折柄おりから)” の例文
夜長の折柄おりからたつの物語を御馳走に饒舌しゃべりりましょう、残念なは去年ならばもう少し面白くあわれに申しあげ軽薄けいはくな京の人イヤこれは失礼
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
時としては目下の富貴ふうきに安んじて安楽あんらく豪奢ごうしゃ余念よねんなき折柄おりから、また時としては旧時の惨状さんじょうおもうて慙愧ざんきの念をもよおし、一喜一憂一哀一楽
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
「きょうは藻という世にもめずらしい乙女がまいる筈じゃ。入道もよい折柄おりからにまいられた。一度対面してその鑑定をたのみ申したい」
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
折柄おりから、窓のそとは満潮グラン・マレで、あぶくを載せた上潮のうねりが、くどくどと押し返し、巻きかえし、いつ果てるとも見えない有様であった。
折柄おりから時分どきでござろう——」と、戸田老人は陽を仰いだ、「このあたりで昼食をしたため、あとはすなわち一気呵成かせいとまいろうか」
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
道路の曲り角に、床屋の白服をきた若者が、黒いものを棒のさきで衝ッつきながら、折柄おりから正面から来た駄馬のわだちかそうとした。
童子 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
折柄おりから四時頃の事とて日影も大分かたぶいた塩梅、立駢たちならんだ樹立の影は古廟こびょう築墻ついじまだらに染めて、不忍しのばずの池水は大魚のうろこかなぞのようにきらめく。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
場所が場所であるし、赤外線男のうわさの高い折柄おりからでもあったので、ただちに幾野いくの捜査課長、雁金かりがね検事、中河予審判事なかがわよしんはんじ等、係官一行が急行した。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
折柄おりから格子戸のベルが飛び上るほど鳴って「御免なさい」と鋭どい女の声がする。迷亭と主人は思わず顔を見合わせて沈黙する。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
若年じゃくねん折柄おりからしかと意見を致したことはございましたが、此のたびの事には実にあきれ果てましてなんともお詫のしようがございません
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
折柄おりから修理不在で、番所の脇で待たされていたが、折柄十人ばかりで、刀脇差の目利きごっこをしていたが、一人の武士、幸村にも刀拝見と云う。
真田幸村 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
だが阿Qは一向平気であたりを見廻し、たちまち右手をあげて、折柄おりからくびを延して聴き惚れている王鬍のぼんのくぼを目蒐めがけて、打ちおろした。
阿Q正伝 (新字新仮名) / 魯迅(著)
その方はアツレキ三十一年七月一日夜、アフリカ、コンゴオの林中空地に於て、故なくして擅に出現、折柄おりから月明によって歌舞、歓をなせる所の一群を
うでをくんで背中をまるめている、あなたの緑色のスエタアのうえに、お下げにした黒髪くろかみが、颯々さつさつと、風になびき、折柄おりからの月光に、ひかっていました。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
折柄おりからそこへ東ローマ皇帝からの使者が来て「トルコ人侵寇を防衛するために法王の援助を乞う」という旨を伝えた。
ローマ法王と外交 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
政言殿には二万五千石。輝録殿には一万五千石と、内々御決定の折柄おりからに、又そこへ御一人は、算盤そろばんの弾き直しだ。
備前天一坊 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
縁の上には、二三十人の若い男たちが、折柄おりからの寒中にもめげず、スポリ、スポリと労働服を脱いで、真ッ裸だ。
(新字新仮名) / 徳永直(著)
妾も二時間あまり石のようにだまっていたので、何か話したくて話したくてしょうがなかった折柄おりからなので、ついあの人を相手にいろいろおしゃべりをしました。
華やかな罪過 (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
掛引かけひきみょうを得たるものなれども、政府にてはかかるたくらみと知るや知らずや、財政窮迫きゅうはく折柄おりから、この申出もうしいでに逢うてあたかわたりにふねおもいをなし、ただちにこれを承諾しょうだくしたるに
折柄おりから上潮あげしおに、漫々まんまんたるあきみずをたたえた隅田川すみだがわは、のゆくかぎり、とお筑波山つくばやまふもとまでつづくかとおもわれるまでに澄渡すみわたって、綾瀬あやせから千じゅしてさかのぼ真帆方帆まほかたほ
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
大勢おおぜい食事の折柄おりから腹こなしに一席弁じたくば亜米利加人アメリカじんが食卓の祈祷きとうの如きまだしも我慢がなりやすし。風俗時勢の新旧を問はず宴会といふものほど迷惑千万なるはなし。
桑中喜語 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
「よろしかろう。世間にもいろいろと取沙汰のある折柄おりから、処断を明かにするのは利益であろう」
大岡越前の独立 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
刀のさびにするにも足らない奴だがよい折柄おりから端役はやく、こいつに女のいきさつをすっかり任せてしまえば、女のほだしから解かれることができる。竜之助はこうも思っているらしい。
大菩薩峠:07 東海道の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
折柄おりから障子は開けっ放しになって居りましたし、庭木戸を開けて忍びこんで、後ろから一挙に襲撃すると、自分の姿を見られずに、大概の事が片付けられたろうと想像されます。
呪の金剛石 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
しるさんに去る×月×日午後十一時頃×県×郡×村あざ×所在×の寺男×某(五〇)が同寺住職のいいつけにて附近のだん使つかいに行き帰途同寺けいだいの墓地を通過せる折柄おりから雲間を
百面相役者 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
人々驚きて駆け付ける間もなく打ち続く晴天と折柄おりからの烈風にあおられて火勢たちまち猛烈となり
