)” の例文
汝は汝の信ずるごとく今地上にあるにあらず、げに己が處を出でゝする電光いなづまはやしといへども汝のこれに歸るに及ばじ。 九一—九三
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
四百人弓矢を帯びて三重に兎どもを取り巻き正使副使と若干の大官のみ囲中に馬をせて兎を射、三時間足らずに百五十七疋取った。
その夜はすわり相撲や腕押しで夜遅くまで大いに騒いだ。ところで、水戸から膝栗毛ひざくりげに鞭打って、我が一行にせ加わった三勇士がある。
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
あの夙川しゅくがわの貧しい家に住む母や兄の上に思いをせて、自分もあの家にいた方がよかったと、後悔しているのではなかろうか。………
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
保は報を得て、せて武田の家に往った。警察署長佐藤某がいる。郡長竹本元儤がいる。巡査数人がいる。佐藤はこういうのである。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
森林の王鬼王丸が眷族けんぞくひきいて出陣したと早くも聞き伝えた妖精どもが谷々峰々から数を尽くし味方しようとせ加わったのである。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ちょうど二時頃銃声がとどろいたので、館中がすくむような恐怖に鎖されてしまって、誰一人現場にせつけようとするものはなかった。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
「おねがいです。もいちど京へ立ち戻り、かの御方おんかた達の安否をたしかめました上で、再びお後を慕い東国へせ下りますれば——」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
車夫は諸声いっせい凱歌かちどきを揚げ、勢いに乗じて二歩を抽き、三歩を抽き、ますますせて、軽迅たまおどるがごとく二、三間を先んじたり。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
長老は無性むしょうになりぬ。そのとき、近所の者どもは寺の客殿の上に火の手上がりたるを見、火事ありと思いておびただしくせ集まれり。
迷信解 (新字新仮名) / 井上円了(著)
日本にむ動物としては、これより以上の猛獣は無い。その子熊をこのままにしてせつけた日には、後患のほどが思いやられる。
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
鍋町なべちやううらはう御座ございますかと見返みかへればいな鍋町なべちやうではなし、本銀町ほんしろかねちやうなりといふ、らばとばかりいだまた一町いつちやうまがりませうかとへば
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
その思い附きをって空想をせることに、鶴見は特に興味を感ずる。新聞社に投じた文章もそうした思い附きの一つに過ぎなかった。
こちら側の経蔵もやはり同じことであったのでございましょう、松明たいまつを振りかざした四五人の雑兵ぞうひょうが一散にせ寄って参りました。
雪の宿り (新字新仮名) / 神西清(著)
これは「雨ふれど音の聞えず、しぶきのみ露とぞ置く」コンクリート建築に慊焉けんえんたる結果、さわやかな雨の音におもいせられたものであろう。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
馬車あまた火山のあなより熔け出でし石を敷きたる街をひて、間〻馬のその石面のなめらかなるがためにつまづくを見る。小なる雙輪車あり。
それが、大学を出ると、見る間に、メキ/\と売り出して、今では新進作家の第一人者として文壇を圧倒するような盛名をせている。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
もし、決意あられて令旨を下され給うなら、宮のもとに喜び勇さんでせ参ずる源氏の兵は、諸所諸国に宮のご想像より遥かに多いのです
早速自転車をしらせて、一応警察の方にその男の始末を頼んで置き、意気揚々とした村田を真中に、喜村の家にかえって来た。
睡魔 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
私は此処のイーサル川の美しい有様を絵葉書で見て時々夢想をせたのであつたが、私の生涯のうちにはそれが出来なくなつてしまつた。
イーサル川 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
Francesco de Goya と云ふ。ゴヤは画名を西班牙にするもの、生前しばしばドンナ・マリア・テレサの像をゑがく。
あなた! (突然立ち上って上手に走り)奥田先生! 奥田せんせい! (またせかえり、野中の死体に武者振りついて泣く)
春の枯葉 (新字新仮名) / 太宰治(著)
其法は夜中を以て両炬りょうきょもやし、人の形状気色きしょくて、参するに生年月日げつじつを以てするに、百に一びょう無く、元末より既に名を天下にせたり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
自分は成るたけ早く男の側から遠ざかろうと思って、黄金色こがねいろに輝いている朝の空気の中を、次第に遠く遠くせ去るのであろう。
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
敵方は、海岸からせ集まった混成軍。味方は、詩人の芳衛さん、絵の上手なトクべえさん、陽気なピロちゃん、男の子の鮎子さんの四人。
キャラコさん:07 海の刷画 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
そして、それがなんであるか、自分じぶんようとおもって、くろひとみをばなみうえせたのです。うみは、きているもののようにうごいていました。
北の少女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
