りゅう)” の例文
旧字:
甚五郎じんごろうの彫ったりゅうは夜な夜な水を吹いたという話だが、狩野かのうのほうにだって、三人や五人、左甚五郎がいねえともかぎらねえんだ。
「道」は道教徒の愛する象徴りゅうのごとくにすでにかえり、雲のごとく巻ききたっては解け去る。「道」は大推移とも言うことができよう。
茶の本:04 茶の本 (新字新仮名) / 岡倉天心岡倉覚三(著)
されど、そのかわりには、うろこ生えておおいなる姿の一頭のりゅう、炎の舌を吐きつつ、白銀しろがねの床しきたる黄金の宮殿の前にぞうずくまりてまもりける。
つやつや光るりゅうひげのいちめん生えた少しのなだらに来たとき諒安はからだをげるようにしてとろとろねむってしまいました。
マグノリアの木 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
大将軍刑玠たいしょうぐんけいかい指揮しきする数万の明兵みんぺいが、昇天しょうてんりゅうの黒雲をまくように、土けむりを立てて、まっさか落としにめくだってきた。
三両清兵衛と名馬朝月 (新字新仮名) / 安藤盛(著)
りゅうをも化して牝豚めぶたにするのは母となる事だ。今の今まで焼くように定子の事を思っていた葉子は、田川夫人に対してすっかり反対の事を考えた。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
六々三十六りんを丁寧に描きたるりゅうの、滑稽こっけいに落つるが事実ならば、赤裸々せきららの肉を浄洒々じょうしゃしゃに眺めぬうちに神往の余韻よいんはある。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
りゅうひげのなかのいちはつの花の紫が、夕風に揺れ、二人のいる近くに一本立っている太い棕梠しゅろの木の影が、草叢くさむらの上にだんだん斜にかかって来た。
(新字新仮名) / 岡本かの子(著)
庭はとてもせまい。さるすべりとと、つげの木が四、五本うわって、離れの塀ぎわにはりゅうのひげが植えてあった。
貸家探し (新字新仮名) / 林芙美子(著)
その中国服には、金色の大きなりゅうが、美しく刺繍ししゅうしてあった。見るからに、頭が下るほどのすばらしい模様であった。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
かれらは、明らかに、臥薪嘗胆がしんしょうたんしている。祖父義家が、かつて、公卿たちからめさせられた生涯の屈辱をわすれていない。要するに、地底ちていりゅうだ。
それで、妖女ようじょはさっそくそこを出て、りゅうにひかせた火の車に乗ると、ちょうど一時間で、王様のお城につきました。
眠る森のお姫さま (新字新仮名) / シャルル・ペロー(著)
一人の少女は、おりゅうちゃんといった。ちょうど私とおない年だった。きつい目つきをした、横から見ると、まるで男の子のような顔をした少女だった。
幼年時代 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
顔ははっきり見えなかったが、つかりゅうかざりのある高麗剣こまつるぎいている事は、その竜の首が朦朧もうろう金色こんじきに光っているせいか、一目にもすぐに見分けられた。
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
昨年はいくらか出たが、今年は比較的多く、庭のところどころに半坪ぐらいずつ短いのが生えそろっている。りゅうひげの間にもかなり萌え出ているところがある。
京の四季 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
神月が人魂だといったのを聞いた時、あいつ愛嬌あいきょうのない、鼻のたかい、目のきつい、源氏物語の精霊しょうりょうのような、玉司たまつかさ子爵夫人りゅう子、語を換えて云えば神月の嚊々かかあだ。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
双剣一に収まって和平を楽しむのいまだいたらざるあかしであろうが、前門に雲舞いくだって後門こうもんりゅうを脱す。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
ときとしてりゅう姿すがたあらわすから竜神りゅうじんには相違そういないが、しかしいつもあんなおそろしい姿すがたるのではない。とき場合ばあいでやさしいかみ姿すがたにもなれば、またひとつのまるたまにもなる。
垣根のもとにはりゅうひげが透き間なく茂って、青い玉のなんともいえぬ美しい実が黒い茂り葉の間につづられてある。竜の髭の実はじつに色が麗しい。たとえて言いようもない。
隣の嫁 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
多くの人もそういう秘密な怪物を持っている、心中にいだいている苦悩を、身をりゅうを、内心のやみの中に住む絶望を。かかる人も普通の者と同じようにして暮らしている。
あのお城のぐるりには毒蛇どくじゃりゅうが一ぱいいて、そばへ来るものをみんな殺してしまいます。
黄金鳥 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
りゅうなら竜、とらなら虎の木彫をする。殿様とのさま御前ごぜんに出て、のこぎり手斧ちょうなのみ、小刀を使ってだんだんとその形をきざいだす。次第に形がおよそ分明になって来る。その間には失敗は無い。
鵞鳥 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
りゅうのようにうねった銀杏の樹の根本に乗っているのを見つけると直ぐに、この書物こそ自分が今まで一度も見た事のない書物だと思って、思わずけ寄って手に取ろうとしたが
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
りゅうの中から仏が生まれておいでになったということがなければですがね、しかし平凡な家の子としては前生で善因を得て生まれて来た人に違いございません。そんな人なのでございます
源氏物語:55 手習 (新字新仮名) / 紫式部(著)
葉公しょうこう子高しこうりゅうを好むこと甚だしい。居室にも竜を繍帳しゅうちょうにも竜を画き、日常竜の中に起臥きがしていた。これを聞いたほんものの天竜が大きに欣んで一日葉公の家にくだおのれの愛好者をのぞき見た。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
わが艦隊はりゅうの尾をふるうごとくゆらゆらと左に動いて、彼我の陣形は丁字一変して八字となり、彼は横に張り、われは斜めにその右翼に向かいて、さながら一大コンパスけいをなし、彼進み
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
