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主
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あるじ
ふりがな文庫
“
主
(
あるじ
)” の例文
しかし迫害が烈しいだけに、「万事にかない給うおん
主
(
あるじ
)
」も、その頃は一層この国の
宗徒
(
しゅうと
)
に、あらたかな
御加護
(
おんかご
)
を加えられたらしい。
おぎん
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
なんのために、生涯、日蔭におくり、自らの魔夢にうなされ、こんな万年床の
主
(
あるじ
)
になって終るのかと——刑部はまたも、ぐちになる。
大岡越前
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
綱曳
(
つなひき
)
にて
駈着
(
かけつ
)
けし紳士は
姑
(
しばら
)
く休息の後内儀に導かれて
入来
(
いりきた
)
りつ。その
後
(
うしろ
)
には、今まで居間に潜みたりし
主
(
あるじ
)
の
箕輪亮輔
(
みのわりようすけ
)
も附添ひたり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
「はい、そうしてそのお方様こそこの城の
主
(
あるじ
)
でござりました。そうしてもう一人のお方様は宗介様のおん弟夏彦様でござりました」
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
女は夜更けてから梯子をさして、そっと二階の
主
(
あるじ
)
の部屋の戸を
敲
(
たた
)
いたが、やはり入ることが出来ずに、外から悪体を
吐
(
つ
)
いて帰って来た。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
▼ もっと見る
見て
密
(
ひそか
)
に
元
(
もと
)
の座へ立ち歸り彼は正しく此所の
主
(
あるじ
)
さては娘の父ならん然れば山賊の
隱
(
かく
)
れ
家
(
が
)
にも非ずと
安堵
(
あんど
)
して在る所へ彼娘の勝手より
膳
(
ぜん
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
『戀塚とは
餘所
(
よそ
)
ながら
床
(
ゆか
)
しき思ひす、
剃
(
そ
)
らぬ
前
(
まへ
)
の我も戀塚の
主
(
あるじ
)
に
半
(
なか
)
ばなりし事あれば』。言ひつゝ瀧口は
呵々
(
から/\
)
と打笑へば、老婆は
打消
(
うちけ
)
し
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
そんなにあなたが、司馬の道場の
主
(
あるじ
)
になりたいのだったら、あらためて、このわたしのところへお婿入りして……ネ、わかったでしょう?
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
時々は馬鹿にした小鳥が白い糞をしかける。いたずらな
蜘
(
くも
)
めが糸で頸をしめる。時々は家の
主
(
あるじ
)
が汗臭い帽子を裏返しにかぶせて日に曝らす。
地蔵尊
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
私が今日の目的に就いて水車小屋の
主
(
あるじ
)
に語った後に、杖を
棄
(
す
)
て、ゼーロンを
曳
(
ひ
)
き出そうとすると彼は、その杖を
鞭
(
むち
)
にする要があるだろう——
ゼーロン
(新字新仮名)
/
牧野信一
(著)
すでに英国大使館の標識を付けた立派なキャデラックがホテルの前に止まって、運転手の野郎は
主
(
あるじ
)
待ち顔に
大欠伸
(
おおあくび
)
をしていた。
ナリン殿下への回想
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
此の隣なる家の
主
(
あるじ
)
なりしが、
一二九
過活
(
わたらひ
)
のため
京
(
みやこ
)
に七とせまでありて、
昨
(
きそ
)
の夜帰りまゐりしに、既に
荒廃
(
あれすさ
)
みて人も住ひ侍らず。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
我が
郡中
(
ぐんちゆう
)
小千谷
(
をぢや
)
の
縮
(
ちゞみ
)
商人
芳沢屋
(
よしさはや
)
東五郎
俳号
(
はいがう
)
を二松といふもの、商ひの
為
(
ため
)
西国にいたり
或
(
ある
)
城下に
逗留
(
とうりう
)
の間、旅宿の
主
(
あるじ
)
がはなしに
北越雪譜:06 北越雪譜二編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
ラサ府には三軒シナ人の
薬店
(
やくてん
)
があるけれども
其宅
(
その店
)
が一番大きいので、その
主
(
あるじ
)
はまだ三十歳ぐらい、ごく人のよい
方
(
かた
)
で大層親切にしてくれた。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
そこでは、行動は、すべて未完成で、幼稚で、所在に
主
(
あるじ
)
たることを失い、思考作用の空虚と無為は、果てしないものになる。
南極記
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
しかし、民主とは、民の
主
(
あるじ
)
と書き、そのつまり主義、思想、アメリカ、世界、まあ、だいたいそういったわけのものかと私は解して居ります。
男女同権
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
恩
(
おん
)
ある
人
(
ひと
)
は
二年目
(
にねんめ
)
に
亡
(
う
)
せて
今
(
いま
)
の
主
(
あるじ
)
も
内儀樣
(
かみさま
