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便
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たよ
ふりがな文庫
“
便
(
たよ
)” の例文
それに、性質が、今の家内のやうに
利
(
き
)
かん気では無かつたが、そのかはり昔風に亭主に
便
(
たよ
)
るといふ風で、
何処迄
(
どこまで
)
も我輩を信じて居た。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
来て一週間すると子供が死んだと云う
便
(
たよ
)
りがあった。相生さんは内地を去る時、すでにこの悲報を手にする覚悟をしていたのだそうだ。
満韓ところどころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
ここで出来る「
本高熊
(
ほんたかくま
)
」と呼ぶ紙も上等であります。見ただけでも
便
(
たよ
)
りになる手堅い性質の持主であります。高熊は村の名であります。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
爪のない猫! こんな、
便
(
たよ
)
りない、哀れな心持のものがあろうか! 空想を失ってしまった詩人、早発性
痴呆
(
ちほう
)
に陥った天才にも似ている!
愛撫
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
あざらしは、
毎日
(
まいにち
)
、
風
(
かぜ
)
の
便
(
たよ
)
りを
待
(
ま
)
っていました。しかし、一
度
(
ど
)
、
約束
(
やくそく
)
をしていった
風
(
かぜ
)
は、いくら
待
(
ま
)
ってももどってはこなかったのでした。
月とあざらし
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
▼ もっと見る
よしや鎌倉にある良人の兄君からは、まだ一片の
便
(
たよ
)
りにも「弟の妻」とゆるされた
例
(
ためし
)
はなくても、彼女の心には、何の不足でもなかった。
日本名婦伝:静御前
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それかと云つて
便
(
たよ
)
つて行く所は御座りませず、私は朝早うから晩の遅うまで機屋の管巻きを致しまして今日の細い烟を立てゝ居りますが
死線を越えて:01 死線を越えて
(新字旧仮名)
/
賀川豊彦
(著)
怪
(
あや
)
しや三
郎
(
らう
)
の
便
(
たよ
)
りふつと
聞
(
きこ
)
えず
成
(
な
)
りぬ
待
(
ま
)
つには
一日
(
ひとひ
)
も
侘
(
わび
)
しきを
不審
(
いぶか
)
しかりし
返事
(
へんじ
)
の
後
(
のち
)
今日
(
けふ
)
や
來給
(
きたま
)
ふ
明日
(
あす
)
こそはと
空
(
そら
)
だのめなる
日
(
ひ
)
を
五月雨
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
新「
何
(
なん
)
でそんな、お前の伯父さんを
便
(
たよ
)
って厄介になろうと云うのだから、決して見捨てる
気遣
(
きづかい
)
はないわね、見捨てれば
此方
(
こっち
)
が困るからね」
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
かく
寡
(
やもめ
)
となりしを
便
(
たよ
)
りよしとや、
言
(
ことば
)
を
巧
(
たく
)
みていざなへども、
一〇四
玉と
砕
(
くだ
)
けても
瓦
(
かはら
)
の
全
(
また
)
きにはならはじものをと、幾たびか
辛苦
(
からきめ
)
を忍びぬる。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
……姉さんが宮中を去ってからというものは、
外
(
ほか
)
に身寄り
便
(
たよ
)
りのない妾の淋しさ心細さが、日に増し
募
(
つの
)
って行くばかりでした。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
駅前の俥は
便
(
たよ
)
らないで、
洋傘
(
かさ
)
で寂しく
凌
(
しの
)
いで、
鴨居
(
かもい
)
の暗い
檐
(
のき
)
づたいに、石ころ
路
(
みち
)
を
辿
(
たど
)
りながら、度胸は
据
(
す
)
えたぞ。——持って来い、蕎麦二
膳
(
ぜん
)
。
眉かくしの霊
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
在所の者は誰も相手にせぬし、
便
(
たよ
)
る
方
(
かた
)
も無いので、少しでも口を
減
(
へ
)
す為に
然
(
さ
)
る
尼
(
あま
)
の
勧
(
すヽ
)
めに従つて、長男と二男を
大原
(
おほはら
)
の
真言寺
(
しんごんでら
)
へ
小僧
(
こぞう
)
に
遣
(
や
)
つた。
蓬生
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
(著)
止
(
とゞま
)
りしと雖も小夜衣の事を思ひ
切
(
きり
)
しに非ず
只々
(
たゞ/\
)
便
(
たよ
)
りをせざるのみにて我此家の相續をなさば是非とも
渠
(
かれ
)
を
早々
(
さう/\
)
身請
(
みうけ
)
なし
手活
(
ていけ
)
の花と
詠
(
なが
)
めんものを
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
およその下図は廻って来ましたが、今度は鏡縁欄間のような平彫りとは違って狆の丸彫りというのですから、下図に
便
(
たよ
)
っているわけに行かない。
