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摘
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つま
ふりがな文庫
“
摘
(
つま
)” の例文
大異は林の中へ入ってすぐそこにあった大木の根本へ坐って、幹に
倚
(
よ
)
っかかり、腰の袋に入れていた食物を
摘
(
つま
)
みだして
喫
(
く
)
いはじめた。
太虚司法伝
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
私は直ぐにそれを
摘
(
つま
)
んで
白菜
(
パイサイ
)
の畑のなかに投げ込んだ。そうして、ほっとしたように見あげると、今朝の空も紺青に高く晴れていた。
はなしの話
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
ガラツ八はさう言ひ乍ら、懷中から半紙に包んだ一と握りの煙草を取出して、指先でちよいと
摘
(
つま
)
んで見せ乍ら、平次の方へ押出します。
銭形平次捕物控:170 百足屋殺し
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
肴
(
さかな
)
は? と思ったが何もあるはずがないので、机の上に置いてあった干葡萄の皿を引きよせて、それを
摘
(
つま
)
んでぽつりぽつりやり出した。
田舎医師の子
(新字新仮名)
/
相馬泰三
(著)
何か頷くと葉之助は、
懐中
(
ふところ
)
から鼻紙を取り出したが指で
摘
(
つま
)
んで白い粉を、念入りにその中へ
摘
(
つま
)
み入れた。それから静かに帰路についた。
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
▼ もっと見る
感心なし事急ぐなれば
摘
(
つま
)
んで咄さんが某し江戸表に奉公なし
年頃
(
としごろ
)
給金其外とも
溜置
(
ためおき
)
し金百五十兩程に成たり依て此度古郷へ立ち歸り家を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
そのうちに、ぼくはとつぜんむずと
摘
(
つま
)
みあげられた。ぼくは
愕
(
おどろ
)
いた。はっとして目を
瞠
(
みは
)
ると、知らない若い男の指に摘みあげられていた。
もくねじ
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
そして、彼が近よっていって、
覗
(
のぞ
)
いて見ようとしたら、「わあ」と叫びながら、一
疋
(
ぴき
)
の小蛇を
摘
(
つま
)
んで、彼の眼の前へつきつけた。
女は同じ物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「なんだよつて、へ、へ、へ。そこな、
酸模
(
すかんぽ
)
、
蚊帳釣草
(
かやつりさう
)
の
彼方
(
むかう
)
に、きれいな
花
(
はな
)
が、へ、へ、
花
(
はな
)
が、うつむいて、
草
(
くさ
)
を
摘
(
つま
)
んで
居
(
ゐ
)
なさるだ。」
続銀鼎
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
襟
(
えり
)
くびにくッついた菜っぱを、妙な顔をしながら
摘
(
つま
)
んで捨て、
忌々
(
いまいま
)
しさを、ありッたけな声に入れて、唄いながら逃げ出した——
宮本武蔵:03 水の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
何だか狐にでも
摘
(
つま
)
まれたような気がする。あの夕立は単に僕達の旅程から
菅公
(
かんこう
)
の
配所
(
はいしょ
)
を取り
除
(
の
)
ける為めの天意としか思われない。
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
もしまた動物園とか個人の庭とかに関係なくただ漠然とこれだけの景色を
摘
(
つま
)
み出して詠みたるものとすればそれでも善けれど
墨汁一滴
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
そこで私はその花を摘んで、自分の鼻の先で
匂
(
にお
)
うて見る。何という花だか知らないがいい匂である。指で
摘
(
つま
)
んでくるくるとまわしながら歩く。
西班牙犬の家:(夢見心地になることの好きな人々の為めの短篇)
(新字新仮名)
