“貴(たふと)” の例文
さま/″\の力その活(い)かす貴(たふと)き物體(力のこれと結びあふこと生命(いのち)の汝等におけるが如し)と合して造る混合物(まぜもの)一(いつ)ならじ 一三九—一四一
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
人は理想あるが故に貴(たふと)かるべし、もし実在の仮偽なる境遇に満足し了る事を得るものならば、吾人は人間の霊なる価直(かち)を知るに苦しむなり。
一種の攘夷思想 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
灌(そそ)ぎ出すに用ゐたりと見ゆる土噐唇に觸(ふ)れたりと見ゆる土噐の容量(ようりやう)、比較的(ひかくてき)に小なるは中に盛りたる飮料(ゐんれう)の直打(ねう)ち湯水よりは貴(たふと)きに由りしならん。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
※弟(きやうだい)が建場(たてば)の茶屋(ちやや)に腕車(くるま)を雇(やと)ひながら休(やす)んで居(ゐ)る處(ところ)へ行(い)つて、言葉(ことば)を懸(か)けて見(み)ようとしたが、其(その)子達(こだち)の氣高(けだか)さ!貴(たふと)さ! 思(おも)はず此(こ)の天窓(あたま)が下(さが)つたぢや。
旅僧 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
こんな勝(すぐ)れた歌(うた)が、しかも非常(ひじよう)に貴(たふと)い方々(かた/″\)のお作(さく)に出(で)て來(き)てゐるに拘(かゝは)らず、世間(せけん)の流行(りゆうこう)は、爲方(しかた)のないもので、だん/\、惡(わる)い方(ほう)へ/\と傾(かたむ)きました。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
それは無論(むろん)寂しく、口惜(くや)しく、悲しいことではあつたが、なほ胸深く消え去らない修道院での感激や驚異はそれ等をつぐなつてあまりある貴(たふと)い旅の收穫であつた。
処女作の思い出 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
どりゃ、太陽(ひ)が其(その)燃(も)ゆるやうな眼(まなこ)を擧(あ)げて今日(けふ)の晝(ひる)を慰(なぐさ)め、昨夜(さくや)の濕氣(しっき)を乾(かわか)す前(まへ)に、毒(どく)ある草(くさ)や貴(たふと)い液(しる)を出(だ)す花(はな)どもを摘(つ)んで、吾等(われら)の此(この)籃(かご)を一杯(ぱい)にせねばならぬ。
〔譯〕學(がく)は自得(じとく)を貴(たふと)ぶ。人徒(いたづら)に目を以て有字の書を讀む、故に字に局(きよく)し、通透(つうとう)することを得ず。當(まさ)に心を以て無字の書を讀むべし、乃ち洞(とう)して自得するところ有らん。
日本(にほん)で國民(こくみん)が眞(しん)に生命(せいめい)の貴(たふと)きを知(し)り、財産(ざいさん)の重(おも)んずべきを知(し)つたのは、ツイ近(ちか)ごろのことである。
日本建築の発達と地震 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
ここに天の宇受賣白さく、「汝命(いましみこと)に勝(まさ)りて貴(たふと)き神いますが故に、歡喜(よろこ)び咲(わら)ひ樂(あそ)ぶ」と白しき。
實(じつ)に北條小學校職員(ほうじようしようがつこうしよくいん)によつてなされた前記現象(ぜんきげんしよう)の觀察(かんさつ)は、地震學上(ぢしんがくじよう)極(きは)めて貴(たふと)いものであつた。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
言(い)はむすべせむすべ知らに(知らず)極(きは)まりて貴(たふと)きものは酒(さけ)にしあるらし (同・三四二)
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
深紅(しんく)の色の薔薇(ばら)の花、秋の夕日の豪奢(はで)やかさを思はせる深紅(しんく)の色の薔薇(ばら)の花、まだ世心(よごころ)のつかないのに欲を貪る者の爲添伏(そひぶし)をして身を任す貴(たふと)い供物(くもつ)、僞善(ぎぜん)の花よ、無言(むごん)の花よ。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
啻(たゞ)に己(おのれ)より長ずること五歳なる友であつたのみではなく、頗(すこぶ)る貴(たふと)い賓客であつただらう。
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
山高きがゆゑに貴(たふと)からず、樹あるを以つて貴しとするといふ古い語は今でも生きてゐる。
華厳滝 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
その頃の小判は非常に貴(たふと)いもので、田舍の貧しい人などは、生涯小判といふものを、見ずに終る人も少なくなかつたと言はれるくらゐ、櫻の馬場に集まつた數千の彌次馬が、眞夜中まで粘(ねば)つて
いとも三三一験(げん)なる法師にて、凡(およ)そ三三二疫病(えやみ)、妖災(もののけ)、蝗(いなむし)などをもよく祈るよしにて、此の郷(さと)の人は貴(たふと)みあへり。此の法師三三三請(むか)へてんとて、あわただしく三三四呼びつげるに、漸(やや)して来りぬ。
わたしの大事な貴(たふと)い声の在処(ありか)を。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
いみじくも貴(たふと)き景色(けしき)
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
いざ願はくは彼の來れるを嘉(よみ)せ、彼往きて自由を求む、そもこのもののいと貴(たふと)きはそがために命(いのち)をも惜しまぬもののしるごとし 七〇—七二
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
名(な)が何(なん)ぢゃ? 薔薇(ばら)の花(はな)は、他(ほか)の名(な)で呼(よ)んでも、同(おな)じやうに善(よ)い香(か)がする。ロミオとても其通(そのとほ)り、ロミオでなうても、名(な)は棄(す)てゝも、其(その)持前(もちまへ)のいみじい、貴(たふと)い徳(とく)は殘(のこ)らう。
と、胸には貴(たふと)い感動がまた強く蘇(よみがへ)り、一種の快(こゝちよ)い創作的興奮が私のすべてを生き生きさせた。
処女作の思い出 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
降(ふ)る雪(ゆき)の白髪(しろかみ)までに大君(おほきみ)に仕(つか)へまつれば貴(たふと)くもあるか 〔巻十七・三九二二〕 橘諸兄
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
〔譯〕士(し)は獨立(どくりつ)自信(じしん)を貴(たふと)ぶ。熱(ねつ)に依(よ)り炎(えん)に附(つ)くの念(ねん)、起す可らず。
姿いと貴(たふと)き者と親(した)しく相かたらふさまなるかの鼻の小さき者は百合の花を萎(しを)れしめつゝ逃げ走りて死したりき 一〇三—一〇五
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
予(わし)が廟(たまや)へ降(お)りるは、姫(ひめ)の面(かほ)を見(み)ようがためでもあるが、それよりも姫(ひめ)が身(み)に着(つ)けた貴(たふと)い指輪(ゆびわ)を或(ある)大切(たいせつ)な用(よう)に使(つか)はうため取外(とりはづ)して來(く)るのが主(おも)な目的(もくてき)ぢゃによって、早(はや)う往(い)ね。
一は殊(こと)に價貴(たふと)し、されど一は纈(むすび)を解(ほぐ)すものなるがゆゑにあくるにあたりて極めて大なる技(わざ)と智(さとり)を要(もと)む 一二四—一二六
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)