トップ
>
閨
>
ねや
ふりがな文庫
“
閨
(
ねや
)” の例文
見るに
衣裳
(
なり
)
は
見苦
(
みぐる
)
しけれども色白くして
人品
(
ひとがら
)
能く
鄙
(
ひな
)
に
稀
(
まれ
)
なる美男なれば
心
(
こゝろ
)
嬉敷
(
うれしく
)
閨
(
ねや
)
に
伴
(
ともな
)
ひつゝ終に
新枕
(
にひまくら
)
を
交
(
かは
)
せし故是より吉三郎もお菊を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
閨
(
ねや
)
、
衾
(
しとね
)
から、枕の類にまで事寄せ、あるひは戀とし、あるひは哀傷として、詩にも作られ、歌にも詠まれ、文章にも綴られて來たのは
桃の雫
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
若いお内儀さんが
夜半
(
よなか
)
に
閨
(
ねや
)
をぬけ出して、下女部屋へ忍んで来た仔細は
直
(
すぐ
)
に判った。判ると同時に、お菊は差当りの返事に困った。
黄八丈の小袖
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
更
(
ふ
)
け
行
(
ゆ
)
く
閨
(
ねや
)
に
聲
(
こゑ
)
もなく、
凉
(
すゞ
)
しい
目
(
め
)
ばかりぱち/\させて、
鐘
(
かね
)
の
音
(
ね
)
も
聞
(
きこ
)
えぬのを、
徒
(
いたづら
)
に
指
(
ゆび
)
を
折
(
を
)
る、
寂々
(
しん/\
)
とした
板戸
(
いたど
)
の
外
(
そと
)
に、ばさりと
物音
(
ものおと
)
。
雪の翼
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
閨
(
ねや
)
むつみの頃をはかって室を襲い、家人をみな縛りあげた上、財宝はもちろん、男女の衣裳まで
悉皆
(
しっかい
)
、車につんで持ち去ってしまった。
平の将門
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
その後も毎夜夫人の
閨
(
ねや
)
を訪れては、例に依って
兎唇
(
みつくち
)
の口元をもぐ/\させながら聞き取りにくい甘ったるい私語をさゝやいていた。
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
その後貴女の
閨
(
ねや
)
を訪れた人も、コマンドルスキーの海底でこの世を去った艇長も、同様シュテッヘでありまして、しかもなお
奇異
(
ふしぎ
)
な事には
潜航艇「鷹の城」
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
まるで、
閨
(
ねや
)
を共にする男へなんぞの
色気
(
いろけ
)
は、
大嵐
(
おおあらし
)
の中へ
吹
(
ふ
)
き飛ばしたかのように、自分一人で涙を楽しんでいる風なのだ。
魚の序文
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
「ない事はございますまい。貴方が仰有らないでこんな事になる筈がありませぬ、武辺一徹の父に、——夫婦の
閨
(
ねや
)
の事など察せられると思いますか」
入婿十万両
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
其すら、其
後
(
ご
)
、人の世になっても、氏貴い家々の娘御の
閨
(
ねや
)
の戸までも、忍びよると申しまする。世に言う「天若みこ」と言うのが、其でおざります。
死者の書
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
温かい
閨
(
ねや
)
の燃えるような夜具の中に、くるくると包まれてゆく心持になってゆく時、ヒヤリとして胸を
衝
(
つ
)
いたものは
大菩薩峠:21 無明の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
かくて兎も角も其夜となり、式ども
滞
(
とゞこほり
)
なく相済み、さて嫁女と共に
閨
(
ねや
)
に入るに、
彼
(
か
)
の嫁女奈美殿、屏風の中にひれ伏してシミ/″\と泣き給ふ
体
(
てい
)
なり。
白くれない
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
娘は脂ぎつた利右衞門の
閨
(
ねや
)
に
侍
(
はべ
)
るために、門を入り、母はたつた一人の我家に悄然として歸る外は無かつたのです。
銭形平次捕物控:266 処女神聖
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
憂悶
(
ゆうもん
)
の雲は忽ち
無辜
(
むこ
)
の青年と、金を盗まれた両親との上に
掩
(
おお
)
い掛かる。それを余所に見て、余りに気軽なマリイ・ルイイズは、
閨
(
ねや
)
に入って夫に戯れ掛かる。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
蝋燭
(
ろうそく
)
の明りが来た。右近には立って行くだけの力がありそうもないので、
閨
(
ねや
)
に近い
几帳
(
きちょう
)
を引き寄せてから
源氏物語:04 夕顔
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
自己推薦の
件
(
くだり
)
は宜しくこなして、好い気持ちにペンが滑った余り、つい大昔の初恋時代の感傷に返ったヘルグライン君、「ひとり寝の
閨
(
ねや
)
淋しきままに」なんかと
斧を持った夫人の像
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
凄
(
すさまじ
)
き谷川の響に紛れつつ、
