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愚
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ぐ
ふりがな文庫
“
愚
(
ぐ
)” の例文
が、これも、考えてみれば
杞憂
(
きゆう
)
に過ぎない。片方が組与頭の戸部氏である。まさか一時の怒りに任せて、そんな
愚
(
ぐ
)
をするはずはない。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
◯今日キリスト信徒が自然研究を遺却していたずらに新著新説に走り、変りやすき理論を以て自己を養わんとするは
愚
(
ぐ
)
の
骨頂
(
こっちょう
)
である。
ヨブ記講演
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
放蕩と死とは
連
(
つらな
)
る鎖に候。何時も変りなき余が
愚
(
ぐ
)
をお笑ひ下され度く候。余は
昨夜一夜
(
いちや
)
をこの
娼帰
(
しやうふ
)
と共に、「
屍
(
しかばね
)
の屍に添ひて
横
(
よこたは
)
る」
夜あるき
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
一代身上を築いた嘉兵衞は意志の權化のやうな
剛毅
(
がうき
)
な男ですが、今晩はすつかり
愚
(
ぐ
)
に返つて、兎もすれば湧く涙を拭ふばかりです。
銭形平次捕物控:079 十七の娘
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
もし警察が、チャアリイにたいして、父親である貴下と同じ心臓をもっていたら、おそらくかかる
愚
(
ぐ
)
はあえてしなかったであろう。
チャアリイは何処にいる
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
▼ もっと見る
福田氏が警察の助力を
仰
(
あお
)
いだことも知らぬ筈はなく、
便々
(
べんべん
)
と十一月廿日を待って、相手の警戒網を完成させる
愚
(
ぐ
)
はしないであろう。
魔術師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
そうするには大学も何も
潰
(
つぶ
)
してしまって、世間をくら闇にしなくてはならない。
黔首
(
けんしゅ
)
を
愚
(
ぐ
)
にしなくてはならない。それは不可能だ。
かのように
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
世には有りもせぬ失恋を製造して、
自
(
みず
)
から
強
(
し
)
いて
煩悶
(
はんもん
)
して、愉快を
貪
(
むさ
)
ぼるものがある。
常人
(
じょうにん
)
はこれを評して
愚
(
ぐ
)
だと云う、気違だと云う。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
だからどうだとも云ふのではありません。御覧の通り、それは
愚
(
ぐ
)
な思想です。いや。思想なんといふものは含蓄せられてゐない程愚です。
笑
(新字旧仮名)
/
ミハイル・ペトローヴィチ・アルチバシェッフ
(著)
足利一門の致命ともなりかねないような最悪の最後まで、じっと、
蟄居
(
ちっきょ
)
をまもっている
愚
(
ぐ
)
はしまいし、その必要もなかったのだ。
私本太平記:10 風花帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「
愚
(
ぐ
)
按
(
あん
)
ずるに諺に曰く、遠くて近きは男女の仲、近くて遠いは、
嫁舅
(
よめしゅうと
)
の仲、遠くて遠いが唐、天竺、近うて近いが、目、鼻、口」
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
と言うて手を
束
(
つか
)
ねて捕われるのも
愚
(
ぐ
)
な話、
窮鼠
(
きゅうそ
)
かえって猫を噛むというわけではないが、時にとっての非常手段を試みるよりほかはない。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
此れも下女の不行届、其れも下男の
等閑
(
なおざり
)
など、逐一計え立て
徒
(
いたずら
)
に心配苦労して益なき事に疳癪を起すは、
唯
(
ただ
)
愚
(
ぐ
)
と言う可きのみ。
新女大学
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
やっと停車場の外へ出た彼は彼自身の
愚
(
ぐ
