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執
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と
ふりがな文庫
“
執
(
と
)” の例文
顔の
※
(
あか
)
い男は盛相の
蓋
(
ふた
)
に
玄米
(
げんまい
)
で
焚
(
た
)
いてあるぐたぐたの飯を分け、
起
(
た
)
って
熊笹
(
くまざさ
)
の葉を二三枚
執
(
と
)
って来てそれにのっけて僧の前にだした。
岩魚の怪
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
僧は上り
框
(
かまち
)
に腰かけて、何の恥らう様子も無く、悪びれた態度もなく、大声をあげて食前の誦文を唱え、それから悠々と
箸
(
はし
)
を
執
(
と
)
った。
とと屋禅譚
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
第一おれが田中君の紹介の労を
執
(
と
)
っている間に、お君さんはいつか立上って、障子を開けた窓の外の寒い月夜を眺めているのだから。
葱
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
仮色
(
こわいろ
)
を船で流して来た。榊は正太の膝を枕にして、互に手を
執
(
と
)
りながら、訴えるような男や女の作り声を聞いた。三吉も横に成った。
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
筆を
執
(
と
)
って書いていても、
魏叔子
(
ぎしゅくし
)
の
大鉄椎
(
だいてっつい
)
の
伝
(
でん
)
にある
曠野
(
こうや
)
の
景色
(
けいしょく
)
が眼の前に浮んでくる。けれども歩いている途中は実に苦しかった。
満韓ところどころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
▼ もっと見る
第一、こうして
飽
(
あ
)
くまでも床の間を背に、玄蕃に刀を
執
(
と
)
らせないように用心を払う訳もないし、何より、身体に
隙
(
すき
)
があるはずである。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
大人連中は差当り子供の圧迫を遁れて自由行動を
執
(
と
)
るに異存もなく、僕達も久しぶりで若いもの同志の世界に戻るのを嬉しく思った。
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
そうすると全身の細胞に含まれている色んな意識が、お互い同志に連絡を
喪
(
うしな
)
って、めいめい勝手な自由行動を
執
(
と
)
りはじめる事になる。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
竹中半兵衛を迎えると共に、彼は、自分も半兵衛に入門の礼を
執
(
と
)
り、講舎を建て、一藩の軍学師範と仰いで、家中の教育を一任した。
新書太閤記:03 第三分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
これは第三者の判決を
竢
(
ま
)
たなければならぬが、歴史家が筆を
執
(
と
)
ったならば、露帝が破ったのであると見はしないかと思う(拍手)。
平和事業の将来
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
その
苛責
(
かしゃく
)
が終わったのちに、道人は三人に筆と紙とをあたえて服罪の
口供
(
こうきょう
)
を書かせ、更に大きい筆を
執
(
と
)
ってみずからその判決を書いた。
世界怪談名作集:18 牡丹灯記
(新字新仮名)
/
瞿佑
(著)
その火焔に向って交互に話し掛けるような形式を
執
(
と
)
るならば、諸君は、低能のマダムと三時間話し合っても、疲れる事は無いであろう。
乞食学生
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
小賊
(
せいぞく
)
肯
(
き
)
かずして、
則
(
すなは
)
ち
刀
(
かたな
)
を
執
(
と
)
つて
其
(
そ
)
の
指
(
ゆび
)
を
切
(
き
)
つて
珠
(
たま
)
を
盜
(
ぬす
)
むや、
指
(
ゆび
)
より
紅
(
くれなゐ
)
の
血
(
ち
)
衝
(
つ
)
と
絲
(
いと
)
の
如
(
ごと
)
く
迸
(
ほとばし
)
りぬ。
頭領
(
とうりやう
)
面
(
おもて
)
を
背
(
そむ
)
けて
曰
(
いは
)
く、
於戲痛哉
(
あゝいたましいかな
)
。
唐模様
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
われわれの文学者になれないのは筆が
執
(
と
)
れないからなれないのではない、われわれに漢文が書けないから文学者になれないのでもない。
後世への最大遺物
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
「これが人道を叫び紳士を
標榜
(
ひょうぼう
)
する英国が、印度で
執
(
と
)
る
常套
(
じょうとう
)
手段です。英国人にとっては印度人の命ほど安いものはありますまい」
ナリン殿下への回想
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
尚侍の公務を自宅で不都合なく
執
(
と
)
ることにして、玉鬘はもう宮中へ出ることはないだろうと見られた。それでもよいことであった。
源氏物語:31 真木柱
