日毎ひごと)” の例文
日毎ひごとにクリストの賣買うりかひせらるゝ處にてこれを思ひめぐらす者これを願ひかつはや企圖たくみぬ、さればまた直ちにこれを行はむ 四九—五一
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
成績は日毎ひごとに昇った。私は毎日帰ってくると手帳を取り出し、当日の使用量を、牽引した車輛数により一粁当りに割り出して見る。
そのさまれに遠慮ゑんりよらず、やなときやといふがよし、れを他人たにんをとこおもはず母樣はヽさまどうやうあまたまへとやさしくなぐさめて日毎ひごとかよへば
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
寿美子の美しさと、その傍若無人さは日毎ひごとに加わって、それを毎日見せつけられている卓二は、次第次第に狂気じみて来ました。
放送局では女幽霊のうなり声を録音して、実況中継放送をしますなどといいだすものだから、女幽霊の妙な人気は日毎ひごとに高くなる。
四次元漂流 (新字新仮名) / 海野十三(著)
うして日毎ひごとに私達は一時間にこぼす語数が無に近い程減少して、私達の肉体も無になるのではないかと疑わねばならなかった。
(新字新仮名) / 坂口安吾(著)
船長は日毎ひごとにだんだんおかしくなってくる。わたしは彼自身が暗示したことが本当のことであり、またその理性がおかされているのを恐れた。
だからこの窮地に陥った日本紳士の多数は、日毎ひごとに法律に触れない程度に於て、もしくはただ頭の中に於て、罪悪を犯さなければならない。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
海は日毎ひごとに荒模様になって行った。毎朝、なぎさに打ち上げられる漂流物の量が、急にえ出した。私たちは海へはいると、すぐ水母くらげに刺された。
麦藁帽子 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
むなしい気位に、そんなに拘泥こうでいしなければならないのか。日毎ひごとに体制をととのえて行く新しいあちらの権力は見えないのだ。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
開墾地かいこんちへは周圍しうゐかくれる場所ばしよ所爲せゐか、村落むら何處どこにもにはかそのこゑかなくなつたすゞめぐんをなして日毎ひごとおそうた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
それでゐながら、早速皆三にふほどの勇気も出ない。日毎ひごと憂鬱ゆううつ焦躁しょうそうに取りこめられるやうにお涌はなつて行つた。
蝙蝠 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
団飯の恩に報いる也けり。猟師労無くして獲物多きことを悦び、それよりは日毎ひごとに団飯を包み行きて獣に換へ帰りたり。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
微風そよかぜ日毎ひごと林檎林を軽く吹いて通つた。欣之介はその中で何かの仕事をしながら、「眼には見えないが花粉がうまい工合に吹き送られてゐるんだ!」
新らしき祖先 (新字旧仮名) / 相馬泰三(著)
さてうめはなをはりとなり、日毎ひごとかぜあたゝかになりますと、もゝ節句せつくもゝはな油菜あぶらなはながさきます。はたにはたんぽゝが黄色きいろくかゞやいてきます。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
が、おせんのむねそこにひそんでいる、思慕しぼねんは、それらのうわさには一さいおかまいなしに日毎ひごとにつのってゆくばかりだった。それもそのはずであろう。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
彼の心には、さなきだに人間らしい感情が乏しかったのに、それが刻一刻と薄れて、見る影もない廃残の身からは日毎ひごとに何ものかがうしなわれて行った。
尋ぬるにさいはひの時節なりとて日毎ひごと群集ぐんじゆの中にまぎれ入て尋けるに似たりと思ふ人にもあはざれば最早もはや江戸には居るまじ是よりは何國いづくを尋ねんと主從三人ひたひ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
みんなが、みんな、日毎ひごとに迫る危機にさらされて、まだまだ変ろうとしているし、変ってゆくに違いない。ぎりぎりのところをみとどけなければならぬ。
壊滅の序曲 (新字新仮名) / 原民喜(著)
此のほどから黄昏たそがれに、お辻が屋根へ出て、ひさしから山手やまてほうのぞくことが、大抵日毎ひごと、其は二階の窓から私も見た。
処方秘箋 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
何十人という人夫土工あるいは庭師などの群が、別仕立てのモーター船に乗って、日毎ひごとに島の上にあつまって来ました。
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
だがそれにもかかわらず、また患者の異常な食慾にも拘らず、彼は日に日にせ衰えて、助手が日毎ひごとに記入するフントの数はだんだん少なくなって行くのだった。
日毎ひごと夜毎よごとに代る枕に仇浪は寄せますが、さて心の底まで許すお客はあんまりないものだそうでござります。
冬の間、日毎ひごと日毎の雪作務さむに雲水たちを苦しめた雪も、深い谷間からさえ、その跡を絶ってしまった。
仇討三態 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
残念なことに、そういうものは日毎ひごとにかすかになってくるのである。時がたつにしたがって次第に擦りへらされるだけでなく、新しい流行に消し去られてしまうのだ。
