)” の例文
が、これも、考えてみれば杞憂きゆうに過ぎない。片方が組与頭の戸部氏である。まさか一時の怒りに任せて、そんなをするはずはない。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
◯今日キリスト信徒が自然研究を遺却していたずらに新著新説に走り、変りやすき理論を以て自己を養わんとするは骨頂こっちょうである。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
放蕩と死とはつらなる鎖に候。何時も変りなき余がをお笑ひ下され度く候。余は昨夜一夜いちやをこの娼帰しやうふと共に、「しかばねの屍に添ひてよこたはる」
夜あるき (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
一代身上を築いた嘉兵衞は意志の權化のやうな剛毅がうきな男ですが、今晩はすつかりに返つて、兎もすれば湧く涙を拭ふばかりです。
もし警察が、チャアリイにたいして、父親である貴下と同じ心臓をもっていたら、おそらくかかるはあえてしなかったであろう。
チャアリイは何処にいる (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
福田氏が警察の助力をあおいだことも知らぬ筈はなく、便々べんべんと十一月廿日を待って、相手の警戒網を完成させるはしないであろう。
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
そうするには大学も何もつぶしてしまって、世間をくら闇にしなくてはならない。黔首けんしゅにしなくてはならない。それは不可能だ。
かのように (新字新仮名) / 森鴎外(著)
世には有りもせぬ失恋を製造して、みずからいて煩悶はんもんして、愉快をむさぼるものがある。常人じょうにんはこれを評してだと云う、気違だと云う。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
だからどうだとも云ふのではありません。御覧の通り、それはな思想です。いや。思想なんといふものは含蓄せられてゐない程愚です。
足利一門の致命ともなりかねないような最悪の最後まで、じっと、蟄居ちっきょをまもっているはしまいし、その必要もなかったのだ。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あんずるに諺に曰く、遠くて近きは男女の仲、近くて遠いは、嫁舅よめしゅうとの仲、遠くて遠いが唐、天竺、近うて近いが、目、鼻、口」
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
と言うて手をつかねて捕われるのもな話、窮鼠きゅうそかえって猫を噛むというわけではないが、時にとっての非常手段を試みるよりほかはない。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
此れも下女の不行届、其れも下男の等閑なおざりなど、逐一計え立ていたずらに心配苦労して益なき事に疳癪を起すは、ただと言う可きのみ。
新女大学 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
やっと停車場の外へ出た彼は彼自身のに憤りを感じた。なぜまたお時儀などをしてしまったのであろう? あのお時儀は全然反射的である。
お時儀 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そううまく行くべきものだか、どうだか。むかしも今も席画というがある、席画に美術を求めることの無理でなのは今は誰しもみとめている。
鵞鳥 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「当然あるべきことを非常に恐れて無暗にのがれようとするのはな話だと思う。生が人生の実務なら、死も亦人生の実務だ」
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
笑うにも及ばぬほどのなる一場の話に過ぎぬが、その後四十余年のちの今日に至るまで、この経験が僕に教えた教訓ははなはだ少なくない。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
一体自分は、なぜのように了見りょうけんがふわふわして居るのだろう。にもつかない事ばかり考えて居るのだろう。もっと心を
小僧の夢 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
いっさいの合理的設備が間に合わないほど迅速に、また合理的設備を忘れるほど性急に、大都会が膨脹して行ったことそれ自身が、なのである。
地異印象記 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
一体読者が自分の好きな作者の前へ出た時には、出来るだけ自分のを表白するもので、そんな折には作者は唯笑つてさへ居ればそれでいのだ。
そして現今、洋の東西を問わず、およそ近代と呼ばれる音楽の多くは、単なる描写音楽のを敢てしている。
FARCE に就て (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
あんずるまろきは天の正しやうかくは地の実位じつゐ也。天地の気中に活動はたらきする万物こと/″\方円はうゑんかたちうしなはず、その一を以いふべし、人のからだかくにしてかくならず、まろくして円からず。
「あゝ、こんなときには、兩國下りやうごくしたいわしはしないかな。」と、にもつかないが、事實じじつそんなことおもつた。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
自分がであったために、寅寿という客の正体を察することもできず、大助の木曽ゆきがどんなに大事なことかも知らず、さそいに乗ってつい秘密をもらした
新潮記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「そうです、セルベン号の船長や、あなたのご主人たちに対して行なったように、皆殺しにしようというのです、やつらに慈悲心じひしんを求めるのは骨頂こっちょうです!」
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
な事を言ふなあ。烏鷺の趣味を解せん者は、そんな事を言うて喜ぶんぢやから全く始末に了へん。』
我等の一団と彼 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
