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ささ
ふりがな文庫
“
捧
(
ささ
)” の例文
いくたびやっても実らぬこころみではあったが、先生が一篇の詩をつくり、ヴァン・タッセルの世継ぎ娘に
捧
(
ささ
)
げようとしたのだった。
スリーピー・ホローの伝説:故ディードリッヒ・ニッカボッカーの遺稿より
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
翌朝
(
よくちょう
)
セルゲイ、セルゲイチはここに
来
(
き
)
て、
熱心
(
ねっしん
)
に十
字架
(
じか
)
に
向
(
むか
)
って
祈祷
(
きとう
)
を
捧
(
ささ
)
げ、
自分等
(
じぶんら
)
が
前
(
さき
)
の
院長
(
いんちょう
)
たりし
人
(
ひと
)
の
眼
(
め
)
を
合
(
あ
)
わしたのであった。
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
それについて若い妻は日本の一般の女性が姑に
捧
(
ささ
)
げる限りのあらゆる忍従の態度を取って、少しもそれに反抗する言動を示さなかった。
姑と嫁について
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
みんな家郷を
棄
(
す
)
て親兄弟を棄てて国事に身を
捧
(
ささ
)
げる人々だ、名も求めず栄達も望まず、王政復古の大業のために骨身を削る人々だ。
日本婦道記:尾花川
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
金と
紅宝石
(
ルビー
)
を組んだやうな美しい花皿を
捧
(
ささ
)
げて天人たちが一郎たちの頭の上をすぎ大きな
碧
(
あを
)
や黄金のはなびらを落して行きました。
ひかりの素足
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
▼ もっと見る
金堂におまいりして、仏前に祈りを
捧
(
ささ
)
げた後、おそらく多くの人は何げなくこの円柱にもたれかかって、ほっとしたのではなかろうか。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
客は
毛受
(
けう
)
けという
地紙
(
じがみ
)
なりの小板を胸の所へ
捧
(
ささ
)
げ、
月代
(
さかやき
)
を剃ると、それを下で受けるという風で、今と反対に通りの方へ客は向いていた。
幕末維新懐古談:05 その頃の床屋と湯屋のはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
そのとき、ふと、千
羽鶴
(
ばづる
)
を
造
(
つく
)
って、お
宮
(
みや
)
へ
捧
(
ささ
)
げたら、
自分
(
じぶん
)
だけは
神
(
かみ
)
さまをありがたく
思
(
おも
)
っている
志
(
こころざし
)
が
通
(
とお
)
るだろうと
考
(
かんが
)
えたのです。
千羽鶴
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
田舎の宿屋へ到着した時、多少ハイカラな構えの家では先ず第一に珈琲糖をうやうやしく
捧
(
ささ
)
げてくる。
褐色
(
かっしょく
)
の粉末が湯の底に沈んでいる。
大切な雰囲気:03 大切な雰囲気
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
ナポレオンの寝室では、寒水石の寝台が、ペルシャの鹿を浮かべた
緋緞帳
(
ひどんちょう
)
に囲まれて彼の寝顔を
捧
(
ささ
)
げていた。夜は
更
(
ふ
)
けていった。
ナポレオンと田虫
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
私はその内に潜む驚くべき美に対して、全き敬念を
捧
(
ささ
)
げないわけにはゆかぬ。それは親しさであると共に、真に驚くべき美の示現である。
民芸四十年
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
彼女は、
蜘蛛
(
くも
)
だ。恐ろしく、美しい蜘蛛だ。自分が彼女に
捧
(
ささ
)
げた愛も熱情も、たゞ彼女の網にかゝった
蝶
(
ちょう
)
の
身悶
(
みもだ
)
えに、過ぎなかったのだ。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
女中のさとが、朝食のお膳を
捧
(
ささ
)
げて部屋へはいって来た。さとは、十三の時から、この入江の家に奉公している。沼津辺の漁村の生れである。
ろまん灯籠
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
……名を求めず、ひたすらに実を
捧
(
ささ
)
げるという気持ちに
徹
(
てっ
)
して、そういう努力を、みんなで払ってもらいたいのである。——
次郎物語:05 第五部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
(このニヒリズムの反射に於て、いかに世界が権力への渇仰を、あのムッソリニや、ヒンデンベルクや、レーニンやに
捧
(
ささ
)
げているかを見よ。)
詩の原理
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
わたしはその間に、自分のすべてを吉川訓導に
捧
(
ささ
)
げたのでした。しかし吉川訓導は、彼のすべてをわたしに与えていたのではありませんでした。
錯覚の拷問室
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
右手
(
めて
)
に
捧
(
ささ
)
ぐる袖の光をしるべに、暗きをすりぬけてエレーンはわが部屋を出る。右に折れると兄の
住居
(
すまい
)
、左を突き当れば今宵の客の寝所である。
薤露行
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
