トップ
>
昏
>
くら
ふりがな文庫
“
昏
(
くら
)” の例文
汗はしんしんと工人達の背にまろび、百合はあかく咲き極まって酷暑の午後の太陽の光のなかに
昏
(
くら
)
むばかりの強い刺戟を眼に与える。
真夏の幻覚
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
平常
(
ふだん
)
から心掛の良い、少し氣の弱いお吉が、どんなに
嫉妬
(
しつと
)
に眼が
昏
(
くら
)
んだにしても、そんな大それた事を仕出かさうとは思はれません。
銭形平次捕物控:006 復讐鬼の姿
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
孝也は苦痛のあまり息が詰り、眼が
昏
(
くら
)
んだ。馬蹄の音と、大勢の喚く声が聞え、誰かが脇へ来て、ひきつった調子で孝也の名を呼んだ。
月の松山
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
そこへ
往
(
い
)
て、
昏
(
くら
)
まぬ
目
(
め
)
で、
予
(
わし
)
が
見
(
み
)
する
或
(
ある
)
顏
(
かほ
)
とローザラインのとをお
見比
(
みくら
)
べあったら、
白鳥
(
はくてう
)
と
思
(
おも
)
うてござったのが
鴉
(
からす
)
のやうにも
見
(
み
)
えうぞ。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
宋江は絶体絶命、眼も
昏
(
くら
)
むばかりだったが、彼の声を耳にするやいな、われも覚えず脱兎のように逃げて行った。あとも見ずに姿を消す。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
ぼくはぼんやりとし、何故か急に目のまえが
昏
(
くら
)
くなった。そのぼくに、やはり満面にごく母性的な笑みをたたえながら、彼女が声をかけた。
はやい秋
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
彼女はそのうちに目が
昏
(
くら
)
んできた。そして意識が判然としなくなってきた。何か深い深いところへ落ちていくような気がした。
或る嬰児殺しの動機
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
空は
愈々
(
いよいよ
)
青澄み、
昏
(
くら
)
くなる頃には、
藍
(
あい
)
の様に色濃くなって行った。見あげる山の端は、横雲の空のように、
茜色
(
あかねいろ
)
に輝いて居る。
死者の書
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
誰も通らない星あかりの
昏
(
くら
)
い通りを、墓地の方へ歩いてみる。
怖
(
おそ
)
ろしい事物には、わざと突きすすんでふれてみたいような荒びた気持ちだ。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
その寝るには表の往来を枕にして、二つ並べて
展
(
の
)
べた
褥
(
とこ
)
の
枕辺
(
まくらもと
)
の方にはランプを置いて、
愈々
(
いよいよ
)
睡る時はそのランプの火を吹き消して
昏
(
くら
)
くする。
白い光と上野の鐘
(新字新仮名)
/
沼田一雅
(著)
いや、支那人自身にしても、心さえ
昏
(
くら
)
んでいないとすれば、我々一介の旅客よりも、もっと嫌悪に堪えない筈である。……
長江游記
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「二毛暁に落ちて頭を
梳
(
くしけづ
)
ること
懶
(
ものう
)
し、両眼春
昏
(
くら
)
くして薬を点ずること
頻
(
しき
)
りなり」「
須
(
すべから
)
く酒を傾けて
膓
(
はらわた
)
に入るべし、酔うて倒るゝも
亦
(
また
)
何ぞ妨げん」
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
日が次第に、この以後
昏
(
くら
)
くなる。唄の声(どこからか聞こえる)ぬしを松戸で、目を
柴又
(
しばまた
)
き、小岩
慕
(
した
)
えど、
真間
(
まま
)
ならぬ。
瞼の母
(新字新仮名)
/
長谷川伸
(著)
然
(
しか
)
しながら
慌
(
あわ
)
てた
卯平
(
うへい
)
の
手
(
て
)
は
此
(
かく
)
の
如
(
ごと
)
