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かせ
ふりがな文庫
“
稼
(
かせ
)” の例文
皆何か彼かして、
稼
(
かせ
)
いでいる。僕の一席置いて隣りには海軍中将がいた。それから五六人飛んで三井銀行の支店長というのがあった。
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
何がさて娘の頼みだ、聴いて
遣
(
や
)
らん法はないと、ミハイロは財布の紐を解いて、
稼
(
かせ
)
ぎ
溜
(
た
)
めた金の中から、十銭
丸
(
だま
)
を一つ出して遣つた。
椋のミハイロ
(新字旧仮名)
/
ボレスワフ・プルス
(著)
「そんな事がありましたよ、——板の間
稼
(
かせ
)
ぎはよくあることですが、あんまり新しくない三尺を盜んで行くのは變ぢやありませんか」
銭形平次捕物控:097 許婚の死
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
次
(
つぎ
)
の
日
(
ひ
)
の
夕
(
ゆふべ
)
。
道子
(
みちこ
)
はいつよりも
少
(
すこ
)
し
早目
(
はやめ
)
に
稼
(
かせ
)
ぎ
場
(
ば
)
の
吾妻橋
(
あづまばし
)
へ
出
(
で
)
て
行
(
ゆ
)
くと、
毎夜
(
まいよ
)
の
顔馴染
(
かほなじみ
)
に、
心
(
こゝろ
)
やすくなつてゐる
仲間
(
なかま
)
の
女達
(
をんなたち
)
の
一人
(
ひとり
)
が
吾妻橋
(新字旧仮名)
/
永井荷風
、
永井壮吉
(著)
その中で、逮捕者たちの苦労して
稼
(
かせ
)
ぎ取った財産は、泥棒に等しい倉庫役人たちに盗まれるのでなければ、むなしく朽ちてゆくのです
審判
(新字新仮名)
/
フランツ・カフカ
(著)
▼ もっと見る
「
知
(
し
)
らねえでどうするもんか。
重
(
しげ
)
さん、おめえの
夜
(
よ
)
あかしの
仕事
(
しごと
)
は、
銭
(
ぜに
)
のたまる
稼
(
かせ
)
ぎじゃなくッて、
色気
(
いろけ
)
のたまる
楽
(
たの
)
しみじゃねえか」
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
「おつぎみんなでも
嘗
(
な
)
めさせろ、さうして
汝
(
われ
)
も
嘗
(
な
)
めつちめえ、おとつゝあ
稼
(
かせ
)
えで
來
(
き
)
たから
汝等
(
わつら
)
も
此
(
こ
)
れからよかんべえ」
卯平
(
うへい
)
はいつた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
それを
思
(
おも
)
ふと、
机
(
つくゑ
)
に
向
(
むか
)
つたなりで、
白米
(
はくまい
)
を
炊
(
た
)
いてたべられるのは
勿體
(
もつたい
)
ないと
云
(
い
)
つてもいゝ。
非常
(
ひじやう
)
の
場合
(
ばあひ
)
だ。……
稼
(
かせ
)
がずには
居
(
ゐ
)
られない。
十六夜
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
なぜ
農
(
のう
)
学校を二年もやってから師範学校なんかへ行くのだろう。高橋君は家で
稼
(
かせ
)
いでいてあとは学校へは行かないと云ったそうだ。
或る農学生の日誌
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
「そいつはとうから知っているが、と云って折檻しなかろうものなら、いつまでもしぶといこの女ども、
稼
(
かせ
)
ごうなどとはよも思うまい」
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「あの万年橋という橋の下に、水車の小屋がありますそうな、そこでお米を
搗
(
つ
)
いたり、粉を
振
(
ふる
)
ったりして
稼
(
かせ
)
ぐつもりでございます」
大菩薩峠:03 壬生と島原の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
分けや丸、半玉と十余人の抱えの
稼
(
かせ
)
ぎからあがる一万もの月々の収入も身につかず、
辣腕
(
らつわん
)
を
揮
(
ふる
)
いつくした果てに、負債で首がまわらず
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
場所は、
稲荷
(
いなり
)
町の
遊廓
(
くるわ
)
の裏だった。お蔦は
自前芸妓
(
じまえげいしゃ
)
として、
廓
(
なか
)
の大坂屋とか、山の
春帆楼
(
しゅんぱんろう
)
や風月などを出先に
稼
(
かせ
)
いでいるのである。
松のや露八
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
吉里は二十二三にもなろうか、今が
稼
(
かせ
)
ぎ盛りの
年輩
(
としごろ
)
である。
美人質
(
びじんだち
)
ではないが男好きのする丸顔で、しかもどこかに剣が見える。
今戸心中
(新字新仮名)
/
広津柳浪
(著)
母の
稼
(
かせ
)
ぎでは三人の米も満足には買えず、九つになる太市も八つのお民も、走り使いをし、子守りをし、水を
汲
(
く
)
み、掃除の手伝いをした。
初蕾
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「オイ橋だぞ」と
溝
(
みぞ
)
にかけし小橋に注意して「けれども全く見えなくちゃアこんなところまで来て
稼
(
かせ
)
ぐわけにゆかんではないか」
女難
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
柳吉に働きがないから、自然蝶子が
稼
(
かせ
)
