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侮
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あなど
ふりがな文庫
“
侮
(
あなど
)” の例文
樣々な
懊惱
(
あうのう
)
を
累
(
かさ
)
ね、
無愧
(
むき
)
な卑屈な
侮
(
あなど
)
らるべき下劣な情念を押包みつゝ、この暗い六疊を
臥所
(
ふしど
)
として執念深く生活して來たのである。
崖の下
(旧字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
人の上に立つものはそれだけに苦労が多く、里方がこの様な身柄では
猶更
(
なほさら
)
のこと人に
侮
(
あなど
)
られぬやうの心懸けもしなければ成るまじ
十三夜
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
意気込んで応じるのは、馬鹿のあわて者です。飲酒の作法は、むずかしい。
泥酔
(
でいすい
)
して、へどを吐くは禁物。すべての人に
侮
(
あなど
)
られる。
新ハムレット
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
して、
短銃
(
ピストル
)
をかたく掴んでおりますぞ。逆上している相手ですから
侮
(
あなど
)
ると
怪我人
(
けがにん
)
を生じるでしょう。まあ、もう少し見ていてくれい
旗岡巡査
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
私
(
わたし
)
は
心
(
こゝろ
)
に
迎
(
むか
)
へなければならなかつた……それは
力
(
ちから
)
の
弱
(
よわ
)
い
冬
(
ふゆ
)
の
日
(
ひ
)
だからだらうか?
否
(
いや
)
! どうして
彼女
(
かのぢよ
)
の
力
(
ちから
)
を
侮
(
あなど
)
る
事
(
こと
)
が
出來
(
でき
)
よう。
日の光を浴びて
(旧字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
▼ もっと見る
家柄やその他何によらず人格以外の差別によって相互間に区別を付けて一方には
侮
(
あなど
)
り、一方は怒り、一方は威張り一方はヒガみ
平民道
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
成績のことで豊子さんに
侮
(
あなど
)
られたのは僕の生涯の中の一転機だった。僕は今更ながら発憤した。こんなことでは駄目だと思った。
勝ち運負け運
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
桶狭間
(
おけはざま
)
の
今川義元
(
いまがわよしもと
)
も敵を
侮
(
あなど
)
って命を落したが、首はあとから返して貰ったし、もちろん鼻だってちゃんと首に附いていたことだ。
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
それは
勿論
(
もちろん
)
、これは
我々
(
われわれ
)
だけの
話
(
はなし
)
だが、
彼
(
かれ
)
は
余
(
あま
)
り
尊敬
(
そんけい
)
をすべき
人格
(
じんかく
)
の
男
(
おとこ
)
では
無
(
な
)
いが、
術
(
じゅつ
)
に
掛
(
か
)
けてはまたなかなか
侮
(
あなど
)
られんと
思
(
おも
)
う。
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
それと共にまた過去の学風に追従していることによって現代支那の新しい学者からも
侮
(
あなど
)
られるようなことがなければ幸である。
日本に於ける支那学の使命
(新字新仮名)
/
津田左右吉
(著)
彼は自分の好奇心を満足させた上で、兵卒と共にイエスを
侮
(
あなど
)
り
嘲弄
(
ちょうろう
)
したのです(ルカ二三の六—一二)。実に卑しむべき
奴
(
やつ
)
だ。
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
鍛冶倉は縄を口でしごいて、
処嫌
(
ところきら
)
わず金蔵を縛ろうとする。縛られまいとして、一生懸命の力は金蔵といえども
侮
(
あなど
)
るべからず。
大菩薩峠:04 三輪の神杉の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「兄弟などは親戚中でも、特に血の濃いものでござるが『兄弟
垣
(
かき
)
にせめげども、外その
侮
(
あなど
)
りを防ぐ』と云って、真実仲よくしていますがな」
生死卍巴
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
定めし、文平は
婦人
(
をんな
)
子供
(
こども
)
と見て思ひ
侮
(
あなど
)
つて、自分独りが男ででも有るかのやうに、
可厭
(
いや
)
に
容子
(
ようす
)
を売つて居ることであらう。
嘸
(
さぞ
)
。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
で、その尻上がりの「ですか」を
饒舌
(
しゃべ
)
って、時々じろじろと
下目
(
しため
)
に見越すのが、
田舎漢
(
いなかもの
)
だと
侮
(
あなど
)
るなと言う態度の、それが
明
(
あきら
)
かに窓から
見透
(
みえす
)
く。
国貞えがく
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
殊
(
こと
)
に文学において日本婦人は
侮
(
あなど
)
りがたい
技倆
(
ぎりょう
)
を古代においてしばしば実現しているから相当の自信を持ってよかろうと思う。
婦人と思想
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
なかなか
侮
(
あなど
)
れない。三十六
