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哀
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あわ
ふりがな文庫
“
哀
(
あわ
)” の例文
その
晩
(
ばん
)
の
月
(
つき
)
は、
明
(
あか
)
るかったのです。そして、
地虫
(
じむし
)
は、さながら、
春
(
はる
)
の
夜
(
よ
)
を
思
(
おも
)
わせるように
哀
(
あわ
)
れっぽい
調子
(
ちょうし
)
で、
唄
(
うた
)
をうたっていました。
冬のちょう
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
角海老
(
かどゑび
)
が
時計
(
とけい
)
の
響
(
ひゞき
)
きもそゞろ
哀
(
あわ
)
れの
音
(
ね
)
を
傳
(
つた
)
へるやうに
成
(
な
)
れば、四
季
(
き
)
絶間
(
たえま
)
なき
日暮里
(
につぽり
)
の
火
(
ひ
)
の
光
(
ひか
)
りも
彼
(
あ
)
れが
人
(
ひと
)
を
燒
(
や
)
く
烟
(
けぶ
)
りかとうら
悲
(
かな
)
しく
たけくらべ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
院長
(
いんちょう
)
は
不覚
(
そぞろ
)
に
哀
(
あわ
)
れにも、また
不気味
(
ぶきみ
)
にも
感
(
かん
)
じて、
猶太人
(
ジウ
)
の
後
(
あと
)
に
尾
(
つ
)
いて、その
禿頭
(
はげあたま
)
だの、
足
(
あし
)
の
踝
(
くるぶし
)
などを
眴
(
みまわ
)
しながら、
別室
(
べっしつ
)
まで
行
(
い
)
った。
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
日本一太郎は、どっちかというとおしゃべり屋のほうなので、それがときおりこうしてふっと黙りこむと、ことさら
哀
(
あわ
)
れに見えるのだ。
巷説享保図絵
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
ここに
哀
(
あわ
)
れを
止
(
とど
)
めたのは、密航者の
佐々砲弾
(
さっさほうだん
)
だった。
折角
(
せっかく
)
ここまでついて来たものの、艇長は彼が上陸することを許さなかった。
月世界探険記
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
▼ もっと見る
暗い
憂欝
(
ゆううつ
)
はかれの心を
閉
(
と
)
ざした。かれは自分の影法師がいかにも
哀
(
あわ
)
れに細長く垣根に屈折しているのを見ながらため息をはいた。
ああ玉杯に花うけて
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
船室に置いておいたら、いつの間にか
誰
(
だれ
)
か食ってしまい、ぼくには、そんな
空
(
むな
)
しい
贈
(
おく
)
り物をする、だぼはぜ嬢さんが
哀
(
あわ
)
れだった。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
社会主義者みたいな、長い頭髪と、
賢
(
かしこ
)
そうな、小さいがよく
冴
(
さ
)
えた眼の川村が、急に、小さく小さく
哀
(
あわ
)
れっぽくなったように思われて来た。
眼
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
見るのが
厭
(
いや
)
であったというけだし盲人が笑う時は間が抜けて
哀
(
あわ
)
れに見える佐助の感情ではそれが
堪
(
た
)
えられなかったのであろう〕
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
そしてこんな
有様
(
ありさま
)
はそれから
毎日
(
まいにち
)
続
(
つづ
)
いたばかりでなく、
日
(
ひ
)
に
増
(
ま
)
しそれがひどくなるのでした。
兄弟
(
きょうだい
)
までこの
哀
(
あわ
)
れな
子家鴨
(
こあひる
)
に
無慈悲
(
むじひ
)
に
辛
(
つら
)
く
当
(
あた
)
って
醜い家鴨の子
(新字新仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
命はそれから坂の頂上へおあがりになり、そこから東の海をおながめになって、あの
哀
(
あわ
)
れな
橘媛
(
たちばなひめ
)
のことを、つくづくとお思いかえしになりながら
古事記物語
(新字新仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
いわんや普通の
素人
(
しろうと
)
は病人の食物に対して
平生
(
へいぜい
)
何の用意もなし、お
粥
(
かゆ
)
や
重湯
(
おもゆ
)
に責めらるる今の世の病人こそ
哀
(
あわ
)
れなれ。
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
けれども、今から
想像
(
そうぞう
)
される
孫
(
まご
)
の
光栄
(
こうえい
)
に一しょに加わりたいというその
願
(
ねが
)
いは、ごくつつましい
哀
(
あわ
)
れなものだった。
ジャン・クリストフ
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
ドヴォルシャークの音楽は、古典的な形式美と、ロマンティックな優しい心情とのよき結合であり、一つ一つを支配する気分は「ものの
哀
(
あわ
)
れ」である。
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
人もほんとうに
哀
(
あわ
)
れなものです。私は全論士にも少し深く上調子でなしに世界をごらんになることを望みます。
ビジテリアン大祭
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
哀
(
あわ
)
