博士はかせ)” の例文
例の潜水艦の秘密事件だの、幽霊殺人事件だの、それからつい最近に解決したばかりの、あのメトラス博士はかせ一味の骸骨島の事件だの。
謎の頸飾事件 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
写真班しやしんはん英雄えいゆうは、すなはちこの三岐みつまたで一自動車じどうしや飛下とびおりて、林間りんかんてふ逍遥せうえうする博士はかせむかふるために、せて後戻あともどりをしたところである。——
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
月野博士はかせはロウエル教授けうじゆおなかんがへで 火星くわせいは水がすくない そこで運河うんがへは火星じんが大仕掛じかけ給水きふすゐポンプで水をくばるといふのぢや
二人ふたりの間の挨拶あいさつはそれなりで途切れてしまったので、田川博士はかせはおもむろに事務長に向かってし続けていた話の糸目をつなごうとした。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
じつ博士はかせをわざ/\ろうするまでもかつたので、これは古代こだい葬坑さうかうで、横穴よこあな通稱つうしようするもの。調しらべたら全國ぜんこくいたところるかもれぬ。
その翌日よくじつのことです。博士はかせ研究室けんきゅうしつかけて、旅行先りょこうさきあつめてきたいろいろの材料ざいりょうを、よくしらべて、配列はいれつするのをたのしみとしました。
うずめられた鏡 (新字新仮名) / 小川未明(著)
学問などはちょっとした博士はかせなどは恥ずかしいほどのもので、私なんかは学問のことなどでは、前で口がきけるものじゃありませんでした。
源氏物語:02 帚木 (新字新仮名) / 紫式部(著)
彼女の患部にメスをふるった博士はかせがまず彼の興味を刺戟したが、その他にも踊りの師匠の愛人、それから例の雑誌記者などにも疑惑は動いた。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
博士はかせは小さくったみどりいろの紙をジョバンニのポケットに入れました。そしてもうそのかたちは天気輪てんきりんはしらこうに見えなくなっていました。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
明日にも宮と一処になつて、私たちを安心さしてくれるよりは、お前も私ももすこしのところを辛抱して、いつその事博士はかせになつて喜ばしてくれんか
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
當時とうじ東京帝國大學とうきようていこくだいがく理學部りがくぶける機械工學きかいこうがくおよ物理學ぶつりがく教授きようじゆであつたユーイング博士はかせ現今げんこんエヂンバラ大學だいがく總長そうちよう)は水平振子地震計すいへいしんしぢしんけい發明はつめいおほやけにし
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
紳士が事務所の中へ消えてしまってから、そこの金看板きんかんばんを見ると、目羅めら眼科、医学博士はかせ目羅聊齋りょうさいしるしてありました。
目羅博士の不思議な犯罪 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
博士はかせは彼がこう言った時、「その話はおよしなさい」と注意をした。なんでも博士の話によれば、彼はこの話を
河童 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
帝崩御後十数年にして制定せられた大宝令によると、大学の学生は定員四百三十人で、博士はかせは七人、助教は二人、その他に大学頭だいがくのかみ以下五人の役人がある。
古寺巡礼 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
あんな丈夫な老人がと一応は疑いましたが、主治医の北村万平博士はかせが、肝臓の特殊の病気と診断を下したのですから、これは少しの疑いようもありません。
橋本が博士はかせになったり、ならなかったりした話がある。大連の大和やまとホテルにいる時分、満鉄から封書が届いた。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「違つてよ。」となかから突走つつぱしつた声が聞えた。「トオマス博士はかせだつたら、『Itイテ isイス meミイ』なんて仰有おつしやらずに、『Itイテ isイス Iアイ』と仰有つてよ。」
作りごとじゃ御座いまっせん。この理窟ばっかりは大学の博士はかせさんでもわからん。ヘエ。西洋の小説にもそのような話がある……墓の下から生上いきあがった……ヘエ。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
一三なすままにおほし立てて、一四博士はかせにもなれかし、一五法師にもなれかし、一六命のかぎりは太郎が一七ほだし物にてあらせんとて、ひて一八おきてをもせざりけり。
ツルガ博士はかせ。これは熱心な考古学者であった。しかし貧乏な人で、パリの一隅いちぐうに研究室を持っていた。
恐竜島 (新字新仮名) / 海野十三(著)
いなかでは思う存分ぞんぶんの修行ができぬので、かれはロンドンへでて、当時外科医として、第一人者に数えられていたジョン・ハンター博士はかせのもとに弟子入りをしました。
ジェンナー伝 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
ず当今のところでは誰方どなたでも之には御賛成遊ばすだろうと存じますが、てこゝでございます、お客様方も御承知で居らせられる幽霊博士はかせ……では恐れ入りまするが
綿貫わたぬき博士はかせがそばで皮肉を言わないだけがまだしも、先生がいると問答がことさらにこみ入る。
号外 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
お針の亭主が縫殿頭ぬひのかみ山井庸仙やまゐようせん老が典薬頭、売卜の岩洲友当いはずともあて陰陽おんやう博士はかせになるといふ騒ぎ、たゞ暦日博士だけにはなれる者が無かつたと、京童きやうわらべが云つたらしい珍談が残つてゐる。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
