何卒どうか)” の例文
ハツ/\うも御親切ごしんせつ有難ありがたぞんじます、何卒どうか貴方あなたたくかへつてくださいまし。金「かへらんでもいからおあがりな、わつしの見てめえで。 ...
黄金餅 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
国に斯様かような朝臣があるのはまことにめでたい限りであるから、何卒どうか此の上とも体を大切にされて、一日でも多く長生きをして下さるように
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「そこですよ、私が心配してるのは。旦那もネ、橋本の家で生れた人ですから、何卒どうかして私は……あの家で死なして遣りたくてサ」
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
お目にかかれないのが何より——病の苦痛くるしみよりつらう御座います。吉野さん何卒どうか私がなほるまでこの村にゐて下さい。何卒、何卒。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
そう言わないで何卒どうかもすこし此処ここて下さいな、もすこし……。ああ! 如何どうしてう僕は無理ばかり言うのでしょう! よったのでしょうか。
運命論者 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
何卒どうか男子保護政策として別れたのちに「亭主の棚卸しをない」といふ点に最高票を投じて貰ひたいものだ。
おれようるのがえんのか。いや過去くわこおもしますまい。』とかれ調子てうしを一だんやさしくしてアンドレイ、エヒミチにむかつてふ。『さあきみたまへ、さあ何卒どうか。』
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ある時父兄の前に言出いいいでて、自分は一代法華いちだいほっけをして、諸国を経廻へめぐろうと思うから、何卒どうか家を出してくれと決心の色をあらわしたので、父も兄も致方いたしかたなく、これを許したから、娘は大変喜んで
千ヶ寺詣 (新字新仮名) / 北村四海(著)
とまりがきまると、行手ゆくてを急ぐ要はありません。のろ/\歩きましょう。一歩は一歩のたのしみです。父は九十三、母は九十一、何卒どうか私共もあやかりたい。先頃の大地震に、私はある人に言いました。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
僕は医者でないが丸薬がんやくを丸めるぐらいの事はきっと出来るから、何卒どうか世話をしてもらいたいと云うと、岡部も私の身の有様を気の毒に思うたか、私と一緒になって腹を立てゝ容易たやすく私の云う事を請合うけあ
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
此事このこと旦那樣だんなさまにも奧樣おくさまにも毎度いくたび申上まうしあげて、何卒どうか今夜こんや御出帆ごしゆつぱんけは御見合おみあはくださいと御願おねがまうしたのですが、御兩方おふたりともたゞわらつて「亞尼アンニー其樣そんな心配しんぱいするにはおよばないよ。」とおほせあるばかり
けむりの立つ所必ず火ありとも云ふぞ、——かし僕が若し婦人ならば矢張り左様さう思ふかも知れない、僕が先生をく思ふの情、是れが女性の心に宿れば恋となるのかナ——アヽ、何卒どうか先生に思ふ存分
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
何卒どうか面白い話を沢山聞かせてくれい
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
何卒どうかしてお新を往時むかし心地こころもちに返らせたいと思って、山本さんは熱海まで連れて行ったが、駄目だった。そこで今度は伊東の方へ誘った。
(新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「こんなこと、申し上げないでも無論お分りと存じますけれど、明日は何卒どうか奥さんは思いきり地味にお作りになって戴きたいんですの」
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
孫「はい、始めまして米倉孫右衞門と申す疎忽者そこつものでお心安う願います、これ布団を出しな、烟草盆にお茶を早く…さア何卒どうか此方へ/\」
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「イイエ決して気には留めません、何卒どうか先生を御大切ごたいせつに、貴嬢あなた御大事ごだいじ……」みなまで言うあたわず、急いで門を出て了った。
富岡先生 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
う致しまして。昨日さくじつ態々わざわざお立寄下すつた相ですが、生憎あいにくと芋田の急病人へ行つてゐたものですから失礼致しました。今度町へ被来いらしつたら是非何卒どうか。』
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
阿爺おとうさん後生ですから元々通り箪笥に蔵ひ込んで置いて下さい。万一もしか私が沙翁セキスピヤ物でもる事があつたら、その折着させて戴きます。何しろ結構な仕立で、何卒どうか樟脳をどつさり入れてね……」
御尤ごもつともです——いや、それではいづれ後刻御目に懸つて、御礼を申上げるといふことにしませう。何卒どうか皆さんへも宜敷よろしく仰つて下さい。』
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
まだ/\残り居ります訳で、御安心下すって何卒どうかあなた様の御盃おさかずきを頂戴致して、けがれたる臓腑を洗い清めましてすみやかに立退たちのきまする心底で
其上そのうへものになりさうだツたら何卒どうか怠惰屋なまけや弟子でしといふことにねがひたいものです。さうなるとわたしはうでも出來できるだけのおれいは致します積りで……
怠惰屋の弟子入り (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
『怎う致しまして。昨日は態々お立寄り下すつた相ですが、生憎と芋田の急病人へ行つてゐたものですから失禮致しました。今度町へ被來いらしたら是非何卒どうか。』
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
併しながらそれはもとより某の好む所でないから、何卒どうか両方へ義理が済むやうに局外に立たせて戴きたい