)
も
息子
(
むすこ
)
の
半次
(
はんじ
)
も
氣
(
き
)
に
喰
(
く
)
はぬ
者
(
もの
)
のみなれど、
此處
(
こゝ
)
を
死場
(
しにば
)
と
定
(
さだ
)
めたるなれば
厭
(
いや
)
とて
更
(
さら
)
に
何方
(
いづかた
)
に
行
(
ゆ
)
くべき
わかれ道
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
此
(
こ
)
の
勢
(
いきほひ
)
に
乘
(
じよう
)
じて、
立處
(
たちどころ
)
に
一國一城
(
いつこくいちじやう
)
の
主
(
あるじ
)
と
志
(
こゝろざ
)
して
狙
(
ねらひ
)
をつけたのは、あらう
事
(
こと
)
か、
用人
(
ようにん
)
團右衞門
(
だんゑもん
)
の
御新造
(
ごしんぞ
)
、おきみ、と
云
(
い
)
ふ、
年
(
とし
)
は
漸
(
やうや
)
く
二十
(
はたち
)
と
聞
(
き
)
く
二た面
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
この家の
主
(
あるじ
)
は、よっぽど白い花が好きと見えて、空地と云う空地には、
早咲
(
はやざ
)
きの
除虫菊
(
じょちゅうぎく
)
のようなのが雪のように咲いていた。
清貧の書
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
「そうして、お前は好きな女中を
傭
(
やと
)
うて、その部屋の
主
(
あるじ
)
となってよいのじゃ、人に使われるお前でなくて、人を使う身分と心得てよいのじゃ」
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
夫人は黙々として紙の上に筆を動かし、侍女は静かに墨を磨り、
主
(
あるじ
)
は一人悦に入りながらとき/″\盃のふちを
舐
(
な
)
めている。
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「あなたは日野城の
主
(
あるじ
)
のお子だ、やがては父君に代わって軍を
統
(
す
)
べ、国を治める大任がある。それを忘れてはいけません」
蒲生鶴千代
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
次の
間
(
ま
)
では話をしている間、今年生まれた子がしっきりなしに泣いたが、しかし
主
(
あるじ
)
はそれをやかましいとも言わなかった。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
丈五郎は今では
樋口家
(
ひぐちけ
)
の
主
(
あるじ
)
だけれど、あたりまえの人間を呪うの余り、姓までも樋口を
厭
(
きら
)
い、諸戸で押し通しているのだ。
孤島の鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
主
(
あるじ
)
去つて一しほおもひで深い庭となりましたが、いまかうして此處で時間を過してゐても、能なしの僕にも、妻にも、哀傷の歌ひとつ作れません。
行く春の記
(旧字旧仮名)
/
堀辰雄
(著)
駅前にあった古着屋の
暖簾
(
のれん
)
をくぐり、交渉したが、古着屋の
主
(
あるじ
)
は私の方を
胡散臭
(
うさんくさ
)
そうに見て、買うわけにはいかないということを大阪弁で云った。
遁走
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
などという様子に品のよさの見える婦人であったから、源氏はこの山荘の昔の
主
(
あるじ
)
の親王のことなどを話題にして語った。
源氏物語:18 松風
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
私は前にたびたびそこに泊ったことがあるので、その夜も小屋に泊るつもりだったが、なにしろ
主
(
あるじ
)
がこんな機嫌なので、帰ったほうがいいと思った。
黄金虫
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
と、むしゃぶりつこうとすると、相手の乳母、これも気がうわ擦ってしまって、
主
(
あるじ
)
か他人か、見境もなくしたと見えて、あべこべに噛みつくように
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
バラさん、寿江子にそう云うと、私はもう否応なく
主
(
あるじ
)
で、病院にいた間とはすっかりちがい、ひとまかせにしていられない生活の顔がもう其処に在る。
寒の梅
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
その中でもはつきりと判るのは、美しい立派なお客をその家に迎へて挨拶してゐるソーンフィールド莊の
主
(
あるじ
)
の、大きくはないがよくとほる聲であつた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
「この島の
主
(
あるじ
)
ミンチよ。太陽は海の中へすっかりおちてしまった。いよいよやくそくの時刻になったではないか。さあ、早くその尊いものを出してくれ」
太平洋魔城
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
親譲りの背広を着た男は、丸い眼を
据
(
す
)
えて、
室
(
へや
)
の中に
聳
(
そび
)
える、
漆
(
うるし
)
のような髪の
主
(
あるじ
)
を見守った。次に丸い眼を据えて、壁の上にある故人の肖像を見守った。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
部屋のまんなかに突っ立ってけげんそうに二人を見ている
主
(
あるじ
)
に会釈した後、手を差し伸べて握手したが、その間も絶えず自分の浮き浮きした気分を抑えて