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
むかしペリクレエスの世には、この石柱の負へる穹窿の下に、笑ひさゞめく希臘の民往來したりき。そは美の祭を
執
(
と
)
り行へるなり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
先ず
庖丁
(
ほうちょう
)
を
執
(
と
)
って背の方の首の処をちょいと
截
(
き
)
りまして中へ指を入れて鶏の
前胃
(
ぜんい
)
を
抽出
(
ひきだ
)
しました。あの通りスルスルと楽に出ます。
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
『古今集』にはまた
大歌所
(
おおうたどころ
)
の
執
(
と
)
り
物
(
もの
)
の歌としてあって、山人の手に持つ
榊
(
さかき
)
の枝に、何か信仰上の意味がありそうに見えるのであります。
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
この法王まではいわゆる宗教ばかりの法王であって少しも政治を
執
(
と
)
らなかった。それは政治を執るにも自分の領分がなかったからです。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
筆を
執
(
と
)
るものは眼前の華やかな仕事にのみ心を奪われて、東京その他の大都会以外にも多数の人々が住んでいることを忘れてはならない。
雪の一日
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
この不安は次第に銃を
執
(
と
)
って立っている兵卒に波及した。姿勢は
悉
(
ことごと
)
く崩れ、手を振り動かして何事かささやき合うようになった。
堺事件
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
「わア!」僕は飛鳥の
如
(
ごと
)
く、動力機関の前までのがれた。僕は、もはやこれまでとおもって、その場にあったハンマーを
執
(
と
)
ると
怪奇人造島
(新字新仮名)
/
寺島柾史
(著)
これを見るとお側に居りました川添富彌、山田金吾も驚きましたが、御側小姓の外村惣江が次の間に至り、一刀を
執
(
と
)
って立上り
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「さあ、
飯
(
おまんま
)
出來
(
でき
)
たぞ」
勘次
(
かんじ
)
は
釜
(
かま
)
から
茶碗
(
ちやわん
)
へ
飯
(
めし
)
を
移
(
うつ
)
す。さうして
自分
(
じぶん
)
で
農具
(
のうぐ
)
を
執
(
と
)
つておつぎへ
持
(
も
)
たせてそれからさつさと
連
(
つ
)
れ
出
(
だ
)
すのである。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
ところが鯉坂君の懐疑的態度は、実験の結果そのものに対して
執
(
と
)
られるのでなくて、彼はまったく妙なところに疑いをいだくのであります。
新案探偵法
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
二室
(
ふたしつ
)
を打抜いた広間には、一列にデスクが並んで、十数名の男女が事務を
執
(
と
)
っている。北川は、その一方の
隅
(
すみ
)
のタイピスト達の席を眺めた。
五階の窓:01 合作の一(発端)
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
部長の下に事務官、書記があって、それぞれの事務を
執
(
と
)
っている。事務局の局員総数は四十ヶ国、四百七十人より成っている。
国際聯盟とは如何なものか
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
私は自分のやたらインキを
滲
(
にじ
)
ませている金釘流が恥ずかしくてならなかった。居士は自分でペンを
執
(
と
)
ってさらさら書き流した。
西隣塾記
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
或る朝は
偏頭痛
(
へんとうつう
)
を感じて
筆
(
ふで
)
を
執
(
と
)
る氣力もなく、
苛苛
(
いらいら
)
しい時を過した。それ等は私にとつては恐らく一生忘れ
難
(
がた
)
い
處
(
ところ
)
の、産みの苦しみだつた。
処女作の思い出
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
俊雄は
執
(
と
)
らえこれではなお済むまいと恋は追い追い下へ落ちてついにふたりが水と魚との
交
(
なか
)
を隔て脈ある間はどちらからも血を
かくれんぼ
(新字新仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
〔譯〕身に
老少
(
らうせう
)
有りて、心に老少無し。氣に老少有りて、理に老少無し。須らく能く老少無きの心を
執
(
と
)
つて、以て老少無きの理を
體
(
たい
)
すべし。
南洲手抄言志録:03 南洲手抄言志録
(旧字旧仮名)
/
秋月種樹
、
佐藤一斎
(著)
併
(
しか
)
し病弱であればこそ、そうやって筆も
執
(
と
)
られるので、そうでなかったら勅任教授か何かで、大学あたりの教壇で
干涸
(
ひか
)
らびて
了
(
しま
)
うに相違ない。
日本探偵小説界寸評
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
(絵になら、まだしも
画
(
か
)
