きよ)” の例文
そして魂が浴する青春の泉は、力と喜悦とのきよい光輝は、麗わしくかつ有益であって、人の心をますます偉大ならしむるものである。
お通さんだけは、世間の悪も人間の表裏も知らずに、娘となり、おかみさんとなり、やがては婆さんとなって、無憂華むゆうげきよい生涯を
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
翌日よくじつがた子供こどもは、ついにこの世界せかいからりました。ゆきは、その道筋みちすじきよめるため、しろ化粧けしょうして、野原のはらや、もりまでを清浄せいじょうにしました。
雲と子守歌 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「われ雪水ゆきみずをもて身を洗い、灰汁あくをもて手をきよむるとも、汝われを汚らわしき穴の中におとしいれ給わん、しかしてわが衣も我をいとうに至らん」
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
追従ついしょうを並べていないが、大塩中斎あたりが、雪はきよし聖君立旗の野、風はなまぐさ豎子じゅし山を走るの路なんぞとお太鼓を叩いているのが心外じゃ
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「何ゆえ汝の弟子たちは古の人の言い伝えに従いて歩まず、きよからぬ手にて食事するか」と詰問したのです(七の一—五)。
文吉は九郎右衛門にことわって、翌日行水して身をきよめて、玉造をさして出て行った。敵のありかと宇平の行方とを伺って見ようと思ったのである。
護持院原の敵討 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
仕事は複雑で、探険とともに浚渫しゅんせつの役をも兼ねていた。きよめながらまた同時に種々の測量をしなければならなかった。
また神魂たまは骸と分かりては、なお清くきよかるいわれありとみえて、火の汚穢けがれをいみじくみ、その祭祠まつりをなすにも、けがれのありては、そのまつりを受けざるなり
通俗講義 霊魂不滅論 (新字新仮名) / 井上円了(著)
きよくせよと申されければ平左衞門は心中しんちうに偖々音に聞えし名奉行めいぶぎやうだけありて何事なにごと天眼通てんがんつうを得られし如き糺問きうもんアラ恐しき器量哉きりやうかなと暫時默止て居たりけり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
私はその苦しみの中で、せめてはN家との縁談を断ってでも、幾分一身をきよくしようと決心したのでございます。
疑惑 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
溜り水を瀦というも豕が汚水を好むからだろう。蘇東坡そとうば仏印と飲んで一令を行うを要す。一庭に四物あり、あるいはきよくあるいはきたなく韻をたがうを得ず。
「おれだツて、もう友人の手を付けたものを二度とは、可愛がれないよ——たとひ、お前の決心は精神に於いてお前をきよめたものと許してやつても、ね。」
泰平つづきの公方様くぼうさまの世だ。その新年の盛儀である。大手下馬げばさきは掃ききよめられて塵一本もとどめない。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
そうして、女もし慎みと信仰と愛ときよきとに居らば、子を生む事にりて救わるべし、と言い結んである。
新ハムレット (新字新仮名) / 太宰治(著)
天皇は非常におなげきになって、どうしたらよいか、神のお告げをいただこうとおぼしめして、御身おんみきよめて、つつしんでお寝床ねどこの上にすわっておいでになりました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
凡てはきよい静寂のうちに在った。月の光りは水銀のように重たい湖水の面に煙って薄すらとした靄に匂った。そして森や野や遠くの山まで一面に青白い素絹を投げた。
湖水と彼等 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
職務のためのこととはいいながら、前夜来のあだがましかった青まゆの女との不潔な酒のやりとりに、濁ったからだをきよきよめるように、ばらばらとふりかけました。
その度附添婦はその赤いものに充たされたコップを戸外に持って行ってはそれをきよめて帰って来た。
子規居士と余 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
むごたらしい話をするとお思いでない。——聞きな。さてとよ……生肝を取って、つぼに入れて、組屋敷の陪臣ばいしんは、行水、うがいに、身をきよめ、麻上下あさがみしもで、主人の邸へ持って行く。
絵本の春 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そうしてこの浜の小石というのは、本来はただの数取かずとりではなかったのである。すなわち海のうしおをもって、まず身と心をきよくしてから、祈りを神に申すという意味があった。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
鹿は木実きのみや清らかな草を好んで喰うと申すことで、鹿の肉は魚よりもきよいから召上れ、御婦人には尚お薬でございます……おい婆さん何を持って来て、ソレこれへ打込ぶっこみねえ
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
姜はそこでおそれて結納をかえした。薛老人は心配して、にえきよめて祠に往っていのった。
青蛙神 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
おのおの貧富にしたがって、紅粉こうふんを装い、衣裳を着け、そのよそおいきよくして華ならず、粗にして汚れず、言語嬌艶きょうえん、容貌温和、ものいわざる者もおくする気なく、笑わざるも悦ぶ色あり。
京都学校の記 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
これも御多分にれないズボラであって、一度は金のために奇禍を買ったので、その後をきよくする意味で雪後と改称したが、一生借金の苦労に追われて終に名を成すいとまがない中に
