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葛
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くず
ふりがな文庫
“
葛
(
くず
)” の例文
壁には
蔦
(
つた
)
や
葛
(
くず
)
がはい茂り、庭は雑草にうずもれて、秋でもないのに、さながら秋の野のように草ぶかく荒れはてた家の様子であった。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
「おえいは日々雪のつもる山に
葛
(
くず
)
をほりに行き
候
(
そうろう
)
みなしてかせぎためろぎん出来
候
(
そうら
)
えば其身にあいに参り候たのしみいてくれられよ」
吉野葛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
九州の
窮介
(
きゅうすけ
)
、吉野の
葛
(
くず
)
、
山中
(
やまなか
)
の片栗というような本場ものでやると、料理も完全なものになる。そんな葛も築地の珍味店に行くとある。
琥珀揚げ
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
子供
(
こども
)
はよろこんで、あわてて
取
(
と
)
りすがろうとしましたが、いったん
元
(
もと
)
の
狐
(
きつね
)
に
返
(
かえ
)
った
葛
(
くず
)
の
葉
(
は
)
は、もう
元
(
もと
)
の
人間
(
にんげん
)
の女ではありませんでした。
葛の葉狐
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
一つは
緑煮
(
みどりに
)
といって細かく切った肉を酒と味淋と醤油でよく煮ましてそれから湯煮た青豆を入れてまた煮て溶き
葛
(
くず
)
でドロドロにします。
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
▼ もっと見る
そのすこし前までは白菊を
摺箔
(
すりはく
)
にした上衣を着ていたが、今はそれを脱いでただ
蒲
(
がま
)
の薄綿が透いて見える
葛
(
くず
)
の
衣物
(
きもの
)
ばかりでいる。
武蔵野
(新字新仮名)
/
山田美妙
(著)
そのなかに人妻となって子を生んだ
葛
(
くず
)
の
葉
(
は
)
という狐の話をとり上げられた一篇があって、そこにこういう挿話が語られている。
大和路・信濃路
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
この歌が
安倍晴明
(
あべのせいめい
)
の母だという
葛
(
くず
)
の葉の狐の話と、同じものだということは誰にも分りますが、那須の方は子供のことをいっておりません。
日本の伝説
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
葛
(
くず
)
の花のなだれ下った斜面から水が洩れていて、低まっていく日の満ちた谷間の底を、日ぐらしの声がつらぬき透っていた。
微笑
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
築山陰
(
つきやまかげ
)
の
野路
(
のぢ
)
を写せる
径
(
こみち
)
を行けば、
蹈処無
(
ふみどころな
)
く地を
這
(
は
)
ふ
葛
(
くず
)
の乱れ
生
(
お
)
ひて、
草藤
(
くさふぢ
)
、
金線草
(
みづひき
)
、
紫茉莉
(
おしろい
)
の色々、
茅萱
(
かや
)
、
穂薄
(
ほすすき
)
の
露滋
(
つゆしげ
)
く
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
……何んと
長閑
(
のどか
)
ではありませんか。……真昼の光に照らされて紅葉の林が燃え立っております。雑草に
雑
(
まじ
)
った野菊の花。風に揺れなびく
葛
(
くず
)
の花。
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
余の郷里にはホゴ、メバルなどいふ四、五寸ばかりの
雑魚
(
ざこ
)
を
葛
(
くず
)
に
串
(
つらぬ
)
いて売つて居る。さういふのを煮て食ふと実にうまい。
墨汁一滴
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