けようが。)それは、煙をその形のままに手で
執
(
と
)
らえようとするにも似た愚かさであると、一般に信じられておった。
悟浄出世
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
当時
具志川
(
ぐしかわ
)
王子
尚亨
(
しょうきょう
)
という賢相があって政治を
執
(
と
)
っていましたが、よほどの道徳家で時の人はこれを聖人と称えていました。
琉球史の趨勢
(新字新仮名)
/
伊波普猷
(著)
隧道
(
トンネル
)
に入って不思議に電灯が点かなかったこと、そこへ今の
惨事
(
さんじ
)
が発生したこと、これだけあれば車掌たちの
執
(
と
)
るべき手段は
至極
(
しごく
)
明瞭
(
めいりょう
)
だった。
キド効果
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
唯一人杉山ばかり自分と一緒に其志を固く
執
(
と
)
つて、翌年の四月陸軍幼年学校の試験に応じたが自分は体格で不合格、杉山は
亦
(
また
)
学科で失敗して
重右衛門の最後
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
或る日滋幹の手を
執
(
と
)
って、父の部屋の前まで引っ張って行き、さあ、と、障子を開けて無理に中へ押し込んだことがあった。
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
絶対に足洗いを許さぬ方針を
執
(
と
)
り、他地方に於いてもこれに倣って、だんだん階級観念が盛んになるとともに、またエタの人口の増殖とともに
遠州地方の足洗
(新字新仮名)
/
喜田貞吉
(著)
葬儀万端いとも盛大に
執
(
と
)
り行われて、さてこの後誰が一体鈴子未亡人の世話をするだろうということが問題になりました。
奇談クラブ〔戦後版〕:08 音盤の詭計
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
然し私が記念の意味で、十何年来手にしたことのない毛筆を
執
(
と
)
り、空白の扉に署名してやると、佐川二等兵の喜びかたはたいしたものであった。
指導物語:或る国鉄機関士の述懐
(新字新仮名)
/
上田広
(著)
「露西亜との軍費を
捲
(
ま
)
き上げて、之を菊三郎への軍費に流用する所、好個の外務大臣だ」
誠
(
まこと
)
や筆を
執
(
と
)
つては
鷺
(
さぎ
)
を烏となし
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
そうそう
私
(
わたくし
)
が
現世
(
げんせ
)
の
見納
(
みおさ
)
めに
若月
(
わかつき
)
を
庭前
(
にわさき
)
へ
曳
(
ひ
)
かせた
時
(
とき
)
、その
手綱
(
たづな
)
を
執
(
と
)
っていたのも、
矢張
(
やは
)
りこの
老人
(
ろうじん
)
なのでございました。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
卒然
(
いきなり
)
手を
執
(
と
)
って引寄せると、お糸さんは
引寄
(
ひきよせ
)
られる儘に、私の着ている夜着の上に
凭
(
もた
)
れ懸って、「
如何
(
どう
)
するのさ?」と
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
私は一例を
高麗焼
(
こうらいやき
)
に
執
(
と
)
りましょう。高麗焼は
官窯
(
かんよう
)
であって、貴族的な品物の
中
(
うち
)
最も美しいものの一つを代表します。何がそれを美しくさせているか。
民芸とは何か
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
婦燭を
執
(
と
)
りて
窟壁
(
いわ
)
の
其処此処
(
そこここ
)
を示し、これは蓮花の岩なり、これは無明の滝、乳房の岩なりなどと
所以
(
いわれ
)
なき名を告ぐ。
知々夫紀行
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
五
百石
(
ひやくこく
)
でも
別當
(
べつたう
)
はこの
土地
(
とち
)
の
領主
(
りやうしゆ
)
で、
御前
(
ごぜん
)
と
呼
(
よ
)
ばれてゐた。
其
(
そ
)
の
下
(
した
)
に
代官
(
だいくわん
)
があつて、
領所
(
りやうしよ
)
三ヶ
村
(
そん
)
の
政治
(
せいぢ
)
を
執
(
と
)
つてゐた。
死刑
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
僕は名状しがたい
嬉
(
うれ
)
しさに
雀躍
(
こおど
)
りしながら、壁飾りに掛けてあるアメリカ・インデアンの鳥の羽根のついた冠りを
執
(
と
)
り、インデアン・ガウンを羽織って
吊籠と月光と
(新字新仮名)
/
牧野信一
(著)
前者にありては、霊媒はペン又は鉛筆を
執
(
と
)
るか、若くは片手をプランセットに載せるかすると、通信が本人の意識的介在なしに書き綴られるのである。
霊訓
(新字新仮名)
/
ウィリアム・ステイントン・モーゼス
(著)
笞
(
むちう
)
たしむること日ごとに十杖、もって十日に及んだが、なお固く
執
(
と
)
って動かなかったので、さすがの太守も呆れ果てて、終にこれを放免してしまった。
法窓夜話:02 法窓夜話
(新字新仮名)
/
穂積陳重
(著)
執
常用漢字
中学
部首:⼟
11画
“執”を含む語句
執拗
執着
執念
執行
偏執狂
妄執
執心
執念深
偏執
執著
執事
執成
執政
執金剛神
我執
固執
確執
愛執
御執心
執達吏
...