小歇
(
をやみ
)
もせざる雨の音の中に、かの
病憊
(
やみつか
)
れたるやうの柱時計は、息も
絶気
(
たゆげ
)
に半夜を告げわたる時、
両箇
(
ふたり
)
が
閨
(
ねや
)
の
燈
(
ともし
)
は
乍
(
たちま
)
ち
明
(
あきら
)
かに
耀
(
かがや
)
けるなり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
一と目三井寺
焦
(
こが
)
るる胸を
主
(
ぬし
)
は察して
晩
(
くれ
)
の鐘と、その
閨
(
ねや
)
に忍んで打ち
口説
(
くど
)
けど聞き入れざるを恨み、青年の袋の内へ銀製の名器を入れ置き、彼わが家宝を盗んだと訴え
十二支考:08 鶏に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
「しかも今から一月ほど前に抱えた妾だと申すことじゃ。
閨
(
ねや
)
の中まで思い遣られてなアッハハハ」
赤格子九郎右衛門の娘
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
なお幾夜かくあるべくありしなり、阿園には夫婦の
睦
(
むつ
)
みいまだ尽きず、
閨
(
ねや
)
の
温味
(
ぬくみ
)
いまだに冷えず、恋の夢ただ見初めたるのみなりしなり、彼は哀れにも尼の願いを起し
空家
(新字新仮名)
/
宮崎湖処子
(著)
故人
(
こじん
)
がよみつる歌の事などさま/″\胸に迫りて、ほと/\涙もこぼれつべく、ゆかしさのいと
堪
(
た
)
へがたければ、
閨
(
ねや
)
の戸おして大空を
打見
(
うちみ
)
あぐるに、月には横雲少しかゝりて
すゞろごと
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
「妹ガ
閨
(
ねや
)
ノ板戸ヲ開ムトスレバ、音ノ高クテ人ノ聞付ム事ヲ恐レ、サリトテ帰リモエヤラデ其アタリノ霜ノ上ニ一夜寝タルトナリ」(代匠記)の解は簡潔でよいから記して置く。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
お
國
(
くに
)
と申す女中がございまして、器量人並に
勝
(
すぐ
)
れ、
殊
(
こと
)
に
起居周旋
(
たちいとりまわし
)
に
如才
(
じょさい
)
なければ、殿様にも
独寝
(
ひとりね
)
の
閨
(
ねや
)
淋しいところから
早晩
(
いつか
)
此のお國にお手がつき、お國は
到頭
(
とうとう
)
お
妾
(
めかけ
)
となり済しましたが
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
閨
(
ねや
)
の審判を、どんなにきびしく排撃しても、しすぎることはない、と、とうとう私に確信させてしまったほどの功労者は、誰であったか。無智の洗濯女よ。妻は、職業でない。妻は、事務でない。
HUMAN LOST
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
。私は前に云った通り性慾の醜い奴隷なのです。実は一月許り前に妻が郷里の秋田へ帰りました。その留守の
閨
(
ねや
)
淋しさに私は女中の貞に挑みかゝり、とう/\暴力を以て獣慾を遂げて終ったのです
支倉事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
「
櫛
(
くし
)
簪
(
こうがい
)
も何処へやら」、「夏衣」、「
初音
(
はつね
)
待たるる
時鳥
(
ほととぎす
)
」、「
閨
(
ねや
)
の戸叩く
水鶏
(
くいな
)
」、「蚊屋の中」、「晴れて逢う夜」、「見返り柳」、などの刺激の強い表象が、春夏秋冬にはめて並べられている。
日本精神史研究
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
閨
(
ねや
)
の上にかたえさしおほひ外面なる葉廣柏に霰ふるなり (能因)
歌よみに与ふる書
(旧字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
竹藪
(
たけやぶ
)
に伏勢を張ッている
村雀
(
むらすずめ
)
はあらたに軍議を開き初め、
閨
(
ねや
)
の
隙間
(
すきま
)
から
斫
(
き
)
り込んで来る暁の光は次第にあたりの闇を追い
退
(
の
)
け、遠山の角には
茜
(
あかね
)
の幕がわたり、
遠近
(
おちこち
)
の
渓間
(
たにま
)
からは朝雲の
狼煙
(
のろし
)
が立ち昇る。
武蔵野
(新字新仮名)
/
山田美妙
(著)
好
(
い
)
い人の
閨
(
ねや
)
へおいでなさいと云うのですよ。
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
閨
(
ねや
)
の
一室
(
ひとま
)
の濃きにほひ
有明集
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
我が
閨
(
ねや
)
の傍へのベツド。
晶子詩篇全集拾遺
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
見よ
閨
(
ねや
)
の戸の夕間ぐれ
枯草
(新字旧仮名)
/
野口雨情
(著)
閨
(
ねや
)
の
麝香
(
じやかう
)
の息づかひ。
東京景物詩及其他
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
蘭麝
(
らんじや
)
馨
(
かを
)
れる
閨
(
ねや
)
の
戸
(
と
)
に
花守
(旧字旧仮名)
/
横瀬夜雨
(著)
繻子枕
(
しゅすまくら
)
に下がっている金の鈴が、ほの暗い
閨
(
ねや
)
の気配のうちに光っていた。——それもまた、ふたりの
寛
(
くつろ
)