勝信 (登場。髪を上品な切り髪にしている。門を出ると二人の争うているのを見てせ寄る)どうしたのだえ。須磨ちゃん。
出家とその弟子 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
何よりも彼等はジャーナリズムを、時流に属するものを憎悪した。そして遠く歴史の過去を慕い、思いを中世の懐古にせた。
詩の原理 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
校長として令名れいめいせ、一音楽家にして上院の終身議員となり、功成りげて一九〇四年五月一日六十三歳をもって没した。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
一群の星は前述のリーラ星座より発して四方に展開しつつあるがごとく、他の一群は北天カメロパルダリス星座の辺よりいずるようである。
宇宙の二大星流 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
また一方においては空想のつばさに乗って、遠くインドをはじめ、グリーンランドやアフリカ、中国にまでも思いをせている。
絵のない絵本:02 解説 (新字新仮名) / 矢崎源九郎(著)
空にはうすい雲がすっかりかゝり、太陽は白い鏡のやうになって、雲と反対にせました。風が出て来て刈られない草は一面に波を立てます。
種山ヶ原 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
仏蘭西委員と英吉利委員とは、ともに、自分たちの国の歴史に思ひをせました。どつちからともなく、ジヤンダアクの名が口にされました。
けむり(ラヂオ物語) (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
そして、いちはやくせ戻り、店に坐って、客の来るのを待ち受けるのだった。しかし、たいして繁昌はやりもしなかった……。
勧善懲悪 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
ふらふら歩いていた松木は、疲れた老馬がむちのために、最後の力を搾るように、また、銃を引きずって、向うへした。
渦巻ける烏の群 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
其処にはただ三四尺の小さな流がもとのままに潺々せんせんたるせせらぎの音を立てているだけなのに自分勝手な思いをせていた。
朴の咲く頃 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
海難救助サルベージ協会の救難船が、現場にせつけた頃には、もう北海丸の船影はなく、炭塵や油の夥しく漂った海面には、最初にかけつけた釧路丸が
動かぬ鯨群 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
と。すですること(二九)はいをはりて、(三〇)田忌でんきひとたびたずしてふたたつ。つひわうの千きんたり。ここおい孫子そんし威王ゐわうすすむ。
今匈奴が西河せいがに侵入したとあれば、なんじはさっそく陵を残して西河にせつけ敵の道をさえぎれ、というのが博徳への詔である。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
流石さすがの子供たちも「あゝ」とか「うん」とかなま返事しながらせ去る足音がした。やつと私は潜戸くぐりどを開けて表へ出てみた。
蔦の門 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
と、栄三郎が先方を望んでまっしぐらにせかかった刹那! その出足に絡むように、つと闇黒からわいて現われた黒影!
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
いにしえのギリシャにあこがれの誠をいたすにつれ、今のギリシャの悲境を見るに見かねて、これが救済にせ向かわんとした情熱の人詩人バイロンに
茶の本:01 はしがき (新字新仮名) / 岡倉由三郎(著)
されど童らはもはやこの火にかえることをせず、ただ喜ばしげに手を拍ち、高く歓声を放ちて、いっせいに砂山のふもとなる家路のほうへせ下りけり。
たき火 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
只今は頂戴ちょうだいいたしますまい。食事ぜんですから。(ゾフィイは藁椅子を持ち来て腰を掛く。学士はその椅子を自分にて持ち来らんとしてせ寄る。)
貧なればよく質素にあまんずといへども僅少きんしょうの利を得ればただちに浪費するへきある事なり。常に中庸をとうとび極端にする事を恐るる道徳観をする事なり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
常に此筋向うの酒屋へは能く行きますが目「好し、彼所あすこで問うたら分るだろう」と云い大足に向うの酒店さかみせせて入る
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
癸丑きちゅう六月に夷舶いはくの来りしとき、余、江戸に遊寓ゆうぐうす。警を聞きせて浦賀に至り、親しく陸梁りくりょうの状を察し、憤激にえず。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
それを少し離れた処で柄の付いた八角形の眼鏡めがねの、凸レンズが七個に区画されたのでのぞくと、七人のそうした姿の男が縦横にせ廻るように見えて
梵雲庵漫録 (新字新仮名) / 淡島寒月(著)
場所も丁度ちょうど、この橋の川上だった。久しく打ち絶えていた水馬すいばの競技が、何年かぶりにまたもよおされることになって、平七もその催しにせ加わった。
山県有朋の靴 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
苦悶の陶酔の裡に真理の花を探しもとめんがために、エピクテート学校の体育場へせ参ずるストア学生の、お前は勇敢なロシナンテではなかったか!
ゼーロン (新字新仮名) / 牧野信一(著)