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とだな
ふりがな文庫
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(
とだな
)” の例文
偉大な人々の家宅探索をし、その
戸棚
(
とだな
)
を検査し、引き出しの底を探り、
箪笥
(
たんす
)
をぶちまけた後、批評界はその寝所をまでのぞき込んだ。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
よそ
行着
(
ゆきぎ
)
を着た細君を
労
(
いたわ
)
らなければならなかった津田は、やや重い
手提鞄
(
てさげかばん
)
と小さな
風呂敷包
(
ふろしきづつみ
)
を、自分の手で
戸棚
(
とだな
)
から
引
(
ひ
)
き
摺
(
ず
)
り出した。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
右側の壁にくっつけた
戸棚
(
とだな
)
の上にある、もう一つは懐中時計でベットの頭の手すりにつるしてある——この二つの時計の秒を刻む音と
病院の夜明けの物音
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
炉辺
(
ろばた
)
は広かった。その一部分は
艶々
(
つやつや
)
と光る
戸棚
(
とだな
)
や、清潔な板の間で、
流許
(
ながしもと
)
で用意したものは直にそれを炉の方へ運ぶことが出来た。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
この
間
(
あいだ
)
坊
(
ぼう
)
さんは
始終
(
しじゅう
)
戸棚
(
とだな
)
の中からそっとのぞきながら、びくびくふるえていましたが、その
時
(
とき
)
女は
戸棚
(
とだな
)
をあけて
坊
(
ぼう
)
さんを
出
(
だ
)
してやって
人馬
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
▼ もっと見る
背伸
(
せの
)
びをして、三
尺
(
じゃく
)
の
戸棚
(
とだな
)
の
奥
(
おく
)
を
探
(
さぐ
)
っていた
春重
(
はるしげ
)
は、
闇
(
やみ
)
の
中
(
なか
)
から
重
(
おも
)
い
声
(
こえ
)
でこういいながら、もう一
度
(
ど
)
、ごとりと
鼠
(
ねずみ
)
のように
音
(
おと
)
を
立
(
た
)
てた。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
「まだ
其處
(
そこ
)
で
引
(
ひ
)
つくるけえしちや
大變
(
たえへん
)
だぞ、
戸棚
(
とだな
)
へでも
入
(
せ
)
えて
置
(
お
)
け」
勘次
(
かんじ
)
は
復
(
ま
)
た
注意
(
ちうい
)
した。
卯平
(
うへい
)
は
藥罐
(
やくわん
)
の
湯
(
ゆ
)
を
注
(
つ
)
いで三
杯
(
ばい
)
を
喫
(
きつ
)
した。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
兎
(
うさぎ
)
のおっかさんまでが
泣
(
な
)
いて、前かけで涙をそっとぬぐいながら、あの美しい玉のはいった
瑪瑙
(
めのう
)
の
函
(
はこ
)
を
戸棚
(
とだな
)
から取り出しました。
貝の火
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
戸棚
(
とだな
)
に首を突込んでつまみ食い、九助は
納屋
(
なや
)
にとじこもって濁酒を飲んで眼をどろんとさせて何やらお念仏に似た唄を口ずさみ、お竹は
新釈諸国噺
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
含
(
ふく
)
み何にも
無
(
ない
)
が一ツ飮ふと
戸棚
(
とだな
)
より取出す
世帶
(
せたい
)
の貧乏徳利
干上
(
ひあが
)
る財布のしま干物
獻
(
さし
)
つ
押
(
おさ
)
へつ三人が
遠慮
(
ゑんりよ
)
もなしに
呑掛
(
のみかけ
)
たりお安は娘に逢度さを
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
と云って、主は
戸棚
(
とだな
)
から
一括
(
いっかつ
)
した手紙はがきを取り出し、一枚ずつめくって、一枚のはがきを取り出して見せた。まさしく其人の名がある。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