母がまだ壮健たっしゃでいる時、「宗蔵の身体には梅の花が咲いた」などと戯れて、何卒どうかして宗蔵の面倒を見て死にたい、と言いとおした。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
お前さん彼方あっちへ行って下せえよ、己が引受けたからは世間へ顔出しが出来ませんから退く事は出来ない、何卒どうか事なく遣るつもりで
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
つまりラクダルに全然すつかり歸依きえしてしまつたのである。大急おほいそぎでうちへり、父にむかつて最早もう學校がくかうにはきたくない、何卒どうか怠惰屋なまけやにしてくれろと嘆願たんぐわんおよんだ。
怠惰屋の弟子入り (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
伯母は臺所に何か働いて居つたので、自分が『何處の女客ぞ』と怪しみ乍ら取次に出ると、『腹が減つて腹が減つて一足ひとあしあるかれなエハンテ、何卒どうかなにか……』
葬列 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
... 何卒どうかそれだけ約束してくれ。」「イヤや」と私は、眼エつぶったまま強う首振りました。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
何卒どうかまあ、今日こんちのところは、わしに免じて許して下さるやうに。ない(なあと同じ農夫の言葉)、省吾さん、貴方あんたもそれぢやいけやせん。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
兼「芳町のかねが参ったと御新造様にそう仰しゃって、誠につまらん物でありますがお土産のしるしに是を何卒どうか上げて下さい」
貴下あなた何卒どうか父の言葉を気になさらないで……御存知の通りな気性で御座いますから!」とおろおろ声で言った。
富岡先生 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
伯母は台所に何か働いて居つたので、自分が『何家どこの女客ぞ』と怪しみ乍ら取次に出ると、『腹が減つて腹が減つて一足も歩かれなエハンテ、何卒どうか何か……』
葬列 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
「お母さまにだけお見せになるんですよ、ほかの人には何卒どうかお見せにならないで」
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
『音さん。四斗七升の何のと言はないで、何卒どうか悉皆すつかり地親ぢやうやさんの方へ上げて了つて御呉おくんなんしよや——わしはもう些少すこしりやせん。』
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
友「此の羽織はいらない羽織で、だいなしになって居りますが、毎度板前さんにねえ我儘わがまゝを云いますから、何卒どうか上げて下さい」
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
父上おとうさんをおれ申してのお願いで御座います。母上さん、何卒どうか……お返しを願います、それでないと私が……」とやっとの思で言いだした。母は直ぐ血相変て
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
『御苦勞も糞もえが、なす、先生、然う言ふ譯だハンテ、何卒どうか一先づ戻して貰つてござれ。』
足跡 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
今度のことはまことむを得ない事情なのだと云うことを、世間はかくと致しまして、せめてあなたにまで御諒解りょうかいを願って置きたい、と申しますのも、何卒どうかこのことでお腹立ちにならず
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
彼女は、二度まで三吉の家を訪ねて世話に成ったことを考えて、何卒どうかして客をもてなしたいという風で有った。林檎りんごなどをむいて勧めた。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
新「何卒どうか亀有までって、亀有のわたしを越して新宿にいじゅく泊りとしますから、四ツ木通りへ出る方が近いから、吾妻橋を渡って小梅へ遣ってくんねえ」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
たもととらへて『あんまりじやアありませんか、何卒どうか返却かへしていたゞきたいもんです』と泣聲なきごゑになつてうつたへた。
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
『御苦労も糞もえが、なす、先生、然う言ふ訳だハンテ、何卒どうか一先ひとまづ戻して貰つてござれ。』
足跡 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
何卒どうかお目通りがしたいと云うから、それは丁度い、旦那様はうちに来て居らっしゃるからと云って、無理に連れて来たので
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
私には何卒どうかして一生のうちに自伝を書いて見たいといふ心があつた。恐らく斯の心は私ばかりではあるまいと思ふ。
(新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
そこで如何いかなることがあつても貴様あなたさまにはと誓つて居たけれどそのちかひも捨て義理も忘れてお願ひ申すのである、何卒どうか二十円だけ用意して明晩みやうばん来てれまいか——といふのである。
節操 (新字旧仮名) / 国木田独歩(著)
何卒どうかハア……』と、二人は血を吐く思で漸く言つて、おとなしく頭を下げた。
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
何卒どうかお母さん得心してすみやかに承諾して下さい、僕が媒介なこうどする、お聞済きゝずみなれば誠に満足で、何うかひらに御承知を願いたい
障子の影で自分も泣いている——何卒どうかして子供を自然に育てたい、拳固げんこの一つもくらわせずに済むものならなるべくそんな手荒いことをせずに子供を育てたい
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
村長は委細を呑込のみこんで、何卒どうか機会おりを見てうまくこの縁談をまとめたいものだと思った。
富岡先生 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)