ぐ順序で、さて二度の勤めに出る気もないとすれば、結局稼ぐ道はヤトナ芸者と相場が決っていた。
夫婦善哉
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
苦労ある身の乳も不足なれば思い切って近き所へ里子にやり必死となりて
稼
(
かせ
)
ぐありさま
余所
(
よそ
)
の
眼
(
め
)
さえ
是
(
これ
)
を見て感心なと泣きぬ。
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
(いや、その
都度
(
つど
)
ちがう変名で雑文を書いて、それで生活していた。それも最低生活費を
稼
(
かせ
)
ぐだけで、それ以上何も書こうとしなかった。)
如何なる星の下に
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
会社へ出たら自分で百円は
稼
(
かせ
)
げるんだから、そうしたら二百五十円になるじゃないの。まあ、見てて御覧よ、立派にやってって見せるから。
蓼喰う虫
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
先生だつて
返
(
かへ
)
せればとうに
返
(
かへ
)
すんだらうが、月々余裕が
一文
(
いちもん
)
も
出
(
で
)
ない
上
(
うへ
)
に、月給以外に
決
(
けつ
)
して
稼
(
かせ
)
がない男だから、つい夫なりにしてあつた。
三四郎
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
すみが工場で
稼
(
かせ
)
いで来る金が入らなくなった。一男の送金も来なくなったわけだ。その上、病人のために不断よりは余計に費用がかさむのだ。
秋空晴れて
(新字新仮名)
/
吉田甲子太郎
(著)
私が目でも見えてどしどし
稼
(
かせ
)
げたら、何ぞの事も出来るやろが、もう廃人なんやから、お君は、貴方ばかりをたよりにしとるんやさかいなあ。
栄蔵の死
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
別にもうあの男に
稼
(
かせ
)
いでやる必要もない故、久し振りに古里の汐っぱい風を浴びようかしら。ああ、でも可哀想なあの人よ。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
(よしよし、これで一分ばかり
稼
(
かせ
)
げたぞ。仮想犯人はもう証文をストーヴに投げ入れて、洋服ダンスに向っている時分だ)
月と手袋
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
それは又どの家の子供も
兎
(
と
)
に
角
(
かく
)
十か十一になると、それぞれ子供なりに一日の賃金を
稼
(
かせ
)
いで来るからだと云うことである。
本所両国
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
又「両隣は
明店
(
あきだな
)
で、あとは皆
稼
(
かせ
)
ぎ
人
(
にん
)
ばかりだから、十時を打つと
直
(
じ
)
きに寝るものばかりだから、安心してまア一杯
遣
(
や
)
りたまえ、寒い時分だから」
西洋人情話 英国孝子ジョージスミス之伝
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
無理に
強
(
し
)
いられると牛乳やパンを少しばかり取り、そのあとで、自分が
稼
(
かせ
)
いだものではないとみずからとがめたりして、一人で自分を苦しめた。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
文ちゃんは
稼
(
かせ
)
ぎ
人
(
にん
)
で、苦しい中から追々
工面
(
くめん
)
をよくし、古家ながら大きな家を建てゝ、其家から
阿爺
(
おやじ
)
の葬式も出しました。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
稼
(
かせ
)
げるだけ稼がせないのは損だと云つたやうな
了簡
(
りようけん
)
で、長い間無理な勤を
為
(
さ
)
せまして、散々に
搾
(
しぼ
)
り取つたので御座います。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
請け
戻
(
もど
)
し度と
豫
(
かね
)
て心
懸
(
がけ
)
居たることなれば江戸へ出て一
稼
(
かせ
)
ぎなさんと思ひ九郎兵衞とも種々相談なせし上女房お里にも
得心
(
とくしん
)
させ夫より九助は支度を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
「旅費を
稼
(
かせ
)
ぎ溜めるって、何か、仕事があんのか、金なら、百円は少し欠けるけども、持って来てやった。これで、どこへでも、落ち着くんだな。」
栗の花の咲くころ
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
長いこと叔父さんの
家
(
うち
)
で探して居た田舎出の婆やが来て台所を
稼
(
かせ
)
ぐやうに成つてから、お節は一層快活に成つて行つた。賑かな笑声が絶えなかつた。
出発
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
冬の間
稼
(
かせ
)
ぎに出れば、その留守に気の弱い妻が小屋から追立てを喰うのは知れ切っていた。といって小屋に居残れば居食いをしている
外
(
ほか
)
はないのだ。
カインの末裔
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
そこで、一家の主人が死にますと、息子たちは
稼
(
かせ
)
