はね)” の例文
はねの生えたうつくしい姉さんは居ないの。)ッて聞いた時、莞爾にっこり笑って両方から左右の手でおうように私の天窓あたまでて行った
化鳥 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そのくるま手長蜘蛛てながぐもすね天蓋てんがい蝗蟲いなごはねむながい姫蜘蛛ひめぐもいと頸輪くびわみづのやうなつき光線ひかりむち蟋蟀こほろぎほねその革紐かはひもまめ薄膜うすかは
次に、ニンフ達は、踵に一対の可愛い小さなはねのついた短靴みたいな、スリッパみたな、草鞋サンダルみたいな物を取り出しました。
小賢こざかしいからすはそれをよくつてゐました。それだから、そのあたまかたうへで、ちよつとはねやすめたり。あるひは一宿やどをたのまうとでもすると、まづ
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
彼らは、ぴったり寄り添って、それこそはねを組んでという格好で舞い上がった。で、一方を殺した弾丸たまは、そのままもう一方を突き落したのである。
博物誌 (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
この風車はこの辺一帯の低地の目標ともなっているものでした。ずっとずっと昔、この風車ははねも何もかもすっかり真紅まっかに塗られたこともありました。
此海やはてし知られね、この荒れや測り知られね、初夜しよや過ぎて、また後夜ごやかけて、闇ふかくはねふる千鳥、この雨を、また稲妻を、ひた濡れて乱るる千鳥。
大きな声を張りあげてときをつくり、あまつさえ古蓆ふるむしろのように引きむしられたはねでバタバタと羽搏はばたきをやらかしていた。
山茶花さざんかの咲く冬のはじめごろなど、その室の炭のにおいが漂って、淡い日がらんの鉢植にさして、白い障子にはねの弱いあぶがブンブンいっているのを聞きながら
「これだけゐるんだからね、君、一羽位ひつかまへられさうなものぢやないか、どうしても駄目だよ、アハヤ! といふところでね、はねにも触れないぜ——」
籔のほとり (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
「古きつぼには古き酒があるはず、あじわいたまえ」と男も鵞鳥がちょうはねたたんで紫檀したんをつけたる羽団扇はうちわで膝のあたりを払う。「古き世に酔えるものならうれしかろ」
一夜 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
わざと手入れをしない雑草と雑木のあいだを、羽虫はむしがむれをなして飛んでいるのが、その百千のはねが白く光って、日光のなかでちりが舞っているように見える。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
淡紅色ときいろ薔薇ばらの花、亂心地みだれごゝち少女をとめにみたてる淡紅色ときいろ薔薇ばらの花、綿紗モスリンうはぎとも、あめの使ともみえるこしらへもののそのはねを廣げてごらん、僞善ぎぜんの花よ、無言むごんの花よ。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
はねのゆがんだ木兎みみづくは牛に踏ませてやりませうか、馬に踏ませてやりませうか、うしろの沼へ捨てませうか
都会と田園 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
わたしは、やまほうからけてきた。どうか、すこし、はねやすめさしておくれ。」と、たかはいいました。
ぴかぴかする夜 (新字新仮名) / 小川未明(著)
難波の地に旅して、そこの葦原に飛びわたる鴨のはねに、霜降るほどの寒い夜には、大和の家郷がおもい出されてならない。鴨でも共寝をするのにという意も含まれている。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
何やらこう尻尾しっぽはねも失せたような生活、何やらこうたわけきった代物しろものだが、さりとて出て行きも逃げ出しもできないところは、癲狂院てんきょういんか監獄へぶち込まれたのにそっくりだ!
一人々々はねを生やした小さな人たちが、山奥に集ってならしているんじゃないのかしら?