き
簡單
(
かんたん
)
で
且
(
かつ
)
最良
(
さいりやう
)
である
方法
(
はうはふ
)
を
執
(
と
)
る
暇
(
ひま
)
がなかつた。
火
(
ひ
)
は
復
(
また
)
怒
(
いか
)
つて
彼
(
かれ
)
の
頬
(
ほゝ
)
を
舐
(
ねぶ
)
り
彼
(
かれ
)
の
手
(
て
)
を
燒
(
や
)
いた。
彼
(
かれ
)
の
目
(
め
)
は
昏
(
くら
)
んだ。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
公園は
森邃
(
しんすい
)
として月色ますます
昏
(
くら
)
く、夜はいまや全くその死寂に眠れるとき、
谽谺
(
こだま
)
に響き、水に鳴りて、
魂消
(
たまぎ
)
る
一声
(
ひとこえ
)
義血侠血
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ベンチの明いているのが一つあるので、それに腰を掛けて、ラシイヌを
翻
(
ひるがえ
)
して見たが、もうだいぶ
昏
(
くら
)
くて読めない。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
始めは、どうか一尺立方でもいいから、明かるい空気が吸って見たいような気がしたが、だんだん心が
昏
(
くら
)
くなる。と
坑
(
あな
)
のなかの暗いのも忘れてしまう。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
向て有し故左りの方へ
跳起
(
はねおき
)
て枕元に有し短刀を拔き
汝
(
おのれ
)
曲者御參なれと切て掛れど病に
疲
(
つか
)
れし上
痛手
(
いたで
)
をさへ負たれば忽ち
眼
(
め
)
昏
(
くら
)
みて手元の狂ひし
故
(
ゆゑ
)
吾助が
小鬢
(
こびん
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
だがそれらは漸次に遠くへ行き、多く
饒舌
(
しゃべ
)
るようになり、彼女も段々理解できなくなり、ただ耳のあたりが騒がしく、頭が
昏
(
くら
)
むような気がするようになった。
不周山
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
そして一
刻
(
こく
)
ずつに
昏
(
くら
)
くなって行くその平地を見ていると、心に来てなにかものを言うものがあるようだ。
黄昏
(新字新仮名)
/
水野葉舟
(著)
頭の中で血が渦巻いている。目が
昏
(
くら
)
んで来る。息が
忙
(
せわ
)
しくなって来る。それに
誰
(
だれ
)
も側にはいない。なぜ己は婆あさんを追い出してしまっただろう。あれだって人間だ。
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
真
(
ま
)
つ
昏
(
くら
)
になつた港の所々に微かな火が
点
(
とぼ
)
してある。波は砂に打ち寄せてゐる。空には重くろしい雲が一ぱい掛かつてゐる。誰も誰も沈鬱な、圧迫せられるやうな思をしてゐる。
樺太脱獄記
(新字旧仮名)
/
ウラジミール・ガラクティオノヴィチ・コロレンコ
(著)
それから一松斎は、
満更
(
まんざら
)
、芸道にも
昏
(
くら
)
からぬ言葉で、江戸
顔見世
(
かおみせ
)
の狂言のことなど、訊ねるのだったが、ふと、やや鋭い、しかし、静かさを失わぬ目つきで、雪之丞を見詰めると
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
又
其
(
そ
)
の
克畏
(
こくい
)
の
箴
(
しん
)
を読めば、あゝ
皇
(
おお
)
いなる上帝、
衷
(
ちゅう
)
を人に
降
(
くだ
)
す、といえるより、其の
方
(
まさ
)
に
昏
(
くら
)
きに当ってや、
恬
(
てん
)
として
宜
(
よろ
)
しく
然
(
しか
)
るべしと
謂
(
い
)
うも、
中夜
(
ちゅうや
)
静かに思えば
夫
(
そ
)
れ
豈
(
あに
)
吾が天ならんや
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
慶応二年の春とは名だけ、細い雨脚が針と光って今にも白く固まろうとする朝寒、
雪意
(
せつい
)
しきりに催せば
暁天
(
ぎょうてん
)
まさに
昏
(
くら
)
しとでも言いたいたたずまい、正月
事納
(
ことおさめ
)
の日というから二月の八日であった。