)
に憤りを感じた。なぜまたお時儀などをしてしまったのであろう? あのお時儀は全然反射的である。
お時儀
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
そううまく行くべきものだか、どうだか。むかしも今も席画というがある、席画に美術を求めることの無理で
愚
(
ぐ
)
なのは今は誰しも
認
(
みと
)
めている。
鵞鳥
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
「当然あるべきことを非常に恐れて無暗に
遁
(
のが
)
れようとするのは
愚
(
ぐ
)
な話だと思う。生が人生の実務なら、死も亦人生の実務だ」
ガラマサどん
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
笑うにも及ばぬほどの
愚
(
ぐ
)
なる一場の話に過ぎぬが、その後四十余年のちの今日に至るまで、この経験が僕に教えた教訓ははなはだ少なくない。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
一体自分は、なぜ
此
(
こ
)
のように
了見
(
りょうけん
)
がふわふわして居るのだろう。
愚
(
ぐ
)
にもつかない事ばかり考えて居るのだろう。もっと心を
小僧の夢
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
いっさいの合理的設備が間に合わないほど迅速に、また合理的設備を忘れるほど性急に、大都会が膨脹して行ったことそれ自身が、
愚
(
ぐ
)
なのである。
地異印象記
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
一体読者が自分の好きな作者の前へ出た時には、出来るだけ自分の
愚
(
ぐ
)
を表白するもので、そんな折には作者は唯笑つてさへ居ればそれで
可
(
い
)
いのだ。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
そして現今、洋の東西を問わず、
凡
(
およ
)
そ近代と呼ばれる音楽の多くは、単なる描写音楽の
愚
(
ぐ
)
を敢てしている。
FARCE に就て
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
愚
(
ぐ
)
按
(
あんずる
)
に
円
(
まろき
)
は天の正
象
(
しやう
)
、
方
(
かく
)
は地の
実位
(
じつゐ
)
也。天地の気中に
活動
(
はたらき
)
する万物
悉
(
こと/″\
)
く
方円
(
はうゑん
)
の
形
(
かたち
)
を
失
(
うしな
)
はず、その一を以いふべし、人の
体
(
からだ
)
方
(
かく
)
にして
方
(
かく
)
ならず、
円
(
まろ
)
くして円からず。
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
「あゝ、こんな
時
(
とき
)
には、
兩國下
(
りやうごくした
)
へ
鰯
(
いわし
)
が
來
(
き
)
はしないかな。」と、
愚
(
ぐ
)
にもつかないが、
事實
(
じじつ
)
そんな
事
(
こと
)
を
思
(
おも
)
つた。
間引菜
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
自分が
愚
(
ぐ
)
であったために、寅寿という客の正体を察することもできず、大助の木曽ゆきがどんなに大事なことかも知らず、さそいに乗ってつい秘密をもらした
新潮記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「そうです、セルベン号の船長や、あなたのご主人たちに対して行なったように、皆殺しにしようというのです、やつらに
慈悲心
(
じひしん
)
を求めるのは
愚
(
ぐ
)
の
骨頂
(
こっちょう
)
です!」
少年連盟
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
『
愚
(
ぐ
)
な事を言ふなあ。烏鷺の趣味を解せん者は、そんな事を言うて喜ぶんぢやから全く始末に了へん。』
我等の一団と彼
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
この
點
(
てん
)
において
支那
(
しな
)
はさすがに
徹底
(
てつてい
)
してゐる。
如何
(
いか
)
なる
場合
(
ばあひ
)
にも
姓名
(
せいめい
)
を
轉倒
(
てんたう
)
するやうな
愚
(
ぐ
)
を
演
(
えん
)
じない。
