)” の例文
旧字:
「だって俊夫君、留吉は物を言うことさえできぬじゃないか? 年齢としは十五だそうだが、その知恵は三ツにも劣っているそうだよ」
白痴の知恵 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
生れて間もないらしい乳呑ちのを抱えていたが、外にもう一人、六つぐらいになる男の児が彼女のうしろに含羞はにかみながら食っ着いていた。
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
そうわれるおじいさんのおかおには、多年たねんがけたおしかたのついたのをこころからよろこぶとった、慈愛じあい安心あんしんいろただよってりました。
(ああ、ああ、弟のやつは、なんて大ばかなんだ。あれじゃ、一生いっしょうかかったって、ものになりゃしない。たましい百までっていうからなあ。)
「私は、この南村なんそんに住んでいる、鄭宰相のひとの宣揚と云う者でございますが、今日こんにち貴君あなたかたきを打ってもらいましたから、お礼にあがりました」
悪僧 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
名古屋へ進んで行く十数人の人影、いずれも女で黒ずくめ、闇の申しと云いたげである。ただし尋常な旅装い、もっとも歩き方がいささか異う。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
客人は、二十七八歳の、弱い側妻そばめを求めていた。向島の一隅の、しもたやの二階を借りて住まっていて、五歳のててなしとふたりきりのくらしである。
雌に就いて (新字新仮名) / 太宰治(著)
こうでもたしなめるように、しっかりした声で——しかし静かに叱っているのは、かの老母に間違いなく
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「みなしたちをお助けくださいまし! なくなったセミョーン・ザハールイチの饗応もてなしをおぼし召して!……貴族といってもいいくらいの!……ああ!」
僕が、あたまが重いので、散歩でもしようと玄関を出ると、向うから、車の上に乳飲ちのを抱いて妻がやって来た。顔のせが目に立って、色が真ッ青だ。
耽溺 (新字新仮名) / 岩野泡鳴(著)
母親は泣き立てる乳呑ちのを抱えて、お庄の明朝あしたの髪をったり、下の井戸端いどばた襁褓むつきを洗ったりした。雨の降る日は部屋でそれをさなければならなかった。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
彼は、夕暮れに、となった遅鈍な鶩を、剣をつけた銃で突き殺そうとした。そして、追っかけた。
武装せる市街 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
上野ではしのばず池のあの泥くさりの水でこなミルクをといてのみにのませた婦人さえありました。
大震火災記 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
みどりを、片袖かたそでで胸にいだいて、御顔おんかおを少し仰向あおむけに、吉祥果きっしょうかの枝を肩に振掛ふりかけ、もすそをひらりと、片足を軽く挙げて、——いいぐさはつたないが、まいなどしたまうさま
七宝の柱 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ニラの神さまが寄木よりきの神を誘うて、生まれの運と寿命をめにくるという語りもあれば、或いはまた海幸山幸うみさちやまさちと浦島とをつなぎ合わせたような沖永良部島の一話にも
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
エホバのいと、日の神の王子ホルスともたたうべき、地上最初の生命の群れに外ならなかったのだ。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
夕暮れには、赤い夕焼けの雲を望んで、弥勒の野に静かにおさ伴侶はんりょとしているさびしき、友の心を思うと書いてあった。弥勒野から都を望む心はいっそうせつであった。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
産み落した暁にお前の方で育てる事が出来なければおらア方で里に遣ってもえかくするが、それともお前の方で引取るとも、金を附けてわきへくれててゝなしにするのは不便ふびんだが
元来捨てだったのを、或る百姓に拾われて暫く育てられたが、また捨てられてしまった。
乞食 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
二人ふたりとも、あまりとしがいっていませんのに、もうなかはたらいて、まずしい一家いっかのために生活せいかつたすけをしなければならないのです。母親ははおやは、乳飲ちのいてやすんでいました。
ある夜の星たちの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ある時、あなたの子だと、名乗っているものがある、それが誠に美しい容貌ようぼうの男の子なので、誰しもそれを疑わずにその者のいう通り、あなたの隠しであるのかと信じている。
江木欣々女史 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
まきの言ふところによるとひろ子の店は、ひろ子の親の店には違ひないが、父母は早く歿ぼっし、みなしのひろ子のために、伯母おば夫婦が入つて来て、家の面倒をみてゐるのだつた。
蔦の門 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
江戸の児曹こどもが春の遊は、女繍毬てまり羽子擢はごつき、男紙鴟たこあげざるはなし。我国のこどもは春になりても前にいへるごとく地として雪ならざる処なければ、歩行ほかうくるしく路上みちなかに遊をなす事すくなし。
おゆうにほかに子供があったのではないかとさえ、きくのだ。お高は、すっかりその話に飽きてしまっていた。自分には兄弟も姉妹もないし、母に隠しがあったなどとは、想像もできない。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