所謂七種は
胡枝花
(
はぎ
)
、
芒
(
すゝき
)
、
葛
(
くず
)
、
敗醤花
(
をみなへし
)
、
蘭草
(
ふぢばかま
)
、
牽牛花
(
あさがほ
)
及
瞿麦
(
なでしこ
)
である。わたくしの嘗て引いた蘭の詩二首の一は此七種の詩中より取つたものである。
伊沢蘭軒
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
そしてみんなは、こならの実や、
葛
(
くず
)
やわらびの根や、木の柔らかな皮やいろんなものをたべて、その冬をすごしました。
グスコーブドリの伝記
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
が、現在さうなつて見ると、悲しさは又格別だつた。姫君は乳母と向き合つた儘、
葛
(
くず
)
の葉を吹き返す風の中に、何時までも袖を顔にしてゐた。……
六の宮の姫君
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
太子町の上流に掛かった
簗
(
やな
)
小屋に幾日か過ごして我が釣った鮎を
葛
(
くず
)
の葉の
火土
(
ほど
)
焼きにして食べた味は、永久に忘れまい。
水の遍路
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
薄暗いうちに起きて飼料を刻んだり、野良へ働きに出ても
葛
(
くず
)
の葉や笹の葉を持って帰るとか、伝平は急に大人びて来た。
馬
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
そしてまたわたしは、あの菜の花の咲きつづく和泉の國、
信田
(
しのだ
)
の
森
(
もり
)
の
葛
(
くず
)
の
葉
(
は
)
狐
(
ぎつね
)
の傳説をおもひうかべないではゐない。
春宵戯語
(旧字旧仮名)
/
長谷川時雨
(著)
はきと分らねど白地に
葛
(
くず
)
の葉を一面に崩して染め抜きたる
浴衣
(
ゆかた
)
の
襟
(
えり
)
をここぞと正せば、暖かき大理石にて
刻
(
きざ
)
めるごとき
頸筋
(
くびすじ
)
が
際立
(
きわだ
)
ちて男の心を
惹
(
ひ
)
く。
一夜
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
裏の竹藪の或る竹の或る枝に、
葛
(
くず
)
の葉がからんで、別に風とてもないのに、それの唯一枚だけが、不思議なほど盛んに、ゆらゆらと左右に揺れて居る。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
萱
(
かや
)
のあいだに、ちらと
戦
(
そよ
)
ぐのを見ると、
桔梗
(
ききょう
)
の花だった。太刀の帯革に
絡
(
から
)
むのを見ると、
女郎花
(
おみなえし
)
や
葛
(
くず
)
の花であった。
新書太閤記:04 第四分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
葛
(
くず
)
の材料は朝鮮から入るといいますが、
緒
(
お
)
にする
技
(
わざ
)
は掛川で為されます。昔は
袴
(
はかま
)
や
裃
(
かみしも
)
の
素地
(
きじ
)
として主に織られましたが、今はほとんど皆
襖地
(
ふすまじ
)
であります。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
年紀
(
とし
)
の頃は十九か
二十歳
(
はたち
)
、色は透通る程白く、鼻筋の通りました、
窶
(
やつ
)
れても
下脹
(
しもぶくれ
)
な、見るからに風の障るさえ痛々しい、
葛
(
くず
)
の葉のうらみがちなるその風情。
湯女の魂
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
金毛九尾の狐でも
宜
(
よ
)
い、
葛
(
くず
)
の葉
更
(
さら
)
に結構、
兎
(
と
)
にも
角
(
かく
)
にも、この女性に
飽々
(
あきあき
)
した心を
沸
(
たぎ
)
り返らせて、命までもと
打込
(
うちこ
)
ませる魅力を発散する女は無いものであろうか。
猟色の果
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
