承知しょうち)” の例文
こういうわけで、少年はすぐさまそのもういで承知しょうちしました。そして、小人がいだせるように、網をゆり動かすのをやめました。
「これこれ、このおかたをだれだとおもう。三条さんじょう宰相殿さいしょうどの姫君ひめぎみだぞ。うっかり失礼しつれいなまねをすると、この一寸法師いっすんぼうし承知しょうちしないぞ。」
一寸法師 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「ええ、でもねミサ子さん、自転車なんて、きょうは、買うに買えないでしょ。もしも買えるとしても、ふところが承知しょうちしない」
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
青年にこの弱点あることは青年自身も承知しょうちしている。承知しているゆえ、いわゆる先輩せんぱいの意見をたたき、職業を選定せんとするのである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
おかみさんはこういって、それからも、なんのかんのとうるさくいいたてますので、とうとう、木こりも承知しょうちしてしまいました。
そして、おとうさんが、承知しょうちしてくだされたなら、そのときは、おかあさんだって、ゆるしてくださるにちがいないとおもったのでした。
青い石とメダル (新字新仮名) / 小川未明(著)
自分になんらの悪気わるぎはなかったものの、妻が自分にとつぐについては自分に多大ただいのぞみをしょくしてきたことは承知しょうちしていたのだ。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
「へい、承知しょうちいたしました。ですが、その秀吉さまは、山崎の合戦かっせんののち、いったいどこのお城におすまいでござりましょうか」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こんなものがおみやまつられるというのはたしかにぶんぎたことで、わたくし自身じしんもそれはよく承知しょうちしているのでございます。
「まあいつまでもうるさいな。急いで出て行ってくれ。五分間の猶予ゆうよをやる。五分たってわたしが帰って来ても、まだここにいれば承知しょうちしないから」
「うちの親父おやじは、がんこでしようがないのですよ。そのうち、わたしだいになりますから、そしたらわたしがあなたの井戸いどることを承知しょうちしてあげましょう。」
牛をつないだ椿の木 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
「ではみなさんは、そういうふうに川だとわれたり、ちちながれたあとだとわれたりしていた、このぼんやりと白いものがほんとうは何かご承知しょうちですか」
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
そして僧正そうじょうさまにおねがいいたしました。僧正そうじょうさまはすぐに承知しょうちしてくださいました。わたくしどもの宿やどまできてくださいまして、人形のためにおいのりをしてくださいました。
活人形 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
手前てまへぞんじをりまするは是限これぎり。内祝言ないしうげん乳母うば承知しょうちはず何事なにごとにまれ、われら不埓ふらち御檢斷ごけんだんあそばれうならば、餘命よめい幾何いくばくもなき老骨らうこつ如何いか御嚴刑ごげんけいにもしょせられませう。
みちぱたひろげたとこを、ひょっとだれかにられたにゃァ、それこそ若旦那わかだんなよわいおせんは、どんなことになるか、れたもんじゃござんせん。野暮やぼ承知しょうちうえでござんす。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
「コラッ、この餓鬼ッ! そんなきたねえ手で、お駕籠にさわると承知しょうちしねえぞ」
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
それが、今のところかの女に適していると承知しょうちして居る。だが、かの女はそれがまた寂しいのだ。自分の意地や好みを立てて、その上、寂しがるのは贅沢ぜいたくと知りつつ時々涙が出るのだった。
かの女の朝 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「はい、承知しょうちしました。しかし樺太ですって。ずいぶん遠いですね」
一坪館 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そのわりまた、ねずみがわるさをはじめたら、いつでもつけ次第しだいころしてもかまわない。どうだね、それで承知しょうちしてくれるか。
猫の草紙 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
心のすなおなネズミは、すぐに承知しょうちしました。ところがネコのほうは、町の石べいのうしろをとおって、教会きょうかいのなかへしのびこみました。
「おやすいごようです。」と、かれはさっそく、承知しょうちして、きずついたともだちをいたわりながら、あちらの温泉おんせんへとかけたのです。
温泉へ出かけたすずめ (新字新仮名) / 小川未明(著)
遠駆とおがけの一ばん試合じあいで、勝敗しょうはいめることは当方とうほうで、のぞむところ、たしかに承知しょうちした。さらば、すぐそちらでもおしたくを」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すると、小人もとうとう承知しょうちして、あなたが家に帰れば、すぐにもとの人間にしてあげるとつたえてくれということです。
しかもそれをじぶんでよく知っていて、無試験の裁縫さいほう学校にゆきたがった。だが彼女の母はそれを承知しょうちせず、毎日、彼女にいんうつな顔をさせた。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