幕末維新懐古談:53 葉茶屋の狆のはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
おっかあも、それだけの
便
(
たよ
)
りで
満足
(
まんぞく
)
していた。ご
亭主
(
ていしゅ
)
がたっしゃでいる、仕事もある、お金がもうかる——と、それだけ聞いて、
満足
(
まんぞく
)
していた。
家なき子:01 (上)
(新字新仮名)
/
エクトール・アンリ・マロ
(著)
それを忠実に勤めて来た母親の、家職のためにあの無性格にまで晒されてしまった
便
(
たよ
)
りない様子、能の
小面
(
こおもて
)
のように白さと鼠色の陰影だけの顔。
家霊
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
交通が専ら陸路にのみ
便
(
たよ
)
るというわけのあろうはずがない、海に風浪の難があるというかも知れぬけれど、陸上にも天然の困難がないでもない。
東山時代における一縉紳の生活
(新字新仮名)
/
原勝郎
(著)
昨霄
(
ゆうべ
)
飯田町を飛出して、二里ばかりの道を夢中に、青山の
知己
(
しるべ
)
まで
便
(
たよ
)
つて行けば、
彼奴
(
きやつ
)
めたいがい知れとる事に、泊まつて行けともいはないんだ。
誰が罪
(新字旧仮名)
/
清水紫琴
(著)
便
(
たよ
)
りねえ身の上は
己
(
うら
)
ばかしでねえ、
一人法師
(
ひとりぼつち
)
が二人寄りや、もう一人法師でねえちふもんだ、といふやうな気にもなる。
椋のミハイロ
(新字旧仮名)
/
ボレスワフ・プルス
(著)
それからお前が全く眼を退けて、私だけに注意するというのは、
便
(
たよ
)
りなくも心細くも思われることに違いない。然し私はお前に云う。
躊躇
(
ちゅうちょ
)
するな。
惜みなく愛は奪う
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
省作の
便
(
たよ
)
りを見、まれにも省作に逢うこともあれば、悲しいもつらいも、心の底から消え去るのだから、よそ目に見るほど泣いてばかりはいない。
春の潮
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
岩手県の方にいる友からはこの頃、
便
(
たよ
)
りがなかった。
釜石
(
かまいし
)
が艦砲射撃に
遇
(
あ
)
い、あの辺ももう安全ではなさそうであった。
壊滅の序曲
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
奉行からはその後なんの
便
(
たよ
)
りもなかった。そしてその
聖像
(
ピエタ
)
は四日たっても帰っては来なかった。裕佐はいらだって来た。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死――
(新字新仮名)
/
長与善郎
(著)
どうしたのかなあ、ぼくには
一昨日
(
おととい
)
たいへん元気な
便
(
たよ
)
りがあったんだが。
今日
(
きょう
)
あたりもう
着
(
つ
)
くころなんだが。
船
(
ふね
)
が
遅
(
おく
)
れたんだな。ジョバンニさん。
銀河鉄道の夜
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
西洋文学から得た輸入思想を
便
(
たよ
)
りにして、例えば銀座の
角
(
かど
)
のライオンを以て直ちに
巴里
(
パリー
)
のカッフェーに
擬
(
ぎ
)
し帝国劇場を以てオペラになぞらえるなぞ
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
其許に
便
(
たよ
)
り行きつゝ訳は少しも明さずに一泊を乞いたるが夜明けて
後
(
の
)
ちも此辺りへは人殺しの
評
(
うわさ
)
も達せず妾は唯金起が殺されたるや如何にと其身の上を
無惨
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
仁太や正は海軍に
配置
(
はいち
)
されていた。
平時
(
へいじ
)
ならば
微笑
(
びしょう
)
でしか思いだせない仁太の水兵も、いったまま
便
(
たよ
)
りがなかった。
二十四の瞳
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
ただ一つ分っていた事は、支配人の記憶に残っているその男の容貌
風采
(
ふうさい
)
であるが、それが
甚
(
はなは
)
だ
便
(
たよ
)
りないのである。
二銭銅貨
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
この方言を
便
(
たよ
)
ってここにアズサの実物が明かにせられたが、それは故白井光太郎博士の功績に帰せねばなるまい。
植物記
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
彼も妻も低い下駄、
草鞋
(
わらじ
)
、ある時は
高足駄
(
たかあしだ
)
をはいて三里の路を往復した。しば/\暁かけて握飯食い/\出かけ、ブラ提灯を
便
(
たよ
)
りに
夜
(
よる
)
晩
(
おそ
)
く帰ったりした。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
封を切ってみると、驚いたことには、四年前、突然アメリカへ行ったという噂を友人仲間にのこしたきりで行方不明になった浅田雪子からの
便
(
たよ
)
りであった。
秘密
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
耳を
塞
(
ふさ
)
いでしまう。彼の赤ちゃけた頭がひっこむ。近所の人たちは踏段の下へ列をつくり、
便
(
たよ
)
りを待っている。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