もちろんいしからであろう、大輪の菊のこともあるし、
芒
(
すすき
)
や
女郎花
(
おみなえし
)
や
葛
(
くず
)
など、野山の花のこともあった。
いしが奢る
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
このあたりには、よく狐めがゐて人を
化
(
ばか
)
すといふ
噂
(
うはさ
)
だが、わしは狐ぢやない。
葛
(
くず
)
の葉を見せ変へて、小判だなんといはぬから、よくあらためて受けとりな。さあさ。
狐の渡
(新字旧仮名)
/
土田耕平
(著)
十月の
二十日
(
はつか
)
のことであったから、中の
忌垣
(
いがき
)
に
這
(
は
)
う
葛
(
くず
)
の葉も色づく時で、松原の下の雑木の
紅葉
(
もみじ
)
が美しくて波の音だけ秋であるともいわれない浜のながめであった。
源氏物語:35 若菜(下)
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
昔馬首獣の者生まれ、父母怖れて棄つると猴が
葛
(
くず
)
の葉を食わせて育てた、死後この神と成ったと
出
(
い
)
づ。
十二支考:07 猴に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
考えますに
葛
(
くず
)
の葉の如く、この雪女郎のお嫁が
懐妊
(
かいにん
)
し、そのお腹をいためて生んだ子があったとしたなら、そうして子供が成長して、雪の降る季節になれば、雪の野山
虚構の春
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
葛
(
くず
)
の
生繁
(
おいしげ
)
っているのを
靡
(
なび
)
かす秋風が吹く度毎に、阿太の野の萩が散るというのだが、二つとも初秋のものだし、一方は広葉の
翻
(
ひるが
)
えるもの、一方はこまかい紅い花というので
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
いずれ
郡代
(
ぐんだい
)
の方からなんとか云って来るだろうから、今のうちに手廻しをして置く方がいいな。噂を聞くと、狐はいろいろの物に化けるらしい。今に
忠信
(
ただのぶ
)
や
葛
(
くず
)
の
葉
(
は
)
にも化けるだろう。
半七捕物帳:52 妖狐伝
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
『
雨月
(
うげつ
)
物語』の中のいずれの章であったか、
俺
(
お
)
れが今度旅から帰るのは
葛
(
くず
)
の葉の裏が白く風に
翻
(
ひるがえ
)
るころだろうといった意味の文章があった。葛の葉の裏の白さは初秋の空白を示している。
大切な雰囲気:03 大切な雰囲気
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
川楊
(
かはやなぎ
)
が押し流されて、河原へ仆れてゐる……
葛
(
くず
)
の二ツ葉の細い蔓が、大石の上を捲いて、一端が川に垂れかゝつて、又反曲して空を握まうとしてゐる……崖の庇石には、ツツジが生えてゐる
天竜川
(新字旧仮名)
/
小島烏水
(著)
黄ばんだ葉も
半
(
なかば
)
落ち切らない上に、何百年間か張りはびこった枝が、小さな森くらいに空を
劃
(
くぎ
)
ってこんもりと影を作り、その
処々
(
ところどころ
)
に、
尨大
(
ぼうだい
)
な
毬
(
まり
)
の様な形に、
葛
(
くず
)
の
蔓
(
つる
)
のかたまりが宿って居るので
トシオの見たもの
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
蝉の音に夏こそ残れ山窓はにほひすずしき
葛
(
くず
)
の初花
礼厳法師歌集
(新字旧仮名)
/
与謝野礼厳
(著)
次の幕は「
葛
(
くず
)
の
葉
(
は
)
の子別れ」であった。
生ける人形
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
むづかしき禅門出れば
葛
(
くず
)
の花
五百句
(新字旧仮名)
/
高浜虚子
(著)
葛
(
くず
)
の花
未刊童謡
(新字旧仮名)
/
野口雨情
(著)
小山「なるほどね、器械がなくっても出来るものですな。その方法ならどんな田舎でも山の中でも出来ますね。コルンスタッチの代りに
葛
(
くず
)
を ...