れなる祖母よ、あなたはただ叔父の安全弁として連れて来られたのです。叔父は、あなた方が私と叔父とをくッつけることに反対なのを知っていました。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
そのせいか、小さい躯は
皺
(
しわ
)
だらけで、痩せた
握
(
にぎ
)
りこぶしをふりあげている
恰好
(
かっこう
)
は
哀
(
あわ
)
れで見ていられなかった。
河沙魚
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
地方の方言ではメグイとメンコイとムゴイ、またはムゾイとムジョケナイとムゾヤとが、ともに一つ言葉からの分化で、恋と
哀
(
あわ
)
れみとの両方を包括している。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
鷹
(
たか
)
だの
狼
(
おおかみ
)
だの
獺
(
かわうそ
)
だのの
霊
(
れい
)
が
哀
(
あわ
)
れなシャクにのり移って、不思議な言葉を
吐
(
は
)
かせるということである。
狐憑
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
なにとぞご利益をもって
哀
(
あわ
)
れなる二十六歳の女の子宮癌を救いたまえと、あらぬことを口走りながらお百度を
踏
(
ふ
)
んだ帰り、
参詣道
(
さんけいどう
)
で
灸
(
きゅう
)
のもぐさを買って来るのだった。
競馬
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
僕は
往生際
(
おうじょうぎわ
)
の好いのに感心して
聊
(
いささ
)
か物の
哀
(
あわ
)
れを催したが、矢っ張り此方は若いってことが後から分った。君、大友は辞令が出ると直ぐに○○中学校の校長になったんだよ
首切り問答
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
永い年月の衣料の不足は、
質素
(
しっそ
)
な岬の子どもらのうえにいっそう
哀
(
あわ
)
れにあらわれていて、
若布
(
わかめ
)
のようにさけたパンツをはき、そのすきまから
皮膚
(
ひふ
)
の見える男の子もいた。
二十四の瞳
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
さらに
哀
(
あわ
)
れをとどめたのは——
大勢
(
おおぜい
)
の客を呼びあつめ
足駄
(
あしだ
)
ばきで三
方
(
ぼう
)
にのっていた
歯磨
(
はみが
)
き売りの若い男、
居合
(
いあい
)
の刀を持っていたところから、一も二もなく目がけられて
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
睡蓮
(
すいれん
)
は本当に
可憐
(
かれん
)
な花です。孤独の淋しさを悩む無口な少女のように
哀
(
あわ
)
れっぽい花です。
季節の植物帳
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
いかにも
可憐
(
かれん
)
な歌で非常におもしろい。矢野の清らかな人品がよく現われている。ただなんとなくひ弱くはかなげなるは、どうしても病を持てる人のものと思われて
哀
(
あわ
)
れが深い。
廃める
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
今となって
物
(
もの
)
の
哀
(
あわ
)
れに動かされると、竜之助も人が恋しくなる、眼が
冴
(
さ
)
えて眠れない。
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
『そのような
哀
(
あわ
)
れな話、して下さるな。そのようなこと、決してないのです』と夫人が言うに対しても、『心からの話、
真面目
(
まじめ
)
のことです』と言い、『仕方ない!』と死を
覚悟
(
かくご
)
していた。
小泉八雲の家庭生活:室生犀星と佐藤春夫の二詩友を偲びつつ
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
その
傀儡
(
かいらい
)
であることを知らないで無心で動いている童女のようにも真佐子が感ぜられるし、真佐子を考えるとき、
哀
(
あわ
)
れさそのものになって、男性としての彼は、じっとしていられない気がした。
金魚撩乱
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
幽霊のように
哀
(
あわ
)
れな姿をした
彼女
(
かのおんな
)
を伴れて戻った模様が述べてあった。
思い出す事など
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「
哀
(
あわ
)
れっぽい声を出したって
駄目
(
だめ
)
だよ。また君、
金
(
かね
)
のことだろう?」
海のほとり
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
本職の漁師みたいな姿になってしまって、まことに
哀
(
あわ
)
れなものであります。が、それはまたそれで丁度そういう
調子合
(
ちょうしあい
)
のことの好きな
磊落
(
らいらく
)
な人が、ボラ釣は
豪爽
(
ごうそう
)
で好いなどと賞美する釣であります。
幻談
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
初鹿野
(
はじかの
)
で汽車を下りて、駅前の
哀
(
あわ
)
れな宿屋に二晩泊ったが、折あしく雨が続くのでそこを去った。そしてその夕、甲府を経て
右左口
(
うばぐち
)
にゆく途中で、乱雲の間から北岳の一角を見て胸の透くのを覚えた。
白峰の麓
(新字新仮名)
/
大下藤次郎
(著)
御行 いけない?………(調子を変えて、今度は
妙
(
みょう
)
に
哀
(
あわ
)
れっぽく)
なよたけ
(新字新仮名)
/
加藤道夫
(著)
今また四百歳の後、姿をここに現ず、
哀
(
あわ
)
れむべし、
汝
(
なんじ
)
ハビアン。
ハビアン説法