Yは、現在日本でのソシアリストの首領とされてゐるT氏とK氏を
便
(
たよ
)
つて最近に地方から出て来た青年だつた。そしてT氏の経営してゐるB社で働いてゐた。
監獄挿話 面会人控所
(新字旧仮名)
/
伊藤野枝
(著)
月明りが
便
(
たよ
)
りですが、六枚は今
剪
(
き
)
ったもののようにピタリと合って、真ん中のが一枚だけ欠けて居るのです。
大江戸黄金狂
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
しかし、だれも来なかった。だれからも一言の
便
(
たよ
)
りもなかった。なんらの同情のしるしも見られなかった。
ジャン・クリストフ:08 第六巻 アントアネット
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
扨
(
さて
)
その軍艦と申しても
至極
(
しごく
)
小さなもので、蒸気は百馬力、ヒユルプマシーネと申して、港の
出入
(
でいり
)
に蒸気を
焚
(
た
)
くばかり、航海中は
唯
(
ただ
)
風を
便
(
たよ
)
りに運転せねばならぬ。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
多くはこれを
便
(
たよ
)
つて来て、三助から段々湯屋の主人に立身しようとして居る人間も随分あるといふ事だ。
重右衛門の最後
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
「この島で死なせようつもりなら、穀種などたまわるはずはない。つまりは、この籾を
蒔
(
ま
)
いて
収穫
(
とりいれ
)
をし、それを
力
(
ちから
)
に
便
(
たよ
)
り
船
(
ぶね
)
を待てというこの
御顕示
(
ごけんじ
)
がわからぬのか」
藤九郎の島
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
「故郷よりの
文
(
ふみ
)
なりや。悪しき
便
(
たよ
)
りにてはよも」彼は例の新聞社の報酬に関する書状と思いしならん。
舞姫
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
東京へ着いたのは其日の午後の三時頃だったが、
便
(
たよ
)
って行くのは例の金時計をぶら
垂
(
さ
)
げていたという、私の
家
(
うち
)
とは遠縁の、変な苗字だが、
小狐
(
おぎつね
)
三平という人の
家
(
うち
)
だ。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
広津
(
ひろつ
)
が
編輯主任
(
へんしうしゆにん
)
でありました、
乙羽庵
(
おとはあん
)
は始め
二橋散史
(
にけうさんし
)
と
名
(
なの
)
つて
石橋
(
いしばし
)
を
便
(
たよ
)
つて来たのです、
其
(
その
)
時は
累卵之東洋的
(
るいらんのとうやうてき
)
悲憤文字
(
ひふんもんじ
)
を書いて
居
(
ゐ
)
たのを、
石橋
(
いしばし
)
から
硯友社
(
けんいうしや
)
へ
紹介
(
せうかい
)
して
硯友社の沿革
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
午後二時というに上野を
出
(
い
)
でて高崎におもむく汽車に
便
(
たよ
)
りて熊谷まで行かんとするなれば、夏の日の真盛りの頃を歩むこととて、
市中
(
まちなか
)
の塵埃の
匀
(
にお
)
い、
馬
(
うま
)
車
(
くるま
)
の騒ぎあえるなど
知々夫紀行
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
私ひとりを
便
(
たよ
)
りにでもしているように、私がものを書いている窓に来て一言二言ずついった。
旧聞日本橋:09 木魚の配偶
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
おやじは
何処
(
どこ
)
かへ行ったまんま、二十年も
便
(
たよ
)
りがない。どこかでどうにか成ったんだろう。
一本刀土俵入 二幕五場
(新字新仮名)
/
長谷川伸
(著)
右近
(
うこん
)
までもそれきり
便
(
たよ
)
りをして来ないことを不思議に思いながら絶えず心配をしていた。
源氏物語:04 夕顔
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
あたりは真っ暗であったけれども、板の合わせ目や節穴から
射
(
さ
)
して来る月の光を
便
(
たよ
)
りにして行くと、廊下の突あたりに、戸の
隙間
(
すきま
)
からぼんやり灯影の洩れている一と間があった。
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
しかし、ロチスター氏の
便
(
たよ
)
りはなかつた。十日
經
(
た
)
つたが、まだ彼は歸つて來なかつた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
俗語の精神は茲に存するのだと信じたので、これだけは多少
便
(
たよ
)
りにしたが、外には何にもない。尤も西洋の文法を取りこまうといふ気はあつたのだが、それは言葉の使ひざまとは違ふ。
言文一致
(新字旧仮名)
/
水野葉舟
(著)
そういう風にその可哀相な人はわたしに
便
(
たよ
)
るのだから、わたしはまたその人の
助
(
たすけ
)
になるのを自分の為事にしているのです。それが今お前に言われて見れば、わたしのおっ母さんなのね。
家常茶飯 附・現代思想
(新字新仮名)
/
ライネル・マリア・リルケ
(著)
便
常用漢字
小4
部首:⼈
9画
“便”を含む語句
小便
便所
便宜
方便
郵便局
大便
便宜上
便乗
郵便配達
音便
郵便船
不便
穏便
郵便
郵便函
便々
軽便鉄道
郵便脚夫
便次
御方便
...