釘抜藤吉捕物覚書:09 怨霊首人形
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
ふと下から人が見て居やしまいかと思って見下した時には自分は幾十尺という空中に
揺
(
ぶ
)
ら下っている気持がして、もう眼が
昏
(
くら
)
んで何も
見定
(
みさだめ
)
が付かなかった。今更私は後悔したけれど、仕方がない。
暗い空
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
手や足にも汗がにじみ出て、下宿の部屋へ入って行った時には、睡眠不足の目が
昏
(
くら
)
むようであった。笹村は着物を脱いで、
築山
(
つきやま
)
の側にある井戸の傍へ行くと、冷たい水に手拭を絞って体を拭いた。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
鶴巻町の新開町を過れば、
夕陽
(
せきよう
)
ペンキ塗の看板に反映し洋食の臭気
芬々
(
ふんぷん
)
たり。
神楽坂
(
かぐらざか
)
を下り
麹町
(
こうじまち
)
を過ぎ家に帰れば日全く
昏
(
くら
)
し。燈を
挑
(
かか
)
げて食後
戯
(
たわむれ
)
にこの記をつくる。時に大正十三年
甲子
(
かっし
)
四月二十日也。
礫川徜徉記
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
遠つあふみ浜名のみ
湖
(
うみ
)
冬ちかし
真鴨
(
まがも
)
翔
(
かけ
)
れり北の
昏
(
くら
)
きに
夢殿
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
颯
(
さ
)
と空の
昏
(
くら
)
み行く時、軒打つ雨は
漸
(
やうや
)
く密なり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
そして、思わず眼が
昏
(
くら
)
むのを覚えた。
白蟻
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
明るい盤が
周囲
(
まわり
)
から
昏
(
くら
)
くなって来る。
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
平常
(
ふだん
)
から心掛けの良い、少し気の弱いお吉が、どんなに嫉妬に眼が
昏
(
くら
)
んだにしても、そんな大それた事を仕出かそうとは思われません。
銭形平次捕物控:006 復讐鬼の姿
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
家中ぜんたいの是非正邪が
昏
(
くら
)
まされてしまう、この点についても、真偽が明らかにされるよう、書状をもって国目付へ訴え出るつもりです
樅ノ木は残った:04 第四部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
階下は
昏
(
くら
)
く
冷々
(
ひえびえ
)
としてゐる。富岡は女の降りて来るのを、階段の下で待つてゐた。卓子に椅子の乗せてある店の床に、鼠がちらちらしてゐた。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
意識が
昏
(
くら
)
くなって、自分の絶叫が、遠い他人の声のように耳に聞こえました。私に、そして盲目で、聾で唖の時間が、やってきたのでした。……
恐怖の正体
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
雨、いよいよ
昏
(
くら
)
く、
四条畷
(
しじょうなわて
)
もあきらめるほかなく、途中「桜井ノ駅」の跡をさがす。すでに日もどッぷりで暗い木立と水たまりのほか何ものもない。
随筆 私本太平記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
大野は
昏
(
くら
)
くなったランプの心を
捩
(
ね
)
じ上げて、その手紙の封を開いた。行儀の
好
(
い
)
いお家流の細字を見れば、あの
角縁
(
つのぶち
)
の目金を掛けたお祖母あさんの顔を見るようである。
独身
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
委敷
(
くはしく
)
物語り重て若黨の忠八と云ふ者を
側
(
そば
)
近
(
ちか
)
く招き寄汝は我が方に幼少より勤め
魂
(
たまし
)