あゝ、日毎ひごと暮るればこゝに来て、庭造る愛らしき器物うつわもの手籠てかご、如露のそばちかく、空想にふければ、あゝわがわかかりし折の思出おもいいで。幸福を歌ふすすなきは、心の底よりほとばしり出づ。
たとえ、今、己が頭の中で、どんな優れた詩を作ったにしたところで、どういう手段で発表できよう。まして、己の頭は日毎ひごとに虎に近づいて行く。どうすればいいのだ。
山月記 (新字新仮名) / 中島敦(著)
それから××君と女の間は日毎ひごとに接近したが、そのうちに女は横浜へ帰り、男は東京へ帰っているうちに、男は兵役の関係から演習に引張り出されて三週間ほど佐倉さくらの方へ往っていた。
二通の書翰 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
惜くもなき命は有りさふらふものにて、はやそれより七日なぬか相成候あひなりさふらへども、なほ日毎ひごとに心地くるしく相成候やうに覚え候のみにて、今以つて此世このよを去らず候へば、未練の程のおんつもらせもぞかしと
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
それ日毎ひごとに繰り返される間に、山の色の深い秘密というようなものが、子供心の何処かの隅に朧げながらも印象の痕を残し止めて、何かの機会を捉えては急激に鮮明の度を増して行くらしい。
奥秩父の山旅日記 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
わずかの接触でおののくほどの繊細さにも、心を誘う美しさがある。しかし強き打撃に、なおも動ぜぬ姿には、それにも増して驚くべき美しさが見える。しかもその美しさは日毎ひごとに加わるではないか。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
日毎ひごとに清く澄みわたり、靈妙音れいめうおんの鳴るが樂しさ。
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
日毎ひごとにこころのみけはしくなれる七八月ななやつきかな。
悲しき玩具 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
謎の日は今、日毎ひごとつづきつつある
路は果して何れ (新字新仮名) / 今野大力(著)
枯菊をらずに日毎ひごとあはれなり
六百句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
はえなき思ひ日毎ひごとに耕すなれ。
独絃哀歌 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
日毎ひごとに散らすたまぞとは。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
手瓶てかめ日毎ひごとたづさへて
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
日毎ひごと夜毎よごとにかはり
友に (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
日毎ひごとにかくのごとし。
だが、どこからか忍びよってくる魔の影は日毎ひごとに濃くなって行くようだった。彼は、ある画集で見た「死の勝利」という壁画の印象が忘れられなかった。
死のなかの風景 (新字新仮名) / 原民喜(著)
かれ老躯らうく日毎ひごと空腹くうふくから疲勞ひらうするため食料しよくれう攝取せつしゆするわづか滿足まんぞく度毎たびごと目先めさきれてるかれらつしてところみちびいてるのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
それをなだめて、もとの家中の重役にいた阿賀妻は、とにかく、春の来るのを待っていた。日本海の水が緑を帯びて、日毎ひごとに南の風があたたかくなって来た。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
したがって、人気役者にんきやくしゃきまとう様々さまざまうわさは、それからそれえと、日毎ひごとにおせんのみみつたえられた。——どこそこのお大名だいみょうのおめかけが、小袖こそでおくったとか。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
それから以後改まって両人ふたりの腹の中を聞いた事はないが、それが日毎ひごとに好くない方に、速度を加えて進行しつつあるのは殆んど争うべからざる事実と見えた。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
つとめある身なれば正雄は日毎ひごとふ事もならで、三日おき、二日おきの夜な夜な車を柳のもとに乗りすてぬ、雪子は喜んで迎へる時あり、泣いて辞す時あり
うつせみ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
わがさきにいへる處と合し、かの螺旋らせん即ちそが日毎ひごとに早く己を現はすそのすぢを傳ひてめぐれり 三一—三三
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
うつし願は輕羅うすものと成て君が細腰こしにまつはりたしなどと凝塊こりかたまり養父五兵衞が病氣にて見世へいでぬを幸ひに若い者等をだましては日毎ひごと夜毎に通ひつめ邂逅たまさかうちねるには外を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
それがわれわれの逃がれ出ることの出来る唯一ゆいいつの道であるが、それさえ日毎ひごとに結氷しつつあるのである。
彼の病室の窓から眺められる南アルプスの山頂には雪が日毎ひごとにまばらになって行った。
恢復期 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)