“盃:さかずき” の例文
“盃:さかずき”を含む作品の著者(上位)作品数
田中貢太郎14
海野十三13
夏目漱石11
山本周五郎9
永井荷風9
“盃:さかずき”を含む作品のジャンル比率
文学 > 日本文学 > 小説 物語4.4%
文学 > 日本文学 > 小説 物語(児童)1.3%
文学 > 日本文学 > 評論 エッセイ 随筆0.5%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
時刻にはまだすこし早いころから、新茶屋の炉ばたではなめ味噌みそぐらいを酒のさかなに、さかずきのやり取りが始まった。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
酒盃さかずきの用意は、整った。勝平は吹きすさぶ暴風雨の音に、耳を傾けながら、チビリ/\とさかずきを重ねていた。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
真澄はさかずきを持ったなりにまたおもい出したように、ななめに見えている母屋おもやの二階ののきに眼をやった。
岐阜提灯 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
女たちは呼ばれた芸妓げいぎというかたちであり、器物とは燗徳利かんどくりとかさかずきとか、椀や皿小鉢の類いである。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
田宮はあかるいランプの光に、薄痘痕うすいものある顔を火照ほてらせながら、向い合った牧野へさかずきをさした。
奇怪な再会 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
敬太郎が飲めない口なので、時々思い出すように、さかずきくちびるを付けて、付合つきあっているのを見て、彼は、
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
成吉思汗ジンギスカン (上機嫌に)今日第一の殊勲者は、木華里ムカリだ。それ、木華里ムカリさかずきるぞ。
卑弥呼はさかずきをとりあげた王に、柄杓ひしゃくをもって酒を注ごうとすると、そこへ荒々しく馳けて来たのは反絵であった。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
この男は見て見ぬように踊子たちの姿と、物食う様子とを、楽し気に見やりながら静かに手酌てじゃくさかずきを傾けていた。
草紅葉 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
人気ひとけのない夜桜はいもんだよ」と云った。平岡は黙ってさかずきを干したが、一寸気の毒そうに口元を動かして、
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
と、叱られて、権太夫は怖々こわごわさかずきをうけ取って、懐紙をもってそれをぬぐい、またおそるおそる御返盃申し上げる。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「青山さん、あなただって今度の事件は、御国のためと思ってしたことなんでしょう。まあ、そのさかずきをおしなさるさ。」
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
博士もおさかずきの巡り来るが如く来るものとすれば俗世間にて自分より頭の上にある先輩の数を数へて順番の来るを待つべきなり。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
白娘子の声について許宣はさかずきを口のふちへ持っていったが、その味は判らなかった。許宣はそうして己の顔のほてりを感じた。
蛇性の婬 :雷峰怪蹟 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
これには役目の者、家筋の者が挨拶に出て、国目付からさかずきを受けるのであるが、その席順は左のとおりになっていた。
藤井ふじいと云う弁護士は、老酒ラオチュさかずきしてから、大仰おおぎょうに一同の顔を見まわした。
一夕話 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
女中の一人が勧めてくれるのをさかずきに受けて、岸本は皆の楽しい話声を聞きながら、すこしばかりの酒をやっていた。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
と元園町がまゆをあげて言った。岸本は元園町から差されたさかずきを受ける間もなく、日頃懇意にする客の方からも盃を受けた。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
長火鉢ながひばちのまえにどっかりあぐらをかいて、かつおのはしりか何かでのんびりとさかずきを手にしている。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
その時まで彼は座敷で方々から廻って来るさかずきを受けていたので、窓が白むまで知らずに爛睡らんすいしていた。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
客の中にはさかずきを手にして、わなわな震える者が出て来た。いかがなされた、と聞かれて、その者は涙をき、
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
「それでよろしい、ここへ来てさかずきを受けてくれ、そして久しぶりであのあい山節やまぶしをまた一曲聞かせてもらいたい」
と言いました。無論、同時に自分の面の色も変ったことでしょう。竜之助はさかずきを挙げたまま、蝋人形のように白くなって動かない。
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