博士が心配すると思って、少年たちは、壁にぼっかりあいた穴や、こわれた
戸棚
(
とだな
)
を見ても、あまり大きなおどろきの声を出さないことにした。
超人間X号
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
で彼は
戸棚
(
とだな
)
から飛びおり、帽子を取った。そして
扉
(
とびら
)
のとっ手に手をかけまさに外に出ようとした時、ふと足を止めて考えた。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
お膳立をしてあの
戸棚
(
とだな
)
へ入れときましたから、どうぞ……お嬢さま、もう
直
(
すぐ
)
宜
(
よ
)
うござんすか? それじゃア行ってまいります
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
大きなテーブルが一つと、いくつかの小さな
椅子
(
いす
)
、
戸棚
(
とだな
)
、
炊事場
(
すいじば
)
……。マリイは横手の扉をあけて、次の部屋にトニイをひっぱっていきました。
街の少年
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
と腰障子を開けると
漸
(
やっ
)
と畳は五畳ばかり敷いてあって、
一間
(
いっけん
)
の
戸棚
(
とだな
)
があって、壁と
竈
(
へッつい
)
は余り
漆喰
(
じっくい
)
で繕って、商売手だけに綺麗に磨いてあります。
業平文治漂流奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「ぼく、とてもいいことを考えた。」と言いながら立っていって、
戸棚
(
とだな
)
からお皿をもってきて、その上に卵をのせ、針で両はしに穴をあけました。
海からきた卵
(新字新仮名)
/
塚原健二郎
(著)
こう思うと、少年は
床
(
ゆか
)
にとびおりて、さっそく、さがしはじめました。イスや
戸棚
(
とだな
)
のうしろから、長イスの下やだんろのうしろまでさがしました。
ニールスのふしぎな旅
(新字新仮名)
/
セルマ・ラーゲルレーヴ
(著)
と言って高く自ら標置する
輩
(
やから
)
がある。また私の花鳥諷詠という語を
戸棚
(
とだな
)
の中にしまい込んで置いてなるべく手を触れないようにしておる者もある。
俳句への道
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
していらつしやい。今日一日おとなしくしてゐれば、
明日
(
あした
)
から学校に行かせてあげますから。お
三時
(
やつ
)
のチヨコレートを
戸棚
(
とだな
)
の中に入れておきますよ。
お猫さん
(新字旧仮名)
/
村山籌子
、
古川アヤ
(著)
お蓮は犬を板の
間
(
ま
)
へ
下
(
おろ
)
すと、無邪気な笑顔を見せながら、もう
肴
(
さかな
)
でも探してやる気か、台所の
戸棚
(
とだな
)
に手をかけていた。
奇怪な再会
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
白痴
(
あはう
)
が
泣出
(
なきだ
)
しさうにすると、
然
(
さ
)
も
怨
(
うら
)
めしげに
流盻
(
ながしめ
)
に
見
(
み
)
ながら、こはれ/\になつた
戸棚
(
とだな
)
の
中
(
なか
)
から、
鉢
(
はち
)
に
入
(
はい
)
つたのを
取出
(
とりだ
)
して
手早
(
てばや
)
く
白痴
(
あはう
)
の
膳
(
ぜん
)
につけた。
高野聖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
それからまた立ち上がって全く無感情な顔つきをしながら、もう一度
戸棚
(
とだな
)
に行って、倉地が始終身近に備えているピストルをあちこちと尋ね求めた。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
巷
(
ちまた
)
で運よく見つけた電熱器を病室の片隅に取つけると、それで紅茶も沸かせた。ベッド脇に据えつけられている小さな
戸棚
(
とだな
)
には、
林檎
(
りんご
)
やバタがあった。
秋日記
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
「きまってるじゃありませんか。いつも、かしらが、いちばんだいじなものをしまっておく、その
戸棚
(
とだな
)
ですよ。」
仮面の恐怖王
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