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
此の身さえ儘ならぬ無人島の
主
(
あるじ
)
、思えば我が身ほど不運な者はない、いや/\愚痴を
溢
(
こぼ
)
すところでない、海上にて
彼
(
あ
)
の
難風
(
なんぷう
)
に出会い、
幸
(
さいわい
)
に船は
覆
(
くつがえ
)
りもせず
後の業平文治
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「まア宜い、其處まで行屆けば、お前も一本立の御用聞だ、——十手一梃の
主
(
あるじ
)
さ、——ところで菊屋傳右衞門は商賣柄うんと諸方の
怨
(
うらみ
)
は買つてゐるだらうな」
銭形平次捕物控:166 花見の果て
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
下宿屋
生活
(
ぐらし
)
より一躍して仮にも一家の
主
(
あるじ
)
となれば
自
(
おのずか
)
ら心
寛
(
くつろ
)
ぎて何事も愉快ならざるはなし、勝手を働くは小山が世話せし
雇婆
(
やといばあ
)
さん、これとて当座の間に合せ
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
その実吉新の
主
(
あるじ
)
の新造というのは、そんな
悪
(
わる
)
でもなければ善人でもない平凡な商人で、わずかの間にそうして店をし出したのも、単に
資本
(
もとで
)
が充分なという点と
深川女房
(新字新仮名)
/
小栗風葉
(著)
茫然
(
ぼうぜん
)
自失している彼等の前に、疾風
迅雷
(
じんらい
)
のように乗り込んで来たのは皮肉にも南部の藩士である。没収を宣言された彼らの土地や家屋には
主
(
あるじ
)
は無い筈であった。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
家の
主
(
あるじ
)
は此山もみじの蔭に椅子テーブルを置いて、時々読んだり書いたり、而して地蔵様を眺めたりする。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
主
(
あるじ
)
が蝋燭を持って彼の後から階段のところまで送って出て、彼が階段を降りるのを照してやった時、
夜明
(
よあけ
)
の光はもうそこの
汚
(
よご
)
れた窓から寒そうに覗き込んでいた。
二都物語:01 上巻
(新字新仮名)
/
チャールズ・ディケンズ
(著)
壁の落ちかかった奥の間へ導かれた伝七は、この家の
主
(
あるじ
)
を見ると心の中で思わず「あッ」と叫んだ。
乳を刺す:黒門町伝七捕物帳
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
七十ばかりな
主
(
あるじ
)
の
翁
(
おきな
)
は若き男女のために、自分がこの地を銃猟禁制地に許可を得し事柄や、池の歴史、さては鴨猟の事など話し聞かせた。その中には面白き話もあった。
春の潮
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
少佐から馬に乗って出勤が出来るんですから、一国一城の
主
(
あるじ
)
になったような心持で大威張りだったそうでございます。ところが、お上から戴く
飼葉料
(
かいばりょう
)
が少いんですって。
求婚三銃士
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
昼間からずっと、一番可愛がってくれる
主
(
あるじ
)
を見なかったので、よっぽどうれしかったらしい。煙草葉を入れた笊を落しそうになるほど、騒々しく飛びかかって、じゃれる。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
此
主
(
あるじ
)
となつて、此処に来れとわしを招くやうに、嘲笑ふ日の光に輝きながら、此方へ近づくかと思はれた宮殿を、望見してゐたと云ふ事を。疑も無く彼女はそれを知つてゐた。
クラリモンド
(新字旧仮名)
/
テオフィル・ゴーチェ
(著)
それでも
勘次
(
かんじ
)
は
怖
(
おそ
)
ろしい
卯平
(
うへい
)
と
一
(
ひと
)
つ
竈
(
かまど
)
であるよりも
却
(
かへつ
)
て
本意
(
ほんい
)
であつた。お
袋
(
ふくろ
)
が
死
(
し
)
んでから
老
(
お
)
いた
卯平
(
うへい
)
は
勘次
(
かんじ
)
と
一
(
ひと
)
つに
成
(
な
)
らなければならなかつた。
其
(
その
)
時
(
とき
)
はもう
勘次
(
かんじ
)
が
主
(
あるじ
)
であつた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
かつては大正末期の新劇大女優さ——当時三歳にすぎなかったその人を
主
(
あるじ
)
としているうちに、大正四年になると、思いがけなかった男の子が、算哲の愛妾岩間富枝に
胎
(
みごも
)
ったのだ。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
小屋には
主
(
あるじ
)
夫婦の外に一人の男が火を囲んで話をしていたが、用談が済むと帰って行った。少し許りの水は忽ち飲み尽して仕舞ったので、主は二斗樽を背負って汲みに出懸けた。
奥秩父の山旅日記
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
少
(
すこ
)
しもの
足
(
た
)
らないところもありますが、
家
(
いへ
)
の
主
(
あるじ
)
の
持
(
も
)
ちそうな
氣持
(
きも
)
ちをよくいつてゐます。
歌の話
(旧字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
主
常用漢字
小3
部首:⼂
5画
“主”を含む語句
主人
亭主
主婦
主家
女主人
家主
御主
主殺
主題
御亭主
坊主
神主
主翁
主君
領主
主從
主取
救世主
主従
女主人公
...