糎
(
サンチ
)
の大砲弾が、うなりを立てて、遊撃隊の頭の上へ、襲いかかった。本多鋼鉄がどんなに強くても、油断はできぬ。
昭和遊撃隊
(新字新仮名)
/
平田晋策
(著)
酔「くどい、見れば立派なお侍、
御直参
(
ごじきさん
)
か
何
(
いず
)
れの
御藩中
(
ごはんちゅう
)
かは知らないが
尾羽
(
おは
)
打枯
(
うちか
)
らした浪人と
侮
(
あなど
)
り失礼至極、
愈々
(
いよ/\
)
勘弁がならなければどうする」
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
吐くうち下り方のよき道なれば失敬と振り𢌞す帽子は忽ち森の陰となりぬ畜生
侮
(
あなど
)
ツて一番やられたよし左らば車が早きか我々の
脛
(
すね
)
が達者か競爭を
木曽道中記
(旧字旧仮名)
/
饗庭篁村
(著)
「何じゃい。何じゃい。まだ失せおらぬかッ。老人と思うて
侮
(
あなど
)
らば当が違うぞ。行かッしゃいッ。行かッしゃいッ、行けと申すになぜ行かぬかッ」
旗本退屈男:08 第八話 日光に現れた退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
腹を立てるほどの気性もないらしかった。内気というよりは陰気な感じで、これでは
朋輩
(
ほうばい
)
にも客にも
侮
(
あなど
)
られるばかりではないかという気がされた。
朴歯の下駄
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
実を云うとどてらがこんな事を
饒舌
(
しゃべ
)
るのは、自分を
若年
(
じゃくねん
)
と
侮
(
あなど
)
って、好い加減に人を
瞞
(
だま
)
すのではないかと考えた。ところが相手は存外真面目である。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
時々さう思ふ事がある、あの人の水臭い仕打の有るのは、
多少
(
いくら
)
か自分を
侮
(
あなど
)
つてゐるのではあるまいか。自分は
此家
(
ここ
)
の厄介者、あの人は家附の娘だ。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
口では党を
侮
(
あなど
)
ったり、デマを飛ばしたり
見縊
(
みくび
)
っているが、この事実こそは明かにそれを裏切って、党が彼奴等の最大の敵であることを示している。
党生活者
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
相手を袋の鼠の、しかも子供と
侮
(
あなど
)
ってか、シムソンは彼の
企
(
たくら
)
みを、さも自慢らしく述べ立てました。何という
狡獪
(
こうかい
)
さ。
計略二重戦:少年密偵
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
そのはなはだしいのになりますと、他人の祖先の賤しきをみて、これを
侮
(
あなど
)
ろうとするものすらないではありません。
融和促進
(新字新仮名)
/
喜田貞吉
(著)
呉服屋
(
ごふくや
)
に物言うのもはばかるほどであったお蔭で、半年経たぬうちにやっと元の額になったのを
機会
(
しお
)
に、いつまでも二階借りしていては人に
侮
(
あなど
)
られる
夫婦善哉
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
四季折り折りの山の姿、水の流れ。それはすべて、我が人生記録である。私は、故郷の人々がどんなに私を
侮
(
あなど
)
り貶しても、私は決してそれを意としない。
利根川の鮎
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
そして、すずめたちは、かがしを
侮
(
あなど
)
って、
稲
(
いね
)
を
荒
(
あ
)
らしましたが、ある
日
(
ひ
)
、おじいさんの
息子
(
むすこ
)
の
打
(
う
)
った、ほんとうの
鉄砲
(
てっぽう
)
で、みんな
殺
(
ころ
)
されてしまいました。
からすとかがし
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
漸
(
ようや
)
く目科の話が終れば果せるかな細君は第一に「貴方は
失念
(
ぬかっ
)
た事を仕ましたね」と云う、目科は
宛
(
あたか
)
も今までの経験にて細君の意見の
侮
(
あなど
)
り難きを知れる如く
血の文字
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
即ち初めは恐れ、次に
侮
(
あなど
)
り、分割を思うたが、後にはその非を悟り、一転して経済的に利権の獲得を試みた。
三たび東方の平和を論ず
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
いわんや心にも礼なく形にも礼なく
放埒不覊
(
ほうらつふき
)
にして長上を軽んじ先輩を
侮
(
あなど
)
る如きは人の道を外れたる
禽獣行
(
きんじゅうこう
)
のみ。禽獣行の人は家庭の良主人となすに足らず。
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
今日
(
こんにち
)
の眼から観れば、みずから
侮
(
あなど
)
ること
甚
(
はなは
)
だしいようにも思われるかも知れないが、なんと理窟を云っても劇場当事者の方で受付けてくれないのであるから
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
一家の主人、その妻を軽蔑すれば、その子これに
傚
(
ならっ
)
て母を
侮
(
あなど
)
り、その教を重んぜず。母の教を重んぜざれば、母はあれどもなきが如し。
孤子
(
みなしご
)
に異ならざるなり。
中津留別の書
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
この女は現在の自分を
侮
(
あなど
)