このてんにおいて支那しなはさすがに徹底てつていしてゐる。如何いかなる場合ばあひにも姓名せいめい轉倒てんたうするやうなえんじない。
誤まれる姓名の逆列 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
鮑叔はうしゆくわれもつたんさず、まづしきをればなりわれかつ鮑叔はうしゆくめにことはかり、しかうしてさら窮困きうこんす。鮑叔はうしゆくわれもつさず、とき不利ふりるをればなり
またこういう事も有る※ふと気がかわって、今こう零落していながら、この様な薬袋やくたいも無い事にかかずらッていたずらに日を送るをきわめのように思われ、もうお勢の事は思うまいと
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
無茶苦茶に暗記をしたり、それから、また無茶苦茶に受験書を買いあつめたりするのは骨頂こっちょうだよ。そんな詰めこみ主義は役にたたんばかりか、むしろ反対に害がある。
新学期行進曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
大塚のうちには何か迎ひに来る物が有るなどと騒ぎをやるにつけて母がつまらぬ易者などにでも見て貰つたか、な話しではあるが一月のうちに生命せいめいが危ふいとか言つたさうな
うつせみ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
のまま小さくなっているのもである。何とかして彼等を撃退する工夫はあるまいかと、市郎も苦し紛れに種々いろいろ考えていると、わがかたわらにひらりと飛んで来た者があるらしい。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
薄暗い珈琲コーヒー店の片隅で考える事はにもつかない外遊の空想などばかりであった。
魚の序文 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
「同感ですな。いかにうっそりなお姫さまでも、そぎゃんなことをするはずはありまッせん。いわんや、じぶんが入って来たところをわれわれ二人に見られたことも承知しとるのじゃけん」
同じ路を引きかえして帰るはである。迷ったところが今の武蔵野にすぎない、まさかに行暮れて困ることもあるまい。帰りもやはりおよその方角をきめて、べつな路を当てもなく歩くが妙。
武蔵野 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
吉右衛門きちえもん菊五郎きくごろうはどうも歌舞伎のオオソドックスに忠実だとはおもえません。まア羽左衛門うざえもんあたりの生世話きぜわの風格ぐらいが——」などにもつかぬ気障きざっぽいことを言っていると、突然とつぜん
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
新五郎「あゝ親父おやじな者である、こんな処にいてはとても出世は出来ぬ」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
しかもしないことを平気でて、他人のすることをまた他人の仕業しわざとして平気に眺めて居るのはいいが化粧しないのを自慢にしたり、他の女がするのを軽蔑けいべつしたりするのはである、傲慢ごうまんである。
女性の不平とよろこび (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
人の幼穉ようちなるとき、意を加えてこれを保護せざれば、必ずみ、必ず死す。また心を用いてこれを教育せざれば、長ずるにおよびて必ずがん、必ずにして、蛮夷の間といえども共にたつべからざるに至る。
教育談 (新字新仮名) / 箕作秋坪(著)
なんで、これがおわびせいでおられましょう。なおこのが、いらぬことを仕出来しでかしましたこころなさからお師匠ししょうさんに、このようないやなおもいをおさせもうしました。堺屋さかいやあながあったら這入はいりとうおます
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
けんにしてたからおほければ則ち其志そのこゝろざしそんにしてたからおほければ則ち其過そのあやまちを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
病漸次にきたり以後つね強健けうけんなりき、人夫等皆之をとし恐喜ところを知らざるが如し、昨朝帰途きときし三人の行者まゐりをしてらしめば、其よろこび果して如何いかなりしか、おもへばいたりなり
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
「極な話で、到底お聞せ申されるやうな者ではないのです。又自分もこの事はひとには語るまい、と堅く誓つてゐるのでありますから、どうも申上げられません。究竟つまり或事に就いて或者に欺かれたのでございます」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
骨頂こつちようといはなければならぬ。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
に耐えよと窓を暗くす竹の雪
郷愁の詩人 与謝蕪村 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
一代身上を築いた嘉兵衛は意志の権化のような剛毅ごうきな男ですが、今晩はすっかりに返って、ともすれば湧く涙を拭うばかりです。
汽車に乗るんだなと思いながら、いくら金を払うものか、また金を払う必要があるものか、とんと思い至らなかったのはいたりである。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
繁華な市中しちゅうからも日本晴にほんばれの青空遠く富士山を望み得たという昔の眺望の幾分を保存させたであろうとにもつかぬ事を考え出す。
それを聞いて、関羽は、この母親の胸を問うなどであることを知った。張飛も共に、頭を下げて、「ありがとうござる」と、心服した。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私は私の嗤笑しせうすべき賢達けんたつの士のあるのを心得てゐる。が、私自身といへども私の愚を笑ふ点にかけてはあへて人後に落ちようとは思つてゐない。
澄江堂雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)