ぎに他国へ出て行って、娘たちが夫を得ることができるように、全財産を彼女たちに残してやります。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
正直
(
しやうぢき
)
の
頭
(
かうべ
)
に
神
(
かみ
)
宿
(
やど
)
る——
嫌
(
いや
)
な思をして
稼
(
かせ
)
ぐよりは
真
(
ま
)
ツ
正直
(
しやうぢき
)
に
遊
(
あそ
)
んで
暮
(
くら
)
すが
人間
(
にんげん
)
の
自然
(
しぜん
)
にして
祈
(
いの
)
らずとても
神
(
かみ
)
や
守
(
まも
)
らん。
為文学者経
(新字旧仮名)
/
内田魯庵
、
三文字屋金平
(著)
稼
(
かせ
)
ぎに身がはいらず
質八
(
しちばち
)
置いて、もったいなくも母親には、黒米の
碓
(
からうす
)
をふませて、弟には煮豆売りに歩かせ、売れ残りの
酸
(
す
)
くなった煮豆は一家のお
惣菜
(
そうざい
)
新釈諸国噺
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
母親はよその家に雇われて、昼まだけ
稼
(
かせ
)
ぎに出ました。アパートの小さな安い部屋へと、なんども引っ越しました。そのうちに、母親は病気になりました。
街の少年
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
下人 こゝに
名前
(
なまへ
)
の
書
(
か
)
いてある
人達
(
ひとたち
)
を
見附
(
みつ
)
けい! えゝと、
靴屋
(
くつや
)
は
尺
(
ものさし
)
で
稼
(
かせ
)
げか、
裁縫師
(
したてや
)
は
足型
(
あしかた
)
で
稼
(
かせ
)
げ、
漁夫
(
れふし
)
は
筆
(
ふで
)
で
稼
(
かせ
)
げ、
畫工
(
ゑかき
)
は
網
(
あみ
)
で
稼
(
かせ
)
げと
書
(
か
)
いてあるわい。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
俺も掃溜の中にもぐ/\してゐる一人だ。田舎者の眞似じやないが、米の無い土地で米を
稼
(
かせ
)
がうとするんだ。
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
京の小民はもうあの頃から、秋の収穫の豊かな頃を
窺
(
うかが
)
って、農村を
稼
(
かせ
)
ぎまわって
儲
(
もう
)
けて
還
(
かえ
)
る色々の道を知っていた。それが現在までなお続いているのである。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
そしたら、あの女が
稼
(
かせ
)
いで食はしてくれるからね。それで、ひもといふものは、お殿樣見たいに、お腹がすいてもひもじうないといふ顏をしてゐるものですよ。
天国の記録
(旧字旧仮名)
/
下村千秋
(著)
フム、ぢやア
逐々
(
おひ/\
)
女が
稼
(
かせ
)
いで野郎は
男妾
(
をとこめかけ
)
ツたことになるんだネ、
難有
(
ありがた
)
い——そこで一つ
都々逸
(
どゝいつ
)
が浮んだ『
私
(
わたし
)
ヤ工場で黒汗流がし、
主
(
ぬし
)
は留守番、子守歌』は
如何
(
どう
)
だ
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
しかしそんな者の母は多くは泥水
稼
(
かせ
)
ぎを経た女故、騾の母たる牝馬が絶えて売笑した事なきに雲泥劣る。
十二支考:05 馬に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
彼は下町の大きい機械工場に働いていた技師だが、いつからともなく強盗を
稼
(
かせ
)
ぐようになっていた。
地中魔
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
目星
(
めぼし
)
いものはなさそうですが、「行きがけの
駄賃
(
だちん
)
だ」という考えで、一と
稼
(
かせ
)
ぎしようと思いました。
でたらめ経
(新字新仮名)
/
宇野浩二
(著)
だが、弁公の看病から、薬代、その日その日の暮しの
稼
(
かせ
)
ぎまで、おれ一人で稼がなければならなかったので、
直
(
じ
)
きに、いいようのねえ、みじめなことになってしまった。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
某の娘は他国から
稼
(
かせ
)
ぎに来てる男と
馴
(
な
)
れ合って逃げ出す所を
村界
(
むらざかい
)
で兄に
抑
(
おさ
)
えられたとか、小さな村に話の種が二つもできたので、もとより浮気ならぬ省作おとよの恋話も
春の潮
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
鍛冶
(
かじ
)
屋の兄弟だったんですよ。親も妻子も無しで二人
稼
(
かせ
)
ぎに稼いで居たんですよ。だが弟の腕がどうも鈍い。兄の方が或る時
癇癪
(
かんしゃく
)
を起して
金槌
(
かなづち
)
を弟に振り上げたんですね。
春:――二つの連作――
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
何かしら自分で働くことを考え自分の小遣い位は自分で
稼
(
かせ
)
いでいる、何といって取りとまったことはないが、
前
(
ぜん
)
申す如く、大体器用な人で
手術
(
てわざ
)
は人並みすぐれている所から
幕末維新懐古談:41 蘆の葉のおもちゃのはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
稼
常用漢字
中学
部首:⽲
15画
“稼”を含む語句
稼業
日傭稼
稼業柄
出稼
稼人
旅稼
稼穡
夜稼
水稼業
禾稼
稼業人
共稼
山稼
一稼
空巣稼
泥水稼業
稼高
荒稼
稼場
地者稼
...