ぎをかえって邪魔していた。
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
雫
(
しづく
)
の
餘波
(
あまり
)
、
蔓
(
つる
)
にかゝりて、
玉
(
たま
)
の
簾
(
すだれ
)
の
靡
(
なび
)
くが
如
(
ごと
)
く、
頓
(
やが
)
てぞ
大木
(
たいぼく
)
を
樹上
(
きのぼ
)
つて、
梢
(
こずゑ
)
の
閨
(
ねや
)
を
探
(
さぐ
)
り
得
(
え
)
しが、
鶴
(
つる
)
が
齊眉
(
かしづ
)
く
美女
(
たをやめ
)
と
雲
(
くも
)
の
中
(
なか
)
なる
契
(
ちぎり
)
を
結
(
むす
)
びぬ。
妙齢
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
「それでは、なぜ貴女は、艇長の写真を壁の小孔に当てて、掛けて置いたのです。僕はあの孔一つから、貴女の心の
閨
(
ねや
)
を覗き込みましたよ」
潜航艇「鷹の城」
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
その、かね/″\夢みていた世界が今や事実となって夫人の
閨
(
ねや
)
に展開されていると云う期待は、彼のあこがれを甚だしく
募
(
つの
)
らせるのであった。
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
ひとりの
閨
(
ねや
)
に夜ふけて目をさますおりおりなぞは、彼女は枕の上で旦那の物に誘われやすい気質を考えて、それを旦那の情のもろさというよりも
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
「わたくしが不義をせぬ証拠は、直次郎さまとお馴れ申して半年近く夫婦の約束までしながら未だ一度も
閨
(
ねや
)
を共にした事がございませぬ——それは」
嫁取り二代記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
其日からもう、若人たちの
糸縒
(
いとよ
)
りは初まった。夜は、
閨
(
ねや
)
の闇の中で寝る女たちには、
稀
(
まれ
)
に男の声を聞くこともある、奈良の
垣内
(
かきつ
)
住いが、恋しかった。
死者の書
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
客扱いに馴れている手だれの彼女は、強情な男を、無理無体に引き戻して、お染が
閨
(
ねや
)
の客にしてしまった。
鳥辺山心中
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「お竹殿の
閨
(
ねや
)
を犯そうとした為じゃ、——仏罰の恐ろしさは、ひしと身にこたえたであろう。お解りか」
奇談クラブ〔戦後版〕:15 お竹大日如来
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
ほいと賤人を寵愛して
閨
(
ねや
)
の
伽
(
とぎ
)
をさせるはすなわちほいと賤人に落ちたも同然、もし我々同族のうちに、左様な人物がありとすれば、同席さえも
汚
(
けが
)
れではござるまいか。
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
慙
(
は
)
じて蛇になった例は、陸前佐沼の城主平直信の妻、佐沼御前
館
(
やかた
)
で働く大工の美男を
見初
(
みそ
)
め、夜分
閨
(
ねや
)
を出てその小舎を尋ねしも見当らず、内へ帰れば戸が鎖されいた。
十二支考:04 蛇に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
ご覧よ水牛が沼から上がって、獣皮の天幕の裾の下から、顔を入れて
閨
(
ねや
)
をうかがっているから。お聞きよ、たくさんの天幕の中から、男のうなされている声が聞こえる。
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
右近は北側の室へはいって行ったがしばらくして出て来た。そして姫君の
閨
(
ねや
)
の
裾
(
すそ
)
のほうで寝た。
源氏物語:53 浮舟
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
劇
(
はげし
)
く物思ひて
寝
(
い
)
ねざりし夜の明方近く疲睡を催せし貫一は、新緑の雨に暗き七時の
閨
(
ねや
)
に
魘
(
おそは
)
るる夢の苦く
頻
(
しきり
)
に
呻
(
うめ
)
きしを、
老婢
(
ろうひ
)
に
喚
(
よば
)
れて、覚めたりと知りつつ
現
(
うつつ
)
ならず又睡りけるを
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
呼出されて尋ねられし所玄柳申立るはお常の頼みに候へ共毒藥は
容易
(
ようい
)
成
(
なら
)
ざるに付
調合
(
てうがふ
)
せず
斯々
(
かく/\
)
致し
風邪藥
(
かぜぐすり
)
にて間を合せ候と
答
(
こたふ
)
るにぞ大岡殿次に下女お菊を
呼
(
よば
)
れ其方主人の
閨
(
ねや
)
へ
刄物
(
はもの
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
蚊幮
(
かや
)
の外に小さく燃えているランプの光で、
独寝
(
ひとりね
)
の
閨
(
ねや
)
が寂しく見えている。
あそび
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
閨
漢検1級
部首:⾨
14画
“閨”を含む語句
閨房
閨秀
令閨
閨閥
閨中
閨戸
翠帳紅閨
閨室
閨閣
閨門
孤閨
空閨
紅閨
閨技
閨衣
閨怨
閨秀作家
宮掖閨閤
後閨
御令閨
...