「ああ、これは高い
銭
(
かね
)
を出して買ったのだ」と思いながら、方々の
戸棚
(
とだな
)
を明けて見るといろんな物が入っている。
うつり香
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
予
(
かね
)
てから猫の
産月
(
うみづき
)
が近づいたので、書斎の
戸棚
(
とだな
)
に
行李
(
こうり
)
を
準備
(
ようい
)
し、小さい座蒲団を敷いて産所に
充
(
あ
)
てていたところ
二葉亭余談
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
もっとも、それはまったくほんの
戸棚
(
とだな
)
のようなものなので、たった一人だけしか使うことができなかった。その小さな部屋の一つにウィルスンはいたのだ。
ウィリアム・ウィルスン
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
たまたまナポレオンが執政官として事実上フランスの専制君主となったと聴き「彼もまた唯の野心家だ」と総譜のタイトルを破って
戸棚
(
とだな
)
の中に
投
(
ほう
)
り込んだ。
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
然るに理智の反省は、これを概念によって分析し、有機的な統一を無機的に換え、部分を箇々の
戸棚
(
とだな
)
に
別
(
わ
)
け、見出しカードの
抽斗
(
ひきだし
)
を付けて索引に便利にする。
詩の原理
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
誦
(
ず
)
しをはりて七兵衛に物などくはせ、さて日もくれければ
仏壇
(
ぶつだん
)
の下の
戸棚
(
とだな
)
にかくれをらせ、
覗
(
のぞ
)
くべき
節孔
(
ふしあな
)
もあり、さて
仏
(
ほとけ
)
のともし火も家のもわざと
幽
(
かすか
)
になし
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
夜具
戸棚
(
とだな
)
に隣りたる一間の床の間には。本箱と
箪笥
(
たんす
)
と同居して。インキのこぼれたる跡ところどころにあり。箪笥の前にはブリッキの小さなかなだらいの中に。
藪の鶯
(新字新仮名)
/
三宅花圃
(著)
巡査
(
じゅんさ
)
とウォッジャーズが、ほっとしたとたん、
戸棚
(
とだな
)
から、がらがらとガラスびんが三つ四つころがりおち、
鼻
(
はな
)
をつくいやなにおいが部屋いっぱいにひろがった。
透明人間
(新字新仮名)
/
ハーバート・ジョージ・ウェルズ
(著)
戸棚
(
とだな
)
、
押入
(
おしいれ
)
の
外
(
ほか
)
捜さざる処もあらざりしに、
終
(
つひ
)
に
主
(
あるじ
)
を
見出
(
みいだ
)
さざる老婢は
希有
(
けう
)
なる
貌
(
かほ
)
して又
子亭
(
はなれ
)
に
入来
(
いりきた
)
れり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
女中
(
おんな
)
は戸を立て、
火鉢
(
ひばち
)
の炭をついで去れば、老女は
風呂敷包
(
ふろしきづつ
)
みを
戸棚
(
とだな
)
にしまい、立ってこなたに来たり
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
森や畑はむろんのこと、物置でも、
戸棚
(
とだな
)
でも、押し入れでも、
本箱
(
ほんばこ
)
でも、どしどし探検してもらいたい。
次郎物語:05 第五部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
合宿の
戸棚
(
とだな
)
のグリス
鑵
(
かん
)
の後ろになかったかなアと、
溝
(
みぞ
)
のなかをみつめている最中、ふとおもいつくと、
直
(
す
)
ぐまた合宿の二階に駆けあがって、戸棚をあけ、
鉄亜鈴
(
てつあれい
)
や
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
この段取の間、男は
背後
(
うしろ
)
の
戸棚
(
とだな
)
に
凴
(
よ
)
りながらぽかりぽかり
煙草
(
たばこ
)
をふかしながら、
腮
(
あご
)
のあたりの
飛毛
(
とびげ
)
を人さし指の先へちょと
灰
(
はい
)
をつけては、いたずら半分に
抜
(
ぬ
)
いている。
貧乏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
お兼 (
戸棚
(
とだな
)
から
皿