空いたさかずきに丹尾は酒を注ぎ入れた。五郎は一口含んだ。特別のにおいと味が口の中に広がった。ごくんと飲み下して五郎は言った。
幻化 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
みれば左の手に瓢箪ひょうたんを持ち右の手にちいさな塗り物のさかずきを持ってわたしに突きつけているのである。
蘆刈 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
さかずきを口へもってゆきながら、七十郎は義兄を見あげた。彼は水をあびてさっぱりとし、借り着の帷子かたびらでくつろいでいた。
「もう子供じゃないんですもの。誰だって知ってるわ。」と猫板ねこいたの上に載せながら、「お父さんおさかずきはどこにあるの。」
雪解 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
煙草はまるでやらず、酒は若い頃には無茶に飲んだこともあったようだが、五十を過ぎてからはほとんさかずきを手にしなかった。
桜林 (新字新仮名) / 小山清(著)
一つは曲水きょくすい群青ぐんじょうに桃のさかずき絵雪洞えぼんぼり、桃のようなともす。
雛がたり (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
焼き海苔のり柚味噌ゆずみそ、それに牡蠣かき三杯酢さんばいずぐらいのはし休めで、さかずきのやりとりもはじまった。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
このさかずきの冷たいふちには幾度いくたびか快楽の唇が夢現ゆめうつつさかいに触れた事であろう。
「ざこ寝も面白いわね」とおそのはさかずきを取りながら云った、「まさやもいっしょに寝かしてやろうじゃないの」
五瓣の椿 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「およねさんはさかずきも取らないじゃないか」と源次郎が云った、「たまには一つくらいつきあってもいいだろう」
五瓣の椿 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
せみだとか牡丹ぼたんだとか中でも不思議なのは猩々しょうじょうさかずきを手に持つ図柄であります。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
洋服の男はさかずきを口のふちに持って往ったままで、とろりとした眼をしてなにか考えているふうであった。
港の妖婦 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「なってくれるの、うれしいわ、ねえ、それじゃわたしにさかずきをくださいよ、かための盃をしようじゃないの」
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
七十郎はにっと笑い、覚えはいいんですね、と云った。そして、さかずきあおって、それに手酌で注いで、下に置いてから甲斐を見た。
正勝はしだいに酔いが回ってきて、爺のほうへぐっとさかずきを突きつけながら叫ぶような高声で言うのだった。
恐怖城 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
けれども善は急げということわざもあるから、できるなら今のうちに祝言しゅうげんさかずきだけは済ませておきたいともいいました。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それは、そうしてすっかり身体を冷え切らせておいてから、大きなさかずきでヴォトカをぐいとやるためなのだ。
富籤 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
さかずきの代りには茶飲み茶碗が六個、——みんな大きさも形もまちまちであるし、そのうち三個は、隣りの富川さんから借りたものであった。
季節のない街 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「オイ煙草を買って来て呉れ。それからシャンパンのさかずきをあげるから、ひやして用意しといて呉れ」
地獄街道 (新字新仮名) / 海野十三(著)
びっしょりになった浴衣を着換えた神尾主膳もまた、同じように生平の漆紋うるしもんで、前の座敷にさかずきを手にしながら待っていました。
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「おさかずきですわ」とおくみが云った、「どんなときにもこだわるようなことはないのに、どうしてあのお盃をお受けにならなかったんですの」
「議論はいやよ。よく男の方は議論だけなさるのね、面白そうに。からさかずきでよくああ飽きずに献酬けんしゅうができると思いますわ」
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そこへは病気のまだ好くならぬ未亡人の外、りよを始、親戚一同が集まって来て、先ず墓参をして、それから離別のさかずきかわした。
護持院原の敵討 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
今口を極めて李陵を讒誣ざんぶしているのは、数か月前李陵が都を辞するときにさかずきをあげて、その行をさかんにした連中ではなかったか。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
船長ノルマンが、部屋に姿をあらわすと、ポーニンは、手にしていたハイボールのさかずきを下において、つかつかと入口へ、ノルマンを迎えに出た。
火薬船 (新字新仮名) / 海野十三(著)
鐚公が小声で説明して、仕方をして見せる通りに神尾がする。そこへ給仕が飲物を持って来て、鐚公と神尾の前の小さなさかずきについで行きました。