さら日本につぽんでは、火山かざんぬし靈場れいじよう俗界ぞつかいけがされることをいとはせたまふがため、其處そこきよめる目的もくてきもつ時々とき/″\爆發ばくはつおこし、あるひ鳴動めいどうによつて神怒しんどのほどをらしめたまふとしたものである。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
彼のきよしと謂ふなる直道が潔き心の同情は、彼の微見ほのめかしたる述懐の為にやや動されぬ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
ある人の言葉に、溪水を飮む地方の人は心までもきよいとやら。日頃飮む水の輕さ、重さ、荒さ、やはらかさが、自然とわたしたちの體質や氣質にまで影響することはありさうに思はれる。
桃の雫 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
暗い過去ではあつたがどうにか弱い身體と弱い心とを二十三歳の年まできよく支へて來た彼女が、選りも選んで妻子ある男と駈落ちまでしなければならなくなつた呪うても足りない宿命が
業苦 (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
宮柱太しく立てる神殿いと広くきよらなるに、此方こなたより彼方かなた二行ふたつらともしつらねたる御燈明みあかしの奥深く見えたる、祝詞の声のほがらかに澄みて聞えたる、胆にこたえ身にみて有りがたく覚えぬ。
知々夫紀行 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
長い漂浪の旅から帰って来たお島たちを、思いのほかきよく受納れてくれた川西は、被服廠ひふくしょうの仕事が出なくなったところから、その頃職人や店員の手を減して、店がめっきり寂しくなっていた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「鉄幹君に酬ゆ」の篇には「めとらずかず天童てんどうきよきぞはふと思ふもの」
『行く春』を読む (新字旧仮名) / 蒲原有明(著)
今はたとい葛飾で出来た早稲の新米を神様に供えてお祭をしている大切な、身をきよくしていなければならない時であっても、あのいとしいお方のことですから、むなしく家の外に立たせては置きませぬ
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
それからおのれは草の上に仰向あおむけにねころんで快い疲労感にウットリと見上げる碧落へきらくきよさ、高さ、広さ。ああ我もと天地間の一粒子いちりゅうしのみ、なんぞまた漢ととあらんやとふとそんな気のすることもある。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
癩病らいびやうきよくし、したるものよみがへらせ、おにことをせよ。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
剣執り闘ふかぎり斎庭ゆにはなり塵だにとめじ朝きよめつつ
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
孤独者のきよ水浴ゆあみに真清水を噴く——
わがひとに与ふる哀歌 (新字旧仮名) / 伊東静雄(著)
よし さあきよくなれ
貧しき信徒 (新字新仮名) / 八木重吉(著)
彼は二人のどちらにも、最もきよい愛情をいだいていた。そして恋愛の何物であるかを知らなかったので、自分は恋してるのだと思っていた。
いなとよ。牢獄の闇にも、陽はしたではないか。正大な天道の下には、この世ほどきよく気高い所はなく、人間程崇厳すうごん善美ぜんびなものはないのだ)
茶漬三略 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
◯次の十二節—十六節は「人はいかなる者ぞ、いかにしてきよからん、女の産みし者はいかなる者ぞ、いかにしてただしからん」
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
一歳半の方の子供は、かわいらしい腹部をあらわに見せていたが、その不作法さもかえって幼児のきよらかさであった。
「その磯屋五兵衛を、あんたのようなきよげな女が相識の模様でかばい立てしようとは、思わなんだ」
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
道徳的にきよい人間になろうと思えば思うほど、自分が下らない人間であることがわかってくる。
キリスト教入門 (新字新仮名) / 矢内原忠雄(著)
ウンチミッタ辺で毎朝蝋のごとき粗製の黒砂糖と麦粉と牛酪バターを練り合せて泥丸となし、馬にましめ、その後口を洗い歯をきよめやると見え、サウシの『随得手録コンモンプレース・ブック』二には
と、半身を斜めにして、溢れかかる水の一筋を、玉のしずくに、さっと散らして、赤く燃ゆるような唇にけた。ちょうどかわいてもいたし、水のきよい事を見たのは言うまでもない。
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「ペテロよ、足だけ洗えば、もうそれで、おまえの全身はきよいのだ、ああ、おまえだけでなく、ヤコブも、ヨハネも、みんな汚れの無い、潔いからだになったのだ。けれども」
駈込み訴え (新字新仮名) / 太宰治(著)
それから集まる日には風呂を立てて、必ず身をきよめるということも意味がある。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
きよく致せと云れけるに源八は覺悟かくごをせし樣子やうすにておほせの如く我々白状致すべし先第一は南都なんとに於て大森通仙おほもりつうせん娘お高に戀慕れんぼいたし戀のかなはぬ意趣いしゆに鹿を殺し通仙つうせんの家の前へおきしにより通仙は奈良なら
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
その男はそう言ってきよく引受けたが、胡散うさんな目をして笑っていた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)