/
佐藤春夫
(著)
最後に私は椅子の上に置いた帽子を取上げて
叮嚀
(
ていねい
)
にブラシをかけた。細かい蜘蛛の糸が二すじ三筋付いていたから、特に注意して
摘
(
つま
)
み
除
(
の
)
けた。
けむりを吐かぬ煙突
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
水菓子屋の目さめるような店先で立止って足許の
甘藍
(
かんらん
)
を
摘
(
つま
)
んでみたりしていたが、とうとう蜜柑を四つばかり買って外套の隠しを
膨
(
ふく
)
らませた。
まじょりか皿
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
一度は一軒置いてお隣りの多宝院の
納所
(
なっしょ
)
へ這入り坊さんのお夕飯に食べる
初茸
(
はつたけ
)
の煮たのを
摘
(
つま
)
んでいるところを
捕
(
つか
)
まえました。
幕末維新懐古談:73 栃の木で老猿を彫ったはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
弓柄を左手に
握
(
にぎ
)
り、矢の一端を弦の
中程
(
なかほど
)
に
當
(
あ
)
てて右手の指にて
摘
(
つま
)
まむと云ふは何所も同じ事なれど、
摘
(
つま
)
み方に於ては諸地方住民種々異同有り。
コロボックル風俗考
(旧字旧仮名)
/
坪井正五郎
(著)
「これア女のきるもんだな。」巡査は長襦袢を指先に
摘
(
つま
)
み上げて、燈火にかざしながら、わたくしの顔を睨み返して、「どこから持って来た。」
濹東綺譚
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
今までの
論旨
(
ろんし
)
をかい
摘
(
つま
)
んでみると、第一に自己の個性の発展を
仕遂
(
しと
)
げようと思うならば、同時に他人の個性も尊重しなければならないという事。
私の個人主義
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
弟が
摘
(
つま
)
み上げたる砂を兄が
覗
(
のぞ
)
けば眼も
眩
(
まばゆ
)
く五金の光を放ちていたるに、兄弟ともども
歓喜
(
よろこ
)
び楽しみ、互いに得たる
幸福
(
しあわせ
)
を互いに深く讃歎し合う
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
彼等は一本の鞭を二人で、釣糸を垂れてゐるかのやうに
摘
(
つま
)
み、肩を寄せ合ひながら、村の景色と自分達の話とに酔つた。
陽に酔つた風景
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
爐には八角の
摘
(
つま
)
み手の附いた
助炭
(
じよたん
)
がかゝつてゐて、釜の湯は何時も熱く、よしや湯の冷めてゐる時があらうとも、釜の下を探れば必ず火があつた。
父の婚礼
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
新吉は黒い
指頭
(
ゆびさき
)
に、臭い莨を
摘
(
つま
)
んで、
真鍮
(
しんちゅう
)
の
煙管
(
きせる
)
に詰めて、炭の粉を
埋
(
い
)
けた
鉄瓶
(
てつびん
)
の下で火を
点
(
つ
)
けると、思案深い
目容
(
めつき
)
をして、濃い煙を
噴
(
ふ
)
いていた。
新世帯
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
一生懸命に靴下を
摘
(
つま
)
んで、ながいことかかって或る程度まで脚を
空
(
くう
)
に上げる事業に成功するんだが、そのうちにぽつんと切るように手が離れると
踊る地平線:03 黄と白の群像
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
一本のマッチを
摘
(
つま
)
み出し、食卓の上の金具に当ててシューッとすると、パッと火が出たからまぶしがり、あわててそれを
煙管
(
きせる
)
にうつそうとしたが
大菩薩峠:25 みちりやの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
守は渋々ながら、老探偵を伴って、案内知った洋館傍の小部屋に入ると、彼自身の危難の次第から、品子さん誘拐の顛末を、かい
摘
(
つま
)
んで物語った。
妖虫
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