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
振られどおしの
哀
(
あわ
)
れな男でも無いつもりでいる。
チャンス
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
「
坊
(
ぼっ
)
ちゃんのお
母
(
かあ
)
さんは、
遠
(
とお
)
いところへいってしまわれたのですよ。」と、
哀
(
あわ
)
れな
子供
(
こども
)
に、
説
(
と
)
いて
聞
(
き
)
かせなければならなかったのです。
遠方の母
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
人間もひとりで豪がっていると、今に思いがけなくこの
哀
(
あわ
)
れな蟻のような愕きにあうことでしょう。みなさん、分りましたか
○○獣
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
哀
(
あわ
)
れ文子は四苦八苦の死地に
陥
(
おちい
)
った、かの女は去るにも去られなくなった。と階段の音が聞こえてひとりの学生が現われた。
ああ玉杯に花うけて
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
あたりがすっかり
静
(
しず
)
まりきったのは、もうその
日
(
ひ
)
もだいぶん
晩
(
おそ
)
くなってからでしたが、そうなってもまだ
哀
(
あわ
)
れな
子家鴨
(
こあひる
)
は
動
(
うご
)
こうとしませんでした。
醜い家鴨の子
(新字新仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
茶屋
(
ちやゝ
)
が
裏
(
うら
)
ゆく
土手下
(
どてした
)
の
細道
(
ほそみち
)
に
落
(
おち
)
かゝるやうな三
味
(
み
)
の
音
(
ね
)
を
仰
(
あほ
)
いで
聞
(
き
)
けば、
仲之町藝者
(
なかのてうげいしや
)
が
冴
(
さ
)
えたる
腕
(
うで
)
に、
君
(
きみ
)
が
情
(
なさけ
)
の
假寐
(
かりね
)
の
床
(
とこ
)
にと
何
(
なに
)
ならぬ一ふし
哀
(
あわ
)
れも
深
(
ふか
)
く
たけくらべ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
蚊は「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。」と
哀
(
あわ
)
れな声で泣きましたが、蜘蛛は物も云わずに頭から羽からあしまで、みんな食ってしまいました。
蜘蛛となめくじと狸
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
けれど、それにもかかわらず、私は、祖父母の下に育てられているたみちゃんを何となく
哀
(
あわ
)
れに思った。たみちゃんの寂しそうな顔もそのためだろうとさえ考えた。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
「ワルツ=嬰ハ短調=作品六四の二」に描かれた満たされざる愛の悲しみは、四幕十場のグランド・オペラといえども尽し得なかった優しくも
哀
(
あわ
)
れ深き境地である。
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
哀
(
あわ
)
れな女気の毒な女としての春琴を考えることが出来なかったと云う
畢竟
(
ひっきょう
)
めしいの佐助は現実に眼を
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
そんな母親を蝶子はみっともないとも
哀
(
あわ
)
れとも思った。それで、母親を
欺
(
だま
)
して買食いの金をせしめたり、天婦羅の売上箱から小銭を
盗
(
ぬす
)
んだりして来たことが、ちょっと
後悔
(
こうかい
)
された。
夫婦善哉
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
素直に答えられて兄の中川はかえっていみじく
哀
(
あわ
)
れに感ぜり
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
「おまえがめくらになんぞなって、もどってくるから、みんなが
哀
(
あわ
)
れがって、見えないおまえの目に気がねしとるんだぞ、ソンキ。そんなことにおまえ、まけたらいかんぞ、ソンキ。めくらめくらといわれても、平気の平ざでおられるようになれえよ、ソンキ」
二十四の瞳
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
けれど、この
晩
(
ばん
)
は
雪
(
ゆき
)
が
降
(
ふ
)
っていましたから、いかにもその
中
(
なか
)
をこうして
呼
(
よ
)
んで
歩
(
ある
)
いている
子供
(
こども
)
の
声
(
こえ
)
が
哀
(
あわ
)
れに
聞
(
き
)
こえたのであります。
金銀小判
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
だが
哀
(
あわ
)
れなるたい焼き屋! 一時間のうちに数十のたいが飛ぶがごとく売れるような結構な場所はほかにあるべくもない。
ああ玉杯に花うけて
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
ぜひともこの醤を
哀
(
あわ
)
れと
思召
(
おぼしめ
)
し……その代り、お礼の方はうんときばり、博士のお好みのものなれば、ウィスキーであろうとペパミントであろうと……
毒瓦斯発明官:――金博士シリーズ・5――
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
“哀”の意味
《名詞》
哀(あい)
なげくこと。かなしむこと。あわれむこと。
(出典:Wiktionary)
哀
常用漢字
中学
部首:⼝
9画
“哀”を含む語句
悲哀
可哀
物哀
哀傷
可哀想
哀憐
哀愁
可哀相
哀哭
哀悼
哀願
哀情
哀求
哀歌
哀訴
哀号
哀婉
哀惜
哀切
哀感
...