流行児らしく、一面には敵を作ったにしても、一方未知の芸術家達は、ショパンのために、争ってその作品を
捧
(
ささ
)
げるようになっていたのである。
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
岡村は恐らくは坂井の奥さんの銅人形であろう。己はなんだ。青年音楽家程の熱情をも、あの奥さんに
捧
(
ささ
)
げてはいない。なんの取柄があるのだ。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
灯が、障子に近々と揺れると、右京の背後から、二人の腰元が、
燭台
(
しょくだい
)
を
捧
(
ささ
)
げて、入ってきた。その
裾
(
すそ
)
の下を右京は、二、三尺
膝行
(
しっこう
)
すると、平伏して
大岡越前の独立
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
「御神前の
御灯明
(
みあかし
)
をかがやかし、
御榊
(
おさかき
)
を
捧
(
ささ
)
げなさい。道場にて、この者と、用事あるによって、人払いをいたすがよい」
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
すべてのものを
擲
(
なげう
)
って、肉体と魂と一切のものを——生命までも
捧
(
ささ
)
げるようでなかったら、とても僕の高い愛に値しないというような意味なのよ。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
……このあわれを誰よりもよく知って、人間の
叡智
(
えいち
)
を持てと、あえてすべてを祈りへ
捧
(
ささ
)
げて壮烈な自滅を取ッたようなお方もただ一人はありました
私本太平記:13 黒白帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
沼南はまた晩年を風紀の
廓清
(
かくせい
)
に
捧
(
ささ
)
げて東奔西走廃娼禁酒を
侃々
(
かんかん
)
するに
寧日
(
ねいじつ
)
なかった。が、壮年の沼南は廃娼よりはむしろ拝娼で艶名隠れもなかった。
三十年前の島田沼南
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
部屋のまん中には、
椅子
(
いす
)
の上に公爵
令嬢
(
れいじょう
)
が
突
(
つ
)
っ
立
(
た
)
ち上がって、男の
帽子
(
ぼうし
)
を眼の前に
捧
(
ささ
)
げている。椅子のまわりには、五人の男がひしめき合っている。
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
もと、警察に追及されない前は、プロレタリアートの解放のために全身を
捧
(
ささ
)
げていたとしても、矢張り私はまだ沢山の「自分の」生活を持っていた。
党生活者
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
月あかりに見れば、軒の
端
(
つま
)
にものあり。ともし火を
一八四
捧
(
ささ
)
げて照し見るに、男の髪の
一八五
髻
(
もとどり
)
ばかりかかりて、外には
一八六
露ばかりのものもなし。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
時に、
妙法蓮華経薬草諭品
(
みょうほうれんげきょうやくそうゆほん
)
、
第五偈
(
だいごげ
)
の
半
(
なかば
)
を開いたのを左の
掌
(
たなそこ
)
に
捧
(
ささ
)
げていたが、
右手
(
めて
)
に
支
(
つ
)
いた
力杖
(
ステッキ
)
を小脇に
掻上
(
かいあ
)
げ
薬草取
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
中隊長は、不満げに、彼を
睨
(
にら
)
んだ。「も一度。そんな
捧
(
ささ
)
げ
銃
(
つつ
)
があるか!」その眼は、そう云っているようだった。
渦巻ける烏の群
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
そしてコゼットに腕を貸してテュイルリー宮殿の門の前を通ったら、兵士らは自分に
捧
(
ささ
)
げ
銃
(
つつ
)
をしてくれるだろう。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
まあいうてみたら、普通のパッション
捧
(
ささ
)
げられても面白ない、薬の力で情慾鎮静さされてしもてても燃えるような愛感じるのでなかったら満足出来へん。
卍
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
私が最大級の
讃辞
(
さんじ
)
を博士に
捧
(
ささ
)
げていると、ロッセ氏は、そうかそうかと、ペルシャ
猫
(
ねこ
)
のように
澄
(
す
)
んだ
瞳
(
ひとみ
)
をくるくるうごかして、しきりに
感服
(
かんぷく
)
の
面持
(
おももち
)
だった。
のろのろ砲弾の驚異:――金博士シリーズ・1――
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
ただ、内田さんは、たいへん元気で、あなた達がつけたぼくの
綽名
(
あだな
)
を呼び「ぼんぼん、アイスクリイムあげよう」と片手に、容器を
捧
(
ささ
)
げてとんで来ました。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
または国々の
司
(
つかさ
)
からなり、恒例の弊物を
捧
(
ささ
)
げて参同する者を派遣せられる御定めであったというまでであろう。
海上の道
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
弟の阿利吒は尊げなる僧の
饑
(
う
)
ゑたる
面色
(
おももち
)
して空鉢を
捧
(
ささ
)
げ還る
風情
(
ふぜい
)
を見るより、図らず
惻隠
(
そくいん
)
の善心を起し、
往時
(
むかし
)
兄をば
情
(
つれ
)
なくせしことをも思ひ浮めて悔いつつ
印度の古話