って見ているのではないかなどと、焦慮の中には、こんなことも源氏は思われた。
源氏物語:13 明石
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
かようにアメリカの
博物館
(
はくぶつかん
)
はなか/\
侮
(
あなど
)
り
難
(
がた
)
い
勢
(
いきほ
)
ひをもつてゐるばかりでなく、
近年
(
きんねん
)
は
支那
(
しな
)
などから
出
(
で
)
る
古美術品
(
こびじゆつひん
)
は
金錢
(
きんせん
)
を
厭
(
いと
)
はず
購入
(
こうにゆう
)
するといふ
状態
(
じようたい
)
ですから
博物館
(旧字旧仮名)
/
浜田青陵
(著)
どうせシナ政府は我が国を助けることは出来やしないと
侮
(
あなど
)
り切って居るものですから、その儘
泣寝入
(
なきねいり
)
になって勢力は次第に衰えて行くという今日の有様である。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
今、単に経済上より観察を下しまして、この小国のけっして
侮
(
あなど
)
るべからざる国であることがわかります。
デンマルク国の話:信仰と樹木とをもって国を救いし話
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
絶えず敵の
追手
(
おって
)
を恐れ、ことに恥と
侮
(
あなど
)
りとを防ぐためにあの気高い奥方がどんなに心を苦しめられたか
俊寛
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
せしめたのだ
何處
(
どこ
)
からも
尻
(
しり
)
の
來
(
くる
)
氣遣はねへ
〆
(
しめ
)
ろ/\と一同に飛懸らんずる
樣子
(
やうす
)
ゆゑ半四郎は心の中に
扨
(
さて
)
は此奴等我は
年端
(
としは
)
も
行
(
ゆか
)
ぬ若者と
侮
(
あなど
)
り
訝
(
おつ
)
な處へ氣を廻し酒代を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
勘次
(
かんじ
)
は
小
(
ちひ
)
さな
時分
(
じぶん
)
から
侮
(
あなど
)
られて
能
(
よ
)
く
泣
(
な
)
かされた。
彼
(
かれ
)
は
恐
(
おそ
)
ろしい
泣蟲
(
なきむし
)
であつた。
彼
(
かれ
)
は
何時
(
いつ
)
の
間
(
ま
)
にか
燗鍋
(
かんなべ
)
といふ
綽名
(
あだな
)
を
附
(
つ
)
けられた。
彼
(
かれ
)
は
心
(
こゝろ
)
に
幾
(
いく
)
ら
其
(
そ
)
れを
嫌
(
きら
)
つたか
知
(
し
)
れない。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
時として我を輕んずるやうなる詞、我を
侮
(
あなど
)
るやうなる
行
(
おこなひ
)
なきにしもあらねど、そはわが爲め好かれとて言ひもし行ひもし給ふなれば、憎むべきにはあらざるなるべし。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
相手が女と
侮
(
あなど
)
ってか、人もあろうに、今評判喧嘩渡世の大姐御、御意見無用いのち不知の知らずのお絃ちゃんにたんかを切ろうというのだから、さてはこの戸塚の三公
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
かゝれ/\と
刀柄
(
つか
)
をたゝけば、応と意気込む覚えの面々、
人甲斐
(
ひとがい
)
も無き
旅僧
(
たびそう
)
一人。何程の事やあらむと
侮
(
あなど
)
りつゝ、雪影うつらふ氷の
刃
(
やいば
)
を、抜き
連
(
つ
)
れ抜き連れ
競
(
きそ
)
ひかゝる。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
彼は新米の乞食のわたくしを見て、女と
侮
(
あなど
)
り矢庭に「擲るぞ」と拳を振上げて、
威嚇
(
いかく
)
しました。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
宿屋に著きて先づ
飯盛女
(
めしもりおんな
)
の品定め、水臭き味噌汁すすりながら、ここに遊君はありやといへば、ござりまする、片田舎とて
侮
(
あなど
)
り給はば思はぬ不覚を取り給ふべし、などいふ
旅
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
或は彼の説く所、その
語
(
ことば
)
の響と異なり、
侮
(
あなど
)
るべからざる意義を有することあらむ 五五—五七
神曲:03 天堂
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
一方、霜降り服の紳士は、勝ち誇って、いくぶん
侮
(
あなど
)
りの眼で相手を眺めたようであった。
スリーピー・ホローの伝説:故ディードリッヒ・ニッカボッカーの遺稿より
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
そうして
酒徒
(
しゅと
)
としての私にはやや差し障りそうな
道連
(
みちづれ
)
ではあったが時とすると
侮
(
あなど
)
り難い小さな監督者であろうも知れぬが、だが、私自身にも
寧
(
むし
)
ろ
或
(
あるい
)
はそれを望んだ心もちもあった。
木曾川
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
さらぬは坐したるままにて答ふれど、
侮
(
あなど
)
りたるにもあらず、この仲間の
癖
(
くせ
)
なるべし。
うたかたの記
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
侮
常用漢字
中学
部首:⼈
8画
“侮”を含む語句
侮辱
侮蔑
軽侮
嘲侮
輕侮
侮辱的
侮蔑的
冷侮
侮慢
倨侮
見侮
蔑侮
御軽侮
外侮
嘲弄侮慢
佞侮多
侮辱法
侮誣
侮声