(
さら
)
に
干
(
ほ
)
し
柿
(
がき
)
を入れて持ちきたる)さあ、これをおあがり。秋にかあさんが干しておいたのだよ。私はちょっとお台所を見て来るからね。(裏口から退場)
出家とその弟子
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
扉側の
片隅
(
かたすみ
)
に
戸棚
(
とだな
)
を二つ斜めに置くことができていたが、ほかの場所は長い食卓ですっかり占められ、食卓は扉の近くから始まって、大きな窓のすぐ近くまで達しており
審判
(新字新仮名)
/
フランツ・カフカ
(著)
カアテンとかテイブルセンタアとか、童話趣味の装飾も彼女らしい好みであったが、奥の一部屋だけは、不釣合いに
厳
(
いか
)
つい床や袋
戸棚
(
とだな
)
などちょっと擬ったところがあった。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
「それじゃこうしたらどうだろう。お徳の部屋の
戸棚
(
とだな
)
の下を明けて当分ともかく
彼処
(
あそこ
)
へ炭を入れることにしたら。そしてお徳の
所有品
(
もの
)
は中の部屋の
戸棚
(
とだな
)
を
整理
(
かたづ
)
けて入れたら」
竹の木戸
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
さま/″\変な、恐ろしい形をしたものが壁にかゝつてゐたり、
戸棚
(
とだな
)
の中にしまつてあつたりして、床の上にも、テイブルの上にも魔術の本が山のやうにつみ重ねてありました。
虹猫の大女退治
(新字旧仮名)
/
宮原晃一郎
(著)
今迄親しんで居た哲学や芸術に関する書類を一切
戸棚
(
とだな
)
へ片附けて了って、魔術だの、催眠術だの、探偵小説だの、化学だの、解剖学だのの奇怪な説話と
挿絵
(
さしえ
)
に富んでいる書物を
秘密
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
極端にいえば少なくともすぐ眼に見えるところにある
戸棚
(
とだな
)
の中にさえそういうものは置かない方がよいのである。そして実験台の上には広々とした空所のあることが必要である。
実験室の記憶
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
隅々の
戸棚
(
とだな
)
、
蓋
(
ふた
)
のしてある暖炉、大きな八角時計、晴雨計、寒暖計、掲示板、——壁にはところどころに何者の趣味だか、いや何の意味だか呉服店だのビール会社だのの広告絵
六月
(新字新仮名)
/
相馬泰三
(著)
何
(
なに
)
お
峯
(
みね
)
が
來
(
き
)
たかと
安兵衛
(
やすべゑ
)
が
起上
(
おきあが
)
れば、
女房
(
つま
)
は
内職
(
ないしよく
)
の
仕立物
(
したてもの
)
に
餘念
(
よねん
)
なかりし
手
(
て
)
をやめて、まあ/\
是
(
こ
)
れは
珍
(
めづ
)
らしいと
手
(
て
)
を
取
(
と
)
らぬばかりに
喜
(
よろ
)
ばれ、
見
(
み
)
れば六
疊
(
でう
)
一
間
(
ま
)
に一
間
(
けん
)
の
戸棚
(
とだな
)
只
(
たゞ
)
一つ
大つごもり
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
事務机、
戸棚
(
とだな
)
、
台秤
(
だいばかり
)
など。ほかにアーストロフ用のやや小型なテーブル。その上に製図用具や絵具、そばに大きな紙挟み。
椋鳥
(
むくどり
)
を入れた
鳥籠
(
とりかご
)
。壁には、誰にも用のなさそうなアフリカの地図。
ワーニャ伯父さん:――田園生活の情景 四幕――
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
かの地の大使館員でMという人と知り合いになったがその人がラッパのない、小さな
戸棚
(
とだな
)
のような形をした上等の蓄音機をもっていた。
蓄音機
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
二合ばかりの酒、冷たくなった焼き
味噌
(
みそ
)
、そんなものが勝手口の
戸棚
(
とだな
)
に残ったのを半蔵は
探
(
さが
)
し出して、それを店座敷に持ち帰った。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
戸
常用漢字
小2
部首:⼾
4画
棚
常用漢字
中学
部首:⽊
12画
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