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
けっして二
度
(
ど
)
と
姿
(
すがた
)
を
見
(
み
)
せまいと
心
(
こころ
)
に
誓
(
ちか
)
っていた
葛
(
くず
)
の
葉
(
は
)
も、
子供
(
こども
)
の
泣
(
な
)
き
声
(
ごえ
)
にひかれて、もう一
度
(
ど
)
草
(
くさ
)
むらの中に
姿
(
すがた
)
を
現
(
あらわ
)
しました。
葛の葉狐
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
そはこの話に
止
(
とどま
)
らず、
安珍
(
あんちん
)
清姫
(
きよひめ
)
の話を翻訳したる「
紀州
(
きしう
)
日高
(
ひだか
)
の女
山伏
(
やまぶし
)
を殺す事」も然り、
葛
(
くず
)
の
葉
(
は
)
の話を翻訳したる、「畜類人と
契
(
ちぎ
)
り
男子
(
をのこ
)
を生む事」
案頭の書
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
下
(
した
)
に
萩
(
はぎ
)
、
桔梗
(
ききやう
)
、
芒
(
すゝき
)
、
葛
(
くず
)
、
女郎花
(
をみなへし
)
を
隙間
(
すきま
)
なく
描
(
か
)
いた
上
(
うへ
)
に、
眞丸
(
まんまる
)
な
月
(
つき
)
を
銀
(
ぎん
)
で
出
(
だ
)
して、
其横
(
そのよこ
)
の
空
(
あ
)
いた
所
(
ところ
)
へ、
野路
(
のぢ
)
や
空月
(
そらつき
)
の
中
(
なか
)
なる
女郎花
(
をみなへし
)
、
其一
(
きいち
)
と
題
(
だい
)
してある。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
二一
葛
(
くず
)
のうら葉のかへるは此の秋なるべし。心づよく待ち給へと、いひなぐさめて、夜も明けぬるに、
二二
鳥が
啼
(
な
)
く
東
(
あづま
)
を立ち出でて京の方へ急ぎけり。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
エノコ
隠岐
(
おき
)
の
島前
(
どうぜん
)
では
葛
(
くず
)
の根をエノコという(昔話研究一巻九号)。この名称は他の地方ではまだ聴かない。
食料名彙
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
「ハイ、胸に
白髯
(
しらひげ
)
を垂れ、身に
葛
(
くず
)
の衣裳を着け、
自然木
(
じねんぼく
)
の杖を突きましたところの、異相の老人にございます」
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
葛
(
くず
)
、山萩、
女郎花
(
おみなえし
)
、雑草にまじる青白い
蕎麦
(
そば
)
の花、盛りあがった土のまわりに、
離々
(
りり
)
と露をたたえている。
鳴門秘帖:06 鳴門の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
これは多分、しばしば祖母に連れられて
文楽座
(
ぶんらくざ
)
や
堀江座
(
ほりえざ
)
の人形芝居へ行ったものだから、そんな時に見た
葛
(
くず
)
の
葉
(
は
)
の子別れの場が頭に
沁
(
し
)
み
込
(
こ
)
んでいたせいであろう。
吉野葛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
さて膳だが、——
蝶脚
(
ちょうあし
)
の上を見ると、蕎麦扱いにしたは気恥ずかしい。わらさの照焼はとにかくとして、ふっと煙の立つ厚焼の玉子に、
椀
(
わん
)
が真白な半ぺんの
葛
(
くず
)
かけ。
眉かくしの霊
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
岐阜の
雑炊
(
ぞうすい
)
とか、加賀の
葛
(
くず
)
の
葉巻
(
はまき
)
とか、竹の
筒
(
つつ
)
に入れて焼いて食うものもあるが、どれも本格の塩焼きのできない場合の方法であって、いわば原始的な食い方であり
鮎の食い方
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
藪枯
(
やぶか
)
らしや藤や
葛
(
くず
)
などがむやみに絡みついているから、どれが松どれが梅とも差別がつかなかった。
泥棒と若殿
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
“葛”の意味
《名詞》
(くず)マメ科のつる性の多年草。根を用いて食品の葛粉や漢方薬が作られる。秋の七草の一つ。
(出典:Wiktionary)
“葛(クズ)”の解説
クズ(葛󠄀、学名: Pueraria lobata subsp. lobata)は、マメ科クズ属のつる性の多年草である。日本では、根を用いて食材の葛󠄀粉や漢方薬が作られ、花は万葉の昔から秋の七草の一つに数えられている。
(出典:Wikipedia)
葛
常用漢字
中学
部首:⾋
12画
“葛”を含む語句
葛城
葛藤
葛飾
葛布
葛原
葛野
葛蘿
葛蔓
蔦葛
葛湯
諸葛亮
諸葛
葛城山
葛飾郡
葛葉
蔓葛
葛籠
葛西
諸葛孔明
古葛籠
...