やま)” の例文
たとえば療法りょうほうにも信仰しんこうだの加持祈祷かじきとうだのを混合する。もちろん病気によってはいわゆるやまいもあるから、心の持ちようでなおる病気もあろう。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
私の田社考でんしゃこうは急に興味を加え、最初にまずこの近所の高等農林校の学生のために、やまの話という長い講演をしたのが、その半月ほど後のことであった。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
そんなこんなのうちに、見舞われたものが、見舞わなければならない羽目になったのは、あわれ米国アメリカ青年が、恋わずらいのブラブラやまいになってしまったのだ。
モルガンお雪 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
未練みれんなどがあることかはをとこ一疋いつぴきながら虚弱きよじやくちからおよばずたゞにもあらでやまひに兩親ふたおやにさへ孝養かうやう
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
持って生れた、性分で、安心な方より、危険な方へ、爪先を向けたいがやまい。昨夜、捕り手に囲まれた、柳原河岸を、目指して、例の鼻唄で、ぶらりぶらり歩いてゆく。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
ひきたるが初めにて一兩日すぐうち發熱はつねつはなはだしく次第にやまおもりて更に醫藥いやくしるしも無く重症ぢうしやうおもむきしかば吉兵衞は易き心もなくことに病ひのためちゝは少しも出ず成りければ妻の看病みとり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
壮年の頃江戸へ出て、根岸おぎょうの松へ道場を構え、大いに驥足きそくばそうとしたが、この人にしてこのやまいあり、女は好き酒は結構、勝負事は大好物、取れた弟子も離れてしまい
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
さりとて一〇他の家をがしめんも、はた一一うたてき事聞くらんが一二やましき。
この世界にはやまいは許されておらぬ。病いは働く者に近づかない。奉仕する者は多忙である。感傷にふけってはいられない。忙しい蜂は悲しむ暇がないといわれる。廃頽はいたいおぼれてもいられない。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
「親分は、戀のやまひといふのをやつたことがありますか」
彼のやまいの美術収集の目的をはたそうとしているのです。
妖怪博士 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
わがやま
悲しき玩具 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
おいたるひとはよろ/\たよ/\と二人ふたりながらちからなさゝうの風情ふぜいむすめやまひのにはかにおこりてわたしはもうかへりませぬとていだすををりにも、あれあれうかして
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
目下自分はやまいを発し、看病をしてくれる者もなく、みじめに暮らしているについては、是非とも見舞ってくれるように、そのため駕籠を差し向けた——これが書面の文意であった。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
召捕べしと役人へ申付られけり却てとくの吉三郎は母のやまひ二三日べつして樣子あしければそばはなれず附添つきそひ種々しゆ/″\心配しんぱいなして勞はり居しが母は暫時しばし睡眠まどろみし中醫師の方へくすりを取に行んと立出る所を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
それが懸念けねんで、さぐりを入れて見ると、こないだの芝居見物以来、何とないブラブラやまい、それで、御本人が、のびのびと、おうちで保養をしたら、すぐによくなろうと、いい出されたとかでな。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
やまがみ送りの行事とあまりにも近いことであった。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
めづらしく家内中うちゞうとのれになりけり、このともうれしがるは平常つねのこと、父母ちゝはゝなきのちたゞ一人の大切たいせつひとが、やまひのとこ見舞みまこともせで、物見遊山ものみゆさんあるくべきならず
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ふたたび葉之助が遠退とおのいてからのお露の煩悶はんもんというものは、紋兵衛の眼には気の毒で見ていることは出来なかった。葉之助が殿に従って江戸へ行ってしまってからは、彼女はやまいの床についた。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
やまずに濟ぞかし我も追々おひ/\取年にて近頃大きに弱りし故養子を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ひとあやしがりてやまひのせいかとあやぶむもれども母親はゝおや一人ひとりほゝみては、いまにおきやん本性ほんしようあらはれまする、これは中休なかやすみと子細わけありげにはれて、らぬものにはなんことともおもはれず
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
當主たうしゆ養子やうしにて此娘これこそはいへにつきての一粒ひとつぶものなれば父母ちゝはゝなげきおもひやるべし、やまひにふしたるはさくらさくはるころよりとくに、それより晝夜ちうやまぶたあはするもなき心配しんぱいつかれて
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
醫者いしや心安こゝろやすきをまねいへぼく太吉たきちといふがりてこゝろまかせの養生やうじやう一月ひとつきおなところすまへば物殘ものゝこらずいやになりて、次第しだいやまひのつのることおそろしきほどすさまじきことあり。
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
身體からだるくばくすりむがよし、御醫者おゐしやにかゝるも仕方しかたがなけれど、おまへやまひはれではなしにさへ持直もちなほせば何處どこわるところがあろう、すこしは正氣しようきつて勉強べんきようをしてくだされといふ
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
おそおほしと慇懃いんぎんなり、このほどはお不快ふくわいうけたまはりしが、最早もはや平日へいじつかへらせたまひしか、お年輩としごろには氣欝きうつやまひのるものとく、れい讀書どくしよはなはだわろし、大事だいじ御身おんみ等閑なほざりにおぼしめすなと
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)