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
大原ぬしが如何いかに今日はくるしみ給わん、御両親やほかの人々と如何なる御相談をなされしか、お代どのの身は如何に定まりつらんなどと人の身の上を思い続けてひそかに心を痛むる折柄おりから
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
三吉はお雪と一緒に自分の家の方で、折柄おりから訪ねて来たお愛を送り出したところであった。このお雪が二番目の妹は、若々しい細君として、旦那という人と共に一寸上京したのである。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
是をどうするがよいかと評定ひょうじょうまちまちの折柄おりから、今度は川上の方から牛に似て更に大きなまた一個の怪物が、流れについて下ってきて、前からあった岩のような黒いものにひしと取り付き
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
妾も心中この人ならばと思い定めたる折柄おりからとて、直ちに承諾のむねを答え、いよいよ結婚の約を結びて、母上にも事情を告げ、彼も公然その友人らに披露ひろうして、それより同棲どうせいすることとなり
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
尺二寸、十二本継の竿を弄して、処々あさりたりしも、型も見ざりければ、釣り疲れしこと、一方ならず、帰らんか、尚一息試むべきかと、躊躇する折柄おりから、岸近く縄舟を漕ぎ過ぐるを見たり。
釣好隠居の懺悔 (新字旧仮名) / 石井研堂(著)
私達は飽かずリンクスの美を鑑賞した上、迎えの自動車で引返したが、夏の日の暮れるに遅く、まだ日足があるので、折柄おりから時雨空しぐれそらを冒し、稚児落ちごおとしの滝を見て帰るため、木場道きばみちをくだらせた。
雲仙岳 (新字新仮名) / 菊池幽芳(著)
『精神界』というのがおおいに先生の言に注意した賛同的の批評をされた時に、折柄おりから訪問した予にその『精神界』のことを話され、半解の人間に盲目的の賛詞をいわるるくらいいやなことはないが
竹乃里人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
お葉は折柄おりからの雨をしのぐ為に、有合ありあう獣の皮を頭から引被ひっかぶって、口には日頃信ずる御祖師様おそしさまの題目を唱えながら、跫音あしおとぬすんで忍び出た。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
木刀をって打つやら突くやら無慙至極むざんしごくな扱い、その折柄おりから何十人という多くの人立でございましたが、只気の毒だ、可愛相だというばかりで
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
時には何の用だか知れもせぬ用に、手紙を持たせられて、折柄おりからの雨降にも用捨なく、遠方迄使いに遣られて、つくづく辛いと思った事もある。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
折柄おりから廊下をちかづく足音がして障子を開ける音がする。誰か来たなと一生懸命に聞いていると「御嬢様、旦那様と奥様が呼んでいらっしゃいます」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
この物資不足の折柄おりから、むだにすてられようとする物や、使われもせず家の中にしまいこまれた物を、買いあつめる商売だ。
未来の地下戦車長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
第一番に薩摩の望む所はにもかくにもこの戦争をしばら延引えんいんしてもらいたいと云う注文なれども、その周旋をたれに頼むとう手掛りもなく当惑の折柄おりから
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
アッと驚き振仰向ふりあおむけば、折柄おりから日は傾きかゝって夕栄ゆうばえの空のみ外に明るくの内しずかに、淋し気に立つ彫像ばかり。
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
折柄おりから秀吉は征韓の志を起し、武備兵糧を充実させた時であったから、天性の豪気いよいよ盛んに、直ちに右筆をして、呂宋ルソン総督マリニャス宛ての勧降の書をしたためしめ
対馬の宗義智そうよしともが、いやがる朝鮮の使者を無理に勧説かんぜいして連れて来たのは天正十八年七月である。折柄おりから秀吉は関東奥羽へ東征中で、聚楽じゅらくの第に会見したのは十一月七日である。
碧蹄館の戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
戦後その身のかんなるがために所謂いわゆる脾肉ひにくたんえず、折柄おりから渡来とらいしたる日本人に対し、もしも日本政府にて雇入やといい若年寄わかどしより屋敷やしきのごとき邸宅ていたくに居るを得せしめなばべつかねは望まず
折柄おりから向うから来たのは、靜修庵せいしゅうあんの若い尼であった。阿Qはふだんでも彼女を見るときっと悪態をくのだ。ましてや屈辱のあとだったから、いつものことを想い出すと共に敵愾心てきがいしん喚起よびおこした。
阿Q正伝 (新字新仮名) / 魯迅(著)
折柄おりから梯子段を踏轟ふみとどろかして昇が上ッて来た。ジロリと両人ふたり光景ようすを見るやいなや、忽ちウッと身を反らして、さも業山ぎょうさんそうに
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
と無理強談ごうだん折柄おりから暮方くれかたの木蔭よりむっくり黒山の如き大熊が現われ出でゝ、蟠龍軒が振上げた手首をむんずと引ッつかみ、どうとかたえに引倒しました。
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
播磨守殿は慎みの折柄おりからじゃとて、直きじきの対面はかなわなんだが、弟子の取次ぎでこれだけのことを教えてくれた。御息女には怪異あやかしがついている。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
塾長になるその後私の学問も少しは進歩した折柄おりから、先輩の人は国に帰る、塾中無人にてついに私が塾長になった。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
折柄おりから柿落葉の時節で宿から南郷街道なんごうかいどうへ出るまではの葉で路が一杯です。一歩ひとあし運ぶごとにがさがさするのが気にかかります。誰かあとをつけて来そうでたまりません。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
青軍せいぐん危急ききゅうを救うべく、敵前てきぜんおいて危険きわまる低空の急旋転きゅうせんてんを行いたるところ、折柄おりから洋上には密雲のために陽光暗く、加うるに霧やや濃く、僚機との連絡至難となり
恐しき通夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)