
をんな
)
だ。
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
賤
(
いや
)
しい身分の者を、御面倒を見ていただきました、お母様は私がお見送りいたしましたが、思うことの万分の一もできないで、申しわけがありません
愛卿伝
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
その空想を
賤
(
いや
)
しめ実学を務め、あくまで経験的の智識を重んずる、
悉
(
ことごと
)
く挙げて『省諐録』にありとせざるべからず。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
元来サモア人は極く
賤
(
いや
)
しい者でも汚物を運ぶことを嫌うのに、小酋長たるヘンリが毎晩敢然と汚物のバケツを提げては
蚊帳
(
かや
)
をくぐって捨てに行っていた。
光と風と夢
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
ほんとに/\親甲斐もない
賤
(
いや
)
しい身分出のあたしから、おまえさんのようにあゝした大家のれっきとした嫁御寮を
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
否運
(
ひうん
)
に
遭
(
あ
)
ひて志を屈せずしてこそ人たる甲斐はあれ。汝の氣力あり技倆あるを、傲慢なる羅馬の
貴人
(
あてびと
)
に見せよ、世間に見せよ。詩人は
賤
(
いや
)
しき
業
(
わざ
)
にあらず。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
まず
賤
(
いや
)
しからず
貴
(
とうと
)
からず
暮
(
く
)
らす家の夏の夕暮れの状態としては、生き生きとして活気のある、よい家庭である。
太郎坊
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
尊大でない程度に四角張つて、いとも古風な挨拶をするのは、五十二三の浪人者で、人品も
賤
(
いや
)
しからず、貧乏臭いのさへ我慢すれば、隨分立派な人柄です。
銭形平次捕物控:163 閉された庭
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
虚文虚礼
便佞
(
べんねい
)
諂諛
(
てんゆ
)
を
賤
(
いや
)
しとして仕官するを欲しなかった二葉亭もこの意外なる自由の空気に満足して、局長閣下と盛んに人生問題を論じて大得意であった。
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
「犬」というのは、ユダヤ人が異邦人を
賤
(
いや
)
しめて呼んだ語です。路傍の犬のごとく汚れている、というのです。
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
貧
(
まず
)
しきと
賤
(
いや
)
しきとは人の
悪
(
にく
)
むところなりとあらば、いよいよ貧乏がきらいならば、自ら金持ちにならばと求むべし、今わが論ずるところすなわちその法なり
貧乏物語
(新字新仮名)
/
河上肇
(著)
されば彼等の仲間にて、
賤
(
いや
)
しき限りなる業に
堕
(
お
)
ちぬは
稀
(
まれ
)
なりとぞいふなる。エリスがこれを
逭
(
のが
)
れしは、おとなしき性質と、剛気ある父の守護とに依りてなり。
舞姫
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
“賤”の意味
《名詞》
(しず) 身分や地位が低いこと。又、身分や地位が低い者。
(出典:Wiktionary)
“賤(五色の賤)”の解説
五色の賤(ごしきのせん)とは、律令制の元で設置された古代日本の5種の賤民である。
近世の被差別民や近現代日本の被差別部落の直接的な起源であるとする説が存在するが、議論がある。
(出典:Wikipedia)
賤
漢検準1級
部首:⾙
15画
“賤”を含む語句
卑賤
下賤
賤民
賤女
山賤
賤夫
賤機山
賤業
賤婦
賤奴
賤家
賤人
老若貴賤
貴賤
微賤
貧賤
賤劣
賤陋
賤機
賤業婦
...