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
もう三、四年も前にちょっと耳にせぬでもなかったが、たといいかなる深い男があっても、自分のこの
真情
(
まごころ
)
に
勝
(
まさ
)
る真情を女に
捧
(
ささ
)
げている者は一人もありはせぬ。
霜凍る宵
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
父上なくならば親代りの我れ、兄上と
捧
(
ささ
)
げて
竈
(
かまど
)
の神の松一本も我が託宣を聞く心ならば、いかにもいかにも別戸の御主人に成りて、この
家
(
や
)
の為には働かぬが勝手
大つごもり
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
ノラの舞台監督で指導者の抱月氏に、須磨子が熱烈な思慕を
捧
(
ささ
)
げようとしたのもその頃のことであった。
松井須磨子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
それを
捧
(
ささ
)
げて進むことによって安全なものを感じていたのだ。心を托するに足る何ものかになっていた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
ふと、自分が神前に
捧
(
ささ
)
げた
犠牲
(
ぎせい
)
の
牡牛
(
おうし
)
の、もの悲しい眼が、浮かんで来た。誰か、自分のよく知っている人間の眼に似ているなと思う。そうだ。確かに、あの女だ。
木乃伊
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
そこで全き心を
捧
(
ささ
)
げて恋の火中に投ずるに至るのである。かかる場合に
在
(
あっ
)
ては恋則ち男子の生命である
牛肉と馬鈴薯
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
「生理的から云っても、生活的からいっても異性の肉体というものは
嘉称
(
かしょう
)
すべきものですね。いま、僕に湖畔の一人の女性が、うやうやしくそれを
捧
(
ささ
)
げていいます」
金魚撩乱
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
黒
花崗
(
かこう
)
と耐火煉瓦とを四角に積重ねた美しい台の上に据えられて、晴上った日に照らされ、つぎつぎと花を
捧
(
ささ
)
げる小さな曾孫たちを笑顔で見下されているようです。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
何
(
なに
)
が
何
(
なに
)
やら、一
向
(
こう
)
見当
(
けんとう
)
が
付
(
つ
)
かなくなった
藤吉
(
とうきち
)
は、
次
(
つぎ
)
の
間
(
ま
)
に
取
(
と
)
って
返
(
かえ
)
すと、
箪笥
(
たんす
)
をがたぴしいわせながら、
春信
(
はるのぶ
)
が
好
(
この
)
みの
鶯茶
(
うぐいすちゃ
)
の
羽織
(
はおり
)
を、
捧
(
ささ
)
げるようにして
戻
(
もど
)
って
来
(
き
)
た。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
鉦、炬火、提灯、旗、それから兵隊帰りの
喪主
(
もしゅ
)
が羽織袴で位牌を
捧
(
ささ
)
げ、其後から棺を
蔵
(
おさ
)
めた
輿
(
こし
)
は八人で
舁
(
か
)
かれた。七さんは
着流
(
きなが
)
しに新しい駒下駄で肩を入れて居る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
つまり
橘姫
(
たちばなひめ
)
の
御
(
ご
)
一
生
(
しょう
)
はすべてを
脊
(
せ
)
の
君
(
きみ
)
に
捧
(
ささ
)
げつくした、
世
(
よ
)
にも
若々
(
わかわか
)
しい
花
(
はな
)
の一
生
(
しょう
)
なのでございました。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
高台の上に建つこの
大伽藍
(
だいがらん
)
は、はてしない天にむかって、じっと祈りを
捧
(
ささ
)
げているのではないか。明るい空気のなかに、かすかな
靄
(
もや
)
が
顫
(
ふる
)
えながら
立罩
(
たちこ
)
めてくるようだった。
秋日記
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
色は浅黒いが丸顔で、眼は大きく情熱的で、そうして処女らしく清浄な、すべてが
初々
(
ういうい
)
しい娘であったが、手に茶受けの盆を
捧
(
ささ
)
げ、にこやかに笑いながら座敷へ上がった。
名人地獄
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
衆徳
(
しゅうとく
)
備り給う
処女
(
おとめ
)
マリヤに
御受胎
(
ごじゅたい
)
を告げに来た天使のことを、
厩
(
うまや
)
の中の御降誕のことを、御降誕を告げる星を便りに
乳香
(
にゅうこう
)
や
没薬
(
もつやく
)
を
捧
(
ささ
)
げに来た、
賢
(
かしこ
)
い東方の
博士
(
はかせ
)
たちのことを
おしの
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
ただこのままに
永
(
なが
)
く
膝下
(
しっか
)
に
侍
(
じ
)
せしめ給え、学校より得る収入は
悉
(
ことごと
)
く食費として
捧
(
ささ
)
げ
参
(
まい
)
らせ
聊
(
いささ
)
か
困厄
(
こんやく
)
の万一を補わんと、心より申し
出
(
い
)
でけるに、父母も動かしがたしと見てか
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
捧
漢検準1級
部首:⼿
11画
“捧”を含む語句
捧持
捧呈
捧銃
捧腹
捧物
捧出
捧剣梅鉢
捧呈文
捧命
捧腹絶倒
捧術
捧誓
捧誓者
捧読
築山捧盈
辛捧