誤まれる姓名の逆列
(旧字旧仮名)
/
伊東忠太
(著)
鮑叔
(
はうしゆく
)
、
我
(
われ
)
を
以
(
もつ
)
て
貪
(
たん
)
と
爲
(
な
)
さず、
我
(
わ
)
が
貧
(
まづ
)
しきを
知
(
し
)
れば
也
(
なり
)
。
吾
(
われ
)
嘗
(
かつ
)
て
鮑叔
(
はうしゆく
)
の
爲
(
た
)
めに
事
(
こと
)
を
謀
(
はか
)
り、
而
(
しかう
)
して
更
(
さら
)
に
窮困
(
きうこん
)
す。
鮑叔
(
はうしゆく
)
、
我
(
われ
)
を
以
(
もつ
)
て
愚
(
ぐ
)
と
爲
(
な
)
さず、
時
(
とき
)
に
利
(
り
)
と
不利
(
ふり
)
と
有
(
あ
)
るを
知
(
し
)
れば
也
(
なり
)
。
国訳史記列伝:02 管晏列伝第二
(旧字旧仮名)
/
司馬遷
(著)
またこういう事も有る※ふと気が
渝
(
かわ
)
って、今こう零落していながら、この様な
薬袋
(
やくたい
)
も無い事に
拘
(
かかずら
)
ッて
徒
(
いたずら
)
に日を送るを
極
(
きわめ
)
て
愚
(
ぐ
)
のように思われ、もうお勢の事は思うまいと
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
無茶苦茶に暗記をしたり、それから、また無茶苦茶に受験書を買いあつめたりするのは
愚
(
ぐ
)
の
骨頂
(
こっちょう
)
だよ。そんな詰めこみ主義は役にたたんばかりか、むしろ反対に害がある。
新学期行進曲
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
大塚の
家
(
うち
)
には何か迎ひに来る物が有るなどと騒ぎをやるにつけて母がつまらぬ易者などにでも見て貰つたか、
愚
(
ぐ
)
な話しではあるが一月のうちに
生命
(
せいめい
)
が危ふいとか言つたさうな
うつせみ
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
此
(
こ
)
のまま小さくなっているのも
愚
(
ぐ
)
である。何とかして彼等を撃退する工夫はあるまいかと、市郎も苦し紛れに
種々
(
いろいろ
)
考えていると、わが
傍
(
かたわ
)
らにひらりと飛んで来た者があるらしい。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
薄暗い
珈琲
(
コーヒー
)
店の片隅で考える事は
愚
(
ぐ
)
にもつかない外遊の空想などばかりであった。
魚の序文
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
「同感ですな。いかにうっそりなお姫さまでも、そぎゃん
愚
(
ぐ
)
なことをするはずはありまッせん。いわんや、じぶんが入って来たところをわれわれ二人に見られたことも承知しとるのじゃけん」
顎十郎捕物帳:21 かごやの客
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
同じ路を引きかえして帰るは
愚
(
ぐ
)
である。迷ったところが今の武蔵野にすぎない、まさかに行暮れて困ることもあるまい。帰りもやはりおよその方角をきめて、べつな路を当てもなく歩くが妙。
武蔵野
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
「
吉右衛門
(
きちえもん
)
や
菊五郎
(
きくごろう
)
はどうも歌舞伎のオオソドックスに忠実だとはおもえません。まア
羽左衛門
(
うざえもん
)
あたりの
生世話
(
きぜわ
)
の風格ぐらいが——」など
愚
(
ぐ
)
にもつかぬ
気障
(
きざ
)
っぽいことを言っていると、
突然
(
とつぜん
)
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
新五郎「あゝ
親父
(
おやじ
)
は
愚
(
ぐ
)
な者である、こんな処にいては
迚
(
とて
)
も出世は出来ぬ」
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
しかもしないことを平気で
居
(
い
)
て、他人のすることをまた他人の
仕業
(
しわざ
)
として平気に眺めて居るのはいいが化粧しないのを自慢にしたり、他の女がするのを
軽蔑
(
けいべつ
)
したりするのは
愚
(
ぐ
)
である、
傲慢
(
ごうまん
)
である。
女性の不平とよろこび
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
人の
幼穉