野良猫のかく発見みつけたりするのは、大抵が床下で、もしか床下に何一つ落ちてないやうなうちがあつたなら、そこの祖先は落す程の物を持合はさなかつたので、こんな気の毒な事はない筈だ。
お繁と乳呑ちのの妹とは、こうして親たちに捨てられたのであった。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
神経しんけい知覚ちかくとはいたましきほどわななけども、ちからなきほねなしよ。
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
をさなも、おいわかきも、さをとめも、妻も、夫も。
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
「褒美の代りにを禁じてもらいたい」
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
今、世に来たりしみどり
今、生まれしみどり児 (新字新仮名) / 羽仁もと子(著)
わがをさなは賢し
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
いづくより 来ませし仏か 敷島の 大和の国に いほりして 千年ちとせへにける けふ日まで 微笑ゑみたまふなり 床しくも 立ちたまふなり ほのぼのと 見とれてあれば 長き日に 思ひ積みこし うれひさり 安けくなりぬ 草枕くさまくら 旅のおもひぞ ふるさとの わぎに告げむ 青によし 奈良の都ゆ 玉づさの 文しおくらむ 朝戸出の 旅の門出に 送りこし わがみどりも 花咲ける 乙女とならば 友禅の 振袖ふりそで着せて 率ゐ行かむぞ このみ仏に
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
私は他の兄弟もないひとのことでしたから、非常に父からも母からも可愛がられていたのです、教育もフランス人とイタリヤ人の二人の教師を家へ呼んで
港の妖婦 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「そちにとってはふたの姉、君尾の身の上心もとない。駕籠は危険、矢弾やだまのマト。杉窪まではわずか半里。そちも紀州頼宣の娘、勇をして徒歩で行け!」
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「ええ、人参湯にんじんゆでございますからね」と、乳呑ちのを抱えた、近所の若いお内儀かみさんらしいのが話しかける。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
娘ならば、竜宮のもうしであるととなえても、茄子の種子たね云々うんぬんより、恐らく聞くものは疑うまい。
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
銀子が初めて不断着のままで、均平の屋敷を訪れた時、彼女は看板をかりていたうちの、若い女主おんなあるじと一緒であった。女主は誕生を迎えて間もない乳呑ちのを抱いていた。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
も知っていた舌切雀したきりすずめ、お宿はどこじゃなどもその一つの場合であり、東北ではまめばなしなどといって、座頭ざとうがよく人を笑わせた大話おおばなしも、是から導かれているようだ。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
みなしの感じがしてなりません。無邪気に遊び狂っている人々はねたましく憤おろしく、それで花畑へ、果樹園へ自分と同じ気持らしい草木をなつかしみに避けて行くのでした。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
江戸の児曹こどもが春の遊は、女繍毬てまり羽子擢はごつき、男紙鴟たこあげざるはなし。我国のこどもは春になりても前にいへるごとく地として雪ならざる処なければ、歩行ほかうくるしく路上みちなかに遊をなす事すくなし。
それでも生れた子が可愛かわいくはないかそなたがそんなに強情を張るならててなしを育てる訳には行かぬって縁組みがいやだとあれば可哀かわいそうでも嬰児ややこはどこぞへくれてやるより仕方がないがと子を
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
あのひとが出たとしたら、それはみなしたちのことで、あの婦人を訪問したに違いないから。あの子たちは母親をなくしたんでね。わたしもちょっと手を出して、世話をしてやったんですよ。
お繁と乳呑ちのの妹とは、こうして親たちに捨てられたのであった。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
そのうち四回は双児ふたごを産み、一回は三を生んだといふ事だ。
ああほねなしよ。この薄暮くれがた反射はんしや
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
その宰相の家には宣揚せんようと云うひとの秀才があったが、それが十八歳になると父の宰相は、同族の両班ヤンパンの家から一人の女を見つけて来てそれを我が児の嫁にした。
悪僧 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「それでもあなた、この葉之助は、さずかではございませぬか」お石はむせびながらまた云い出す。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
そして、その重いからだを、乳呑ちののように抱いて、自分の寝ていたうすい夜具の中へかかえ入れた。トム公は、眼をあいていながら、母のなすがままに、甘えていた。
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そうして逆歯さかばの生えるみどりの全部でなく、丙午ひのえうまの年に生まれた児にそうするといい、または赤ん坊が夜なきをしてこまるときにも、この日返り機を織って着せる村があった。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)