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
小平太も火燵こたつからいだして、膳に向ったが、さされるままに一つ二つとさかずきを重ねた。
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
道阿弥の首を賞翫しょうがんしながら、若夫婦が蚊帳かやの中の寝床でさかずきの遣り取りをするのも、草双紙の趣向にもありそうなことである。
武州公秘話:02 跋 (新字新仮名) / 正宗白鳥(著)
洋服の男はあざけるような笑いかたをして、女の置いた銚子をすぐってさかずきいだ。
港の妖婦 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
私のことをすっかり忘れ果てた様子で、視線をじっと中空にえ、長い指でさかずきを唇にはこんだ。
桜島 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
道阿弥の首を賞翫しょうがんしながら、若夫婦が蚊帳かやの中の寝床でさかずきの遣り取りをするのも、草双紙の趣向にもありそうなことである。
女たちは呼ばれた芸妓げいぎというかたちであり、器物とは燗徳利かんどくりとかさかずきとか、わんや皿小鉢こばちたぐいである。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
実際僕は久しぶりに、旅愁りょしゅうも何も忘れながら、陶然とうぜんさかずきを口にしていた。
奇遇 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
伊右衛門は屏風を開けてお梅の傍へ往こうとした。伊右衛門は其の夜遅くなって喜兵衛がお梅を伴れて来たので、祝言のさかずきをしたところであった。
南北の東海道四谷怪談 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「ああ、いい事があらあ」釈迦しゃかの十蔵と云うだ二十二三の男が叫んだ。彼は忠次のさかずきを貰ってから未だ二年にもなっていなかった。
入れ札 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
或晩いつもの如く稽古をすましてから勧められるまま座敷をかえてヨウさんとさかずきかわした。
雨瀟瀟 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
岡田はそれがこっちも勝手だといった風に、ひとぜんを控えてさかずきめ続けた。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
あつらえたちょうしが来て、さかずきのやり取りが始まるころになると、正香がまずあぐらにやった。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
銀子はしかし栗栖を避けるわけに行かず、お座附がすんで、酒がまわり席が乱れるころになって、栗栖が呼ぶのでそばへ行くと、彼はさかずきを干し、
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
つれづれ草の作者に音が似ているから、法師とも人が呼ぶ、弦光法師は、さかずきを置き息をついて、
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かくて直ちに清兵衛が嫡子を召され、御前においてさかずきを申付けられ、某は彼者かのものと互に意趣を存ずまじきむね誓言せいごんいたし候。
興津弥五右衛門の遺書 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
岡本はさかずきを持った。そこへふすまいて角刈の頭が見えて来た。松山は待っていた。
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
丹尾が五郎のさかずきに注いだ。盃というより、小ぶりの湯呑みに近い。黒褐色の厚手のやきものだ。
幻化 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
小さいさかずきのたくさん並んだのを箱入にして額のように仕立てたのがその軒下にかかっていた。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
なみなみと新兵衛が注いださかずきを、だまって引き寄せると、だまって平七は口へ持っていった。
山県有朋の靴 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
とうとう、一夜の旅人と親類のさかずきまでかわして、系図の交換と再会の日とを約束して別れた。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
初めてのお客に向って「アンタが何ナ……わたしさかずき指すなんて生意気バイ」と啖呵たんかを切りますと、イキナリその盃を相手にタタキ付けて
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
ばかなやつら! その水でさかずきをそそぎ、その流れで手拭てぬぐいをしぼって頭や胸を拭く、三尺へだたればきよしなんて、いい気なものだ。
旧聞日本橋:17 牢屋の原 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
道人はさかずきに入れた水を白娘子の前へ出した。白娘子はこれを一息に飲んで盃を返して笑った。
蛇性の婬 :雷峰怪蹟 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
父親ちちおやは、さもうまそうに舌打したうちをしてんでいましたが、にわかにさかずきしたいて、かんがみながら、