(
ようち
)
なるとき、意を加えてこれを保護せざれば、必ず
病
(
や
)
み、必ず死す。また心を用いてこれを教育せざれば、長ずるに
及
(
および
)
て必ず
頑
(
がん
)
、必ず
愚
(
ぐ
)
にして、蛮夷の間といえども共に
立
(
たつ
)
べからざるに至る。
教育談
(新字新仮名)
/
箕作秋坪
(著)
なんで、これがお
詫
(
わび
)
せいでおられましょう。
愚
(
ぐ
)
なおこのが、いらぬことを
仕出来
(
しでか
)
しました
心
(
こころ
)
なさからお
師匠
(
ししょう
)
さんに、このようないやな
思
(
おも
)
いをおさせ
申
(
もう
)
しました。
堺屋
(
さかいや
)
、
穴
(
あな
)
があったら
這入
(
はい
)
りとうおます
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
賢
(
けん
)
にして
財
(
たから
)
多
(
おほ
)
ければ則ち
其志
(
そのこゝろざし
)
を
損
(
そん
)
じ
愚
(
ぐ
)
にして
財
(
たから
)
多
(
おほ
)
ければ則ち
其過
(
そのあやま
)
ちを
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
病漸次に
癒
(
い
)
へ
来
(
きた
)
り以後
常
(
つね
)
に
強健
(
けうけん
)
なりき、人夫等皆之を
奇
(
き
)
とし恐喜
措
(
お
)
く
所
(
ところ
)
を知らざるが如し、昨朝
帰途
(
きと
)
に
就
(
つ
)
きし三人の行者
参
(
まゐ
)
りをして
若
(
も
)
し
在
(
あ
)
らしめば、其
喜
(
よろこ
)
び果して
如何
(
いか
)
なりしか、
思
(
おも
)
へば
愚
(
ぐ
)
の
至
(
いた
)
りなり
利根水源探検紀行
(新字旧仮名)
/
渡辺千吉郎
(著)
「極
愚
(
ぐ
)
な話で、到底お聞せ申されるやうな者ではないのです。又自分もこの事は
他
(
ひと
)
には語るまい、と堅く誓つてゐるのでありますから、どうも申上げられません。
究竟
(
つまり
)
或事に就いて或者に欺かれたのでございます」
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
愚
(
ぐ
)
の
骨頂
(
こつちよう
)
といはなければならぬ。
地震の話
(旧字旧仮名)
/
今村明恒
(著)
愚
(
ぐ
)
に耐えよと窓を暗くす竹の雪
郷愁の詩人 与謝蕪村
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
一代身上を築いた嘉兵衛は意志の権化のような
剛毅
(
ごうき
)
な男ですが、今晩はすっかり
愚
(
ぐ
)
に返って、ともすれば湧く涙を拭うばかりです。
銭形平次捕物控:079 十七の娘
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
汽車に乗るんだなと思いながら、いくら金を払うものか、また金を払う必要があるものか、とんと思い至らなかったのは
愚
(
ぐ
)
の
至
(
いたり
)
である。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
繁華な
市中
(
しちゅう
)
からも
日本晴
(
にほんばれ
)
の青空遠く富士山を望み得たという昔の眺望の幾分を保存させたであろうと
愚
(
ぐ
)
にもつかぬ事を考え出す。
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
それを聞いて、関羽は、この母親の胸を問うなど
愚
(
ぐ
)
であることを知った。張飛も共に、頭を下げて、「ありがとうござる」と、心服した。
三国志:02 桃園の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
私は私の
愚
(
ぐ
)
を
嗤笑
(
しせう
)
すべき
賢達
(
けんたつ
)
の士のあるのを心得てゐる。が、私自身と
雖
(
いへど
)
も私の愚を笑ふ点にかけては
敢
(
あへ
)
て人後に落ちようとは思つてゐない。
澄江堂雑記
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
“愚”の意味
《名詞》
(グ)おろかなこと。ばかなこと。
《代名詞》
(グ)自分の謙称。
(出典:Wiktionary)
愚
常用漢字
中学
部首:⼼
13画
“愚”を含む語句
愚痴
愚鈍
愚人
頑愚
愚昧
迂愚
愚物
愚者
愚圖
愚僧
愚父
愚哉
拾遺愚草
愚弄
愚図愚図
愚図
愚図々々
愚癡
痴愚
愚直
...