樹氷 (新字新仮名) / 三好十郎(著)
ふくろうはねが生えて、母鳥おやどりひとみをつッつくのとおんなじようなことをしようというのですか
青蛙神 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
路地は人ひとりやっと通れるほど狭いのに、大きな芥箱ごみばこが並んでいて、寒中でも青蠅あおばえはねならし、昼中でもいたちのような老鼠ろうねずみが出没して、人が来ると長い尾の先で水溜みずたまりの水をはねとばす。
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
噴泉ふきあげからさらさらと黄金が流るる。真昼のやうに日が照るわ。はれ、見られい、見られい。はねの生えた可愛い稚子ちごが舞ひながらおぢやつたわ。はれ、皆が一斉に祈を上げておぢやるわ。
南蛮寺門前 (新字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
燭台の燈火が鳥のはねにでも、あおられたかのようにヒラヒラと、焔を一方へかしがせたが、これは老儒者が気概の充ちたままに、左右の腕を高く上げて、それを振り下ろして見台の縁を
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
私は早く、水の方へ飛んで行って、青い小鳥に詫びなければならない。そして仲よくしなければならない、と思いました。すると、私のはねが急に水の方に向って、矢の様に走り出しました。
トシオの見たもの (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
妙なことには、何の為か両手をはねの様に伸ばして、ゆらゆらと動かしている。
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
しかし、わが『富士』は、鋼鉄のはねをひろげて、かれらの行手をさえぎった。
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
我越後の雪蛆せつじよはちひさき事ごとし。此虫は二しゆあり、一ツははねありて飛行とびあるき、一ツははねあれどもおさめ蚑行はひありく。共に足六ツあり、色ははへうすく(一は黒し)其る所は市中原野しちゆうげんやにおなじ。
不安の影が、黒いはねをぐんぐんひろげて、私の体を包んでしまおうとする。このまま私は、深海に死んでいくのではないかと、心ぼそさが、こみあげてきた。私は思わずも、ハンドルを握りしめた。
地球要塞 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ある時はヘルデルリンとはね竝べギリシャの空を天翔りけり
和歌でない歌 (旧字旧仮名) / 中島敦(著)
白い あつぼつたい 紙のやうなはねをふるはしてゐる。
蝶を夢む (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
くびのがれつべし、地、そのはねはなたじ。
白鳥 (旧字旧仮名) / ステファヌ・マラルメ(著)
滅びもはてぬ死のはね疾風あらし
独絃哀歌 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
重げに見ゆるよつはね
北村透谷詩集 (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
ま白きはねうごかさで
花守 (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
春風にはねたせ
間島パルチザンの歌 (新字旧仮名) / 槙村浩(著)
はねへたうつくしいねえさんはないの)ツていたとき莞爾につこりわらつて両方りやうはうから左右さいうでおうやうにわたし天窓あたまでゝつた
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
小舎こやかへつてからもなほ、大聲おほごゑきながら「おつかあ、おいらはなんで、あのがんのやうにべねえだ。おいらにもあんないいはねをつけてくんろよ」
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
マーキュ はて、足下おぬし戀人こひびとではないか? すればキューピッドのはねでもりて、からすとびのやうにかけったがよからう。
なんだ、もう夜が明けたのか! で、早速、彼はまた動き回り始め、跳ねたり、葉っぱを突っつき回したりしながら、尻尾しっぽを扇型に拡げ、はねを伸ばす。
博物誌 (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
この海やはてし知られね、この荒れやはかり知られね、初夜過ぎて、また後夜かけて、闇ふかくはねふる千鳥、この雨を、また稲妻を、ひた濡れてかがやく千鳥。
観相の秋 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
健ちやんの手に拾ひあげられた雀は、力なくはねを働かせてゐたが、間もなくジツとしてしまつた。
周一と空気銃とハーモニカ (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
クイックシルヴァがこう言うと、彼の帽子がはねをひろげましたので、彼の首が肩から抜け出して飛んで行くかと思いのほか、彼のからだ全体が軽々かるがると空中に持上りました。
埼玉さきたまの小埼の沼に鴨ぞはねきる己が尾にり置ける霜を払ふとならし」(巻九・一七四四)、「天飛ぶや雁のつばさ覆羽おほひは何処いづくもりてか霜の降りけむ」(巻十・二二三八)
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
前肢なり後肢なりの片方の肢で他の肢をこすったり、その肢で自分のはねの下を掻いたり、二本とも前肢を伸ばして自分の頭をこすったりして、ここでくるりと向きを変えると
なんとかして栄三郎様へしらせてあげたいとは思うが——はねをとられた小鳥同様の身。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
それははねを包んで、頭を穴から出して逃げないように紙のきものを着せた小鳥であった。
不思議な鳥 (新字新仮名) / 小川未明(著)
烏のついでに蝙蝠こうもりの話が出た。安倍君が蝙蝠は懐疑スケプチックな鳥だと云うから、なぜと反問したら、でも薄暗がりにはたはた飛んでいるからとなぞのような答をした。余は蝙蝠のはねすきだと云った。
ケーベル先生 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
じじむさい襟巻えりまきした金貸らしいおやじが不満らしく横目ににらみかえしたが、真白まっしろな女の襟元に、文句はいえず、押し敷かれた古臭い二重廻にじゅうまわしのはねを、だいじそうに引取りながら、順送りに席をざった。
深川の唄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
着てゐる人の感情が、しつくりと着物とついてゐると、それが若い女ばかりではなく、老婆おばあさんはおばあさんなりに着物も生きてゐる。きものも鳥のはねとおなじやうで、さうなると、ちつとも堅くはない。
夏の女 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
年老いし大赤鸚鵡はねさきの瑠璃色なるが伊達者めきたり
河馬 (旧字旧仮名) / 中島敦(著)
白い あつぼつたい 紙のやうなはねをふるはしてゐる
定本青猫:01 定本青猫 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)