焼栗を
摘
(
つま
)
みながら、白葡萄酒を傾けながら、話上手な主人はフランス人一流の態度で「
さて
(
エ・パン
)
」といって、語り出した。
二人のセルヴィヤ人
(新字新仮名)
/
辰野隆
(著)
どこへでも
攀
(
よ
)
じ登り、新鮮な日光の下で踊り、むかっ腹を立て、からだじゅうを
掻
(
か
)
き、なんでも
摘
(
つま
)
みあげ、そしていかにも原始的な
風情
(
ふぜい
)
で水を飲む。
博物誌
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
「この
肆
(
みせ
)
の
下物
(
かぶつ
)
、一は
漢書
(
かんしよ
)
、二は
双柑
(
さうかん
)
、三は
黄鳥
(
くわうてう
)
一
声
(
せい
)
」といふ洒落た文句で、よしんば
摘
(
つま
)
み
肴
(
さかな
)
一つ無かつたにしろ、酒はうまく飲ませたに相違ない。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
順々に運ばれる
皿数
(
コーセス
)
の最後に出た
独活
(
アスパラガス
)
を、瑠璃子夫人がその白魚のような
華奢
(
きゃしゃ
)
な指先で、
摘
(
つま
)
み上げたとき、彼女は思い出したように美奈子に云った。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
孫の巨人はさう言ひながら、指を穴に入れて、仙蔵と次郎作とを
摘
(
つま
)
み出し、
掌
(
てのひら
)
にのせました。驚いたのは二人です。
漁師の冒険
(新字旧仮名)
/
宮原晃一郎
(著)
なるべく要点を
摘
(
つま
)
んで記憶する様に勉めている。数字などの事になると初めに大別し、更に細別して比較を取ってみておくと、甚だ記憶に便利である。
我輩は何故いつまでもすべてに於て衰えぬか
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
或るときは、
憤
(
いか
)
りで真蒼になって、痩せた指でプセットを
摘
(
つま
)
みあげてその眼をじっと睨み据えているかと思うと、だしぬけに地面へ叩きつけたりした。
老嬢と猫
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
私は頭から冷水を浴びせられたよりも
戦
(
ふる
)
い上ったが、
此処
(
ここ
)
だと思って、度胸を据えて、戦える指頭で皺になった薄青い袋から小さな紙包を
摘
(
つま
)
み出して
老婆
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
店
(
みせ
)
にはいって
来
(
き
)
た
海蔵
(
かいぞう
)
さんは、いつものように、
駄菓子箱
(
だがしばこ
)
のならんだ
台
(
だい
)
のうしろに
仰向
(
あおむ
)
けに
寝
(
ね
)
ころがってうっかり
油菓子
(
あぶらがし
)
をひとつ
摘
(
つま
)
んでしまいました。
牛をつないだ椿の木
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
... おかけなさい。アレさ指でお
摘
(
つま
)
みなさらないでナイフで
掬
(
すく
)
ってフークへチンチンと
叩
(
たた
)
いてお振りかけなさい」大原マゴマゴ「アアいよいよありがたい」
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
三日月
(
みかづき
)
なりに
切
(
き
)
ってある、
目
(
め
)
にいれたいくらいの
小
(
ちい
)
さな
爪
(
つめ
)
を、
母指
(
おやゆび
)
と
中指
(
なかゆび
)
の
先
(
さき
)
で
摘
(
つま
)
んだまま、ほのかな
月光
(
げっこう
)
に
透
(
すか
)
した
春重
(
はるしげ
)
の
面
(
おもて
)
には、
得意
(
とくい
)
の
色
(
いろ
)
が
明々
(
ありあり
)
浮
(
うか
)
んで
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
楤
(
たら
)
の木の心から製した
醨
(
もそろ
)
の酒は、その傍の
酒瓮
(
みわ
)
の中で、
薫
(
かん
)
ばしい香気を立ててまだ波々と
揺
(
ゆら
)
いでいた。若者は片手で粟を
摘
(
つま
)
むと、「卑弥呼。」と一言呟いた。
日輪
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