幸福のはさみ (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのうちぱらってしまって、船の酒場に入ってくる誰彼だれかれなしを取っつかまえては、くだをまきさかずきいていました。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
「まあ、そう言わないでくれたまえ。それよりか、さかずきでもいただこうじゃありませんか。」
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「そいつは惜しいな、玉のさかずき、底なきが如しだあ。まあ、なんでもいいや、くつろぎ給え、聖堂以来の旧知、遠方よりきたる、またたのしからずや」
少女はそれをテーブルの上に置いてから、小さなさかずきをそれぞれ二人の前へ持って来た。
藤の瓔珞 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
支那シナの旧書に見えるような、さかずきの話はあまり聴かないが、大抵は例の焼酎しょうちゅう入れ、または小さな酒徳利さかどっくりの携帯用のもの
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「それじゃまあたんと飲んでからあとの事にしよう」と三沢は彼の前にあるさかずきをぐっと干して、それを女の前に突き出した。女はおとなしく酌をした。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
芭蕉の「あぶらかすりて」の次の次に去来の「ならべてうれし十のさかずき」が来るのである。
連句雑俎 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
いつもそう浮き立ってばかりいる男ではないが、今日は特に一杯さかずきをふくむごとに、一杯ずつ滅入めいって行くような気色けしきがいぶかしいのです。
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そのつゆが千ねん万年まんねんと、そのさかずきなかにたたえられている。
不死の薬 (新字新仮名) / 小川未明(著)
女はそう云いながらじぶんさかずきった。少女がまたそれにしゃくをした。
藤の瓔珞 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
婢は右の手に燗鍋かんなべさかずきを持ち、左の手にさかなを盛った皿を持っていた。
水面に浮んだ女 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
同じ轆轤を挽くとても、つぼに働く者、さかずきを作る者、皿を挽く者、しばしば異なる。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
「今日は丹三郎の別宴だ」と甲斐は云った、「彼は原田を出て御家臣にあげられる、今日は主従わかれのさかずきをするのだが、席はにぎやかなほうがいい」
その前に小さいテーブルがあって、酒のびんさかずきとソーダ水の筒とがのっている。
爆薬の花籠 (新字新仮名) / 海野十三(著)
天神橋を渡ると道端に例の張子細工が何百となくぶら下って居る。大きな亀がさかずきをくわえた首をふらふらと絶えず振って居る処は最も善く春に適した感じだ。
車上の春光 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
——七十郎は酒肴しゅこうの膳を前に、着ながしであぐらをかき、片手にさかずきを持って話していたが、ふと口をつぐんで、夕雲のかかっている空を見あげた。
我が王朝文弱の時代にその風を成し、たまさかずき底なきが如しなどの語は、今に至るまで人口に膾炙かいしゃする所にして、爾後じご武家の世にあっては
日本男子論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
「先生も、もうそろそろおででしょう。構いませんから先へやりましょう。」と駒田はさかずきを年上の記者にさして吸物椀すいものわんふたをとる。
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
心臓の扉を黄金こがねつちたたいて、青春のさかずきに恋の血潮を盛る。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
小さい島台や、銚子ちょうしさかずきなども、いつの間にか、浅い床に据えられた。
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
カチンと洋盃カップを触れあわせると、二人は別々のさかずきからグッと飲み乾した。
火葬国風景 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「なに、かまわぬ、注いでくれ」と、小平太は持ったさかずきを突きつけるようにした。
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
善平は息継ぎのさかずきを下に置きて、これならば、あなたもとこうはござりますまい。
書記官 (新字新仮名) / 川上眉山(著)
花が咲いて蓮華れんげのような花弁が落ちますと、拾ってさかずきにして遊びました。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
そのやまみねのところに、自然しぜんいわでできたさかずきがある。
不死の薬 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「そんなことを云うなよ」臆病な主翁ていしゅは、しかたなしにさかずきの酒を飲んで、あとぎながら、「つまらんことを云わずに、早く往って来いよ」
黄灯 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
学生も酔っていた。そんも、四方からさかずきをさされて、気が大きくなっていた。
雲南守備兵 (新字新仮名) / 木村荘十(著)