そのしんにはごく少しの綿をまるくして入れ、またよくはずむようにといって、りゅうひげのみどり色のをつつんだり、蜆貝しじみがいに小さな石などをつつみ入れて、かすかな音のするのを喜んだりしていた。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
□「わし常陸ひたちりゅうヶ崎さきで」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
まったく霧は白くいたりゅうひげの青い傾斜けいしゃはその中にぼんやりかすんで行きました。諒安はとっととかけ下りました。
マグノリアの木 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
黄金おうごんの糸で四とうりゅうのぬいとりをしたすばらしくぜいたくなカーテンが、頭目台とうもくだいのうしろにれている。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
第二の農夫 おまけに欲の深い王様は、王女を人に盗まれないように、りゅうの番人を置いてあるそうだ。
三つの宝 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
こうして人間同士がお静かに分れた頃には、一件はソレりゅうの如きもの凡慮ぼんりょの及ぶところでない。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
東西両洋は、立ち騒ぐ海に投げ入れられた二りゅうのごとく、人生の宝玉を得ようとすれどそのかいもない。この大荒廃を繕うために再び女媧じょかを必要とする。われわれは大権化だいごんげの出現を待つ。
茶の本:04 茶の本 (新字新仮名) / 岡倉天心岡倉覚三(著)
わが海軍の精鋭と、敵の海軍の主力と、共に集まりたる彼我の艦隊は、大全速力もてせ違い入り乱れつつ相たたかう。あたかも二りゅうの長鯨を巻くがごとく黄海の水たぎって一面のあわとなりぬ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
赤銅しゃくどうつかに刀には村雲むらくも、脇差にはのぼりゅうの彫り物があるというところから、大を乾雲丸けんうんまる、小を坤竜丸こんりゅうまると呼んでいるのだが、この一ついの名刀は小野塚家伝来の宝物で、諸国の大名が黄金を山と積んでも
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
りゅうになりたいとほんとうに思うんだ。いいか。ほんとうにだぜ。この上なしの、突きつめた気持で、そう思うんだ。ほかの雑念はみんなててだよ。いいか。本気にだぜ。この上なしの・とことんの・本気にだぜ。」
『あありゅうだ、竜だ。』みんなは叫んだよ。実際下から見たら、さっきの水はぎらぎら白く光って黒雲の中にはいって、竜のしっぽのように見えたかも知れない。
風野又三郎 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
黒い煙は、いったん銀白色のまくにつつまれたが、まもなくそれを破って、あらしの黒雲くろくものように——いや、まっくろなりゅうのように天じょうをなめながら、のたくりまわった。
金属人間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
金岡かなおかはぎの馬、飛騨ひだ工匠たくみりゅうまでもなく、電燈を消して、雪洞ぼんぼりの影に見参らす雛の顔は、実際、ればまたたきして、やがて打微笑うちほほえむ。人の悪い官女のじろりと横目で見るのがある。
雛がたり (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
首領の四馬剣尺しばけんじゃくは、あいかわらずりゅう彫物ほりもののある、大きな椅子に坐っていた。身のたけ六尺にちかく、ビールだるのようにふとったからだは横綱よこづなもはだしで逃げだしそうな体格だ。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
時には赤いりゅうの眼をして、じっとこんなにオツベルを見おろすようになってきた。
オツベルと象 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
丹塗にぬりの柱、花狭間はなはざまうつばりの波の紺青こんじょうも、金色こんじきりゅうも色さみしく、昼の月、かやりて、唐戸からどちょうの影さす光景ありさま、古き土佐絵とさえの画面に似て、しかも名工の筆意ひついかない、まばゆからぬが奥床おくゆかしゅう
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いや、その田鶴子という派出婦は、蠅男の情婦のおりゅうが化けこんでいたに違いありません。
蠅男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そのみきったよくみがかれた青ぞらで、まっ白なけむりがパッとたち、それから黄いろな長いけむりがうねうね下って来ました。それはたしかに、日本でやる下りりゅう仕掛しかけ花火です。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
りゅうひげの石垣のがけになる、片隅に山吹やまぶきがあって、こんもりした躑躅つつじが並んでうわっていて、垣どなりのが、ちらちらとくほどに二、三輪咲残さきのこった……その茂った葉の、蔭も深くはない低い枝に
二、三羽――十二、三羽 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
権兵衛茶屋のわきから蕎麦そばばたけや松林まつばやしを通って、煙山の野原に出ましたら、向うには毒ヶ森や南晶山なんしょうざんが、たいへん暗くそびえ、その上を雲がぎらぎら光って、処々ところどころにはりゅうの形の黒雲もあって
鳥をとるやなぎ (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
主のふちといえば誰も入ったものはあるまい。昔から人の入らない処なら、中にまたどんな珍らしい不思議なものがあろうも知れない。たとえにもりゅうあごには神様のような綺麗な珠があるというよ。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
首が何万マイル先へとどくりゅう、そのほか人間が想像もしたことのないような珍獣奇獣猛獣のたぐいがあっちこっちにかくれ住んでいて、宇宙をとんでゆく旅行者を見かけると、とびついてくるのじゃ
怪星ガン (新字新仮名) / 海野十三(著)
「——し、失敗しまったッ。オイおりゅう、警官の自動車だッ」
蠅男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
むかし、あるところに一ぴきりゅうがすんでいました。
手紙 一 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)