僕は折折をりをりスルボン大学をのぞきにくが、東京の帝国大学の講師をして居た事のある、して神道しんだうに関する書物を去年巴里パリイで著したルボンと云ふ博士はかせが日本の神話と文学史とを講じて居る。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
ある時はわが大学に在りしことを聞知ききしりてか、学士がくし博士はかせなどいう人々三文さんもんあたいなしということしたりがおべんじぬ。さすがにことわりなきにもあらねど、これにてわれをきづつけんとおもうはそもまよいならずや。
みちの記 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
とある人情博士はかせはのたまいける。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
なつかしき博士はかせ夫人
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
黒き珊瑚、小形なる椅子を用いる。おなじ小形の椅子に、向って正面に一人、ほぼ唐代の儒の服装したる、ひげ黒き一にんあり。博士はかせなり。
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「たしかにそうだよ。んでから、地下ちか二人ふたりは、永久えいきゅう幸福こうふくをもとめて、約束やくそくをはたしたんだね。」と、博士はかせこたえました。
うずめられた鏡 (新字新仮名) / 小川未明(著)
たちま全山ぜんざん高等野次馬かうとうやじうまは、われおくれじと馳付はせつけてると、博士はかせわらひながら、古靴ふるぐつ片足かたあしを、洋杖すてつきさきけてしめされた。
たといついたにしても、病人が好い博士はかせの診断をおそれるように、彼はできるだけその感情から逃避するよりほかなかった。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
すると博士はかせはジョバンニがあいさつに来たとでも思ったものですか、しばらくしげしげジョバンニを見ていましたが
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
春秋の読経どきょうの会以外にもいろいろと宗教に関した会を開いたり、現代にいれられないでいる博士はかせや学者を集めて詩を作ったり、いんふたぎをしたりして
源氏物語:10 榊 (新字新仮名) / 紫式部(著)
ともすると田川博士はかせまでが、夫人の存在を忘れたような振る舞いをする、そう夫人を思わせる事があるらしかった。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
ついで翌年よくねんには工學部大學校こうがくぶだいがつこう電氣學教授でんきがくきようじゆたりしグレー博士はかせ考案こうあん改良かいりようした上下動地震計じようげどうぢしんけいつくした。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
そこへ、やっと院長の医学博士はかせと看護婦とがやって来た。守は病人を二人に任せて置いて、急いで窓の所へ行って、ソッとガラス戸を上げ、闇の中を覗いて見た。
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
これらの人をつらねて、五〇貨殖伝くわしよくでんしるし侍るを、其のいふ所いやしとて、のちの博士はかせ筆を競うてそしるは、ふかくさとらざる人のことばなり。五一つねなりはひなきは恒の心なし。
衆徳しゅうとく備り給う処女おとめマリヤに御受胎ごじゅたいを告げに来た天使のことを、うまやの中の御降誕のことを、御降誕を告げる星を便りに乳香にゅうこう没薬もつやくささげに来た、かしこい東方の博士はかせたちのことを
おしの (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
伊藤豊治は九州大学の工科研究室に籍のある研究生で、恩師の鹿谷しかや弘吉博士はかせが、或る研究報告をするため上京した後を追って、その助手を勤めるために昨夜東京へ着いたのである。
亡霊ホテル (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「いくら冷血れいけつ博士はかせだって、こう毎晩続けて奥さんが遅くっちゃ、きっと感づくよ」
俘囚 (新字新仮名) / 海野十三(著)
こないだは あなたのお父さんと月野博士はかせひげのひつぱりつこをやりましたね
そうして、それが、ことごと博士はかせであった。代助はその顔を一々覚えていた。その又隣に、広い所をたった二人で専領しているものがあった。その一人は、兄と同じ位な年恰好かっこうで、正しい洋服を着ていた。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
博士はかせは静かに返事をした。
博士はかせ夫人のたまへる
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
博士はかせ旅行たびをしたあとに、交際つきあひぎらひで、籠勝こもりがちな、夫人ふじん留守るすしたいへは、まだよひも、實際じつさいつたなか所在ありかるゝ山家やまがごとき、窓明まどあかり
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そして、いくにちかののちでした。博士はかせ研究室けんきゅうしつまどから、しばらくのあいだなつらしくなった、そとのけしきにとれていました。
うずめられた鏡 (新字新仮名) / 小川未明(著)
殘念ざんねんながら、博士はかせ講演かうえん拜聽はいちやうするをなかつたので、博士はかせ瓢箪山ひやうたんやまおよ新發見しんはつけん横穴よこあなつひて、如何どういふせつ發表はつぺうされたか、らぬが
源氏の家でも始終詩会が催されなどして、博士はかせや文士の得意な時代が来たように見えた。何の道でも優秀な者の認められないのはないのが当代であった。
源氏物語:21 乙女 (新字新仮名) / 紫式部(著)
応接にいとまもなげな田川法学博士はかせの目じりの下がった顔と、その夫人のやせぎすな肩との描く微細な感情の表現を、批評家のような心で鋭くながめやっていた。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)