「うむ、変人へんじんだと承知しょうちでおいてみるのだから、いまからこぼすのはまだ早い、とにかく十か二十日も使ってみんことにはわかりゃせんじゃないか」
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
ミリガン夫人はわたしをそばにきたいと言うだろう。親方はわたしに対する権利けんりてることを承知しょうちしてくれるだろう。それでいっさい事ずみだ。
それでも取次とりつぎの小娘こむすめにはわたくし言葉ことばがよくつうじたらしく、『承知しょうちいたしました。少々しょうしょうちくださいませ。』とって、きびすをかえしていそいでおくはいってきました。
半之助方小僧こぞうぶるえしつつ、酒一斗はとても入りね候と返答へんとういたし候ところ、山男、まずは入れなさるべく候として申し候。半之助も顔色青ざめ委細いさい承知しょうちと早口に申し候。
紫紺染について (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
甚兵衛じんべえ承知しょうちしました。さるは甚兵衛の家へやってきました。そして家にある人形をみな売ってしまいなさいといいました。甚兵衛は人形をのこらず売ってしまいました。するとさるはいいました。
人形使い (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
自分と左膳とのあいだの乾坤二刀の争奪……誰も知る者のないはずなのに、この、突如としてあらわれた異装の一隊は、そのいきさつを委細いさい承知しょうちしてわれからこの場へ踏みこんできたらしい口ぶりだ。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
承知しょうちしました。できるだけ早くきてください」
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「まあ、よく庵主あんじゅさんがご承知しょうちなさったね。」
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
きんのおしろの王女は、これをきいて、ようやく安心あんしんしました。そして、王さまがすきになり、おきさきさまになることをよろこんで承知しょうちしました。
「じゃ、明日あしたとくちゃんなんかにきいてみるよ。うそなんかいったら、承知しょうちしないから。」と、しょうちゃんが、いいますと
ペスをさがしに (新字新仮名) / 小川未明(著)
ユクシを呼んで、ガンたちをヴォンブにつれていくように言いました。けれども、ガンたちが承知しょうちをしませんので、きびしく言いわたしました。
「でまかせをこけ。この村には、ここともう一けん鍛冶屋かじやよりほかに人はいやしない。そんなことは承知しょうちのうえで、柿泥棒かきどろぼうにきやがったくせにして」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あなたがいまから三十五年か四十年まえにイタリアにおいででしたら、あの男についてご承知しょうちだったでしょう。
「いろいろ、あってね。老朽ろうきゅうで来年はやめてもらう番になっていたところを、岬へいけば、三年ぐらいのびるからね。そういったら、よろこんで、承知しょうちしましたよ」
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
そんな真似まねをしたところで、一たんんだものが、とても現世げんせもどれるものでないこと充分じゅうぶん承知しょうちしているのですが、それで矢張やはめることができないのでございます。
ふたりの子どもをつまのやつがれて三里塚りづかへいってくれると都合つごうがえいが、承知しょうちしないかな。独身どくしんになっていま一学問がくもんがやってみたいなあ。子どもはひとりだけだなあ。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
ぼうさんが承知しょうちして珠数じゅずをつまぐりながら、なにいのりはじめますと、不思議ふしぎにもうりがむくむくとうごしました。さてこそあやしいうりだというので、お医者いしゃ忠明ただあきら針療治はりりょうじ使つかはりして
八幡太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「は、承知しょうちしました」
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
承知しょうちしました。」
耕耘部の時計 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
そしてそのくろあたまをぺこぺこげて、どうか今夜こんやだけもう一晩ひとばんここにめておいてくれとたのみました。しかし若者わかものたちは承知しょうちをしなかったのです。
カラカラ鳴る海 (新字新仮名) / 小川未明(著)
こういわれますと、お百姓ひゃくしょうさんも承知しょうちしました。そこで、ユダヤ人の上着をきて、いっしょにでかけました。
男は承知しょうちしてくれた。そこでのすみにすわりこんで、はらいっぱい食べながら、事件じけんのくわしい話をした。バルブレンはくずれた足場の下にしかれて大けがをした。
「みなさん、大丈夫だいじょうぶ和尚おしょうさんは承知しょうちしてくれました。」
猫の草紙 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
承知しょうちしました」
超人間X号 (新字新仮名) / 海野十三(著)
かれは、無理むりにも、おかあさんに承知しょうちしていただいて、おかねをもらわなければなりませんでした。それで、いえうちをおかあさんのあとについてあるきました。
真昼のお化け (新字新仮名) / 小川未明(著)
それで、とうとうネズミは、ネコとおなじうちにすんで、いっしょにくらすことを承知しょうちしてしまいました。