ひをも見拔し故申殘すなり我吾助を一打に爲んと思ひしに
眼
(
め
)
昏
(
くら
)
みたれば
纔
(
わづか
)
に
小鬢
(
こびん
)
少しを
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
横川
(
よかわ
)
の僧都は、今
天
(
あめ
)
が
下
(
した
)
に
法誉無上
(
ほうよむじょう
)
の
大和尚
(
だいおしょう
)
と承わったが、この法師の眼から見れば、天上皇帝の照覧を
昏
(
くら
)
まし奉って、
妄
(
みだり
)
に鬼神を使役する、云おうようない
火宅僧
(
かたくそう
)
じゃ。
邪宗門
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「わしも
此
(
こ
)
れ……」と
彼
(
かれ
)
は
微
(
かす
)
かにいつたのみで
沈默
(
ちんもく
)
を
續
(
つゞ
)
けた。
彼
(
かれ
)
は
内儀
(
かみ
)
さんの
前
(
まへ
)
にどうしても
述
(
のべ
)
なければならないことに
其
(
その
)
心
(
こゝろ
)
が
惑亂
(
わくらん
)
した。
彼
(
かれ
)
はぽうつとして
目
(
め
)
が
昏
(
くら
)
まうとした。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
遠方から歌のような物音が聞える。好い音だ。好い音だ。病人の目は
昏
(
くら
)
んでしまった。
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
孝孺の此言に照せば、既に其の卓然として自立し、信ずるところあり安んずるところあり、
潜渓先生
(
せんけいせんせい
)
が
謂
(
い
)
える所の、
特
(
ひと
)
り立って千古を
睨
(
にら
)
み、万象
昭
(
てら
)
して
昏
(
くら
)
き無しの
境
(
きょう
)
に入れるを
看
(
み
)
るべし。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
急阪
(
きふはん
)
のいただき
昏
(
くら
)
し
濛濛
(
もうもう
)
と桜のふぶき吹きとざしたり
桜
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
昏
(
くら
)
んだ目は、昼遊びにさえ、その
燈
(
ともしび
)
に
眩
(
まぶ
)
しいので。
菎蒻本
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
あなと、
昏
(
くら
)
めば、
後
(
しりへ
)
より、
戞戞戞
(
かつかつかつ
)
と
跑
(
だく
)
ふませ
第二邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
叫
(
よ
)
ビテ水雲
昏
(
くら
)
シ/手ニ到ル凶函涙痕
湿
(
うるお
)
フ/蕙帳夜空シク謦欬ノ如ク/松堂月落チテ温存ヲ失フ/俊才多ク出ヅ高陽里/遺業久シク伝フ通徳門/天際少微今見エズ/誦スルニ招隠ヲ
将
(
もっ
)
テ招魂ニ当ツ〕『春濤詩鈔』にこの
挽詞
(
ばんし
)
を
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
我々の目を
昏
(
くら
)
ます
積
(
つもり
)
か。
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
勘定奉行
大橋近江守
(
おおはしおうみのかみ
)
殿を
欺
(
あざむ
)
き、
本多伯耆守
(
ほんだほうきのかみ
)
殿にまで御迷惑をかけ、百姓共の
強訴
(
ごうそ
)
を拒んで、大公儀の御眼を
昏
(
くら
)
ます不届千万の処置振り
奇談クラブ〔戦後版〕:09 大名の倅
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
久馬も世評に
昏
(
くら
)
まされているのだ、と甲斐は思った。家中に自分を
覘
(
ねら
)
っている者がある、そういう噂は正月ごろから聞いていた。
樅ノ木は残った:04 第四部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
昏
漢検準1級
部首:⽇
8画
“昏”を含む語句
黄昏
昏々
昏睡
昏倒
黄昏時
昏迷
黄昏方
昏睡状態
夕昏
昏昏
昏絶
昏乱
昏愚
昏惑
黄昏頃
昏睡的
薄昏
昏沌
日昏
昏庸頑夫
...