ずつと
以前
(
いぜん
)
に
溯
(
さかのぼ
)
つて、
弦月丸
(
げんげつまる
)
の
沈沒
(
ちんぼつ
)
當時
(
たうじ
)
の
實况
(
じつけう
)
。
小端艇
(
せうたんてい
)
で
漂流中
(
へうりうちう
)
のさま/″\の
辛苦
(
しんく
)
。
驟雨
(
にわかあめ
)
の
事
(
こと
)
。
沙魚
(
ふか
)
釣
(
つ
)
りの
奇談
(
きだん
)
。
腐
(
くさ
)
つた
魚肉
(
さかな
)
に
日出雄少年
(
ひでをせうねん
)
が
鼻
(
はな
)
を
摘
(
つま
)
んだ
話
(
はなし
)
。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
妙子が缶を
摘
(
つま
)
み上げて床に投げ出すと、それに驚いたのか、
蝗
(
ばった
)
が一匹飛び出した。そして床の上をピョンピョン跳ねながら、通路の向うの端まで飛んで行った。
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
そして口に
手拭
(
てぬぐい
)
を喰わえてそれを開くと、一寸四方ほどな何か字の書いてある紙片を
摘
(
つま
)
み出して指の先きで丸めた。水を持って来さしてそれをその中へ浸した。
カインの末裔
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
『一升あれば充分だ。それに、ちょっと
摘
(
つま
)
むものを二、三品頼む。残った金はおっさんにみんなやる。』
『七面鳥』と『忘れ褌』
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
なんかと
突倒
(
つきたふ
)
して、
縄
(
なは
)
から外へ
飛出
(
とびだ
)
し
巡査
(
じゆんさ
)
に
摘
(
つま
)
み
込
(
こ
)
まれる
位
(
くらゐ
)
の事がございますが、
西京
(
さいきやう
)
は誠に
優
(
やさ
)
しい
牛車
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「君たちも食べないか」私は女どもにすすめながら
摘
(
つま
)
んだ。柳沢はもう黙って口に押し込んでいた。
うつり香
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
摘
(
つま
)
めば藻西太郎は此上も無き
正直人
(
しょうじきじん
)
なり何事ありとも人を殺す如きことは決して無く必ず警察の見込違いにて捕縛せられし者ならん遠からず放免せらるゝは請合なり
血の文字
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
そいつを
萌黄
(
もえぎ
)
の風呂敷包にしてここまで持って来て、もう脇坂様のおやしきは眼の前だからと、こうして馬場下の茶店に腰を下ろし、茶を飲む。菓子を
摘
(
つま
)
む。定公なんか
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
私はもうたまらなくなって、うまそうなアンパンを一つ
摘
(
つま
)
んで食べた。一口
噛
(
か
)
むと案外固くって粉がボロボロ膝にこぼれ落ちている。——何もない。何も考える必要はない。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
私は白状します、どうかすると私はお腹が空いて空いて堪らないことが有りました。さういふ時には我知らず甥と同じ行ひに出て、煮付けた
唐辛
(
たうがらし
)
の葉などはよく
摘
(
つま
)
みました。
幼き日:(ある婦人に与ふる手紙)
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
摘
(
つま
)
んで言へば、堯舜は天下に王として萬機の政事を執り給へ共、其の職とする所は教師也。
遺訓
(旧字旧仮名)
/
西郷隆盛
(著)
『ハヽヽ。神山
様
(
さん
)
が大丈夫ツてのなら安心だ。早速やらうか。』と信吾が真先に
一片
(
ひとつ
)
摘
(
つま
)
む。
鳥影
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
摘
常用漢字
中学
部首:⼿
14画
“摘”を含む語句
花摘
末摘花
掻摘
桑摘
一摘
茶摘
芹摘
草摘
茶摘歌
堤下摘芳草
指摘
摘草
摘出
摘取
摘録
菜摘
摘要
碑文摘奇
御指摘
新花摘
...